病院で処方される漢方薬の効果とは?

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漢方は、何種類かの生薬で構成されています。生薬は自然界にある天然のものを使います。ですから、漢方薬は生薬の合剤といえるのです。

漢方薬は病院でもエキス剤を処方することができます。エキス剤は、ツムラやクラシエやコタローなどから発売されています。いずれも医療保険の適応をうけています。

これに対し、漢方を専門に治療をしている医院や漢方薬局では、煎じ薬といった形で生薬の配分や分量を患者さんの体質や症状ごとに変更することができます。しかしながら保険適応にはならないので、お金がかかります。

私は西洋医学の立場から、病院で漢方を使って治療しています。本物の漢方について偉そうに語れはしません。あくまで、病院で処方される漢方薬の効果についてお伝えしたいと思います。

 

1.病院の漢方薬の考え方

病院では症状から漢方薬を考え、患者さんの体質に「証」をあわせ、気血水のバランスの崩れを意識して処方します。

漢方というと中国4000年の歴史がつまった医学と思われている方も多いのですが、実は漢方は日本独自の医学なのです。漢方の起源は中国の古書にありますが、それを元に日本で育ってきた医学です。

西洋医学と東洋医学である漢方では、病気のとらえ方や治療が異なります。西洋医学では、症状や検査から原因をピンポイントで探っていきます。それに対し漢方では、身体が本来もっていたバランスを整えようとするのが漢方です。ですから、身体のバランスの崩れ方に注意します。

 

漢方には四診といって、独自の診察方法があります。漢方医は、身体をじっくり観察することによって病気の本質をつかみ、それを改善するような生薬を組み合わせて、煎じ薬として処方します。

それに対して病院では、ツムラやクラシエ、小太郎などの漢方メーカーが生薬を配合したものを、乾燥して粉末にしたものです。悪く言うとインスタントコーヒーのようなものかもしれません。ですが、保険適応になるというメリットがあります。

漢方を専門にしてるケースを除けば、ほとんどの病院では漢方は保険適応となるものの中から使っていきます。漢方の専門家のように四診をして細かくみていくことは、能力的にも時間的にもできません。

 

このため病院ではどのように漢方を使うのかというと、患者さんの症状から考えていくことが多いです。この症状にはこの漢方といった形で、詳しい医師は多くの選択肢を知っています。その上で患者さんの体質から証をあわせて、身体の全体的なバランスの崩れ方として気血水を考えていきます。

ですから病院では、あくまで西洋薬を軸に治療し、そのサポートとして漢方を用いていくことがほとんどになります。最近では、漢方にも科学的な検証がされるようになってきています。それぞれの漢方の身体への作用メカニズムがわかるようになってきています。将来的には、漢方の使い方や位置づけも変わってくるかもしれません。

 

2.漢方薬の効果の強み

漢方では、自然治癒が重要な病気とあいまいな病気に強みがあります。

西洋薬では動物実験や臨床試験によって、その薬の作用メカニズムがおおよそわかっています。不調の原因に対してピンポイントで薬の効果を期待して使っていきます。効果も副作用も、理屈で考えられる部分が大きいです。

しかしながら漢方薬では、西洋薬とは大きく異なります。長きにわたる経験に裏打ちされてはいるものの、その根拠がしっかりと検証されたわけではありません。そして、それぞれの生薬にはそれぞれの多彩な作用があり、漢方薬はその合剤なのです。効果がボヤっとしていることが、良くも悪くも漢方の特徴です。

漢方薬の強みのある病気としては、大きく2つあると感じます。

  • 自然治癒力が重要な病気
  • あいまいな病気

放置しても治るような自然治癒力が重要な病気、例えば風邪や急性胃腸炎といった病気に対して効果を発揮します。身体のバランスを整えるという発想で治療をしていくため、自然治癒力を高める方向にいくのです。

また、更年期障害や月経前緊張症、自律神経失調症や不定愁訴などに対して、漢方が強いです。あいまいさのある病気では、多彩な作用をもつ生薬の合剤である漢方と相性がいいのでしょう。

漢方薬は、西洋薬と比べるとプラセボ効果が高いという報告もあります。プラセボ効果とは、薬を飲んだという安心感からよくなる効果のことを指します。漢方の独特の苦味が、まさに「良薬は口に苦し」と感じるのかもしれません。プラセボ効果の高さは、原因があいまいな病気への相性のよさにつながっているのでしょう。

このように見てみると、西洋薬だけでなくうまく漢方薬を組み合わせることで、治療の幅が大きく広がるのです。

 

3.漢方薬の効果は時間がかかる?

急性疾患には早く効果が期待できるものもあります。慢性疾患や体質改善では、2週間~2か月ほどじっくりと使っていく必要があります。

漢方薬は基本的には効果が穏やかなイメージが強いですが、すべての漢方薬がそういうわけではありません。

漢方薬の中には急性疾患に使われる、効果発現が早い漢方もあります。効果発現が早い漢方の例として、みなさんお馴染みの葛根湯があります。葛根湯は体温を一気にあげて、身体の免疫を高めます。十分な体温になったら汗が出てくるので、それまで使っていきます。

小規模の研究ではありますが、インフルエンザの治療薬タミフルと漢方の風邪薬である麻黄湯を比較したところ、発熱症状が改善するまで時間差はなかったとの報告もされています。ちゃんと証がある人に漢方を使うと、しっかりと効果が認められます。

 

一方で慢性疾患では、効果の判定に時間がかかります。これは慢性疾患が病気の発現までに長い時間を要しているため、そのバランスを整えるには当然、長期間かかってしまうのです。

慢性疾患での効果の判定は、2週間くらいでみられることもあります。1~2か月かけてじっくりと変化がみられることもあるので、焦らず使い続けていくことが大切です。

 

4.漢方薬の作用でみた6つの効果

漢方薬は、補剤・瀉剤・和剤・解表剤・温裏剤・清熱剤などの作用の違いによってわけられます。

漢方薬には、その期待する作用の違いによって大きく6つ(補剤・瀉剤・和剤・解表剤・温裏剤・清熱剤)に分けることができます。

補剤とはゆっくり効果のでる漢方で、今の身体にないものを補う形で体質改善をします。おもに慢性疾患に使われる漢方となります。具体的には、十全大補湯や補中益気湯などがあげられます。

しかし、補剤は栄養ドリンクというわけではありません。補剤は身体に足りないものを補充して機能を高め、エネルギーの取り込みを良くするものです。したがって、飲んですぐに元気になるわけではなく、少しずつ充電しやすくなっていきます。体質改善には長い時間がかかることを知っておく必要があります。

 

瀉剤とは即効性の期待できる漢方で、身体の不調を引き起こしている原因を取り除くことで効果を発現します。急性疾患に主に使われ、使い続けると副作用が現れることがあります。具体的には、防風通聖散などがあります。

漢方では基本的に体質改善を目的としているため、症状が改善されても、飲み続ける必要があるものが多いです。これは体質を改善し、再びバランスが崩れるのを防止するためです。しかし、瀉剤は違いますので要注意です。

 

解表剤と和剤についてみていきましょう。漢方では、病気は身体の「表」から、身体の中である「裏」に入ってくると考えます。つまり表とは皮膚のことで、裏とは臓器を指します。

表で病気がとどまっている場合は、発汗によって病気を吐き出してしまう解表剤が使います。具体的には、麻黄湯や葛根湯などになります。

表と裏の間でくすぶっているような半表半裏の状態になることもあります。このような時には、中和して少しずつ肝臓から解毒していく和剤を使います。具体的には、小柴胡湯や柴胡桂枝乾姜湯などになります。

 

温裏剤は寒をあたため、清熱剤は熱を冷まします。同じ病気にかかっても、人によって病状はかわります。活発に反応して熱をもてば熱性、反対に反応が乏しくて冷えれば寒になります。

 

5.漢方薬は体質によっても効果がかわる

治療を開始するまでの期間・患者さんの体質・年齢によって効果が異なります。

漢方薬の効果がでてくるまでには、患者さんによるところも大きいです。大きく3つの点で、漢方薬の効果が変わってきます。

  • バランスが崩れていた期間
  • 患者さんの体質
  • 年齢

まず、どれだけの期間バランスが崩れていたかによって効果の早さも異なります。バランスの崩れが大きければ、それを整えるのには時間がかかってしまいます。調子が悪くなってから早めに治療を始めれば、効果もはやく現れることが多いです。

次に、患者さんの体質の影響が大きいです。基本的には、身体がしっかりとしていて病気に対する抵抗も活発な方では、漢方薬としても強いものを使うことができます。陽証の方が陰証よりも、実証の方が虚証よりも強い漢方が使えるので、効果も早いです。

最後に、患者さんの体質によります。自然治癒力とも関係してきますので、年齢が若いほどしっかりと効いてきます。

 

まとめ

漢方では、自然治癒が重要な病気とあいまいな病気に強みがあります。

漢方では、自然治癒が重要な病気とあいまいな病気に強みがあります。

急性疾患には早く効果が期待できるものもあります。慢性疾患や体質改善では、2週間~2か月ほどじっくりと使っていく必要があります。

補剤・瀉剤・和剤の3つに分類されます。

治療を開始するまでの期間・患者さんの体質・年齢によって効果が異なります。

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