レクサプロの頭痛と5つの対策
いろいろなお薬で頭痛の副作用はみられますが、レクサプロでも頭痛の副作用がみられます。レクサプロを飲まれた方の10.2%にみられたという報告があります。その一方で、片頭痛の予防薬として抗うつ薬が使われることもあります。
それでは、レクサプロの頭痛への影響はどのように考えていけばよいでしょうか?ここでは、レクサプロによる頭痛の対策も含めて考えていきたいと思います。
1.レクサプロでなぜ頭痛になるのか?
セロトニンの作用による頭痛と離脱症状による頭痛があります。
レクサプロの副作用としての頭痛は、10.2%という報告があります。レクサプロで頭痛がみられるタイミングは大きく2つあります。薬の飲み始めと、薬の減量や変更のタイミングです。それぞれのタイミングで、頭痛の原因が異なります。
レクサプロを飲み始めての頭痛は、1~2週間ほどすると落ち着いてくることが多いです。なぜ飲み始めに頭痛が生じるのかは正確にはわかっていません。ですが、セロトニンと頭痛は大きく関係していると考えられています。
セロトニンがどのようにして頭痛を引き起こすのかは、片頭痛の原因をみていくと推測できます。片頭痛は、セロトニンの過剰な放出が原因といわれています。セロトニンの作用で脳血管が収縮します。時間がたってこのセロトニンが分解されていくと、反動で、急激に脳血管が拡張してしまいます。
脳血管が拡張されると、周りを取り巻いている三叉神経が圧迫されます。すると、三叉神経から神経ペプチドとよばれる「痛み物質」が作られて、これが頭痛を引き起こすと考えられています。
レクサプロはセロトニンを増加させるお薬ですので、似たような形で頭痛が生じるのではと考えることができます。セロトニンの脳血管への影響をもう少し詳しくみてみましょう。
セロトニン1B・1D受容体が刺激されると、脳血管が収縮することがわかっています。一方で、セロトニン2・7受容体が刺激されると、脳血管が拡張することがわかっています。さらにセロトニン2A受容体では、痛覚を刺激してしまうこともわかっています。これらが複合的に作用して、頭痛が生じるのだと思います。
また、薬の減量や変更のタイミングで頭痛が出てくることもあります。この頭痛は、離脱症状としての頭痛です。薬が身体に慣れてから急になくなってしまうと、身体がびっくりしてしまいます。様々な症状がみられますが、頭痛もその一つの症状としてみられます。薬を飲んでいてしばらくたってから頭痛がみられたときは、薬の飲み忘れがないか思い返してください。
レクサプロのその他の副作用について詳しく知りたい方は、
レクサプロの副作用(対策と比較)
をお読みください。
2.頭痛の予防薬としての抗うつ剤
セロトニンの作用が安定すると、抗うつ薬には頭痛予防効果があります。
抗うつ剤は、頭痛の予防薬として使われることもあります。抗うつ剤は、セロトニンを増やすお薬ですが、セロトニンの作用が安定してくると頭痛の予防効果があります。予防効果としては、大きく2つのセロトニンの働きがあると考えられます。
1つ目は、セロトニンの脳血管収縮作用です。セロトニン1B・1D受容体は脳血管を収縮する作用がしっかりとしています。抗うつ薬の作用が不安定な飲み始めを過ぎると、脳血管の拡張を防ぎ、それによって生じる頭痛を防いでくれると考えられています。
実際に片頭痛の予防治療としても、抗うつ薬はよく使われています。三環系抗うつ薬のトリプタノールが使われることが多く、頭痛の予防効果としては10~60mgで使う事が勧められています。精神科でよく使うお薬としては、抗てんかん薬やβブロッカーなどにも予防効果があるといわれています。
2つ目としては、痛みの情報を脳に伝えるメカニズムにあります。身体に何らかの痛み刺激が加わると、その情報が脳に届いてはじめて痛みを感じます。
身体が受けた痛みの情報は、まずは脊髄に伝えられます。そこから次の神経にバトンタッチして、一気に脳に伝えられます。ですが、状況によっては痛いなどと感じていられない場合もあります。このような時に備えて、ここのバトンタッチを調整する神経として「下行疼痛抑制系」という神経があります。
下行疼痛抑制系神経が働くと、このバトンタッチが抑えられます。この神経はセロトニンとノルアドレナリンの2つの物質で作用し、痛みを和らげるように働きます。
夢中で何かをしていたり、ピンチの時に痛みを感じない経験をされたことはありませんか?この時にはノルアドレナリンがドッと分泌されて、痛みを感じていないのです。我にかえってから急に痛みが襲ってきたりするのは、ノルアドレナリンがきれてきた証拠ですね。
レクサプロは、ノルアドレナリンに関する作用は少ないですがセロトニンを増やす作用が強いです。このため、頭痛の予防効果につながると考えられます。
3.薬だけでない頭痛の原因
薬の副作用かを判断するには、「レクサプロと頭痛の関係はどれくらいあるのか」が重要です。
薬の副作用としての頭痛だけでなくて、頭痛が起こる原因はたくさんあります。これを見分けるのは、なかなか難しいです。まずは、本当に薬の副作用なのかを考えなければいけません。抗うつ薬は頭痛を予防する効果もありますし、精神症状からくる頭痛だとしたら、薬のおかげでマシになっている可能性もあるのです。そのためには、レクサプロと頭痛の変化に関係があるのかどうかが重要です。
- 頭痛はいつから始まったのか?
- どのような特徴があるのか?
- どういう時におこるのか?
などをメモしておきましょう。頭痛ダイアリー(PDF エーザイ株式会社より)などを使うと便利です。
それでは、レクサプロ以外で起こる頭痛の原因を考えていきましょう。
もちろん、身体疾患も考えられます。危険な頭痛も頭に入れておかなければいけません。くも膜下出血や脳腫瘍などの脳血管障害、緑内障発作、髄膜炎などは、ほっておくとマズイです。これらの病気を疑うような頭痛以外の症状があれば、気を付けなければいけません。また、帯状疱疹も頭痛の原因となることがあります。できものがないかを確認しなければいけません。
頭痛が精神的な症状であることもあります。多くの精神疾患では、セロトニンやノルアドレナリンが少なくなっているので、頭痛が認められます。セロトニンやノルアドレナリンは、痛みの情報の伝達を抑える働きをします。上述しました「下行疼痛抑制系」の働きが弱くなってしまうので、頭痛が起こりやすいのだと考えられています。
うつ病でみてみると、およそ6割の患者さんが何らかの痛みを感じています。頭痛はその中でも多く、3人に1人くらいはいるでしょうか。鈍い痛みを訴える方が多いです。
これらが当てはまらない場合、片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛といった一次性頭痛を考えていきます。一次性頭痛とは何かというと、基礎疾患のない慢性頭痛のことです。はっきりした原因はないのだけれども、頭痛が続くような状態です。頭痛の性質によって、原因を推測し治療していきます。
一次性頭痛と精神疾患の関係は深いといわれていて、きっちりと見分けるのは難しいことも多いです。「一次性頭痛がある方は精神疾患にかかりやすい」という報告もあるので、合併することも多いです。
最後に忘れてはいけない原因として、鎮痛薬の乱用があります。頭痛がするからといって、「痛み止め」をしょっちゅう服用するようになると、それが原因で頭痛になってしまうことがあります。これを薬物乱用性頭痛といいます。女性の方は、生理で「痛み止め」を使うことに慣れていることが多いです。そのせいで薬物乱用性頭痛になっている方は多いです。
4.レクサプロと他の抗うつ薬の比較
SSRIやSNRIでは比較的多く、レクサプロは他のSSRIと同様で10%程度の方にみられます。
頭痛の副作用はどれくらいあるのでしょうか?各抗うつ剤について、インタビューフォームという薬の詳しい説明書から、頭痛の副作用の頻度をみてまとめました。
これをみると、古い三環系抗うつ薬よりも、SSRIやSNRIといった新しい抗うつ薬の方が頭痛の頻度が高いことがわかります。
三環系抗うつ薬は、いろいろな受容体に作用するので一般的に副作用が多いです。ですが、頭痛の副作用の報告が少ないということは、頭痛の原因が脳内の物質のアンバランスさにあることを意味しているのかもしれません。セロトニン・ノルアドレナリンなどの物質だけが異常に増加することが問題なのだと考えられます。
SNRIのサインバルタで多いことが興味深いです。サインバルタは「痛みに効く」として、よく慢性的な痛みに使われます。線維筋痛症という痛みの強い自己免疫疾患にも使われるお薬です。このサインバルタでは、副作用としての頭痛の報告が21%と抜きんでて多いです。
SSRIは全体的には大差がなく、どのSSRIも10%程度の報告となっています。レクサプロも10,2%と報告されています。特段に副作用が大きいわけではありません。
5.頭痛の対策
レクサプロの副作用としての頭痛で悩んだときは、どのようにすればよいでしょうか?
離脱症状が考えられる場合は、
レクサプロの離脱症状と5つの対策
をお読みください。
5-1.様子を見る
ガマンできるならば、1~2週間様子をみると慣れることが多いです。
レクサプロを飲みはじめた時に頭痛がみられることが多いです。身体がお薬に慣れてくると、少しずつ頭痛が和らいでいきます。ですから、ガマンできるならば様子をみていくようにしましょう。
レクサプロを増量した時に頭痛がみられるときも、同じように考えていただいて問題ありません。減量した時では離脱症状として考えていきましょう。
5-2.痛み止めを使う
レクサプロに慣れるまでは痛み止めでしのぐのも方法です。
レクサプロの頭痛は、薬に慣れるまでの間であることが多いです。ですから、この期間だけ「痛み止め」でしのげばよいですね。レクサプロは副作用が全体的に少ないお薬なので、できるならば効果がでてくるまでは使っていただきたいお薬です。ですから、現実的にはこの方法が一番よくとられます。
痛み止めとしては、カロナールをまずは試してみます。カロナールは、慢性疼痛の方にも使うお薬で、身体に負担が少なく、また薬剤乱用性頭痛にもつながりません。ですが、効果としてはマイルドです。このため、痛みが強い方にはロキソニンを使います。これでもダメならボルタレンを使います。ロキソニンやボルタレンは、胃腸を痛めますし、腎臓にも負担の大きな薬です。また、慢性的に使用すると薬物乱用性頭痛につながりますので、できるだけガマンする意識をもって使ってください。
1か月ほどたっても頭痛が治まらないようでしたら、薬以外の理由も含めて、頭痛の原因を再考した方がよいです。
5-3.増量のペースを緩める
少しずつ増やして、身体に慣れる時間を稼ぎましょう。
レクサプロを増量している時に頭痛がみられたときは、そのペースを緩めることもひとつの方法です。10mg増やしたのでしたら、半分に割って5mgずつ増量してくようにしましょう。変化が小さくなれば、身体がレクサプロに慣れる時間を稼げます。
5-4.寝る前に服用する
寝ている間に頭痛をやりすごしましょう。
レクサプロを飲み始めてしばらく頭痛が起こる方には良い方法かもしれません。頭痛が起こるのを睡眠中にもってきてしまいましょう。朝起きたらスッキリしていることもあります。
ですが、レクサプロは不眠の副作用があります。不眠傾向であったり、薬の飲み方を変えて寝れなくなってしまったら、すぐに戻してください。
5-5.抗うつ剤を変更する
かならず主治医に相談しましょう。
レクサプロは副作用が全体的に少ないお薬ですので、できるならば使い続けていただきたいです。ですが、どうしてもレクサプロが合わないと感じてしまう場合は、他の抗うつ剤に切り替えるのも方法です。SSRIはどれも同じように頭痛の副作用が10%程度みられます。ですが、同じ系統のお薬であっても、相性があります。全く頭痛を感じない方もいらっしゃいます。ですから、副作用がレクサプロと同じように少ないジェイゾロフトに変更してもよいかもしれません。
必ず主治医に相談してください。
まとめ
セロトニンの作用による頭痛と離脱症状による頭痛があります。
セロトニンの作用が安定すると、抗うつ薬には頭痛予防効果があります。
頭痛の原因としては、
①身体疾患によるもの
②精神症状によるもの
③一次性頭痛(片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛)
④薬物乱用性頭痛
などがあります。薬の副作用かを判断するには、「レクサプロと頭痛の関係はどれくらいあるのか」が重要です。
SSRIやSNRIでは比較的多く、レクサプロは他のSSRIと同様で10.2%の方にみられます。
頭痛の対策としては、以下があげられます。
- 様子を見る
- 痛み止めを使う
- 増量のペースを緩める
- 寝る前に服用する
- 抗うつ剤を変更する
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