自律神経失調症の検査にはどのようなものがあるか
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
自律神経失調症とは、全身に張り巡らされている自律神経のバランスが崩れてしまって、身体に症状が認められる状態のことを言います。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、私たちが普段意識することなくバランスをとりあっています。ストレスや生活習慣の乱れ、ホルモンが原因となって、自律神経のバランスが崩れてしまいます。
病院では検査をすることで病気を診断していきますが、自律神経機能の検査は実際にはあまり行いません。病歴や症状経過から推測し、ほかの病気を除外することで診断されていきます。
というのも、自律神経機能を治療する薬があるわけではないので、検査をする意義が少ないからです。(お金をかけて検査をするのは、あまりお勧めできません)
とはいっても、自律神経機能の異常を検査する方法はあります。ここでは、クリニックなどでも簡単にできる検査についてご説明したいと思います。
なかには自分でできそうと思われる方もいるかもしれませんが、病気によっては失神や転倒のリスクも伴うので、皮膚紋画テスト以外は行わないようにしましょう。
1.自律神経失調症の検査方法の考え方
自律神経によって調整されている循環系をモニターしながら、自律神経を刺激して変化を見ていきます。
自律神経失調症が疑われる症状が認められるときに、検査が行われることがあります。
自律神経そのものの機能を測定することはできないため、自律神経の働きによる変化をみていきます。そのような変化として最も客観的にわかりやすいのが、循環器系です。
呼吸は意識によって変えられる部分もありますが、心臓や血管は私たちの意思ではコントロールすることができません。ですから、自律神経機能を判断するには一番適しているのです。
循環器系のなかで指標とされるのは、
- 血圧
- 心拍数
- 容積脈波
この3つになります。容積脈波は末梢血管の収縮や拡張を波形としてとらえたもので、交感神経の血管収縮の活性化の指標になります。ですが専門的になりすぎるので、一般的にはあまり使われません。
血圧と心拍数は、血圧計や心電図があればできます。ほとんどの病院でこの2つはあるので、自律神経失調症の検査として使われることも多いです。
これらの自律神経の働きを反映する客観的なデータの変化を見ていくことで、自律神経失調症の検査をしていきます。自律神経に刺激を与えて、それによってこれらのデータがどのように変化していくのかを見ていきます。
自律神経の刺激としては、以下の方法があります。
- ヘッドアップティルト試験
- シェロング起立試験(体位変換試験)
- 眼球圧迫試験
- バルサルバ呼吸試験
- 頸動脈圧迫試験
- 寒冷昇圧試験
それ以外にも、皮膚描記試験という方法でも簡易的に調べることができます。以下で詳しくお伝えしていきます。
2.自分でできる自律神経失調症の検査-皮膚描記試験
ひっかいた後に赤く線が残ったり、じんましんのようになってしまう場合は、自律神経失調症の可能性があります。
自律神経失調症の検査は、血圧計やベッドがあればできてしまうものもあります。最近は血圧計も手ごろに入手できますので、自宅でも行おうと思えばできてしまうものもあります。
ですが失神や転倒の恐れもありますので、自分では行わないようにしましょう。ご自身でできる自律神経失調症の検査として、ここでは皮膚描記試験をご紹介します。
皮膚描記試験は、非常に簡単にできます。爪でも結構ですので、何か先が尖ったもので皮膚をひっかきます。すると毛細血管の反応が皮膚にあわわれるので、その反応を見ていく試験になります。大きく3つのパターンがあります。
- 白色線条:弱い刺激で出現し、白い線になる
- 赤色線条:強い刺激で出現し、3~15秒遅れて赤い線になる
- 膨疹:強い刺激で出現し、1~3分遅れてみみずばれになる
白色線条は交感神経の刺激による毛細血管の収縮で、誰しも存在するものなので正常になります。
自律神経失調症の方にあらわれやすいのは、赤色線条と膨疹です。いずれも副交感神経の刺激によって、毛細血管が拡張したり、血管透過性が亢進してしまうことが原因と考えられています。
ひっかいた後に赤く線が残ってしまったり、ミミズばれのようになって痒みが取れなくなってしまう場合は、自律神経失調症の可能性が高まります。
3.病院で行える自律神経検査
病院で行う自律神経検査は、血圧や脈拍の変化から判断するものが一般的です。
自律神経検査については、病院でもあまり積極的に行わないことが多いです。というのも、検査でわかったからといって治療が変わるわけでもなく、症状の経過などから判断がつくことが多いためです。
とはいっても、本当に自律神経の問題なのかが気になる方もいらっしゃると思います。ここでは、自律神経検査として病院で行われることもあるものをお伝えしていきたいと思います。
①ヘッドアップティルト試験
ヘッドアップティルト試験は、保険適応も認められている自律神経機能検査になります。
横になった状態から立ち上がると、重力によって血液は足の方に下がってしまいます。そうなると血液が上半身にいきにくくなってしまうので、交感神経の働きで足の血管が収縮し、心臓の働きが強まります。それによって脳に血液がめぐり、失神することはないのです。
しかしながら自律神経の調節に異常があると、血圧や脈拍の調整がうまくできません。
ベッドアップティルト試験では、心電図や血圧計などのモニターをつけて行います。台に横になった状態から、台ごと60~80度の傾斜をつけた状態にして変化をみていきます。
- 収縮期血圧>20mmHgの低下
- 拡張期血圧>10mmHgの低下
この2つがあるとき、起立性低血圧(自律神経失調症)と診断されます。失神してしまう可能性もあるので、万が一に備えて点滴しながら行っていくのが一般的です。
②シェロング起立試験(体位変換試験)
シェロング起立試験は、ヘッドアップティルト試験の簡便な方法になります。
シェロング試験では、持続的にモニターで血圧や脈拍を測定しません。そして一番の違いは、自力で立ち上がるという点です。自力で立ち上がることで、足の筋肉が収縮して血がめぐりやすくなり検査の精度がおちてしまいます。
シェロング試験では、まず10分間の安静臥床して血圧や脈拍を測定します。その後自力で起立して、1~2分間隔で10分間、血圧や脈拍を測定します。
その結果が、
- 収縮期血圧>21mmHgの低下
- 脈拍>21回/分以上の増加
- 拡張期血圧>5~10mmHgの低下
- 脈圧の狭小化>16mmHg
- ふらつきや嘔気などの症状の自覚
ですと起立性低血圧(自律神経失調症)となります。
自律神経障害や心機能低下、脱水や出血などの体液量の減少などによって生じます。現実的には、消化管出血や大量出血を検出するのに有効な検査になります。
③アシュネル試験(眼球圧迫試験)
アシュネル試験とは、眼球を圧迫することでの副交感神経が活性化することを利用した自律神経機能検査になります。
眼球を圧迫すると三叉神経が刺激され、その刺激は脳の延髄に伝えられます。すると反射的に副交感神経の迷走神経が活性化し、心臓の活動を抑えるのです。
両方の眼球を同時に圧迫してはならず、片方の眼球を15秒間親指で押します。その結果として徐脈になりますが、その程度によって副交感神経緊張の程度がわかります。
脈拍が10回/分以上減少すれば、副交感神経緊張が亢進していると考えます。
④バルサルバ呼吸試験
バルサルバ呼吸法は、息を止めることでの血圧の変化を見ることで、自律神経の状態を推測する試験です。
息を止めると、以下のようなメカニズムで血圧が変動します。
- 息を止める
- 胸腹腔内圧が上昇する
- 大静脈が圧迫されて血液が戻りにくくなる
- 心拍出量が減少し、血圧が低下
- 交感神経が活性化し、末梢血管が収縮し頻脈に
- 息を止めるのをやめると、静脈から一気に血液が心臓へ
- 心拍出量が増加し、血圧が上昇
- 副交感神経が活性化し、末梢血管が拡張し徐脈に
こういったメカニズムで、血圧が変動していきます。このときの血圧が高めだと交感神経過緊張状態であり、血圧が低めだと副交感神経過緊張状態か、交感神経機能低下状態と判断できます。
⑤その他
その他にも、
- 頸動脈圧迫試験
- 寒冷昇圧試験
などがあります。
頸動脈圧迫試験は、首の頸動脈を圧迫することで自律神経を刺激する試験です。この部分が圧迫されると、反射で迷走神経という副交感神経が活性化します。これによって心臓の働きが抑制され、血圧の低下や脈拍数の低下を確認します。
圧迫の時間や場所によってもばらつきがあるので、あまり再現性がないため行われません。
寒冷昇圧試験とは、片方の手を氷水の中にいれて、血圧測定をしていきます。1分後に手を取り出し、元の値に戻るまで血圧を測定していきます。
寒冷刺激によって交感神経が活性化しますが、収縮期血圧が20mmHg以上であれば、血管での自律神経失調症が示唆されます。
まとめ
自律神経によって調整されている循環系をモニターしながら、自律神経を刺激して変化を見ていきます。
自分でできる自律神経失調症の検査としては、皮膚描記試験があります。ひっかいた後に赤く線が残ったり、じんましんのようになってしまう場合は、自律神経失調症の可能性があります。
- ヘッドアップティルト試験
- シェロング起立試験(体位変換試験)
- 眼球圧迫試験
- バルサルバ呼吸試験
- 頸動脈圧迫試験
- 寒冷昇圧試験
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