うつ病の精神症状と身体症状とは?

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病気を正しく、効果的に治療しようと思ったら、まずはその病気についてよく知ることが大切です。

「うつ病」という病気は、テレビやインターネットにより、以前と比べれば多くの人に周知されてきたといえます。しかしそれは、「誰もが正しく理解している」ということではありません。

ここでは、うつ病の症状にはどのようなものがあるのか、精神症状と身体症状に分けてお伝えしていきたいと思います。

 

1.うつ病とは?

うつ病は、ストレスの蓄積で気分の落ち込みが悪循環にはまって、自然に回復しなくなってしまった状態です。

うつ病という病気が広まるにつれて、いろいろなうつ病がみられるようになりました。うつ症状はいろいろな病気でみられることがあります。一般的に言われているうつ病とは、メランコリー親和型うつ病のことを指すことが多いです。

メランコリー親和型うつ病では、何らかの脳の機能的異常が起こっていると考えられていて、内因性うつ病とよばれています。(何かのきっかけがあって落ち込みが深くなっていくことを心因性うつ病といいます。)

このようなうつ病は、ストレスの蓄積によって時間をかけて変調がでてくるのが一般的です。主な症状は気分の落ち込みです。誰しも落ち込むことはあるかと思います。ですが、しばらくすると元に戻っていきます。うつ病となって病的に落ち込みがひどくなると、自然ともどることなく、どんどんと悪循環がすすんでいってしまいます。

人との関わりを避けてしまい、物事に積極的になることができなくなります。元々好きなことであっても楽しく感じることができなくなっていきます。思考が非常に鈍くなるという場合もあり、考えることが億劫になり前向きに物事に取り組めないという悪循環に陥っていきます。メランコリー親和型うつ病の場合、朝から気分が落ち込むことが多いので出社や登校の妨げになってしまいます。

このような精神症状だけでなく、身体にも症状がでてきます。眠りにくくなる、疲れやすくなる、食欲が減る、体重もそれにより減る、などの症状がみられてくると、精神状態の悪循環に拍車をかけてしまいます。

 

2.うつ病の精神症状

抑うつ気分と物事に興味がなくなる症状を中心に、さまざまな症状がみられます。

基本となる症状は、気分の落ち込みです。憂うつで落ち込むといったことや、「なんだか嫌な感じ」という表現をされる方もいらっしゃいます。これを抑うつ気分といいます。症状が軽いと一見わかりませんが、次第に症状がひどくなると顔つきなどで外からも伝わってきます。

このような状態が続くと、自分を責めてしまうような思考になっていきます。劣等感や無価値感が強くなり自信がなくなっていきます。気力がおちていくことで仕事の能率が落ちていくことも拍車をかけます。いろいろなことに対し、マイナスな思考をもつようになります。身体に対するマイナスな思考がすすむと「不治の病にかかっているのでは」といった心気妄想、「お金がなくっていきていけない」という貧困妄想、「取り返しのつかない失敗をしてしまった」という過度に思いつめる罪業妄想などがでてきます。

また、意欲の低下、行動力の低下、思考力の低下、集中力の低下、決断力の低下、判断力の低下といった精神運動抑制症状がでてきます。これは脳の機能が全体的に低下するために起こる症状です。このため、何をするにも億劫になります。そして、物事に対する興味や関心が著しく低下してきます。以前は楽しいと感じていたことも楽しめなくなっていったりします。次第に行動が変化していきます。身体がついてこなくなり、悪循環が強くなります。抑制症状が強くなると、動作も緩慢になっていきます。

イライラ感や焦りが強くなって、落ち着かないという激越症状が起こる場合もあります。うつ病というと、動きが鈍くなることが多いのですが、意味もなくそわそわとして動き回ります。一見活動的ですが、生産的な行動にはなっていませんので行動の抑制といえます。思考についても同じで、焦りや不安、恐怖、自己否定、罪責感といった暗い感情が次から次へと湧いてくることがありますが、これも生産性がありませんので、本来の思考が抑制されていると考えられます。

次第に精神的に追い詰められていくと、そこから逃れようと死を考えます。消えてしまいたいといった漠然とした感情が、手段→場所→時と徐々に具体化していきます。中には行動に移す方もいます。

 

3.うつ病の身体症状

睡眠障害を中心に、食欲低下、疲労感、自律神経症状などがみられます。

多くの方に睡眠障害が現れます。内因性うつ病の場合は、入眠障害や早朝覚醒がよくみられますが、中には過眠となる方もいます。睡眠障害とうつ病、どちらが先かは議論がありますが、うつ病の人は3倍以上睡眠障害になりやすく、睡眠障害が長期に続く人も3倍以上うつ病になりやすいと報告されています。睡眠障害が続くと心身の疲れも取れず、また思い悩む時間が増えてしまうので悪循環になってしまいます。

また、食欲が低下していきます。意欲や興味が低下していくにつれ、食べることが億劫になります。味覚が変化し、おいしいと感じなくなります。消化管の機能も低下していきます。これらが食欲の低下を助長させていきます。食欲が低下するために、急激に体重が減少することも少なくありません。しかし、症状が進むにつれて活動ができなくなっていくので、ほとんど食べていないにも関わらず体重が増加する場合もあります。中には、うつ病の症状として過食になる方もいます。

心身のエネルギーの低下が、疲労感として感じられます。日中のだるさや疲れやすさとして実感されます。また、自律神経のバランスが乱れ、過緊張状態になります。これによりさまざまな自律神経失調症状がでてきます。頭痛やめまいといったものです。また、体の痛みが感じられることもあります。

 

4.内因性うつ病の症状の特徴

内因性うつ病は、ストレスが蓄積して時間をかけて悪くなっていきます。身体症候群とよばれる症状がみられるのが特徴です。

うつの症状がでていることを抑うつ状態といいます。この状態になるには、さまざまな原因があります。その原因を判断することは非常に難しいですが、治療の方向性もかわりますので重要です。ここで注意するポイントは、発症のきっかけや発症までのスピード、症状の様子です。

内因性うつ病の方は、ストレスの蓄積という感じがあります。明確なストレス因がある方もない方もいらっしゃいますが、ストレスが積もり積もって少しずつ調子が悪くなっていきます。ですから、時間をかけて少しずつ悪化していきます。私の患者さんで、毎日終電近くまで働き、10年間で3日しか休みがなかったブラック会社の営業部長さんもいらっしゃいました。

このような方は、脳の機能的な異常が大きく、身体性症候群とよばれる症状を特徴とします。
精神症状としては、

  • 気分の反応性低下(興味や喜びの喪失・情動麻痺)
  • 制止(思考や行動がプレーキをかけられる・焦燥があり正常な思考や行動ができない)
  • 気分の日内変動(午前中に調子が悪い)

身体症状としては、

  • 食欲低下
  • 体重減少
  • 不眠(早朝覚醒)
  • 性欲減退

これら8項目のうち、4項目があると身体性症候群があると考えます。

 

5.うつ病の症状チェック

うつ病の症状チェック・診断チェック(CES-D)

自分で症状をチェックしながら、うつ病の診断と重症度の目安にできる検査として、CES-Dなどがあります。

 

まとめ

うつ病は、ストレスの蓄積で気分の落ち込みが悪循環にはまって、自然に回復しなくなってしまった状態です。

うつ病の精神症状としては、抑うつ気分と物事に興味がなくなる症状を中心に、さまざまな症状がみられます。

うつ病の身体症状としては、睡眠障害を中心に、食欲低下、疲労感、自律神経症状などがみられます。

うつ病は、ストレスが蓄積して時間をかけて悪くなっていきます。身体症候群とよばれる症状がみられるのが特徴です。

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