エピナスチン塩酸塩錠の効果と副作用
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
エピナスチン塩酸塩錠は、1994年に発売された第二世代の抗ヒスタミン薬アレジオンのジェネリック医薬品です。
エピナスチンと効くとピンと来ないかもしれませんが、アレジオンと効くとご存知の方も多いと思います。抗ヒスタミン薬とは、アレルギーのときに過剰に分泌されるヒスタミンをブロックすることで、アレルギー症状を抑える効果が期待できるお薬です。
抗ヒスタミン薬のネックになるのは副作用の眠気ですが、エピナスチンは効果と眠気のバランスが良いお薬として幅広く活躍しています。
エピナスチンは2013年に点眼液として目のかゆみや充血に対して使われるようになっています。同時期には、アレジオン10として市販薬としても発売されるようになっています。さらに2015年には、アレジオン20として倍量の市販薬も発売されました。
ジェネリックのエピナスチンは、市販で正式ルートにより購入することはできませんので、病院で処方してもらう必要があります。医師から処方される場合は、エピナスチン10mg錠・エピナスチン20mg錠の他に、エピナスチンドライシロップ1%があります。
ここではエピナスチンについて効果や副作用の特徴を、他の抗ヒスタミン薬と比較しながら詳しく見ていきましょう。
1.エピナスチンの効果の特徴とは?
<メリット>
- 抗ヒスタミン薬として効果が中間的
- 1日1回の内服で済むため飲み忘れが少ない
- 市販薬でも同一成分が発売されている
- ジェネリックなので薬価が安い
- 剤形が豊富
<デメリット>
- 抗ヒスタミン薬として副作用が中間的
- 眠気が副作用として出現する可能性があるため、運転する際は注意が必要
エピナスチンの特徴は、「効果も副作用も抗ヒスタミン薬としては中間的」なことです。バランスの取れている抗ヒスタミン薬として、広く処方されています。
エピナスチンは効果が中間的なため、まずはじめに使われることも多い抗ヒスタミン薬です。スタンダートなお薬の一つといってよいかと思います。
エピナスチンは、寝る前に1回内服すれば良いのが魅力的です。効果がしっかりと持続するので、寝る前に服用すると日中もカバーしてくれるのです。例えば同じ抗ヒスタミン薬のアレグラは、1日2回のため飲み忘れが心配になります。
また、エピナスチンは第一類医薬品として市販薬も発売されています。2013年よりアレジオン10(10mg)が発売となり、2015年にはアレジオン20(20mg)も登場し、医薬品と比較してもそん色のない市販薬となっています。
さらにエピナスチンはジェネリック医薬品になるので、先発品のアレジオンに比べて6割ほどの薬価ですみます。子供が飲みやすいように、ドライシロップも発売されています。
抗ヒスタミン薬のデメリットは、眠気の副作用になります。エピナスチンは効果もしっかり期待できるお薬ですが、人によっては眠気を強く感じてしまうことがあります。このため、運転には注意が必要なお薬です。添付文章でも注意喚起がされています。
2.エピナスチンの適応疾患と用量・用法
成人の場合、エピナスチンを1日1回10~20mg内服します。
エピナスチンが最もよく使われるのは、花粉症の治療薬としてでしょう。正確にいうと、花粉に対するアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎です。
その他は気管支喘息、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症、アトピー性皮膚炎に伴うかゆみなどで使われることがあります。これらの皮膚の病気は、ヒスタミンが発生することでかゆみが認められます。これを抑える目的でエピナスチンが使われることがあるのです。
内服方法としては、以下のように年齢によって分けられています。
- 成人:通常エピナスチンを1回10~20mgを1日1回経口投与する。
- 7歳以上12歳未満の小児(24kg以上):エピナスチンドライシロップ1%を1~2g、1日1回内服(10~20mg)
- 3 歳以上7 歳未満の小児:エピナスチンドライシロップ1%を0.5~1g、1日1回内服(5~10mg)
成人も含めて、エピナスチンの投与量は症状に合わせて投与していきます。特に成人は10mgと20mgどちらが良いか?と質問されることがありますが、どちらが先でも問題はありません。
- 症状も軽いし副作用が心配ならエピナスチン10mg
- 症状がきつくて生活に支障があるようならエピナスチン20mg
それぞれの量でエピナスチンを内服してみて、効果を確認してからエピナスチンを増減、場合によっては抗ヒスタミン薬の変更を考慮すれば大丈夫です。
ちなみにエピナスチンは気管支喘息、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症、アトピー性皮膚炎に伴うかゆみでも適応がありますが、こちらはエピナスチン20mg投与後に増減するようにとなっています。
エピナスチンの副作用として眠気があるため、通常は寝る前に飲んだほうが良いとされるお薬です。
3.エピナスチンの副作用の特徴
第二世代は第一世代に比べるとヒスタミンだけに作用するようにできていて、中枢への作用も少なくなっています。このため、エピナスチンでは眠気や口の渇きなどの副作用が軽減されています。
エピナスチンは第二世代の抗ヒスタミン薬に分類されています。
抗ヒスタミン薬は、ヒスタミン受容体をブロックすることでアレルギー反応を抑えて効果を示します。しかしながらヒスタミンは、実は全身に色々なところで活躍しています。
脳では神経伝達物質として情報の橋渡しをしていますが、抗ヒスタミン薬によって脳でのこの働きがブロックされてしまうと、中枢神経が抑制されて眠気が出現します。
また抗ヒスタミン薬は、抗コリン薬と似ている部分があります。このためアセチルコリン受容体をブロックしてしまい、便秘・口渇・尿閉といった抗コリン作用が起きることもあります。そのため抗コリン薬が禁忌である緑内障患者や前立腺肥大患者には、抗ヒスタミン薬も禁忌とされていました。
このように、副作用がかなり強いのが発売当初の抗ヒスタミン薬でした。こうした強い副作用のお薬を「第一世代」と呼んでいます。
1980年代になると、ヒスタミン受容体のみをブロックして、アセチルコリンの受容体をほぼブロックしないお薬が開発されました。中枢作用も少なく、このお薬を「第二世代」と呼んでいます。
エピナスチンは第2世代の中では、効果も副作用も中程度でバランスがとれているお薬です。スタンダードな抗ヒスタミン薬としてエピナスチンはよく使われていて、効果や副作用をみて合わないと感じたら他のお薬に変更するのが一般的です。
4.エピナスチンの安全性とは?
エピナスチンは眠気が1%出ます。そのため運転する際は注意が必要です。
エピナスチンの使用成績調査での調査症例8,443例中、副作用が報告された症例は263例(3.12%)でした。
主な副作用は眠気102件(1.21%)、口渇28件(0.33%)、倦怠感27件(0.32%)、胃部不快感17件(0.20%)、嘔気15件(0.18%)でした。
エピナスチンは抗ヒスタミン薬の中でも、中等度の眠気が出現する薬です。そのため運転する際は注意が必要との記載があります。エピナスチン内服中は運転は禁止というわけではないですが、眠くなるリスクがあると認識しておくのがとても大切になります。
疲れていたり、お酒を飲みすぎた場合、エピナスチンの眠気が強く出るという報告もあるので、普段はエピナスチンを飲んでても眠くならない人も注意が必要です。(これはエピナスチン飲んでる、飲んでない関係ないかもしれませんが・・・。)
また添付文章では、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、
治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]
と記載されています。これは妊婦で安全に投与されるお薬のほぼすべてに記載されている文章です。動物実験(ラット)では、妊娠初期にエピナスチンを高用量投与するとによって奇形が認められましたが、通常量では問題ないと判断されています。
一方で授乳中の婦人には、動物実験(ラット)で乳汁中へ移行することが報告されています。このため添付文章上は、以下のように記載されています。
授乳中の婦人には本剤投与中は授乳を避けさせること。
赤ちゃんがエピナスチンの成分を服用したことによる問題は起こっていません。授乳は避けられるものという考えから、添付文章上は勧められていません。
ですから医師の立場としては、添付文章にこう書かれている以上はお勧めしないとしか言えないでしょう。実際のところは、自己判断で服用されている方も多いと思います。
5.エピナスチンの薬価と剤形の比較
薬価としては、ジェネリックのエピナスチンでは先発品の2割ほどになっています。診察料を含めても、アレジオンの市販薬での治療は高くなります。ジェネリック医薬品を使うのが最も安価です。
まずはアレジオン(エピナスチン)の薬価をみていきましょう。
<先発品>
商品名 | 剤形 | 薬価 | 3割負担 |
アレジオン錠 | 10mg | 109.5円 | 32.9円 |
アレジオン錠 | 20mg | 146円 | 43.8円 |
アレジオンドライシロップ | 1% | 96.5円/g | 29.0円/g |
<ジェネリック(後発品)>
商品名 | 剤形 | 薬価 | 3割負担 |
エピナスチン錠 | 10mg | 24.0~61.3円 | 7.2~18.4円 |
エピナスチン錠 | 20mg | 30.3~102.7円 | 9.1~30.8円 |
<OTC医薬品(市販薬)>
商品名 | 剤形 | 価格 | 1錠あたり |
アレジオン10 | 10mg6錠 | 1316円 | 219.3円 |
アレジオン10 | 10mg12錠 | 2036円 | 169.7円 |
アレジオン20 | 20mg | 1490円 | 248.3円 |
アレジオン20 | 20mg | 2138円 | 178.2円 |
成人でしっかりと効果を期待する場合、エピナスチンは20mgを1日1錠服用します。これをもとに、28日間の自己負担額で比較してみましょう。
- 先発品:1226円
- ジェネリック:255円
- 市販薬:4890円
このように計算してみると、圧倒的にジェネリック医薬品の負担が少ないですね。しかしながら病院でお薬をもらうとなると、初診料や処方箋料などが必要になります。自己負担額は初診では1010円、再診では570円になります。花粉症の治療を3か月行ったとすると、診察料で2150円となります。
これを踏まえて比較してみましょう。
- 先発品:1226×3+2150=5828円
- ジェネリック:255×3+2150=2915円
- 市販薬:4890×3=14670円
このようにして比較してみると、エピナスチンの市販薬は高くなります。時おり頓服で使う方以外には負担が大きいかも知れません。
エピナスチンのジェネリックは、安いものでは薬価が2割ほどになるので、全体的にみても非常に安価になります。
エピナスチンには、錠剤以外にもOD錠とドライシロップが発売されています。どちらも錠剤を飲みこむことが難しい方のために作られました。と くに子供が飲みやすいように意識してつくられています。
6.第二世代抗ヒスタミン薬の中でのエピナスチンの位置づけ
エピナスチンは眠気、効果の強さともに抗ヒスタミン薬では中間に位置します。
それでは、第二世代抗ヒスタミン薬の中ではエピナスチンはどのような位置づけになるでしょうか。代表的な第二世代抗ヒスタミン薬を比較して表にしたのでご覧ください。
※薬理学的なデータに加えて、私の使用経験を踏まえて作成しました。人によって薬の効き方も異なります。
これをみていただくと、エピナスチンは抗ヒスタミン薬の中では効果、副作用ともに真ん中の中間に位置します。真ん中の抗ヒスタミン薬の中では、やや眠気も効果も落ちるイメージです。
現在主流で使われている第二世代抗ヒスタミン薬は、左下から真ん中にかけてのお薬です。右上の方のお薬は、第二世代抗ヒスタミン薬には分類されますが、第一世代に近いお薬です。眠気が強いということは、中枢のヒスタミンもブロックしてしまうことを意味しています。どうしても効果が不十分な時に検討されます。
7.エピナスチンが向いている人とは?
- 症状がある程度ひどい方
- 運転を控えられる方
- 1日1回の服用がよい方
- できれば市販薬にしていきたい方
花粉症のお薬として最もよく使われているのは、同じ第二世代抗ヒスタミン薬のアレグラです。アレグラはエピナスチンに比べると眠気の副作用は少ないのですが、効果もマイルドになっています。
鼻水が辛くて目も痒い、一刻も早く何とかしたいという方には、アレグラから徐々に薬を強めていくというやり方はお勧めできません。このような時は、まずは効果がしっかり期待できる抗ヒスタミン薬から投与していくのが良いでしょう。そういう意味では、エピナスチンはスタンダートな抗ヒスタミン薬です。
エピナスチンは、1日1回の服用でも効果が持続します。このため、眠る前に1回服用するだけでよいので飲み忘れが少なくできます。アレグラなどは朝にも服用する必要がありますが、忙しくて飲み忘れてしまうと一日しんどい思いをして過ごさなければいけません。
エピナスチンには市販薬も発売されています。将来的には市販薬に切り替えていきたい方は、アレグラを使っていくのも方法です。
エピナスチンの難点は、その眠気にあります。抗ヒスタミン薬としては中等度の眠気が認められるので、タクシーやトラックなどの運転が主とする仕事の方は注意する必要があります。
処方する医師側としては、患者さんごとに抗ヒスタミン薬の処方を変えるということはあまりしないです。基本的にはエピナスチンのような中間的な抗ヒスタミン薬から始めて増減しようと考えるので、もし眠くなるのが困るということであれば事前に伝えてもらった方が良いでしょう。
また、アレグラとエピナスチンの関係はあくまでも一般論です。体には合う、合わないがあるので、人によってはアレグラの方が効果があった、アレグラの方が眠くなったということは多々あります。エピナスチンが効かないからアレグラも効果ないだろうと決めつけることは早計です。
まとめ
アレジオン(エピナスチン塩酸塩)は、1994年に発売された第二世代の抗ヒスタミン薬です。エピナスチン塩酸塩錠は、アレジオンのジェネリック医薬品になります。
エピナスチンは10mg~20mgを1日1回内服します。
<メリット>
- 抗ヒスタミン薬として効果が中間的
- 1日1回の内服で済むため飲み忘れが少ない
- 市販薬でも同一成分が発売されている
- ジェネリックなので薬価が安い
- 剤形が豊富
<デメリット>
- 抗ヒスタミン薬として副作用が中間的
- 眠気が副作用として出現する可能性があるため、運転する際は注意が必要
<向いている人>
- 症状がある程度ひどい方
- 運転を控えられる方
- 1日1回の服用がよい方
- できれば市販薬にしていきたい方
投稿者プロフィール
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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