パタノール点眼液の効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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パタノール(オロパタジン塩酸塩)は、第二世代抗ヒスタミン剤の点眼薬です。飲み薬のアレロックと同じ成分の目薬になります。

抗ヒスタミン薬とは、アレルギーのときに過剰に分泌されるヒスタミンをブロックすることで、アレルギー症状を抑える効果が期待できるお薬です。

目のアレルギー症状というと、難しくいえばアレルギー性結膜炎になります。さまざまな原因が考えられますが、花粉症が原因となることが非常に多いです。一般的にはパタノールは、花粉症に効く目薬と認識されていることが多いです。

花粉症の時期は目のかゆみが非常につらいです。これで目をかいたりしたら、角膜を傷つけてしまいます。飲み薬でも多少は効きますが、やはり目のかゆみに一番良いのは点眼薬です。

パタノールは、花粉症に使われる点眼薬としてはもっともよく処方されています。副作用はほとんど報告されておらず、安全に使用できます。ここではパタノール点眼液について、花粉症治療を中心にみていきましょう。

 

1.花粉で目がかゆくなる原因とは?

目からスギ花粉を外に出そうとする防御反応です。かゆくなることで目が潤されて、結果として花粉を目の外から追い出そうとします。

花粉症というのは体が花粉を敵と認識して外に出そうとする防御反応です。その防御反応は以下のようになります。

  1. 花粉(スギ)が体内に侵入。
  2. マクロファージ(体の中の警察官)が異物と認識して花粉を食べる。
  3. マクロファージがT細胞、そしてB細胞とバケツリレーのように花粉の情報を次々に渡す。
  4. 花粉が次に入ってきたときに撃退するために、B細胞がIgEという特殊な爆弾を作り、肥満細胞(体の中の爆弾保管庫)に保管しておく。
  5. 花粉が再び侵入した際に、肥満細胞は保管しておいたIgE爆弾が発射されて花粉にくっつく。
  6. IgEが爆発することをきっかけに、ヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質(ケミカルメディエーター)が放出される。

このヒスタミンが放った化学物質が結果として目を刺激して、かゆみや充血を生み出します。目のかゆみや充血が起こると、涙が出てきます。涙によって花粉を目の外に追い出そうとするのです。

こうして目に異常があることを知らせて、スギ花粉から体を守ろうとしているのです。

 

2.パタノールはどうやって効果が発現するの?

主に抗ヒスタミン薬として目に働きます。さらにケミカルメディエーター遊離抑制作用の効果もあり、予防の効果もあります。

パタノールの主成分はオロバタジン塩酸塩で、同じく花粉症対策に用いられるアレロック錠と同一の成分になり、第2世代の抗ヒスタミン薬になります。

ヒスタミンを阻害するということは、先ほどの説明でいうところの⑥の作用を邪魔します。④や⑤で出てくるIgEや肥満細胞を邪魔しても、すでにヒスタミンがたくさん作られた後では効果が期待しづらいです。速効性を求めるのであれば、直接目のかゆみを引き起こすヒスタミンをブロックする必要があります。

そのためパタノールは、アレルギー反応により放出されたヒスタミンの働きを邪魔し、ヒスタミンが引き起こすさまざまなアレルギー症状をおさえます。パタノールの作用機序は、ヒスタミンが結合するヒスタミンH1受容体を遮断することによります。

 

さらにパタノールには、もう一つの効果があります。それは、「ケミカルメディエーター遊離抑制作用」です。肥満細胞を安定化させて、結果として肥満細胞からのヒスタミンなどのケミカルメディエーターの遊離・放出をおさえる作用です。こちらはアレルギー作用機序の④・⑤で登場する肥満細胞が、IgEを発射するのを防ぐ効果があります。

同じタイプの点眼液にリボスチン(一般名:塩酸レボカバスチン)がありますが、これは抗ヒスタミン薬のみでケミカルメディエーター遊離抑制作用はないお薬です。

パタノールは抗ヒスタミンによる目のかゆみや充血を即効で抑える効果だけでなく、ケミカルメディエーターの遊離・放出をおさえる効果もあります。

 

3.パタノール点眼液の使用方法と注意点

パタノールは通常、1回1滴を1日4回、朝、昼、夕、寝る前に点眼します。

パタノールは速効性の効果があると同時に、予防にも使われています。毎年花粉症で目がかゆくなる人は、ニュースで花粉が飛び始めたという情報が流れたら、パタノールを事前に投与しておくのがよいかもしれません。もちろん、かゆくなってからでも抗ヒスタミン薬として速効性があるため、パタノールの効果は期待できます。

それでは、パタノールの点眼液はどのように使うのかみていきましょう。

パタノールを1滴点眼したあと、ゆっくりと目を閉じ、まばたきをしないで しばらく目を閉じていてください。この1滴で十分です。同時に2滴、3滴入れたから効果が倍増するわけではありません。

注意点としては点眼のとき、容器の先端が直接目に触れないように注意しましょう。また他の点眼薬と併用しているときは、点眼間隔を5分以上あけてください。

ソフトコンタクトレンズをしている場合はレンズをはずして点眼し、10分以上経過してからつけてください。パタノールの中には防腐剤としてベンザルコニウムが含まれています。このベンザルコニウムによりコンタクトレンズが傷つき、同時にコンタクトレンズに吸着して直接角膜を傷つけてしまいます。あまりにも頻回にコンタクトレンズをつけたままパタノールを使用すると、角膜剥離から視力低下につながることもあるので注意しましょう。

 

4.パタノールの副作用と安全性

副作用はほとんど報告がなく、小さなお子さんにも使われております。ただし安全だからといって、使用頻度を守らず連発すると目を傷つける原因となるので注意しましょう。妊婦の方には比較的安全に使われております。

パタノールの承認時の安全性評価では、対象例803例中、39例(4.9%)に副作用が認められました。

その中で最も多かったのが、目の痛み17件(2.1%)となっています。ただしこの中には、点眼の際に直接容器が目にあたり傷つけた例も含まれると考えられます。

それ以外の副作用は目立った報告はなく、このように非常に安全な点眼薬のため、花粉症に困ってるお子さんにも広く使われています。しかし安全だからといって、使用回数を超えてよいというものではありません。

点眼薬が目に落ちる際にはやはり刺激になります。その刺激で眼圧が上がり、結果として緑内障になるリスクはあります。特にコンタクトをすると、目の内部から外部へと水分が逃げずらくなりますから、眼圧はより上昇しやすくなります。そのためコンタクトを使用している方は特に注意しましょう。

さらにベンザルコニウムの防腐剤によって、直接角膜が傷つきます。通常の量では問題はありませんが、沢山点眼しベンザルコニウム濃度が上昇すると、安全域を超えてしまって角膜剥離のリスクが高まります。

今のところパタノールを健常者に長期使用して、視力障害を認めた例はありません。しかしながら糖尿病など目の病気になりやすい人もいますし、複数の点眼薬を使用することでベンザルコニウムが沢山投与されてしまう可能性もありますので、用法を守って使うようにしてください。

パタノールは、妊婦の方にも使用しやすいお薬です。パタノールの添付文章上は「妊婦中の投与による安全性は確立されておらず、妊婦の方は有益性を上回る場合にのみ使用すること」とありますが、この文言は安全とされているお薬にも決まり文句として書かれていますので、基本は安全とされています。

一方授乳中の人には、「パタノールの使用中は授乳は控えること」と記載されています。パタノール投与にて、動物実験で乳汁への移行が確認されたためです。点眼薬で投与されたパタノールが乳汁に移行するのはごくわずかだと思いますので、子供への影響はほとんどないでしょう。しかしながら記載されている以上は、何かあった時は自己責任になってしまいます。

 

5.パタノールの薬価とは?

パタノールは、自己負担3割の方で1本295円になります。1本でおよそ2週間分になります。

パタノールの薬価はどれくらいでしょうか?みてみましょう。

商品名 剤形 薬価
パタノール 点眼液0.1% 196.7円/ml

パタノールは2006年に発売されたお薬です。まだ発売から特許がきれていないため、ジェネリック医薬品は作られていません。

現在はパタノールは先発品のみの販売になります。パタノールの薬価は1mlあたり196.7円になります。目薬1本には5ml含まれていますので、1本あたりにすると983.5円となります。自己負担が3割の方では、1本あたり295円ほどになります。

目薬1本あると、実際にはどれくらい使えるのでしょうか?目薬1本(5ml)あたり、100滴ほどになります。ですから1日4回両目に使っていると、1本でおよそ2週間分となる計算です。

 

6.パタノール点眼液とアレジオン点眼液の比較

パタノールを投与してから5-10分後には、目のかゆみや充血がとれるとデータがでています。

パタノールの効果がどれ位あるのか?パタノールとともに、よく点眼薬として使われるアレジオン点眼液(エピナスチン点眼液)と比較したデータがあるのでご紹介します。

まず「目のかゆみ」からみていきましょう。全く痒みなし=0点、非常にかゆい=4点として、点眼する前のスコアからどのように下がっていくのかをみていきます。

パタノールとアレジオンの目のかゆみの比較

この結果からは、3分まではパタノール・アレジオンともに同じような結果ですが、5分からはパタノールの方が有意に効果ありとなっています。

次に目の結膜充血ですが、こちらも充血なし=0点、重篤な充血=4点として、点眼する前のスコアからどのように下がっていくのかをみていきます。

パタノールとアレジオンの結膜充血の変化を比較しました。

こちらも、パタノールの方が10分すると効果がしっかりと出ていて、その効果の強さにも分があります。これだけみるとパタノールの方が優れているようにみえます。

しかしパタノールの中には、今まで何度も記載したベンザルコニウムが含まれています。ベンザルコニウムは逆性石けんとして知られており、目薬の中でばい菌が繁殖しないように入っています。しかしながら角膜の細胞膜にもダメージを与え、角膜を傷つけてしまうのです。

特にコンタクトレンズはこのベンザルコニウムが吸着してしまって、より角膜を傷つけやすいです。添付文章にも、パタノールを使用する際にはコンタクトレンズを必ず外すように書かれています。しかしコンタクトレンズを付けてる人は、1日4回パタノールを使うたびに外さなければいけないのは大変かと思います。

一方でアレジオンはこのベンザルコニウムが一切入ってないため、コンタクトレンズを付けたままでも使用可能です。眼科の先生によっては、そもそもベンザルコニウムを長期投与すると健常者でも角膜が傷つくと報告されていることから、全例アレジオンを処方することもあります。(薬価はパタノールの倍以上しますが・・・)

 

7.パタノールを点眼しても効かない場合は?

パタノールで効果がないからといってどんどん増量したり、目をかいてしまわないようにしましょう。効果がない場合は内服薬を併用したり、場合によってはステロイド点眼薬を組み合わせましょう。

目のかゆみは軽症の人もいれば重症な人もいます。パタノールを点眼しても効果がないとき、どうすればよいのでしょうか?

パタノールを点眼すると、5分くらいで効果が発揮されます。続けて点眼しても効果は変わらないので、10分程度は様子を見ましょう。それでもかゆみがとれないといってパタノールを何度も追加したり、目をかいてしまわないようにしましょう。角膜を傷つけてしまう可能性があります。

まぶたの上から眼を圧迫して抑える人もいますが、これは危ないです。目の奥の網膜剥離が起こってしまうことがあり、こちらも失明につながります。効果がないからといって、目に物理的刺激を加えないように注意しましょう。

こういった重症な人は、前もってパタノールを点眼するようにしてみてください。目がかゆくなったらパタノールを使用するのではなく、朝起きて外出する前からパタノールを使っていくのです。パタノールには予防効果があるので、花粉が拡散する1週間前からの予防投与が勧められています。

それでもかゆい人は、抗アレルギー薬などの内服薬も使っていきましょう。抗ヒスタミン薬と併用することで効果が強まります。

さらに効果が不十分な方は、ステロイドの点眼薬を考慮します。ただし、ステロイド点眼薬は緑内障や白内障を引き起こすリスクもあります。決して目に良いお薬ではありませんが、それでも目をひっかくよりははるかに良いです。医師にしっかりと相談して使っていきましょう。

 

まとめ

  • パタノール点眼液は抗ヒスタミン作用とケミカル メディエーター遊離抑制作用を有しており、花粉症による目の痒みに対する即効性だけでなく、予防効果も兼ね備えてます。
  • 防腐剤としてベンザルコニウムが含まれているため、コンタクトレンズの方は必ず外してから点眼しましょう。
  • パタノールでも痒みが止まらない人は医師に相談しましょう。投与量をどんどん増やしたり、目をかいたりするのは目を傷つけてしまうので絶対にやめましょう。

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