サクシゾンの効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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サクシゾン(一般名:ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム)は、2008年に武田工業株式会社が発売した注射薬のステロイド薬になります。

ステロイド内服薬のコートリルの点滴バージョンともいえます。同じ主成分であるヒドロコルチゾンで、先発品の注射薬としてソル・コーテフがあります。サクシゾンは、ソル・コーテフのジェネリック医薬品という位置づけされることが多いです。

このステロイドの効果として、

  • 抗炎症作用
  • 免疫抑制作用

を期待して多くの疾患に適応があるお薬です。一方でサクシゾンはこれらの炎症作用の他に、硬質コルチコイドの作用が強いお薬です。

硬質コルチコイドは、水分や塩分を体内に取り込む副作用があります。そのためサクシゾンは、様々な副作用があります。サクシゾンは「背に腹は代えられない」ような、本当に使わなければならない時にだけ使用します。

ここでは、サクシゾン(ヒドロコルチゾン)の効果と特徴についてみていきましょう。

 

1.サクシゾンのメリット・デメリットは?

<メリット>

  • 短時間作用型で即効性がある

<デメリット>

  • 様々な全身の副作用が出現する
  • 硬質コルチコイドの副作用が問題になる
  • コハク酸のためアスピリン喘息には使用できない

ステロイドは、糖質コルチコイドと硬質コルチコイドの2つの作用があるお薬です。糖質コルチコイドには、抗炎症作用や免疫抑制作用があります。ステロイドが使われるのは、こちらの効果を期待してであることが大部分です。

サクシゾンは、短期作用型のステロイド薬です。個人差がありますが、一般的に8時間で効果が半減してしまうと言われています。内服薬であるコートリルは副作用も多く、効果も短いため、少し使いにくいお薬になります。

しかしサクシゾンは、緊急性の高い疾患に点滴で投与する時に使用します。硬質コルチコイドは投与直後に問題になることは少ないため、非常に使いやすいお薬となっています。特にサクシゾンなどの短期作用型のステロイドの点滴は即効性に優れており、緊急性の高い疾患に使われます。

ただし注意が必要なのが、アスピリン喘息の方です。アスピリン喘息の方にコハク酸で溶解されたステロイド薬を投与すると、逆に発作が増悪することが知られています。そのためアスピリン喘息の人は、サクシゾンを使用することができません。

アスピリン喘息について詳しく知りたい方は、「痛み止めで喘息に?アスピリン喘息の症状と特徴」を一読してみてください。

 

2.サクシゾンの剤形・薬価は?

サクシゾンは注射薬のみになります。ヒドロコルチゾンの注射薬のジェネリック医薬品として登場しています。

サクシゾンは、

  • サクシゾン100mg
  • サクシゾン300mg
  • サクシゾン500mg
  • サクシゾン1000mg

の注射剤がジェネリック医薬品として発売されています。大部分は点滴投与で使用します。一方で病態によっては、

  • 筋肉注射
  • 関節内注射
  • 髄腔注射

など局所の部位に直接投与することも適応となっています。

ジェネリック医薬品として先発品であるソル・コーテフと比較してどれくらい安くなったか確認してみましょう。まず先発品のソル・コーテフですが、

  剤形 薬価 3割薬価
ソル・コーテフ 100mg 321円 96.3円
ソル・コーテフ 250mg 893円 267.9円
ソル・コーテフ 500mg 1291円 387.3円
ソル・コーテフ 1000mg 2848 854.4円

※2016年10月7日の薬価です。

一方の後発品のサクシゾンは、以下の価格です。

  剤形 薬価 3割薬価
サクシゾン 100mg 302円 90.6円
サクシゾン 300mg 909円 272.7円
サクシゾン 500mg 1202円 360.3円
サクシゾン 1000mg 2122円 636.6円

※2016年10月7日の薬価です。

このようにサクシゾンは、先発品であるソル・コーテフとあまり値段が変わりません。一方でジェネリック医薬品として他にヒドロコルチゾンコハク酸エステルNaがありますが、そちらの薬価が以下の価格です。

  剤形 薬価 3割薬価
ヒドロコルチゾンコハク酸エステルNa 100mg 205円 61.5円
ヒドロコルチゾンコハク酸エステルNa 500mg 763円 229円

※2016年10月7日の薬価です。

このようにヒドロコルチゾンコハク酸エステルNaの方が格段に安いため、サクシゾンを同じジェネリック医薬品とはいいにくいです。

いずれにしても、同じヒドロコルチゾンが主成分であるため効果は変わりません。

 

3.サクシゾンの適応疾患は?

サクシゾンは、プレドニンの注射薬と非常に多岐にわたる疾患に対して適応があります。

サクシゾンで治療する疾患としては、ステロイドの以下の2つの作用を期待できるものです。

  • 抗炎症作用
  • 免疫抑制作用

ステロイドが効力を示す病態は無数にあります。添付文章が作成された後も、様々な研究でステロイドの効果が認められ、現在も適応疾患がどんどん増えています。大まかにあげると、

  1. 内分泌疾患:慢性副腎皮質機能不全・甲状腺疾患など
  2. リウマチ疾患(膠原病疾患):関節リウマチ・エリテマトーデス(SLE)・多発性筋炎(皮膚筋炎)・強皮症など
  3. 川崎病
  4. 腎疾患:ネフローゼ及びネフローゼ症候群
  5. 心疾患:うっ血性心不全
  6. アレルギー性疾患:気管支喘息・化学物質によるアレルギー・中毒(薬疹・中毒疹を含む)
  7. 感染症:抗菌薬と併用
  8. 血液疾患:溶血性貧血・白血病・再生不良性貧血,
  9. 消化器疾患:限局性腸炎・潰瘍性大腸炎・劇症肝炎、
  10. 癌疾患:全身状態の改善
  11. 肺疾患:サルコイドーシス・間質性肺炎
  12. 神経疾患:脳脊髄炎・末梢神経炎・筋強直症・重症筋無力症・多発性硬化症
  13. 整形外科疾患:強直性脊椎炎
  14. 産婦人科疾患:卵管整形術後の癒着防止
  15. 皮膚科疾患:軟膏が効かない重症皮疹
  16. 眼科疾患:点眼が不適当又は不十分な場合・眼の炎症疾患
  17. 耳鼻咽喉科疾患:中耳炎・メニエル病・アレルギー性鼻炎・喉頭炎・喉頭浮腫

これは、よく使用される疾患を抜粋したものです。ここに記載されていない疾患でも、サクシゾンは投与されます。サクシゾンはこのように、非常に多くの疾患で使われるお薬です。

ただしサクシゾンの特徴としては、即効性がある分、硬質コルチコイドの作用の副作用が強く出てしまいます。そのため救急外来などでサクシゾンを投与することはありますが、入院して連日投与する場合は、

  • 水溶性プレドニン
  • ソル・メドロール

などの中間作用型のステロイドの点滴薬を使用することが多いです。そのためサクシゾンは先発品であるソル・コーテフと全く同じ主成分であるヒドロコルチゾンであることから、ソル・コーテフでの適応疾患である、

  • 急性循環不全(出血性ショック、外傷性ショック)及びショック様状態における救急
  • 気管支喘息

の代わりにサクシゾンを投与することが多いです。ショック状態とは、血圧が低下して生命の危険が瀕している状態です。ステロイドは抗ショック作用 (カテコラミンの作用(効果神経の作用)を増強し、ライソゾームの安定化、血小板凝集阻止に加え、血管や肺を保護する。)を有していることから、ショック状態の患者に適応されています。

もう一つ記載されているのが、喘息です。通常成人には、サクシゾンの初回投与量100〜500mgを緩徐に静脈内注射し、症状が改善しない場合には、1回50〜200mgを4〜6時間毎に緩徐に追加投与することが一般的です。

またサクシゾンは特に硬質コルチコイドの作用が強いため、硬質コルチコイドを含めてステロイドを補充する時に使用されます。ステロイドを補充するのに最も一般的なのが副腎不全です。

副腎不全の症状としては、

  • 吐き気・嘔吐・下痢・腹痛などの腹部の症状
  • 発熱
  • 脱水症状・血圧低下
  • 意識障害
  • 呼吸困難

があり、命の危険性に関わります。これらの状態の時は内服自体が難しいので、サクシゾンを点滴静注で投与します。

 

4.サクシゾンの副作用の特徴

サクシゾンの投与量及び投与期間によって、出現する副作用および頻度が大幅に変わります。最も多いのは満月用顔貌です。

サクシゾンの添付文章では、詳細な副作用のデータはないと記載されています。しかしサクシゾンは、

  • 投与量
  • 投与期間

で全く副作用の出現頻度が違います。さらにいえば、

  • 年齢
  • 体の大きさ
  • 肝臓や腎臓の機能状態
  • ステロイドを使用する病態
  • 他にある病気の有無

によっても副作用は大幅に変わります。そのため、どの副作用がどれくらい起きるかは個々人によって大きく異なります。代表的な副作用としては、

  1. 満月様顔貌・肥満(ステロイドによる脂肪細胞の増殖および水分を体内に取り込む作用で起きます。)
  2. 細菌やカビなどの感染症に弱くなる(免疫を抑えるため防御が下がります。普段なら感染しないような特殊な菌にも感染しやすくなります。)
  3. 糖尿病(ステロイドが筋肉や脂肪を燃やし血糖値を上昇させます)
  4. 胃潰瘍・十二指腸潰瘍(ステロイドが胃腸に働くことでストレスがかかります)
  5. 高血圧・浮腫(ステロイドで血管が収縮します。さらに水分やNaを貯留するため血管内の水分が増えます。)
  6. 肝機能障害(ステロイドが肝臓を通して炎症を抑えるため負担がかかります)
  7. 緑内障・白内障(ステロイドで眼圧が上がったり、目のレンズが濁ったります)
  8. 精神障害(ステロイドでイライラしたり眠れなくなります)
  9. 骨粗鬆症(ステロイドは骨にも作用し、骨密度が低下します)
  10. 筋力低下(ステロイドによる筋肉を分解する作用で筋力が低下します)
  11. 月経異常(ステロイドホルモンは性ホルモンと似ている部分があるため、生理不順が起きます)
  12. ニキビ・皮下出血(皮膚の代謝異常でおきます。ステロイドで皮膚や筋力が衰え出血しているように見えます)

ここにあげたのは、代表的なものです。糖尿病や高血圧、緑内障などが持病である人は、病状の悪化に特に注意が必要です。内服薬のプレドニンと副作用対策は同じため、気になる人は「プレドニンの副作用の対策」を一読してみてください。

ただし、サクシゾンを1~2回点滴で投与してこれらの副作用がすぐ起きるといったことは、考えづらいです。ですが漫然と使用した場合に、徐々に様々な副作用が出現することがあります。そのためサクシゾンの点滴が必要と医師が判断した場合は、ためらわずに投与した方が良いでしょう。

 

5.サクシゾンの安全性は?

サクシゾンは、絶対に感染している部位に直接投与してはいけません。それ以外の病気には投与可能です。また併用できない内服薬はありませんが、様々なことに注意が必要です。

まずサクシゾンの禁忌ですが、

  1. 感染症のある関節腔内,滑液嚢内,腱鞘内又は腱周囲[免疫 機能抑制作用により,感染症が増悪することがある。 ]
  2. 動揺関節の関節腔内[関節症状が増悪することがある。]

とあります。特に関節などに感染があるところに直接免疫を抑制するステロイドを投与すると、一気にばい菌が繁殖する可能性があるからです。

また一緒に投与してはいけないものに

  1. 生ワクチン又は弱毒ワクチン

となっています。生ワクチンは基本的には結核や風疹などです。よく投与されるインフルエンザワクチンなどは不活化ワクチンのため、問題ありません。ただしサクシゾンを投与している状態=体調が悪い状態です。

そのためサクシゾンの投与が終わってからワクチンは打つようにしましょう。

 

次に原則禁忌ですが、

  1. 感染症・全身の真菌症の患者[免疫が抑制されるため]
  2. 結核性疾患の患者[免疫が抑制されるため]
  3. 消化性潰瘍の患者[胃潰瘍が悪化するため]
  4. 精神病の患者[中枢神経に作用して精神症状が悪化するリスクがあるため]
  5. 単純疱疹性角膜炎の患者[免疫が抑制されるため]
  6. 白内障や緑内障の患者[水晶体線維や眼圧に影響するため]
  7. 高血圧症の患者[電解質代謝作用により、 高血圧症が悪化するため]
  8. 電解質異常のある患者[電解質代謝作用により、 電解質異常が悪化するため]
  9. 血栓症の患者[血液凝固促進作用により、血栓症が悪化するため]
  10. 直近に手術を行った患者[創傷治癒が障害されることがあるため]
  11. 急性心筋梗塞を起こした患者[心破裂を起こしたという報告があるため]
  12. ウィルスやカビなど眼に感染している病気がある患者[症状が増悪することがある。 ]

これら12項目が示されています。ただし「原則」禁忌と、原則の二文字が記載されています。これは、上記の疾患の患者さんには投与しないことを原則としますが、特に必要とする場合には慎重に投与するということです。

水溶性プレドニンなどのステロイドは、必要とする場合にのみ投与するお薬です。多少の副作用があっても、「背に腹は代えられない」状態で使われるのです。

その他、禁忌までは行かなくても気を付けた方が良いとされている疾患は、

  1. 糖尿病の患者(血糖値が上昇するリスクがある)
  2. 骨粗鬆症の患者(骨がもろくなる可能性がある)
  3. 腎不全の患者(腎機能を悪化させる可能性がある)
  4. 肝機能低下・脂肪肝の患者(脂質代謝に働き、肝機能が悪くなる)
  5. 脂肪塞栓症の患者(脂質代謝に関与し、塞栓がさらにできる可能性がある)
  6. 重症筋無力症の患者(初期に症状が一時的に悪化することがある)
  7. 甲状腺機能低下の患者(甲状腺機能が悪化することがある)

の7項目が挙げられます。しかし先ほど同様に、①~⑦の項目は、ある程度他のお薬でコントロールができる病気です。

このように悪化するリスクのある病気をみてきましたが、大切なことは、「他に持病があるか?」「今までに大きな病気は何かあるか?」と聞かれて、自分で勝手に省略しないことです。

特に目の疾患は関係ないだろうと、あえて医師に言わない患者さんもいます。しかし白内障や緑内障があるのに知らずにサクシゾンを投与してしまい失明してしまったら、サクシゾンを中止しても時すでに遅しになってしまいます。

また、内服薬も気を付けなければいけない薬があります。

  1. フェノバルビタール・フェニトイン・リファンピシン(プレドニン自体の作用が弱まります)
  2. アスピリン・アスピリンダイアルミネート・サザピリン(サリチル酸中毒を引き起こす可能性があります)
  3. ワルファリンカリウム(抗凝固作用を弱めます)
  4. 経口糖尿病薬、インスリン製剤(経口糖尿病用剤・インスリン製剤の効果を減弱させます)
  5. 利尿剤(低カリウム血症を引き起こします)
  6. 活性型ビタミンD3製剤(高カルシウム血症を引き起こします)
  7. シクロスポリン(ステロイド大量投与にてシクロスポリンの血中濃度の低下があります)
  8. エリスロマイシン(プレドニンの作用が増強します)
  9. パンクロニウム臭化物,ベクロニウム臭化物(筋弛緩作用が減弱又は増強すると報告があります)

以上のお薬をよく使う場合は、サクシゾンの効果が増強・減弱するため、それを予測して投与量を調整します。また電解質異常や血糖上昇などの副作用が出現するため、結果としてお薬の効果を弱めたり、他の薬の副作用と合わさって効果が大きくなったりします。

 

6.サクシゾンと他のステロイドの比較は?

サクシゾンは、短期作用型のステロイドです。力価は硬質コルチコイドの作用が最も強いステロイドになります

ステロイド点滴薬は、多くのお薬が発売されています。それらのお薬の中で、サクシゾンはどういった位置のお薬になるか見てみましょう。

ステロイド点滴薬の比較をしました。

まずステロイドは、

  • 短時間作用型(血中半減期1時間程度・生物学的半減期8~12時間)
  • 中間作用型(血中半減期2.5時間程度・生物学的半減期12~36時間)
  • 長時間作用型(血中半減期3.3時間程度・生物学半減期36~54時間)

の3種類に分けられます。生物学的半減期の期間が、お薬の効き目が無くなってくる時間だと思ってください。時間に幅があるのは、

  • 年齢
  • 体の大きさ
  • 肝臓や腎臓の機能状態
  • ステロイドを使用する病態

などによって非常に個人差が大きいお薬だからです。

この中でサクシゾンは、短期作用型のヒドロコルチゾンのお薬にあたります。つまり8時間程度で効果が消失します。一方でこのサクシゾンなどの短期作用型は効果が消えるのが早い代わりに、効果が出現するのも早いといわれています。そのためサクシゾンは、即効性に優れた点滴薬といえます。

次にステロイド自体の強さですが、ステロイドはさらに2種類のホルモンに分けられます。

  • 糖質コルチコイド(抗炎症・免疫抑制作用、たんぱく質異化作用、糖代謝作用、骨代謝作用)
  • 硬質コルチコイド(水・電解質代謝作用)

ステロイドの治療を期待するのは、大部分が糖質コルチコイドの抗炎症、免疫抑制作用です。一方の硬質コルチコイドは水・電解質代謝作用によって、Na(塩分)が体内貯留する作用を引き起こします。Naが体内に貯留することで、高血圧やむくみなどの副作用を起こします。

このステロイドの強さを表すのに、力価という言葉を使用します。一般的には、サクシゾンの主成分であるヒドロコルチゾンの糖質コルチコイド、硬質コルチコイドの力価を1として基準とすることが多いです。

一方で基準となるサクシゾンは、最も硬質コルチコイドの力価が高いです。そのためその他のステロイドの力価は、だいたい1未満になります。

また注射薬独特の特徴として、どうやってエステル化したかという違いがあります。プレドニン含めてステロイドは、元々水に溶けづらい物質です。そのため、エステル化といって水に溶けやすくする処理をされているのですが、サクシゾンはコハク酸エステル化合物によってエステル化されます。

このエステル化が問題になるのが、アスピリン喘息です。コハク酸エステルを投与すると、アスピリン喘息では喘息症状が悪化してしまうために禁忌となっています。アスピリン喘息の場合は、

  • 水溶性ハイドロコートン
  • デカドロン
  • リンデロン

などのリン酸エステルステロイド製剤で加療します。

 

7.サクシゾンが向いてる人は?

<向いてる人>

  • ショック状態の人
  • アスピリン喘息ではない喘息の人
  • 副腎不全で急速に治療が必要な人

サクシゾンは、即効性が期待できるステロイドの点滴薬です。そのため、緊急性を要する疾患で使用することがほとんどです。緊急性を有する疾患の中で、添付文章にも書いてある

  • 急性循環不全(出血性ショック、外傷性ショック)及びショック様状態における救急
  • 気管支喘息

この2つの疾患には、非常に使用しやすいステロイドの注射薬です。ただし何度か記載しているように、喘息の中でもアスピリン喘息の方は逆に症状を悪化してしまいます。そのためアスピリン喘息の方は必ずただの喘息と言わず、『アスピリン』喘息と必ずアスピリンを付けて医師に伝えるようにしましょう。

また添付文章に記載されている疾患以外でも、サクシゾンは多くの疾患で使用されます。特によく使用されるのが、副腎不全で重篤な状態になった方です。体にステロイドが足りなくなった場合は、急速に点滴でステロイドを補充する必要があります。

サクシゾンは硬質コルチコイドも補充できるため、副腎不全にはよく使用される点滴薬です。

 

8.ステロイドとはどんな物質で、どのような作用があるか?

ステロイドは、体の副腎皮質ホルモンとして作られている物質です。

ステロイドホルモンは、実は体の中で作られているホルモンです。副腎でコルチゾール(ヒドロコルチゾン)に換算して、1日当たり5~30mgのステロイドが分泌されています。一日の中でも分泌量は変化していて、朝に多く分泌されて夜に低下していくホルモンです。

ステロイドホルモンは一言でいうと「ストレスなどの負荷に対して、体が負けずに元気になれ!」と命令するホルモンです。ですから抗ストレスホルモンともいわれます。そのため一部の臓器に作用せず様々な臓器に作用します。

どのように元気にするかというと、攻撃のスイッチを入れる代わりに防御のスイッチを切る作用のあるホルモンなのです。朝にステロイドホルモン量が多いのは、活動性が上がるために攻撃のスイッチを入れる必要があるからです。つまりステロイドは良い面ばかりではなく悪い面もたくさんあります。

ステロイドは副腎から作られたホルモンの総称です。実はステロイドは、

  • 糖質コルチコイド
  • 硬質コルチコイド
  • 性ホルモン(男性ホルモン・女性ホルモン)

など実に多彩なホルモンが含まれています。ステロイド薬は、糖質コルチコイドと硬質コルチコイドの2種類の作用が主に含まれています。

糖質コルチコイド(コルチゾール・コルチゾン)の作用としては、

  作用機序 副作用
抗炎症
作用
炎症性の物質抑制(サイトカイン抑制)
炎症の経路抑制(アラキドン酸カスケード抑制)
 
免疫抑制作用 好中球、マクロファージなど体を守る免疫細胞の抑制
抗体産生の抑制(免疫反応の抑制)
感染しやすくなる
骨代謝
作用
腸管のカルシウム吸収抑制骨の細胞の分化抑制、破壊促進 骨粗しょう症
タンパク質異化作用 筋肉のたんぱく質を分解 筋力低下
糖代謝
作用
血糖値を上げる 糖尿病
脂肪代謝作用 体脂肪増加
コレステロール上昇
脂質異常症
満月様顔貌

など多岐にわたります。この中で、抗炎症作用・免疫抑制作用が主にステロイドに期待される作用です。

一方でもう一つの硬質コルチコイド(アルドステロン・デオキシコルチコステロン)は、

  作用機序 副作用
水・電解質
作用
Na(塩分)の再吸収、貯留水の再吸収、貯留 高血圧
むくみ

硬質コルチコイド自体が少なくなる病気(アジソン病など)以外は、ほとんどこの硬質コルチコイドの作用を期待して投与させることはありません。水や塩分が足りない病態ならば、基本的には点滴などで直接補ってしまいます。

むしろアンジオテンシン阻害薬などの高血圧の治療薬は、この硬質コルチコイドの作用が働かないようにすることで降圧作用をもたらします。

このようにステロイドは、抗炎症作用・免疫抑制作用以外にも様々な作用があるお薬です。

 

まとめ

  • サクシゾンはステロイドの内服薬のコートリルの注射版で同じヒドロコルチゾンが主成分です。
  • サクシゾンはソル・コーテフのジェネリック医薬品になります。
  • サクシゾンは多くの抗炎症作用、免疫抑制作用が期待される疾患に使用されます。
  • サクシゾンはアスピリン喘息に使用すると逆に症状が悪化するため注意が必要です。
  • サクシゾンは他に様々な作用が出現するため副作用が多いお薬です。
  • サクシゾンは絶対に使用してはいけない病気や併用してはいけないお薬はありません。

投稿者プロフィール

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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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