ゾルピデム酒石酸塩錠の効果と強さ
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
ゾルピデム酒石酸塩錠は、マイスリー錠のジェネリックです。ジェネリックが発売されたことによって、薬価が5割くらいになっています。
寝つきを改善するお薬としてよく使われている睡眠薬です。従来の睡眠薬に見られたふらつきや翌朝への持越しなどの副作用がとても少なく、安全性の高いお薬です。ハルシオンと並んで、たくさん処方されている睡眠薬です。
ここでは、ゾルピデム酒石酸塩錠にはどのような効果の特徴があるのかを詳しくお伝えしていきたいと思います。
1.ゾルピデムとマイスリーの効果の違い
ゾルピデムは、マイスリーのジェネリックです。効果に多少の違いはありますので、同じジェネリックのゾルピデム酒石酸塩錠を処方してもらうために、同じ薬局で薬をもらいましょう。
マイスリーは商品としてのお薬の名前で、発売元のアステラス製薬株式会社がつけた名前です。それに対して、ゾルピデム酒石酸塩は成分の名前です。ジェネリック医薬品が発売されるまでは、一般の方がゾルピデム酒石酸塩という成分名を目にする機会は少なかったと思います。ですが、2012年にジェネリック医薬品が発売されるようになると、価格が安いこともあって処方されることが増えました。
ジェネリック医薬品は、以前は独自の名前がつけられていました。最近のジェネリックは、紛らわしさをなくすため、「一般名+会社名」とすることが多くなりました。ゾルピデム酒石酸塩錠は30社近くが発売していますが、どれもゾルピデム酒石酸塩錠「会社名」となっています。患者さんに飲んでいるお薬の名前をお聞きすると、「」がついている会社名ばかり印象に残ってしまうことがありますので、注意してくださいね。
ゾルピデム酒石酸塩錠の値段は、マイスリーの5割強程度です。ジェネリック製薬会社によって異なりますが、だいぶお安くなりますね。ゾルピデム酒石酸塩錠には、元々のマイスリーにはないOD錠(水なしで溶ける薬)や内用液も発売されています。薬を飲むのが苦手な方や、水なしで服用したい方にはよいかもしれません。
成分が同じだからといってまったく効果が同じかというと、そういうわけではありません。薬のコーティング、溶け方、吸収のされ方などは、製薬会社によって異なります。このように製薬会社によって違いはありますが、マイスリーのジェネリックと認めてもらうためには、ちゃんと基準があります。ジェネリックのゾルピデム酒石酸塩錠を服用してからの血中濃度の変化が、マイスリーと比べて誤差80~125%の間にあることが条件なのです。
マイスリーなどの睡眠薬は即効性がある薬です。このため、薬の効き方のちょっとした違いが影響することもあります。マイスリーは作用時間が短いお薬なのでそこまで影響はないかと思いますが、ジェネリックによる効果の違いには注意をする必要があります。少なくとも同じジェネリックを使った方が、効果を見極めやすいです。このため、同じ薬局でお薬をもらうように心がけるようにしましょう。
2.ゾルピデムの作用する仕組み(作用機序)
GABAの働きを強めて、脳の活動を抑えます。ゾルピデムはω1に選択的に作用するので、ふらつきなどの副作用が軽減されています。
現在よく使われている睡眠薬は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬と非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の2種類です。ゾルピデム酒石酸塩錠は後者の非ベンゾジアゼピン系睡眠薬に分類されます。実はこの両者は同じ仕組みで睡眠効果をもたらします。
ベンゾジアゼピン受容体に作用して、GABAの働きを強めて脳の活動を抑えるのです。「GABAってなんか聞いたことあるぞ?」って方もいらっしゃるかもしれません。リラックスする物質として、GABA入りのチョコレートなどが流行っていましたね。
GABAは脳の中での情報の受け渡しに関係していて、神経伝達物質とよばれます。リラックスすると言われている通り、脳の神経細胞の活動を抑える作用があります。 神経伝達物質にはいろいろなものがありますが、GABAは脳内で2番目に多いです。1番目はグルタミンという興奮に関係する物質ですので、GABAは脳の 活動を抑制する物質としては1番多いのです。
ゾルピデム酒石酸塩がベンゾジアゼピン受容体にくっつくと、GABAがGABA受容体にくっつきやすくなります。GABAが脳内で作用すると、脳の活動が抑えられて睡眠につながっていくのです。
ゾルピデムなどの非ベンゾジアゼピン系睡眠薬とベンゾジアゼピン系睡眠薬の違いは、ベンゾジアゼピン受容体への作用の仕方の違いです。ベンゾジアゼピン受容体は、もっと細かくみるとω1受容体とω2受容体の2つに分けられます。このうち、ω1受容体は睡眠作用に関与しており、ω2受容体は抗不安作用や筋弛緩作用に関与しています。
ベンゾ ジアゼピン系睡眠薬はω1とω2の両方に作用するのに対して、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬はω1受容体にだけ作用するために、ふらつきなどの副作用が少なくなるのです。ですが、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬のω1に対する作用は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬よりは緩やかなものとなってしまいます。ですから効果が少しマイルドになってしまいますが、依存のしにくさにつながっています。
3.ゾルピデムの効果と特徴
ゾルピデム酒石酸塩錠では、脳の活動を抑えることで睡眠をもたらします。ですから、少しずつウトウトしてきて眠りに入るというよりは、急に効いてきて ストンと眠るような感覚です。私自身も試してみたことがありますが、翌朝になっていつ眠りについたのかよく思い出せませんでした。このような睡眠への導き方には、メリットもデメリットも両方あります。それぞれ見ていきましょう。
3-1.ゾルピデムのメリット
- 即効性がある
- 入眠障害に有効
- 翌朝の眠気やふらつきなどの副作用が少ない
- 睡眠が深くなる
- 依存性が少ない
ゾルピデムには即効性があります。飲み続けているとジワジワ効いてくるようなお薬ではなく、薬を飲みはじめたその日から効果が期待できます。眠れないのはつらいので、早く抜け出したいですよね。また、睡眠薬の半減期をみれば作用時間を予測することができます。ゾルピデムは作用時間が短いので、入眠障害に有効な睡眠薬です。
ゾルピデムは睡眠だけに作用するように作られていますので、筋弛緩作用や抗不安作用がわずかです。このため、ふらつきなどの副作用が少ないです。転倒などが怖い高齢者の方にも使いやすいお薬です。また、作用時間が短いものが多く、翌朝の眠気なども少ないです。
さらにベンゾジアゼピン系睡眠薬と異なるメリットとしては、他にも2点あります。1つ目は、睡眠が深くなる作用があることです。深い睡眠を増やす作用があるので、睡眠の質もよくなります。2つ目としては、依存性が少ないことです。ベンゾジアゼピン系睡眠薬と比較すると依存が形成されにくいことが報告されています。
3-2.ゾルピデムのデメリット
- 効果が普通
- 作用時間が短いものしかない
- 健忘の副作用が多い
ゾルピデムなどの非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、睡眠効果の面ではベンゾジアゼピン系睡眠薬よりマイルドになってしまいます。これはω1受容体への作用が緩やかであるためです。このため、頑固な不眠があるような方には効果がみられないことがあります。
ゾルピデムは超短時間型の睡眠薬ですので、寝つき特化型の睡眠薬になっていて、中途覚醒や早朝覚醒がみられる方には効果がないことがあります。そのかわり、翌朝に睡眠薬の効果が持ち越してしまうことは少ないです。 副作用としては、急激に作用してしまう睡眠薬ですので、中途半端な覚醒状態になって健忘の副作用がみられることがあるので注意が必要です。
ゾルピデムの副作用について詳しく知りたい方は、
ゾルピデム酒石酸塩錠の副作用(対策と比較)
をお読みください。
4.ゾルピデムの作用時間と強さ
ゾルピデムは超短時間型睡眠薬です。寝つきに特化したお薬です。強さは「普通」の、寝つきに特化したお薬です。
会社によって多少の違いはありますが、ゾルピデム酒石酸塩錠を服用すると0.8時間で血中濃度がピークになり、そこから2時間かけて半分の量まで薬が身体からぬけていきます。ですから、寝る前にゾルピデム酒石酸塩錠を服用すると、10~15分くらいですぐに効果がでてきて寝つきをスムーズにしてくれます。ですが、寝ている間に薬の効果がきれてしまって、睡眠の後半になると薬の効果はなくなってしまいます。
この2時間というのを「半減期」といいます。薬の濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、作用時間を考える目安になります。ゾルピデムは半減期が非常に短い「超短時間型」に分類されます。
睡眠障害にもいろいろなタイプがあります。寝つきが悪い「入眠障害」、途中で目が覚めてしまう「中途覚醒」、明け方に目が覚めてしまう「早朝覚醒」。睡眠障害のタイプに合わせて、睡眠薬の作用時間を変えていく必要があります。ゾルピデム酒石酸塩錠は、基本的には入眠障害に使うお薬です。すぐに効果がでてきますので、ベットに入る直前にお薬を飲むようにしてください。
ゾルピデムはベンゾジアゼピン受容体に穏やかに作用するので、強さは「普通」といったところでしょうか。ゾルピデムは5mgから使い始めます。効果を見ながら増減し、10mgまで使うことができます。もちろん増量すると効果が強くなります。睡眠薬の効果の強さは、薬の作用の強さと量によって決まってきま す。
5.ゾルピデムと他剤での作用時間の比較
半減期をもとに、睡眠薬の作用時間を予想することができます。
睡眠薬の作用時間の違いを比較してみましょう。
薬の効果を見る時は、最高血中濃度到達時間(ピーク時間)と半減期をみていきます。
最高血中濃度到達時間が短いほど、効きが早いということですね。ほとんどの睡眠薬が1~3時間になっているかと思います。中間型や長時間作用型では長いものがありますね。これらのお薬では即効性はあまり期待できません。
半減期をみると作用時間が予想できます。ゾルピデム酒石酸塩錠をはじめとした超短時間型や短時間型では、即効性を期待して使われます。入眠障害だけで困っているならば超短時間型、中途覚醒で困っているならば半減期の長い短時間型がよいでしょう。
中間型や長時間型は、身体に薬が少しずつたまっていくことで寝付きやすい土台を作るようなお薬です。中間型は4~5日かけて、長時間型は1週間以上かけて効果が安定します。
6.非ベンゾジアゼピン系睡眠薬での比較
最高用量で比較した時の効果の強さは、アモバン>ゾルピデム≧ルネスタという印象です。作用時間の長い順にみると、ルネスタ>アモバン>ゾルピデムになります。
非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、日本では3種類が発売されています。海外ではもう1種類、ソナタ(ザレプロン)というお薬が発売されています。ここでは、日本で発売されている3種類の非ベンゾジアゼピン系睡眠薬について比較してみましょう。睡眠薬の強さと作用時間の点で比較してみましょう。
まず、睡眠薬の強さに関してみてみましょう。この3剤の中で、アモバンとルネスタは親戚です。アモバンは2つの左右対称な成分(光学異性体)でできています。その成分のうち、睡眠効果の強い半分だけを取り出したのがルネスタなのです。最高用量のアモバン10mgとルネスタ3mとで比較すると、アモバンの方が効果がある印象をうけます。ゾルピデムは最高用量の10mgでは、ちょうどこの間にくるでしょうか?作用の特徴としては、ゾルピデムではω1に対する選択性は高いです。ですから、ルネスタやアモバンの方が抗不安作用を期待できるかもしれません。
次に、作用時間に関してみてみましょう。半減期とは、薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことです。半減期が短いお薬は、身体からすぐに薬が抜けていってしまうということを意味します。この半減期をみると、睡眠薬の作用時間を予想することができます。この3剤で比較すると、ルネスタ>アモバン>ゾルピデム酒石酸塩錠の順になります。
非ベンゾジアゼピン系の3剤は、基本的には入眠障害に使うお薬です。ルネスタやアモバンでは、中途覚醒などにも効果が期待できるかもしれません。
最後に、アモバンやルネスタには苦みの副作用があります。唾液から分泌されるために、飲んだ直後だけでなくて翌日も続くことが多いです。人によって苦みがない方もいらっしゃいます。何らかの薬の成分が原因と考えられていますが、残念ながらよくわかっていません。ルネスタの方が、苦みを感じることが少ないです。
7.ゾルピデム酒石酸塩錠が向いている人とは?
- 寝つきだけが悪い方
- 高齢者
- 自己負担を少なくしたい方
ゾルピデム酒石酸塩錠を寝る前に服用すると、10~15分くらいですぐに効果がでてきて寝つきをスムーズにしてくれます。ですが、ゾルピデムは睡眠薬の中でも最も作用時間が短い睡眠薬です。ですから寝ている間に薬の効果がきれてしまって、睡眠の後半になると薬の効果はなくなってしまいます。
このため、途中で目が覚めてしまうような中途覚醒の方には向いていません。寝つきが悪い入眠障害だけで悩んでいる方には、まず最初に使いたくなる睡眠薬のひとつです。
また、ふらつきなどの副作用が少ないので、高齢者の方にも比較的使いやすいです。そうはいっても、依存性や副作用がないわけではないので、漫然としたゾルピデム酒石酸塩錠の使用には注意が必要です。
ゾルピデム酒石酸塩錠は、マイスリーのジェネリックです。薬価も5割ほどとなっていますので、自己負担を少なくしたい方は良いかと思います。
ゾルピデム酒石酸塩錠の説明書を読むと、「統合失調症あるいは躁うつ病に伴う不眠症には本剤の有効性は期待できない」とされています。以前は、統合失調症や躁うつ病(双極性障害)の方にはゾルピデム酒石酸塩錠は使えませんでした。
実際に、これらの患者さんにも十分に効果を発揮します。どうして使えないようになっていたのかというと、超短時間型ベンゾジアゼピン系睡眠薬のハルシオンと有効性を比較して劣ってしまったからです。確かにハルシオンよりは効果は劣りますが、統合失調症や躁うつ病の不眠でも十分に有効です。海外では適応の制限なく使われています。これらを受けて、処方できる地域は広がってきています。
まとめ
ゾルピデムは、GABAの働きを強めて脳の活動を抑えます。ゾルピデム酒石酸塩錠はω1に選択的に作用するので、ふらつきなどの副作用が軽減されています。
ゾルピデムのメリットとしては、
- 即効性がある
- 入眠障害に有効
- 翌朝の眠気やふらつきなどの副作用が少ない
- 睡眠が深くなる
- 依存性が少ない
ゾルピデムのデメリットとしては、
- 効果が普通
- 作用時間が短いものしかない
- 健忘の副作用が多い
ゾルピデム酒石酸塩錠が向いている方は、
- 寝つきだけが悪い方
- 高齢者
- 自己負担を少なくしたい方
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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