ビソルボン吸入液の副作用と安全性
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
ビソルボン吸入液はネバネバした痰をサラサラにしたうえで、痰の分泌を増やして出しやすくするお薬です。ビソルボン吸入液は、ネブライザーという機械を使用して吸入するお薬になります。
幅広い効果に加えて、ビソルボン吸入液はほとんど副作用がありません。さらに絶対に使えない病気もありませんし、飲み合わせに注意するお薬がないのもビソルボン吸入液の特徴的です。
そのためビソルボン吸入液は、妊婦・授乳中・高齢者など多くの場合に使用されるお薬です。一方で小児にはデータが少ないため積極的に勧められていません。ここではビソルボン吸入液がどれくらい安全か確認していきましょう。
1.ビソルボン吸入液の副作用は?
ビソルボン吸入液は、ほとんど副作用がないお薬です。
ビソルボン吸入液の添付文章では7,610例中副作用が報告されたのは30例(0.39%)でした。主な副作用は、
- 嘔気11件(0.14%)
- 咳嗽6件(0.08%)
- 咽頭痛6件(0.08%)
- 呼吸困難5件(0.07%)
となっています。最も多い嘔気でも0.14%と、非常に確率が低いです。そしてこの嘔気は、ビソルボンの作用機序というよりは吸入薬で一定にみられる反応です。どんなお薬でも、吸入し続けることで気持ち悪くなってしまう方はいらっしゃいます。
しかしこれらの副作用は、吸入をやめればほとんどが改善されます。他の副作用である咳嗽や呼吸困難、咽頭痛に関しても、吸入薬をネブライザーで吸う時に認める副作用です。また咳や息苦しさなどは、病気によるものかもしれません。
そのため、ビソルボン吸入液の副作用を過度に心配する必要は少ないです。
2.ビソルボン吸入液が吸入できない人は?
ビソルボン吸入液が吸入できない人は、ビソルボン吸入液にアレルギーがある人のみです。ただし痰がサラサラな人、アスピリン喘息の人は注意が必要です。
ビソルボン吸入液の添付文章では、禁忌にあたる人はビソルボン吸入液にアレルギーがある方のみとなっています。これはビソルボン吸入液に限らず、全ての薬に対していえることです。アレルギー反応として最も多いのが、皮疹などの皮膚障害です。
先ほどの副作用の話に戻りますが、ビソルボン吸入液の副作用として最も多いのがアレルギー症状といえます。しかしこのアレルギー症状も、ほとんどの場合が軽度の皮疹になります。ただし一度アレルギーが出た人に再び投与すると、もっとひどいアレルギーが出るため基本的に禁忌になります。
また、ビソルボン吸入液は一緒に飲んではいけないお薬もなければ、一緒に飲むことで効果が減弱したり強くなったりということもないお薬です。
ただしビソルボンのネブライザーを吸入する時に気を付けなければいけないのが、そもそも痰の性状がネバネバしているかどうかです。ビソルボンのネブライザーは、ネバネバした痰をサラサラにする効果があるお薬です。
そのため、もともとサラサラした痰が大量に出る人は、ビソルボンのネブライザーを吸入すると意味がないばかりか、病状が悪化することがあるので注意が必要です。特にネブライザーの吸入する病気で最も注意が必要なのが喘息です。
実は喘息は、ビソルボンで改善することもあれば、逆に悪化することもあります。特にアスピリン喘息と言った特殊な喘息は、ビソルボンを吸うことで喘息発作をさらに悪化するとされています。病院によっては喘息発作にお決まりで
などのβ2刺激薬(気管支を拡げるお薬)とともに、ビソルボン吸入液を混ぜるところも多いです。喘息でも、
- 痰自体があまりない
- 痰がサラサラしている
- アスピリン喘息だ
などの人は、事前にネブライザーを吸う前に伝えた方が良いかもしれません。β2刺激薬とビソルボンを一緒に吸入すると、さらに喘息が悪くなるということがあります。
3.ビソルボン吸入液は高齢者・小児・妊婦の方に処方して良いの?
基本的にどの方も禁忌ではありません。ただし小児や妊婦の方は注意が必要です。
ビソルボン吸入液は高齢者に関しては添付文章では、一般に高齢者では生理機能が低下しているので減量するなど注意することと記載されています。
しかしビソルボン吸入液は、安全性が高いお薬です。ビソルボン吸入液を処方するような痰がでている方は、痰を出す力が弱っている高齢者が少なくありません。若い方より不快感が強くなるため、実際の医療現場では、高齢者でもほとんどが通常量処方されていることが多いです。
ただビソルボン吸入液は、小児に適応がありません。これだけ副作用が少ないのになぜ小児に適応がないのか、不思議に思う人がいるかもしれません。これは小児に対して、ビソルボン吸入液が危険だからではありません。小児に対して安全性を確認したデータが存在しないからです。
一方で小児に対して、ネブライザーで投与可能な痰切りのお薬は少ないです。内服薬ではムコダインがあります。ムコダインは鼻水などにも適応があるため、小児にも非常に使いやすいお薬です。
一方でムコダインには、ネブライザーはありません。そのため、吐き気も併発しているような小児に痰切りのお薬を投与する場合は、ビソルボン吸入液などで投与することになります。ただしこの場合も、先ほどの喘息の方は注意してください。サラサラな痰な場合、病態がさらに悪化することがあります。
また、妊婦の方も適応になります。添付文章では、
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること.〔妊婦に対しての安全性は確立されていない.〕
と記載されています。実際に妊娠中に安全が確立されているお薬は痰切りに限らずほとんどありません。そのため、ビソルボン吸入液を妊婦に対して躊躇する理由は少ないです。
一方でビソルボン吸入液は痰を出しやすくするお薬であり、痰がでる原因を治す治療薬ではありません。そのため軽症な方は、あえてビソルボン吸入液を吸入する必要はないと思います。
まとめ
- ビソルボン吸入液は、副作用が少ないお薬です。最も多いといわれている嘔気も、どのネブライザー吸入薬でおこる副作用です。
- ビソルボン吸入液は、どのような病気の人でも吸入薬です。ただし痰がサラサラな人は注意が必要です。また喘息の人も注意が必要です。
- ビソルボン吸入液は、飲み合わせが問題ないお薬です。
- ビソルボン吸入液は小児では安全性の試験が実施されていません。ただしネブライザー吸入可能な痰切りのお薬で安全性が確認されているものはないため、場合によっては小児に吸入させることもあります。
- ビソルボン吸入液は妊娠中や授乳中の方は、安全性の試験が示されていないため注意が必要と添付文章では記載されています。
投稿者プロフィール
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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