過呼吸・過換気症候群でみられる症状とその原因

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過呼吸とは、その文字通り、呼吸が早くなってしまうことです。過呼吸の原因として最も多いのが、過換気症候群です。

過換気症候群(過呼吸症候群)は、精神的なストレスによる強い恐怖や緊張によって過呼吸となってしまう病気です。

過換気症候群では、過呼吸になると同時に様々な症状が認められます。息苦しさをはじめとした呼吸器系の症状、動悸やめまいといった循環器系症状、身体のしびれやけいれんといった神経系症状などがみられます。

これらの過換気症候群の症状は、どのようにして認められるのでしょうか?これには過呼吸(過換気)によってもたらされる身体症状と、それによって不安や緊張が強まることでの交感神経症状が関係しています。

ここでは、過換気症候群による過呼吸での症状について、詳しくお伝えしていきます。

 

1.過換気症候群の症状はどのように発展していくのか

過呼吸による過換気症状と、不安による交感神経症状が増幅しあって発展していきます。

過呼吸には、実は様々な原因があります。身体の病気が原因での過呼吸になることもあるので決して油断してはいけないのですが、多くの原因が精神的なものになります。

過換気症候群の症状は、主に2つの症状が増幅しあっていきます。

  • 過呼吸による過換気症状
  • 不安による交感神経症状

呼吸の目的は、身体をめぐってきた血液と新鮮な空気の間で、ガス交換を肺ですることになります。おもに酸素と二酸化炭素を交換していて、身体に必要な酸素を血液に取り込み、不要な二酸化炭素を空気に捨てています。

過呼吸になって問題となってくるのは、酸素ではありません。二酸化炭素が問題になってくるのです。過換気になると二酸化炭素が血液から出ていきます。これが進むと、身体がそれに順応しようとします。

脳や心臓の血管が収縮し、ミネラルのバランスが崩れたりします。これによって、めまいや胸痛、しびれや痙攣などの過換気症状が認められます。

それらの過換気症状にあわさって、不安が高まることでの交感神経症状も認められます。交感神経は副交感神経とあわせて、全身の様々な機能を調整している自律神経になります。

交感神経はスイッチを入れる神経で、身体を「戦うモード」に切り替えます。このため、心機能が高まって動悸や頻脈となり、呼吸が早くなり、筋肉は緊張してこわばります。その一方で消化は抑えられ、胃腸の働きや唾液分泌などが悪くなります。

  • 不安が高まることで交感神経症状が認められる
  • そうすると呼吸が早くなり、息苦しさがまして過呼吸になっていく
  • 過呼吸による過換気症状によってますます不安になり、交感神経症状が強まる

このように増幅しあって、過換気症候群ではさまざまな症状が認められます。それでは、以下で代表的な症状をみていきましょう。

 

2.過換気症候群の症状①-過呼吸と息苦しさ

ストレスによって呼吸中枢のバランスが崩れて、いくら呼吸をしても息苦しさが改善しなくなり、過呼吸に発展していきます。酸素ではなく不安が原因なので、落ち着けば過呼吸も息苦しさも改善します。

過呼吸(過換気症候群)のもっとも特徴的な症状は、その名のとおり過呼吸です。

過呼吸は突然の緊張によって過呼吸が急激に発展していくこともあれば、日常的に不安や疲労感があって、それが強まることで過呼吸に発展してしまうことがあります。

いずれの場合にも、「何だか息苦しい」という感覚から始まっていきます。息苦しさがあると、「もっと空気を吸わなければ」という気持ちが働きます。こうして息が浅くなり、呼吸数が増えていきます。

しかしながらこの息苦しさは、身体の酸素が足りないわけではありません。パルスキシメーターを指に挟むと酸素の状態がわかりますが、ほとんどのケースで100%近くとなって問題ありません。

この息苦しさは呼吸の問題ではなく、不安感からくる息苦しさなのです。過剰な不安によって、延髄にある呼吸中枢のバランスが崩れて息苦しさが止まらなくなっていると考えられます。ですからいくら呼吸をしたところで、息苦しさは改善しません。このようにして呼吸がどんどん早くなり、過呼吸になっていきます。

窒息してしまうのではないかと心配になってしまうかもしれませんが、過呼吸を過度に恐れることはありません。不安感が落ち着いてきたら、自然と過呼吸も落ち着いてきます。

 

3.過換気症候群の症状②-「めまい」「頭痛」「吐き気」

過換気で二酸化炭素が減少したことによる血管収縮症状と、不安による交感神経症状が重なって認められます。

過換気症候群によって過呼吸になると、様々な症状が認められます。

  • めまい・ふらつき・失神
  • 頭痛
  • 動悸・胸痛・不整脈
  • 吐き気・腹痛
  • 発汗・口の渇き

これらの症状は、血管の収縮と交感神経によって引き起こされます。

過呼吸になると換気が活発に行われるので、身体に酸素がたくさんとりこまれて、不要な二酸化炭素がどんどん身体から抜けていきます。血中では酸素が多くなり、二酸化炭素が少なくなります。

二酸化炭素が少なくなるということは、酸が抜けていくことになります。このため血液がアルカリ性に傾きます。このような状態をアルカローシスといい、呼吸が原因で生じているので呼吸性アルカローシスといいます。

このように、二酸化炭素の低下によるアルカローシス(pH変化)によって全身の血管が収縮します。(厳密にいうと、肺を除きます)

こういうと難しいかも知れませんが、とても理にかなった反応です。酸素が身体にたくさんある時は、血液をたくさん回して配っていく必要がありません。ですから、血管が収縮するのです。

脳血管が収縮すれば、脳の血流が低下してめまいやふらつきが認められます。意識が遠のいて失神してしまったり、頭痛がみられることもあります。心臓を栄養する血管(冠動脈)が収縮してしまうと動悸や胸痛がしたり、脈が速くなって不整脈になることもあります。胃腸を栄養する血管が収縮すると、胃腸の動きが乱れ、吐き気や腹痛が認められます。

これに交感神経症状が加わります。交感神経は、身体を「戦うモード」に切り替える神経でしたね。ですから心機能が高まって、動悸や頻脈は強まります。汗をたくさんかいて、口は渇いてしまいます。消化が抑えられて、胃腸の動きは悪くなります。

こうして血管収縮と交感神経による反応が重なり、様々な症状が増幅されて表れるのです。

これらの症状は、あくまで一時的なものです。血管収縮や自律神経のバランスが改善されれば、自然と症状はおさまります。ですから過呼吸が落ち着いて不安が軽減されると、血液も本来の状態に戻ります。後遺症が残ることはないので、心配することはありません。

 

4.過換気症候群の症状③-「しびれ」や「硬直」

過呼吸によるアルカローシスを和らげるために、カルシウムイオンが低下してしまいます。これによって神経が興奮しやすくなり、しびれや硬直が認められます。

過換気症候群になると、手足や口唇が急にしびれてしまったり、手足の筋肉がけいれんしてこわばってしまう硬直がみられることがあります。最初はしびれを感じることから始めり、それが不安になり過呼吸がひどくなり、筋肉のけいれんや硬直にまで発展していきます。

このような手足や口唇のしびれ・けいれん・硬直などの症状は、過去急によって血中のカルシウムイオン濃度が低下してしまうことが原因になります。これには、上で説明した呼吸性アルカローシスが関係しています。もう少し詳しくご説明しましょう。

通常の血液では、pHは7.35~7.45の間で調節されています。過呼吸になると二酸化炭素が抜けていくので、pHが上がってアルカリ性になっていきます。pH7.45以上になると、身体は元に戻すようにバランスをとろうとします。

血液がアルカリ性の状態とは、水素イオン(H+)が少ないということを意味しています。ですから水素イオンを増やすために、血液中のタンパク質の大部分を占めているアルブミンから水素イオンを切り離します。

水素イオンを失ったアルブミンは、その代りとしてカルシウムイオン(Ca2+)と結合します。こうして血液中のカルシウムイオンが減ってしまいます。減ったといっても血液トータルでみればカルシウムの量は変わらないので、採血をしても低カルシウム血症になっているわけではありません。

カルシウムイオンは、神経の興奮に重要な働きをしています。神経は、カルシウムイオンとナトリウムイオン(Na+)のバランスで収縮しています。ライバルのカルシウムイオンがいなくなれば、ナトリウムイオンが暴走して神経が興奮しやすくなってしまいます。

その結果、手足や口唇といった末梢神経がしびれたり、神経が支配している筋肉が異常に収縮してしまって硬直やけいれんが生じるのです。

このような症状に襲われるとビックリして不安になってしまいますが、すべては過呼吸が原因で血液のpHバランスが崩れていることが原因です。呼吸が落ち着けばカルシウムイオンも正常に戻り、後遺症を残すことなく症状が改善します。

 

5.過呼吸に後遺症はあるの?

呼吸が落ち着き不安がおさまれば、症状は消えていきます。過呼吸には後遺症もありません。

これまで症状をお伝えしてきた中で繰り返してきましたが、過換気症候群が原因での過呼吸は、あくまで一時的な症状にすぎません。

過呼吸の症状の原因は、大きくたどると2つでしたね。

  • 過呼吸による血管収縮と低カルシウムイオン
  • 交感神経による過緊張

一時的に身体の変化なので、原因の過呼吸と交感神経が落ち着けば、症状はすべて消えていきます。何かしらの後遺症が残ったりするようなこともありません。

このためには、

  • 呼吸を整えること
  • 不安を落ち着けること

が必要になります。具体的な方法については、「過呼吸・過換気症候群の正しい対処法とは?袋は使うべき?」をお読みください。

過換気症候群による過呼吸発作は、30分ほどで落ち着くことがほとんどです。このことを正しく理解するだけでも、過呼吸が少なくなる患者さんもいらっしゃいます。

 

まとめ

過呼吸は、様々な病気に伴ってみられます。それ自体がひとつの症状のようなものです。その中でもパニック障害でみられることが多く、パニック発作での強烈な不安から過呼吸になってしまうことが多いです。

元の病気に対する治療をしていかなければ、過呼吸は何度も繰り返してしまいます。ですから過呼吸を繰り返してしまう場合は、精神科や心療内科でしっかりと治療を受けましょう。

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