アンブロキソール錠・シロップ・カプセルの効果と特徴

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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アンブロキソールは、1984年に発売されたムコソルバンのジェネリック医薬品の去痰薬です。

アンブロキソールは表面活性物質を増やし、気道粘膜の滑りをよくします。また、痰の粘りをとり、さらに線毛運動を活発にすることで痰を出しやすくするお薬です。綺麗にするのは気道の粘膜だけではなく、鼻の粘膜も綺麗にするため、副鼻腔炎にも使用されます。

副作用も少なく小児や高齢者にも安全に使用されるお薬のため、痰が絡んだり、鼻水が出るといった人にはまずアンブロキソールを処方する医師も多いです。注意しなければならないのは、アンブロキソールはあくまでも痰を出しやすくするお薬であり、痰がでる原因の疾患を治すわけではありません。

そのためアンブロキソールを飲み続けないと痰が出続ける人は、レントゲン等でしっかりと原因を特定する必要があります。ここでは、アンブロキソールの効果と特徴についてみていきましょう。

 

1.アンブロキソールのメリット・デメリットは?

<メリット>

  • サーファクタントを増やし気道の滑りをよくする作用もある
  • 痰の成分を整えて出しやすくする
  • 鼻腔を綺麗にする作用もある
  • 副作用が少なく安全性が高い
  • 剤型が豊富で、小児にも使い勝手が良い

<デメリット>

  • 痰や鼻水の原因疾患を治すわけではない
  • 膿になった場合効果が弱い

アンブロキソールは痰切りとして多く処方されているお薬です。痰切りの効果としては、

  1. サーファクタント(表面活性物質)を増やし、気道粘膜の滑りをよくします。
  2. 痰の性状を変え、出しやすくする
  3. 気道の繊毛運動を促し、痰を外に出しやすくする。

という3つの効果を示します。この中で特徴的なのが、①のサーファクタントを増やす効果です。これはアンブロキソールに特有の効果です。痰の性状を変えても、痰を滑り出す気道がベタベタだとなかなか痰がでてきません。アンブロキソールは、表面活性物質が増えることで気道がツルツルになります。そのため痰が滑り出しやすくなるのです。

さらにアンブロキソールは気道だけではなく、鼻腔にも作用します。具体的には、

  • 鼻腔の繊毛の働きも促し、鼻水を出しやすくする
  • 鼻水の性状を変えだしやすくする。

など鼻の繊毛の働きも促します。実は、上気道(鼻・耳・口腔)と下気道(気管支・肺)は一つの管でつながっており、どの部位も同じような構造をしています。

そのため気道の繊毛が働くことは、鼻や耳の繊毛も一緒に働くことにつながるのです。このため肺の病気だけじゃなく、副鼻腔炎にもアンブロキソールは適応になります。(1日1回で効果があるアンブロキソールLは適応外)

これほど広範囲に効果を示すアンブロキソールですが、安全性も高いお薬です。実際に副作用もほとんどないですし、使用できない病気や飲み合わせが悪いお薬もありません。そのため、小児からご高齢の方まで幅広く使われているのがアンブロキソールです。

 

一方で、デメリットもあります。一番の問題は、アンブロキソールは痰や気道の状態を調整して外に出しやすくする効果しかないということです。つまりアンブロキソールは、痰がでる原因自体を治療するお薬ではありません。

アンブロキソールはあくまでも対処療法にすぎません。そのため原因疾患が特定されないまま使用し続けると、思わぬ病気が隠れていることもあります。

またアンブロキソールは、繊毛を動かして掃除をするお薬です。そのため、さらさらした痰や鼻水ですと外に出しやすいですが、泥のようになった膿はドロドロしてしまって繊毛は全く外に出せません。アンブロキソール含めて膿に対しては、内服薬でコントロールするのは非常に難しいです。

場合によっては、手術などで膿自体を取り除く必要があります。様々な病気に効果があり、副作用も少ないのがアンブロキソールのメリットです。しかしそれに甘えてアンブロキソールに頼り続けていると、思わぬ落とし穴に落ちてしまう場合もあるため注意しましょう。

 

2.アンブロキソールの適応と用量は?

アンブロキソールは肺の病気だけでなく、鼻の病気にも適応があります。アンブロキソールは、1日3回内服することで効果を発揮します。

アンブロキソールの剤型は、

  • アンブロキソール塩酸塩錠 15mg
  • アンブロキソール塩酸塩細粒 1.5%
  • アンブロキソール塩酸塩徐放カプセル 45mg
  • アンブロキソール塩酸塩徐放OD錠45mg
  • アンブロキソール塩酸塩シロップ小児用0.3%
  • アンブロキソール塩酸塩内用液0.3%
  • アンブロキソール塩酸塩内用液0.75%

と複数の種類があります。錠剤やカプセルだけでなくシロップもあるため、小児にも投与しやすいお薬となっています。さらにアンブロキソールは1日3回内服するアンブロキソール錠だけでなく、1日1回内服すれば効果が長持ちするアンブロキソール塩酸塩徐放カプセルや錠剤も発売されています。

適応疾患としては、

  1. 急性気管支炎、気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核、塵肺症、手術後の喀痰喀出困難の去痰
  2. 慢性副鼻腔炎の排膿

です。ここで注意が必要なのは、これらの疾患の治療ではないことです。①に去痰と書かれているように、アンブロキソールは痰を除去するのみの薬です。風邪なら自然に治るのでアンブロキソールで様子をみていてよいのですが、

  • 気管支喘息
  • 気管支拡張症
  • 肺結核

は適切な治療をしたうえでアンブロキソールを飲む必要があるので、注意しましょう。また②・③は、あくまでさらさらした液体の場合のみ適応になります。ネバネバした膿になった場合は効力がありません。医師に何らかの処置をすすめられた場合、アンブロキソールで様子をみるなどはしないようにしましょう。また小児用のアンブロキソールシロップの適応は、

  • 急性気管支炎、気管支喘息の去痰 

となっています。これは小児の場合は肺結核に効かないというわけではなく、肺結核や気管支拡張症など小児は稀のため十分な症例が集まらなかったからです。基本的には小児の場合も原因というよりは、痰が出ればとりあえず痰切りとして処方することが多いです。

投与量ですが、

  • 【アンブロキソール錠剤】
    通常、成人には1回1錠(アンブロキソール塩酸塩として15.0mg)を1日3回経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。
  • 【アンブロキソール内用液】
    通常、成人には1回0.5g(アンブロキソール塩酸塩として15.0mg)を1日3回用時溶解して経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。
  • 【小児用シロップ】
    通常、幼・小児に1日0.3mL/kg(アンブロキソール塩酸塩として0.9mg/kg)を3回に分けて経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。
  • 【アンブロキソール徐放製剤】
    通常、成人には1回1カプセル(アンブロキソール塩酸塩として45mg)を1日1回経口投与する。

となっています。注意が必要なのは、普通のアンブロキソール錠ですと3回内服ですが、アンブロキソール徐放製剤は1回の内服で効果が持続することです。

アンブロキソール錠は最高血中濃度は1~4時間です。半減期は6時間以内で、1日3回内服が必要になります。一方でアンブロキソール徐放製剤は、最高血中濃度は4~10時間です。また半減期は13.3時間と長いため、1日1回の内服が可能となっています。

しかし個人差も大きいため、アンブロキソール徐放製剤で1日持続しない場合はアンブロキソールで1日3回の内服へ切り替えてもよいかもしれません。またアンブロキソール徐放製剤は、夕食後に内服すると夜間の症状が軽減します。

喀痰の症状で最もつらいのが、痰が多くて寝れないことです。このように夜寝れない方は、アンブロキソール徐放製剤は夕食後の内服が勧められています。

 

3.アンブロキソールの薬価は?

アンブロキソールは、ムコソルバンのジェネリック医薬品です。

次に、アンブロキソールの薬価です。ジェネリック医薬品のアンブロキソールの薬価を確認する前に。先発品のムコソルバンの薬価をまず見てみましょう。

  剤型 薬価 3割負担
ムコソルバン錠 15mg 17.8円 5.3円
ムコソルバン内用液 0.75% 24.3円 7.3円
ムコソルバンDS 3% 76.1円 22.8円
小児用ムコソルバンシロップ 0.3% 10.3円 3.1円
小児用ムコソルバンDS 1.5% 40.5円 12.2円
ムコソルバンL錠 45mg 62.3円 18.7円
ムコソルバンLカプセル 45mg 62.3円 18.7円

※2016年12月25日の薬価です。

となっています。ジェネリック医薬品のアンブロキソールの薬価ですが、

  剤型 薬価 3割負担
アンブロキソール錠 15mg 5.6円 1.7円
アンブロキソール徐放カプセル 45mg 33.7円 10.1円
アンブロキソール徐放OD錠 45mg 27.3円 8.2円
アンブロキソール小児用 0.3% 5.1円 1.5円
アンブロキソール内用液 0.3% 9.4円 2.8円
アンブロキソール内用液 0.75% 5.5円 1.7円

※2016年12月25日の薬価です。

となっています。剤型によって大きく違いがあります。またアンブロキソールは、多くの製薬会社が発売しています。そのため、上記の薬価と若干違う場合もあるので注意が必要です。

 

4.ムコソルバンとアンブロキソールの効果と副作用の比較

先発品・ジェネリックの効果と副作用は、大きな違いはないと考えられます。

多くの方が気になるのは、先発品のムコソルバンとジェネリック医薬品のアンブロキソールで効果と副作用が同じかどうかだと思います。

ジェネリック医薬品では、有効成分は先発品とまったく同じものを使っています。ですから、効果や副作用の大まかな特徴は同じになります。先発品とジェネリック医薬品の違いは、薬を作るときの製造技術です。ジェネリック医薬品を作る時に求められるのは、薬の吸収・排泄と安定性の2つが先発品と同等であることです。

実際に先発品のムコソルバンとアンブロキソールは主成分は全く同じです。

ジェネリック医薬品について詳しく知りたい方は、「ジェネリック医薬品の問題点とは?ジェネリックの効果と副作用」をお読みください。

 

5.アンブロキソールが向いてる人は?

<向いてる人>

  • 風邪で一過性に痰がでている人
  • 原因疾患が分かっていてアンブロキソールで痰がコントロールできている人

アンブロキソールは、主に痰切りに使用するお薬です。

そもそも痰とは、正常な人にも作られています。気管支などにある杯細胞などから粘液物がでてきて、肺の中を綺麗にしています。杯細胞が出した粘液物をゴミとしてまとめたのが痰になります。

実は痰として肺や咽頭で作られたゴミは、少ない場合は食道の方に落ちていきます。食道は胃につながっているため全く問題になりません。ただしこの痰の量が増えて咽頭から口に溜まる場合が、喀痰として症状となって表れます。

喀痰の原因は、

  1. 異物が体に入ってきたのを粘液物で絡めとって外に出す防御反応
  2. 気管支や咽頭のどこかから粘液物が漏れ出ている

このように2つあります。風邪などでばい菌を外に出そうとするのが①になります。ただし①でも、

などが喀痰の原因の場合は、アンブロキソールを飲み続けても一時的に症状は改善しますが一向に良くなりません。むしろ場合によっては、どんどん悪化してしまいます。また、②の粘液物が漏れ出ている場合は、どこから漏れ出ているのかすぐに確認する必要があります。場合によっては、

  • 肺癌
  • 気管支拡張症
  • グッドパスチャー症候群

などの病気が隠れていることがあります。喀痰について詳しく知りたい方は、「痰はどうして出るのか?喀痰の原因と病気の見分け方」を参照してみてください。

さらにアンブロキソールは広範囲に効果を発揮するお薬ですが、効力自体は強くありません。イメージとしては、ほうきで埃やチリをお掃除しているものだと思ってください。

ベタベタしたどろ状のものだと、ほうきでは掃くことは難しいですね。このベタベタとどろ状のものが膿です。痰や鼻水もネバネバ程度であればアンブロキソールでも対応できますが、ベタベタとどろ状のものであると効力はあまり発揮できません。

膿までいくと基本的には薬ではどうすることもできないので、

  • 膿胸などの胸腔の膿はドレナージ(管をいれる)や手術で取り除きます
  • 副鼻腔炎の膿も手術で取り除きます

などの侵襲的な処置で取り除く必要が出てきます。手術というと、痛いし嫌だと思う人もいるかもしれません。しかし効力のないアンブロキソールで治療していても意味がないばかりか、どんどん状態が悪化してしまいます。そのためアンブロキソールが効かない人は、すぐに病院を再受診してみてもらうようにしましょう。

このような背景を踏まえたうえで、アンブロキソールはどのような人に向いてるのか考えてみましょう。一番良いのは、風邪などで一時的に痰がでている人です。

風邪などは安静に加療していれば、基本的に風邪は良くなります。そのためアンブロキソールを内服して、痰による不快な症状を取りながら風邪を治すことができます。

また、病気がしっかりと診断されたうえでアンブロキソールを使うのも安心です。特にCOPDなどの病気では、痰を正常化することで病気の悪化が防げるといったデータもあることから、積極的に使用するように言われています。

ただし病名が分かってアンブロキソールを内服している人も、痰が増えてきたら注意が必要です。

  • 病気自体が悪くなっている
  • 他の病気がでてきている

の2つが考えられます。どちらか知るために、必ずアンブロキソールを処方してくれた医師に相談しましょう。

 

6.アンブロキソールの作用機序は?

アンブロキソールは気道の状態、痰の性質を改善して痰を出しやすくするお薬です。さらに気道だけではなく、鼻にも効果を示します。

痰切りの去痰剤などは色々なお薬が処方されています。その中でも色々なタイプがあります。大まかなタイプを下にまとめました。

種類 作用機序 代表薬
気道分泌
促進薬
気道の中のさらさらの痰を増やすことで、
気道を綺麗にする。
ビソルボン
気道粘液
溶解薬
ネバネバの痰をさらさらに変える。 ムコフィリン
気道粘液
修復薬
痰の粘液を整えて、
気道の繊毛の動きを活発にする。
ムコダイン
気道潤滑薬 気道内のサーファクタントを活発にして、
気道を掃除する。
アンブロキソール

この中で、アンブロキソールは気道粘液修復薬になります。最も特徴的なのがサーファクトを活発化する成分です。これによって、気道を滑りやすくします。

また痰の状態を整えて出しやすくする上に、繊毛で外に出す手助けまでしてくれます。さらにアンブロキソールは、気道にとどまらず鼻腔にも効果を示します。それぞれの細かい作用をみていきましょう。

 

6-1.気道内のサーファクタントを活発にすることで痰を滑りやすくする。

肺サーファクタントは我々の体内に分泌されている物質です。我々の肺は風船のような集まりだと思ってください。この風船の膜を構成するのがサーファクタントです。このサーファクタントがないと肺の表面張力が無くなり肺の風船がしぼんでしまいます。

アンブロキソールはこのサーファクタントの作用を活性化します。表面張力が上がると、肺の風船が広がるとともに、ツルツルします。さらに肺にとどまらず、気道の表面も潤滑されツルツルする作用があります。気道の表面が水分を含むことで痰も水気が増え滑りやすくなります。

痰が滑りやすくすることで痰を出しやすくする作用があります。これはアンブロキソール特有の作用です。

 

6-2.痰を正常化する

もう一つのアンブロキソールの作用ですが、気道に分泌される痰を正常化することで痰を排出しやすくする作用があります。アンブロキソールはブロムヘキシン(商品名:ビソルボン)の活性代謝物です。このビソルボンは痰の成分の一部である多糖類を分解することで、ネバネバをさらさらに変化させる作用があります。

アンブロキソールもこの作用があるため痰を正常化する作用が働きます。またアンチオキシダント作用といって抗酸化作用もあります。酸化を抑えることで、痰をさらに正常化します。

 

6-3.繊毛の動きを活発化して痰を出させる

気道や気管支の壁には、線毛と呼ばれる毛のようなものが付いています。この毛は常に動いており、肺の通り道をお掃除しています。ほうき(繊毛)で道の葉っぱ(痰)を掃くイメージをするとよいかもしれません。

さらにアンブロキソールは、気道粘膜の炎症を抑える作用もあります。これによって、気管壁に存在する線毛の活動性が上がるのです。

ただし繊毛はほうきなので、気道にへばりついた膿みたいのは掃除することができません。

 

6-4.鼻腔・副鼻腔をきれいにする

アンブロキソールは「去痰剤」というイメージが強く、肺疾患に最も多く使用されます。しかし実は鼻水にも効果があることが分かっています。

気管や鼻腔は、同じ空気の通り道です。そのため、どこかを境にいきなり構造が変わるといったことはなく、鼻腔・副鼻腔と気管は同じような構造をしています。

そのため、先ほどと同じように鼻水もムチンが含まれていますし、鼻の繊毛も気道と同じようにあります。アンブロキソールを内服すると気管支だけではなく、鼻にも効果を示します。

実際に鼻への効果は気管支同様に、

  • 鼻水の正常を整える
  • 鼻腔・副鼻腔の粘膜を修復する
  • 鼻腔・副鼻腔の線毛運動を活発化する

などの効果によって鼻汁の排泄を促したり、鼻閉を改善させます。特に、

  • 風邪
  • 副鼻腔炎

などのばい菌による鼻水は適応できる薬が少ないです。そのため風邪の鼻水は、アンブロキソールは良い適応になります。

 

まとめ

  • アンブロキソールはサーファクタントを活発化し、痰の正常を整え、繊毛運動を活発化することで痰を出しやすくするお薬です。
  • アンブロキソールは鼻水にも効果を示します。

<メリット>

  • サーファクタントを増やし気道の滑りをよくする作用もある
  • 痰の成分を整えて出しやすくする
  • 鼻腔を綺麗にする作用もある
  • 副作用が少なく安全性が高い
  • 剤型が豊富で、小児にも使い勝手が良い

<デメリット>

  • 痰や鼻水の原因疾患を治すわけではない
  • 膿になった場合効果が弱い

<向いてる人>

  • 風邪で一過性に痰がでている人
  • 原因疾患が分かっていてアンブロキソールで痰がコントロールできている人

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