リバロの副作用と安全性
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
リバロは、主に脂質異常症・高脂血症・高LDL血症といった病名に使用されるスタチン系のお薬です。リバロは悪玉コレステロール(LDL)を強力に下げるお薬のため、高LDL血症の第一選択薬として使用されます。
リバロはLDLコレステロールを下げる力が非常に強いですが、筋肉痛などの症状で起きる「横紋筋融解症」には注意が必要です。また肝機能障害がある人はリバロは減量が必要ですし、妊娠中の人には使用できません。
一方で現時点では、スタチン系でリバロだけが10歳以上の小児に使用できるお薬となっています。リバロ含めて脂質異常症の薬は、長い付き合いになることが多いです。
ここでは、リバロの副作用と安全性についてしっかりと確認していきましょう。
1.リバロの副作用について
リバロの副作用で最も注意が必要なのは、筋肉痛などの横紋筋融解症です。
リバロの添付文章では、886例中197例(22.2%)に副作用が認められています。自他覚症状の副作用は50例(5.6%)で、主な症状は
- 腹痛
- 発疹
- 倦怠感
- しびれ
- そう痒(かゆみ)
です。採血での異常値に関する副作用は167例(18.8%)で、主なものは
- γ-GTP上昇、
- 血清ALT(GPT)上昇
- 血清AST(GOT)上昇
- CK (CPK)上昇
でした。まずリバロは、HMG-CoA還元酵素阻害薬として肝臓に作用して効果を発揮するため、肝機能障害を起こすお薬です。その結果、
- γ-GTP上昇、
- 血清ALT(GPT)上昇
- 血清AST(GOT)上昇
が上昇しますし、肝機能障害として軽度の腹痛やだるさが認めることがあります。一方で肝機能障害はそこまで重篤化することは少ないですし、薬剤をやめれば多くは改善します。
リバロ含めてスタチン系の副作用として最も怖い副作用が、筋肉を溶かす横紋筋融解症です。筋肉が溶かされると、クレアチンキナーゼ(CK)という筋肉を構成する物質が血液内に増えます。その副作用がリバロでも認めます。横紋筋融解症の症状として、
- 筋肉痛
- 筋疲労
- 褐色尿
- 倦怠感
などが挙げられます。なお、横紋筋融解症や肝機能障害含めて、リバロの副作用は投与初期にみられることが多く、その多くは投与をやめることで回復します。そのため脂質異常症の改善の確認も含めて、リバロ内服中は採血で経過観察することが望まれます。
少なくともリバロを投与開始してから1か月から3か月の間に、一度は採血することが推奨されています。リバロなどのスタチン系の副作用の対策についてさらに詳しく知りたい方は、「クレストールで筋肉痛が出たら要注意?クレストールの副作用について」を一読してみてください。
2.リバロが使用できない疾患は?
リバロは、肝臓が悪い人は使用できません。
リバロが使用できない疾患は肝臓が悪い人です。リバロの添付文章でも、
重篤な肝障害又は胆道閉塞のある患者〔これらの患者では本剤の血漿中濃度が上昇し、副作用の発現頻度が増加するおそれがある。また、肝障害を悪化させるおそれがある。〕
と記載されています。実際に肝機能障害を表すスコアとして、Child-Pughスコアというものがあります。
- 腹水
- 肝性脳症
- ビリルビン値
- アルブミン値
- プロトビン活性値
これら5つの項目に対して、1点~3点ずつスコアでつけます。5項目×3点=15点が最高点で最も悪いのですが、添付文章ではChild-Pugh スコアが1~5点程度ですと、リバロの血中濃度が1.3倍、Child-Pughスコアが6~9点ですとリバロの血中濃度が2.7倍となります。
リバロの血中濃度が急激に上昇することは副作用も出やすく非常に危険なため、肝機能が悪い人には禁忌になっています。さらに重篤な肝機能障害じゃなくてもリバロは、軽度でも肝障害があればリバロを1日1mgから開始し、小児であれば最大1mg/日まで、成人であっても最大2mg/日までに留める必要があります。リバロは成人ですと最大4mgまで投与できるため、半分の量までしか投与できないことになります。
一方で、リバロを内服する脂質異常症の方の中には、
- アルコール性肝炎
- アルコール性肝硬変
- 脂肪肝
などの人がいます。このような方は脂質異常症も合併しやすいので、リバロを内服させたいところです。ただし肝臓の病気が軽度でなければ、
を徹底して肝機能を改善する必要があります。生活習慣を整えて肝臓の機能が改善してからではないと、リバロは使用できません。また、肝臓の病気が指摘された方は、リバロが処方されても肝機能が悪化した場合は中止になってしまいます。
そもそも脂質異常症の治療自体がお薬だけではなく、食事療法や運動療法が第一の柱になります。リバロを処方された方は肝臓が悪くなくても、一度生活習慣を見直してみることからはじめましょう。
3.リバロで飲み合わせが悪い薬は?
シクロスポリン・フィブラート系のお薬は併用できません。特に中性脂肪を下げるフィブラート系の薬を併用しないように注意しましょう。
リバロの添付文章では、シクロスポリン(サンディミュン・ネオーラル)は絶対禁忌となっています。シクロスポリンを投与されている患者さんにリバロを併用すると、シクロスポリンの血中濃度に影響はでませんでしたが、リバロの血中濃度が約7倍上昇したとの報告があるためです。シクロスポリンは、
- 膠原病(リウマチやSLE)
- 心臓や腎臓移植者
- 尋常性乾癬
- 再生不良性貧血
- 重症アトピー性皮膚炎
などに適応がある免疫抑制薬です。プレドニンなどのステロイドの効果が不良の時に、追加で加わるお薬です。そのためシクロスポリンが必要になった場合は、リバロの投与より優先されることがほとんどです。またシクロスポリンは非常に特殊なお薬なので、シクロスポリンとリバロの併用に気を付けるのは患者さんより処方する医師側になります。
患者さんで気をつけなければいけないのは、フィブラート系のお薬です。フィブラート系は、中性脂肪(TG)が高い時に使用される脂質異常症のお薬です。悪玉コレステロールも低下させますが、中性脂肪に対する効果がより強いとされています。代表的なお薬は、
- リピディル
- トライコア
- ベザトール
です。脂質異常症の人は、LDL・TG両方高い人も多いです。そういった人は、「リバロなどのスタチン系とフィブラート系の両方を使えば良いのでは?」と安易に考えがちです。しかしフィブラート系との併用に関しては、リバロの添付文章では、両方を同時に使用すると急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症があらわれやすいことから、原則禁忌となっています。特に腎機能が最初から悪い人には、ほぼ使用できません。
治療上やむを得ないと判断される場合にのみ、慎重に併用することと記載はされています。しかしリバロにも、フィブラート系ほどではないにしろ中性脂肪を低下する効果があります。またフィブラート系も、わずかながら悪玉コレステロールを低下する作用があります。
そのためLDL・TGの実際の値で、より重症な方を一つの薬で治療することからはじめることがほとんどです。両方の値が非常に高い場合は、まず悪玉コレステロール(LDL)を下げるためにリバロの方から処方します。
LDLは動脈硬化の原因となるプラークの元になるため、LDL高値は非常に危険なためです。動脈硬化について詳しく知りたい方は、「脂質異常症はどうして治療が必要?脂質異常症が引き起こす怖い病気とは?」を一読してみてください。
いずれにしろリバロを処方された方は、ダメなら次の薬があると安易に考えず、運動や食事療法をしっかりとしようという心構えが大切になります。
4.リバロは妊婦や授乳中の方に投与してよいの?
リバロは、妊婦・授乳中の方は禁忌になっています。
リバロは、妊婦の方には禁忌になっています。理由としては、添付文章ではラットに他のスタチン系のお薬を大量投与した場合に、胎児の骨格奇形が報告されています。さらにヒトでは、他のスタチン系のお薬で、妊娠3ヵ月までの間に服用したとき、胎児に先天性奇形があらわれたとの報告があるためです。
また授乳中の方も、
授乳中の婦人には投与しないこと。[ラットで乳汁中への移行が報告されている。]
という一文が記載されています。基本的にこの一文は他のお薬にもほとんど記載されていますが、リバロではあえて禁忌の一覧で授乳者が記載されています。他の薬では、あえて禁忌の一覧にまで授乳者を記載することは少ないです。
このことからも、リバロは妊婦や授乳中の方は内服しないようにしましょう。また妊娠を考えている方も、リバロは控えた方が安全でしょう。妊娠3か月までの間にスタチン系を内服したときに、胎児の骨格奇形が報告されているためです。
脂質異常症は、リバロを内服中止したら一気に悪くなって何か症状が出るものではありません。脂質異常症が悪くなって、徐々に動脈硬化が進行することで心筋梗塞や脳梗塞などの怖い病気につながります。これらを予防するために、リバロを内服します。
むしろ妊娠可能年齢に、リバロを内服していることが大問題です。20~40代から脂質異常症を指摘されている方は、食生活がかなり乱れており、暴飲暴食で肥満の方が多いです。妊娠するしないに関わらず、食事療法や運動を心がけるようにしましょう。
5.リバロとアルコールは内服して良いの?
リバロは肝機能が悪化すると使用できなくなるため、アルコールには注意が必要です。
リバロの添付文章には、アルコール中毒患者では、横紋筋融解症があらわれやすいとの報告がある記載されているため慎重投与になっています。アルコールを飲んでよいか気にされる方は、基本的に大量に飲む人が多いです。最初に記載したように、リバロは肝臓が悪くなると投与できないお薬です。
アルコール自体が、
- 肝機能を悪化する
- リバロとの併用で副作用が出やすくなる
- 脂質異常自体にも過剰摂取は良くない
とされているため、控えてもらいたいのが医師側の意見です。一方でリバロは、内服したら基本的には長期間内服することが多いです。数日だけ内服して一時的に脂質異常症を改善してもあまり意味はなく、持続することで動脈硬化を予防する必要があるためです。
リバロを長年飲んでる間、一滴もアルコールを飲んではいけないというのは難しい人も多いかと思います。アルコール自体は、少量であればHDLコレステロール(善玉コレステロール)を増加する働きがあります。そのため推奨されているアルコール量は、20~25gといわれています。これは1日量として、
- 日本酒1合(180ml)
- ビールなら中ビン1本(500ml)
- ウイスキーはダブルで1杯(60ml)
- ワイングラス2杯(200ml)
- 焼酎0.5合(90ml)
となっています。ただしアルコールは中性脂肪を増やすため、中性脂肪も高い人は飲んではいけません。そのためアルコールを飲んでよいかどうかは、
- 脂質異常症の状態
- 肝臓の状態
- 他の病気や飲んでるお薬の種類
などを含めて、一度医師に相談してみると良いかもしれません。基本的にはダメと言われるかもしれませんが、人によっては少量なら大丈夫な人もいるとは思います。ただしアルコールOKだからと言って大量に飲むと、容易に脂質異常症や肝機能障害が出てくることがあるので注意が必要です。また、採血などで定期的に精査することをお勧めします。
まとめ
- リバロは副作用として肝機能障害と横紋筋融解症に注意が必要です。
- リバロは、肝機能障害がある人には使用できません。
- リバロは、シクロスポリン・フィブラート系の飲み合わせは禁忌です。
- リバロは、妊婦及び授乳中の方には投与できません。
- リバロ内服中の方は基本的にアルコールは控えた方が良いです。どうしても飲みたい方は、一度自分の状態で飲んでよいか医師に相談してみましょう。
投稿者プロフィール
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
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