ストレスチェックの実施時期と派遣労働者の扱い

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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1年のうち、ストレスチェックを実施するタイミングはいつでしょうか?
派遣労働者はどのようにすればよいでしょうか?

1.ストレスチェックはどのタイミングで実施するか?

必ずしも健康診断のタイミングに合わせる必要はありません。

ストレスチェックはどのタイミングで行ってもよいとされています。ストレスチェックの実施タイミング決めるにあたっては、3つの考え方があります。

①健康診断と同じ時期にそろえる
②業務処理が分散する時期を選ぶ
③もっともストレスがかかる時期を選ぶ

ストレスチェックは健康診断と同時に行わなければならないと思いこまれている方が多いですが、そんなことはありません。個人情報の問題もあり、ストレスチェックは健康診断とは切り離して実施する形となっています。実施タイミングを考えていくポイントは以下の3つです。

①受験率
②人事総務部の業務負荷
③季節性の業務量の変化

もちろん、健康診断と一緒にまとめてもらった方が従業員には楽ですし、受検率も上がります。ですが、会社としては健康診断・ストレスチェックの両方の業務を並行して行っていくことになりますので、業務負荷が集中する可能性があります。産業医面談も集中してしまう可能性があります。

ストレスチェックとしての理想を言えば、ストレスが最もかかる時期に行うことがよいです。全社的に負荷が最もかかる時期に設定することは、従業員にとっては忙しい中で手間が増えますので、受検率は低下する懸念があります。

メリットとデメリットを踏まえて、自社の状況に応じて、実施時期を選定してください。ストレスチェックを作った方のお話しをうかがうと、秋くらいの実施を想定しているようです。4月に異動が多いことを考えて、半年ほどして職場環境がわかってきたところでストレスチェックを行ってほしいということなのでしょう。

 

厚生労働省の検討会資料によると、現在すでにストレスチェックを行っている機関のうち80%の企業は、健康診断とは別の機会に実施しています。それでも55%で受検率が90%を超えています。すでにストレウチェックを行っている企業というのは、ほとんどが大企業で、メンタルヘルスに対する意識も高いためと思われます。なお、年に2回のストレスチェックを行っている企業も10%となっています。

 

2.派遣労働者はどのようにするか?

現実的には、派遣元がストレスチェックを行う可能性が高いです。

派遣労働者のストレスチェックに関しては、2つの原則があります。

①セルフケアは派遣元が行うことが義務
②集団分析は派遣先が行うことを推奨

となっています。また、派遣元から派遣先に、ストレスチェックの実施を委託することも可能とされています。

ですが、実際のところ派遣先に委託はできないという声が多いです。近年、派遣従業員はどんどん増加していることは周知のことかと思います。派遣切りなど、不安定な雇用などが社会問題となりました。この社会情勢の中で、むしろしっかりとしたストレスチェックを用意することは、CSR(企業の社会的責任)にもつながります。外に任せっきりというわけにはいかないとのことです。

ただ、実際に勤務している職場は雇用先企業になります。環境調整などをダイレクトに相談することができません。このため、派遣先との連携がうまくとることが必要です。その際に、産業医はよりバランスを意識して意見を出す必要があります。このため、産業医の調整能力がより問われます。

 

3.パートの人はどうするのか?

ストレスチェックは、週30時間以上働いている従業員が対象になります。

 ストレスチェックは50人以上の従業員のいる企業で実施を義務づけられます。それでは、この従業員とは正社員だけなのでしょうか?

答えはNOです。正社員の所定労働時間の4分の3以上働いている従業員が対象となります。多くの企業では、週40時間労働だと思います。

ですから、週に30時間働いている人は、1人の従業員と考えることになります。正社員が50人以下だから大丈夫と思われている企業も多いので、注意が必要です。

 

まとめ

ストレスチェックのタイミングは、必ずしも健康診断に合わせる必要はありません。
理想をいえば、もっとも業務負荷のかかる時期に行うのがよいです。

①受験率
②人事総務部の業務負荷
③季節性の業務量の変化

の3つのポイントで実施タイミングを検討してください。

派遣労働者のストレスチェックでは、

①セルフケアは派遣元が行うことが義務
②集団分析は派遣先が行うことを推奨

となっています。

派遣先にストレスチェックを委託することもできますが、実情は難しいとの声が多いです。
調整がより煩雑になるため、機能する産業医の存在がより重要となります。

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