PL配合顆粒の副作用と安全性
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
PL配合顆粒は、風邪薬として感冒症状を認めた多くの患者さんに処方されています。風邪と言えば、PL配合顆粒といっても過言ではないくらい処方されています。
気軽に処方されているため安全性の高いお薬と言うイメージがありますが、実際にPL配合顆粒は副作用もあれば、安全性も色々気を付けなければいけないお薬です。PL配合顆粒は、4種類の成分が配合されています。具体的には、
- NSDAIDs
- アセトアミノフェン
- 抗ヒスタミン
- 無水カフェイン
の4種類が含まれています。4種類含まれているということは、4種類の成分の副作用と安全性について気を付けなければならないということになります。
ここでは、PL配合顆粒がどういったところに気を付ければ良いかみていきましょう。
1.PL配合顆粒に配合されている4種類のお薬について
PL配合顆粒は、NSAIDs・アセトアミノフェン・抗ヒスタミン・無水カフェインの4種類の成分が含まれた風邪薬です。
PL配合顆粒は成人用の1gに、
- サリチルアミド:270mg
- アセトアミノフェン:150mg
- プロメタジンメチレンジサリチル酸塩:13.5mg
- 無水カフェイン:60mg
の4つの成分が含まれています。
- サリチルアミド:NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)として、解熱・鎮痛作用を発揮します。
- アセトアミノフェン:NSAIDsとは違う機序の解熱鎮痛剤で、こちらも解熱・鎮痛作用を発揮します。
- プロメタジンメチレンジサリチル酸塩:抗ヒスタミン薬として、鼻水やくしゃみといった症状を緩和します。
- 無水カフェイン:脳を覚醒させる作用や疲労回復作用を発揮します。
しかしそれぞれ、気を付けるべき副作用や安全性が当然あります。詳しく知りたい方は、
- サリチルアミドのNSAIDsの副作用について知りたい方は、NSAIDs代表的な薬である「ロキソニンの副作用と安全性」をお読みください。
- アセトアミノフェンの副作用について知りたい方はアセトアミノフェンの代表的な薬である「カロナールの副作用と安全性」をお読みください。
- プロメタジンメチレンジサリチル酸塩の副作用について知りたい方は同じ第一世代の抗ヒスタミン薬である「ポララミンの副作用と安全性」をお読みください。
- カフェインはコーヒーなどにも含まれています。カフェインの取りすぎの副作用について知りたい方は、「カフェインのとりすぎは危険?カフェイン中毒とカフェイン離脱症状」をお読みください。
2.PL配合顆粒の副作用は?
PL配合顆粒の副作用は、眠気・口渇・胃腸障害があります。
それでは実際のPL配合顆粒の副作用についてみていきましょう。PL配合顆粒の添付文章では、評価対象例 976 例中、副作用は 89 例 (9.1%)に認められています。主なものは、
- 眠気
- 口渇
- 胃腸障害
でした。まず副作用として多いのが、抗ヒスタミン薬であるプロメタジンメチレンジサリチル酸塩の作用です。
抗ヒスタミン薬はヒスタミン受容体をブロックすることで、鼻水やくしゃみを抑制する効果を示します。しかしながらヒスタミンは、実は全身に色々なところで活躍しています。
脳では神経伝達物質として情報の橋渡しをしていますが、抗ヒスタミン薬によって脳での働きがブロックされてしまうと、中枢神経が抑制されて眠気が出現します。
また抗ヒスタミン薬は、抗コリン薬と似ている部分があります。このためアセチルコリン受容体をブロックしてしまい、便秘・口渇・尿閉といった抗コリン作用が起きることもあります。詳しく知りたい方は、「抗コリン薬の作用について」を一読してみてください。
PL配合顆粒の中でも、この抗ヒスタミン薬の作用は強く出てきます。風邪で体力がない時は、眠くなりやすいです。また、熱で汗をかけば喉も渇きます。これら眠気や口渇が全て、PL配合顆粒のせいとは言い切れません。また、抗ヒスタミン薬の副作用として言われてる尿閉は、前立腺肥大症の人で起きやすいです。
副作用の試験では前立腺肥大症の人は適応外のため外されますが、実臨床だと実は前立腺肥大症だったという人にPL配合顆粒が投与されることは多々あります。頻尿や尿が出にくくなったら注意してください。
また胃腸障害は、NSAIDsであるサリチルアミドの副作用です。これは、NSAIDsがアラキドン酸カスケードのCOXという物質を阻害するためです。COXは、1と2に分けられます。
- COX-1は胃粘膜、血小板などを含め多くの細胞に常に発現しており、痛みの症状とは無関係です。逆にCOX-1を邪魔することで胃が荒らされて胃潰瘍や十二指腸潰瘍になる副作用が出現します。
- COX-2は、体が炎症など種々の刺激を受けると、関連細胞で発現が増します。これが阻害されると、痛みや炎症を引き起こすサイトカインの産生が抑えられます。つまりNSAIDsは、COX-2に結合することで鎮痛作用を発揮するのです。
サリチルアミドは痛みの原因となるCOX-2を抑えると同時に、胃の粘膜を保護する物質も阻害してしまうため胃があれてしまうのです。このことが、結果として腹痛や嘔気につながります。
また、NSAIDsは主に腎臓で排泄されるため、漫然と服用していると、気が付かないうちに腎臓を傷めてしまうことがあります。こうなると腎機能障害が出てきます。
アセトアミノフェンは肝機能障害が出現することがありますが、PL配合顆粒を数日内服しただけで出現することは少ないです。
カフェイン中毒も同様にPL配合顆粒を数日内服しただけは起きません。PL配合顆粒には、コーヒー1杯分のカフェインが入ってます。1日3~4杯のコーヒーを数日摂取して副作用が起こるのは考えづらいです。
PL配合顆粒を何週間も内服すれば、上記の出現しづらい副作用も出てくる可能性があります。しかしPL配合顆粒を何週間も内服している状況が大問題です。
通常であれば感冒症状は、1週間以内に良くなることがほとんどです。そのため何週間もPL配合顆粒を内服し続けている人は、PL配合顆粒の副作用より、「本当にただの風邪?」かどうかを心配した方が良いです。
PL配合顆粒は症状を一時的に緩和する治療であって、病気を治す治療ではありません。何週間もPL配合顆粒を内服している人は採血、レントゲン含めて一度ただの風邪か他に病気があるか精査した方が良いです。
3.PL配合顆粒が内服できない人は?
消化性潰瘍・アスピリン喘息・緑内障・前立腺肥大の方は、基本的に使用できません。
PL配合顆粒は4種類のお薬が複合されているため、1種類のお薬でも使ってはいけない疾患があれば使用できません。具体的に添付文章をみてみると、
- 本剤の成分、サリチル酸製剤(アスピリン等)、フェノチアジ ン系化合物又はその類似化合物に対し過敏症の既往歴のある患者
- 消化性潰瘍のある患者[本剤中のサリチルアミドは消化性潰瘍を悪化させるおそれがある。]
- アスピリン喘息のある患者[本剤中のサリチ ルアミドはアスピリン喘息を誘発するおそれがある。]
- 昏睡状態の患者麻酔剤等の中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者[本剤中のプロメタジンメチレンジサリチル酸塩は、昏睡状態の増強・持続、中枢神 経抑制作用の増強や麻酔剤の作用時間の延長を来すおそれがある。]
- 緑内障の患者[本剤中のプロメタジンメチレンジサリチル酸塩は抗コリン作用を有し、緑内障を悪化させるおそれがあ る。]
- 前立腺肥大等下部尿路に閉塞性疾患のある患者[本剤中のプ ロメタジンメチレンジサリチル酸塩は抗コリン作用を有し、排尿困難を悪化させるおそれがある。]
- 重篤な肝障害のある患者[本剤中のアセトアミノフェンによ り肝障害が悪化するおそれがある。]
それぞれ見ていきましょう。まず②消化性潰瘍、③アスピリン喘息は、NSAIDsであるサリチルアミドの薬を使用することができません。
まず②消化性潰瘍ですが、実際に消化性潰瘍かどうかわからない方も多いです。何となく重たい鈍痛が腹部にある方は、もしかしたら胃潰瘍や十二指腸潰瘍があるかもしれません。その際は、PL配合顆粒は避けた方が無難です。
アスピリン喘息は、喘息の中でもかなり特殊な病態です。最近、アレルギー以外が原因となる喘息があることが分かってきました。実はこの非アレルギー性の喘息の方が、対策もしづらく難治性といわれています。アレルギーではないということは分かっているのですが、細かい機序までは解明できていないためです。アスピリン喘息は、この非アレルギー性の喘息のひとつになります。
アスピリン喘息について詳しく知りたい方は、「痛み止めで喘息に?アスピリン喘息の症状と特徴」を一読してみてください。アスピリン喘息の人にNSAIDsを使用すると喘息が悪化するため、PL配合顆粒も避けましょう。
⑤緑内障、⑥前立腺肥大症で使用できないのは、抗ヒスタミン薬であるプロメタジンメチレンジサリチル塩酸塩が含まれているためです。⑤緑内障は房水の通り道である隅角が狭くなることで、房水が排出ができなくなる病気です。
このことで視野がぼやけたり、視力が低下してしまいます。プロメタジンメチレンジサリチル塩酸塩は、この隅角をさらに狭める効果があるため、緑内障の方には使用できないことになっています。
⑥前立腺肥大症は、膀胱の下にある前立腺が肥大して尿道を圧迫し、排尿障害を起こす病気です。プロメタジンメチレンジサリチル塩酸塩膀胱の排出力を弱めるとともに、尿道を細く収縮し、尿の出を悪くする作用があります。前立腺自体を肥大する効果はありません。
緑内障が悪化すれば失明、前立腺肥大症が悪化して尿が出なくなれば尿毒症と、どちらも命の危険がある病気です。これらのリスクを考えると、PL配合顆粒は安易に内服してはいけないのです。
⑦重篤な肝障害のある患者とありますが、基本的に重篤な肝機能障害が出現した場合は入院で治療すると思います。少なくとも重篤な肝機能障害がある人が風邪になった場合、まず肝機能障害を治そうと思うのが通例ですので、こちらは過度に心配する必要はありません。ただし、アルコール性肝障害やB型・C型肝炎があって肝臓の状態が心配な人は、一度医師に相談してみると良いかもしれません。
4.PL配合顆粒とアルコールは一緒に摂取していいの?
PL配合顆粒は、アルコールと絶対に一緒に内服使用にしましょう。
風邪をひいたけど、断れない飲み会があるからPL配合顆粒を飲んで頑張ろうと思ってる人も中にはいらっしゃると思います。しかしPL配合顆粒とアルコールは、一緒に摂取してはいけません。添付文章でも、
- 慎重投与:アルコール多量常飲者[肝障害があらわれやすくなる。]
- アルコールとPL配合顆粒を内服すると、相互に中枢神経抑制作用を増強することがある。
など、PL配合顆粒とアルコールとの併用を警告する文章が並んでいます。まずPL配合顆粒に含まれているアセトアミノフェンですが、肝臓にダメージを与える可能性があるお薬です。PL配合顆粒単体で肝機能障害起きることはほとんどありませんが、普段からアルコールを飲んでいて肝機能障害が起きやすい状態の人は話が別です。
また、PL配合顆粒に含まれているプロメタジンメチレンジサリチル酸塩の抗ヒスタミン作用は、脳に一部作用します。脳に作用することで、先ほど副作用に記載した眠気が出現します。アルコールと一緒にPL配合顆粒を内服すると、眠気が強く出る(中枢抑制作用)可能性があります。
眠気とともに、酔いやすくなったりふらつきやすくなることも予想されます。そのため、PL配合顆粒を飲みながらお酒を飲むのは勧められません。そもそもPL顆粒自体、病気を治す治療ではなく、風邪症状を一時的に緩和する治療です。
風邪を治すためには安静加療が一番の治療です。風邪の治し方を詳しく知りたい方は、「風邪を早く治す方法とは?」を一読してみてください。
どうしても風邪だけど飲み会が断れない場合は、
- 飲み会がいけそうなくらい軽症であれば、PL配合顆粒を内服しない。
- アルコールは飲まない。
- なるべく早く帰宅して安静にする。
を意識してみてください。しかし安静でしないでいると悪化する可能性が高いのでお勧めはできません。
5.高齢者、小児、妊婦には使用できるの?
高齢者の方には慎重に投与する必要があります。2歳以下の小児には禁忌になっています。また妊婦の方は使用しない方が良いでしょう。
高齢者の方は、添付文章では、
一般に高齢者では生理機能が低下しているので減量するなど注 意すること。
と記載されています。一般的に高齢者の方は効果や副作用が強く出る可能性があります。特に高齢者の方は実際に指摘されていなくても、使用注意すべき疾患が隠れていることがあります。
- 前立腺肥大
- 緑内障
- 肝機能障害
- 腎機能障害
などになります。これらの病気がPL配合顆粒を使用して悪くなってから発見される場合もあるため、注意が必要です。また、風邪症状が乏しくても、重篤な病気が隠れている可能性があります。 PL配合顆粒を飲み続けて様子をみていたら、
- 結核
- 肺癌
- 咽頭膿瘍
など怖い病気だったということは多々あります。高齢者の方はPL配合顆粒を1週間内服しても良くならないのであれば、必ず精査した方が良いでしょう。
2歳以下の小児にはPL配合顆粒は禁忌となっています。理由としては海外で重篤な呼吸抑制が出たためとされています。幼児用のPL配合顆粒がありますが、あえて禁忌である2歳以下にどうしても使わなければいけないお薬ではありません。
2歳以下の方は、幼児用のPL配合顆粒ではなく、安全性の高いポンタールやカロナールなどで風邪症状である熱などを改善するようにしましょう。
妊婦の方も注意が必要です。PL配合顆粒の添付文章では、
妊婦(12週以内あるいは妊娠後期)又は妊娠している可能性の ある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される 場合にのみ投与すること。
と記載されており、禁忌とは記載されていません。しかしPL配合顆粒に含まれているNSAIDsの多くの添付文章では、妊娠後期にNSAIDsを内服しないように記載されています。NSAIDsはお腹の赤ちゃんへ血液を介して移行するため、「動脈管閉塞」が生じることが報告されています。
お腹の中にいる赤ちゃんは羊水の中にいるために、自分自身で息を吸ったり吐いたりすることができません。そのため赤ちゃんは、お母さんが吸った酸素をもらって体に酸素行き渡らせます。その酸素を運ぶ血液の経路ですが、心臓から出た血液の大半は動脈管を介して大動脈に流入して全身に行きます。
つまり心臓と体を結ぶ大切な血管が動脈管なのです。そこが閉塞すると、心臓から流出する血液が体に行き渡らなくなってしまい、非常に重篤な状態になります。NSAIDsはこの動脈管を塞いでしまいます。動脈管の働きが重要になるのが妊娠後期です。そのため、NSAIDsが含まれているPL配合顆粒もお勧めできません。
PL配合顆粒が発売されたのは1960年代です。その頃に比べて、現在は多くのお薬が登場しています。
は妊娠している方でも比較的安全に使用できると言われる解熱鎮痛薬です。このように配合するのではなく、個々の症状に対して個別に対応できるお薬を内服するのが一般的です。
まとめ
- PL配合顆粒はNSAIDs、アセトアミノフェン、抗ヒスタミン、カフェインの4種類の成分が配合されています。そのため様々な副作用や使用できない人も多いお薬です。
- PL配合顆粒は抗ヒスタミンの副作用である眠気、口渇、NSAIDsの副作用である胃腸障害が多いです。
- PL配合顆粒は前立腺肥大症、緑内障、消化管潰瘍、アスピリン喘息、重篤な肝機能障害には使用できません。
- PL配合顆粒はアルコールと一緒に摂取してはいけません。
- PL配合顆粒は高齢者、2歳以下の小児、妊娠の方には基本使用しない方が良いです。
投稿者プロフィール
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
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