もしかして自律神経失調症?自律神経失調症をチェックするポイント
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
自律神経失調症は、ストレスや生活習慣の乱れ、ホルモンなどの影響を受けて、自律神経のバランスが崩れてしまう病気です。
自律神経は、全身の様々な臓器や血管の働きを調整していて、全身に張り巡らされています。このため、自律神経失調症の症状は、全身のどのような症状にもなりうるのです。
ですから身体の症状が認められたときに、それが自律神経失調症の症状なのかどうかを見極める必要があります。
しかしながら、自律神経失調症を確定させるような検査があるわけではありません。参考になるような検査はありますが、実際には症状の経過などから推測で診断されることがほとんどです。
それではある症状が認められたときに、それが自律神経失調症の症状かどうか、どのようにチェックすればよいでしょうか?ここでは、自律神経失調症をチェックするポイントについてお伝えしていきます。
1.自律神経失調症のチェック①-身体の病気がないか
まずは身体の病気がないかをチェックしましょう。甲状腺機能異常と糖尿病には特に注意が必要です。
身体に何らかの症状が認められると、多くの方はまずは身体の病気を疑うかと思います。その場合は、まずは内科などに受診して検査などをしていくことが一般的かと思います。それであれば問題ありません。
自律神経失調症は、身体に異常が認められず、自律神経機能による症状と考えられるときに診断されるものです。自律神経失調症と診断されたけど、実は重大な身体の病気が隠れていた…となってしまっては、後悔ではすまなくなってしまうこともあります。
はじめから「自律神経失調症かもしれない」と疑う方は、過去に精神疾患の経験がある方が多いかと思います。そのような患者さんは確かに自律神経失調症であることが多いですが、本当に身体の病気が隠れていないか、チェックしなければいけません。
その症状に合わせて、採血やレントゲン、心電図やエコー、CTやMRIなどの検査をしていきます。自律神経失調症と間違えやすい病気としては、以下のようなものがあります。
- 貧血
- 膠原病
- がん
身体の病気が原因で、自律神経症状が生じていることもあります。そのようなものとして多いのは、
- 甲状腺機能異常症
- 糖尿病
になります。どちらの病気も自律神経症状が認められ、検査をしなければわかりません。特に甲状腺機能異常症は、普通の採血項目には入っていない検査です。このため、自律神経失調症がみとめられたら念頭にいれ、必要に応じて検査を行ってチェックする必要があります。
2.自律神経失調症のチェック②-複数の症状があるか
自律神経症状が複数認められる場合は、自律神経失調症の可能性が高くなります。
自律神経は、全身の臓器や血管などに分布しています。このため自律神経のバランスが崩れると、多くの症状が認められることが少なくありません。
身体に複数の症状があったときに、2つの可能性が考えられます。
- 全身の病気による症状
- 複数の病気が合併している症状
両方の可能性があるのですが、シンプルに説明できることが正しいことがほとんどです。自律神経症状が複数認められる場合は、自律神経失調症による症状であることが多いです。
例えば、胃腸の調子が悪く、動悸がして、めまいもする患者さんがいたとします。そのような場合、胃腸の病気になり、心臓の病気にもなって、めまいの病気にもなるといったことは考えにくいです。
これらの自律神経に関係していそうな症状が複数あって身体に明らかに原因が見つからない場合、自律神経失調症である可能性が高くなります。
自律神経失調症でも、症状が一つに限局されていることもあります。その場合は、
- 過敏性腸症候群:腸の自律神経失調症
- 機能性胃腸症(ディスペプシア):胃の自律神経失調症
- 線維筋痛症:痛みの自律神経失調症
- 慢性疲労症候群:全身の自律神経失調症
- 喉頭部異常感症(ヒステリー球):喉頭部の自律神経失調症
このように診断されることがあります。こういった一つの症状が認められる患者さんも、時間の経過の中でその他の自律神経症状が認められることも多いです。
3.自律神経失調症のチェック③-きっかけがあるか
症状のきっかけとして、ストレスや生活習慣と関係がありそうであれば、自律神経失調症である可能性が高くなります。
自律神経失調症の原因として、
- ストレス
- 生活習慣
- ホルモン
大きくこの3つがあげられます。これらの原因と症状との関連があれば、自律神経失調症が疑わしくなります。
ストレスと明らかに症状の関係があれば、自律神経失調症が疑わしいです。例えば、仕事のある平日には症状が続くのに、休日になると楽になるといった症状の変化がある場合は、自律神経失調症が疑わしくなります。
このようにハッキリしていればわかりやすいのですが、自分でもストレスがかかっていることを意識できていない場合もあります。よいことも含めて、生活の変化はストレスになります。ご自身の生活を振り返ってみてください。
生活習慣に関しては因果関係ははっきりしないかと思いますが、心当たりがあれば、生活習慣を改善することで症状がよくなるかもしれません。
ホルモンに関しては、女性では関連がわかることがあります。いつも決まった周期で症状が認められる場合には、女性ホルモンが関係していることもあります。
ストレスや生活習慣、ホルモンといったきっかけがないかどうかは、自律神経失調症かどうかをチェックするひとつのポイントになります。
4.自律神経失調症のチェック④-身体の薬の反応が不十分
身体の治療をはじめてみたけれども効果が不十分な場合、自律神経失調症が関係していることがあります。
自律神経失調症かどうか、身体の治療を始めてからの経過で分かってくることもあります。
原因があまりハッキリしていない場合、まずは身体症状を和らげるためにお薬を使って様子を見ることも多いです。
胃痛があれば胃薬、頭痛であれば痛み止め、吐き気であれば制吐剤といった形です。
このように身体症状にあわせたお薬を使っても、あまり効果が認められないことがあります。このように薬の反応性が不十分な場合、自律神経失調症の可能性があります。
すでに治療をしていてもなかなか良くならない場合、自律神経失調症を疑うひとつのポイントになります。
5.自律神経失調症のチェック⑤-検査で異常があるか
自律神経失調症かどうかを見極めるための検査には、いくつかの身体的な検査があります。身体的な検査だけではなく、心理検査も参考にしていきます。
自律神経失調症かどうかは、症状の経過から判断することが多いです。とはいっても、自律神経機能を測る検査がないわけではありません。また自律神経失調症はストレスなどが関係してくることが多いため、心理検査も参考になります。
ここでは、自律神経失調症で使われることのある検査についてご紹介します。これらを参考にして、自律神経失調症かどうかをチェックすることができます。
①身体検査(理学検査)
自律神経機能を測定する検査として、様々なものが開発されています。その中でも、自分自身でできるものをまずご紹介します。
皮膚描記試験というもので、非常に簡単にできます。爪でも結構ですので、何か先が尖ったもので皮膚をひっかきます。すると毛細血管の反応が皮膚にあわわれるので、その反応を見ていく試験になります。
その結果、ひっかいた後に赤く線が残ってしまったり、ミミズばれのようになって痒みが取れなくなってしまう場合は、自律神経失調症の可能性が高まります。
その他にも、自律神経機能の検査としては以下の方法があります。
- ヘッドアップティルト試験
- シェロング起立試験(体位変換試験)
- 眼球圧迫試験
- バルサルバ呼吸試験
- 頸動脈圧迫試験
- 寒冷昇圧試験
詳しく知りたい方は、「自律神経失調症の検査にはどのようなものがあるか」をお読みください。
②心理検査
自律神経失調症かどうかを判断する参考として、心理検査も用いられます。ストレスが自律神経失調症の原因となるため、
- ストレスの受け止め方
- ストレスによる精神症状
などを心理検査で測定していきます。
ストレスの受け止め方としては、性格傾向などを見る検査が行われます。
- YG性格検査(矢田部ギルフォード性格検査)
- TEG(東大式エゴグラム)
ストレスによる精神症状としては、
- STAI(状態-特性不安検査)
- CES-D(うつ病自己評価尺度)
などがあります。不安や落ち込みといった精神症状を評価していきます。
まとめ
自律神経失調症かどうかをチェックしていくためには、以下のようなポイントがあります。
- 身体の病気がないかどうか
- 複数の症状が認められるか
- ストレスや生活習慣、ホルモンなどのきっかけがあるかどうか
- 身体の薬の反応が不十分かどうか
これに加えて、
- 自律神経機能を測定する身体検査
- ストレスや精神症状を評価する心理検査
を参考にして、自律神経失調症かどうかをチェックできます。
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