残業削減には何が大切か?過重労働管理が難しい理由

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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残業が多い!なんとかしなければ・・・

多くの企業の人事担当者が頭を抱えていることと思います。

過重労働管理は非常に難しいです。その理由が紐解けば、残業削減をするには何が大事なのかが見えてくると思います。

 

1.人事担当者にとって難しい理由

経営者・上司・従業員の3者に対しての関係性や利害をみていきます。
まず経営者に対して考えていきます。

1-1.人事担当者と経営者

問題提起がしづらく、理解もえられにくいです。また、現実的な解決策を提案できません。

まずは、経営者に対してみていきます。

1つ目として、問題提起がしづらいことです。自身の管理能力が問われてしまうのではないかと当然思われると思います。ですから時間がたつにつれて、どんどん言えなくなってしまいます。

2つ目としては、理解が得られないことです。経営者にはいろいろな考え方の方がいます。私がご縁いただく企業様は、目的をはっきりもって弊社にご依頼いただいていますので、前向きに取り組んでいただけることが多いです。ですが、多くの経営者の方は、あまり踏み込みたくない話題ではないでしょうか?「現状でなんとかなっているなら、それでよい」という考え方の方が多いと思います。

3つ目としては、現実的な解決策を提案できないことです。数字で残業時間を提示することはできても、だからといって仕事の量はかわりません。現実味のある解決策の提案は、なかなかできません。

 

1-2.人事担当者と上司

現場が把握しきれず、事情があることは理解ができます。また、上司に対してメリットを出しにくいです。

次に、上司に対してみていきます。

1つ目としては、現場が把握しきれないことです。現場のことを熟知しているわけではありません。ですから、なかなか踏み込みづらい点があります。

2つ目としては、現場にも事情があることが理解できることです。売上・ノルマなどの中で業務を行っているのは、重々わかっているかと思います。やりたくて残業が増えているわけではないこともわかります。そんな中で、「残業が多いので何とかしてください」とは言えません。

3つ目としては、上司にとってのメリットを示せない点です。もちろん労使管理が改善すれば、人事考課に影響は与えられるとは思います。ですが、最もインパクトがあるのはやはり業務成績です。この評価基準は、人事担当の中ではかえられません。

 

1-3.人事担当者と従業員

問題意識をもっていなかったり、金銭的にメリットを感じている方もいます。残業をしなければいけない人にパフォーマンスとも捉えかねません。

最後に、従業員に対してみていきます。

1つ目としては、そもそも従業員が問題意識をもっていないこともあります。残業するのは当たり前・・・と思われている方もいらっしゃいます。そのような方の考え方を変えさせるのは容易ではありません。

2つ目としては、従業員が金銭的にメリットを感じていることもあります。生活残業とはいわないまでも、残業代を前提に家計を組んだりされている方もいらっしゃるかと思います。身体はしんどいけれどお金が減ってしまうならば残業は仕方ないという方もいらっしゃいます。

3つ目としては、残業をせざるを得ない方には、人事のパフォーマンスと捉えられてしまうことも多いです。

 

2.経営者にとって難しい理由

いろいろな考え方の経営者がいます。

経営者にとって難しい理由としては、その経営者の考え方でいろいろあります。
その中でも大別して3つの考え方の経営者の視線にたってみます。

  • 過重労働は当然だ
  • 過重労働にあまり踏み込みたくない
  • 過重労働を何とかしたい

過重労働は当然だという考えの経営者にとってみれば、売り上げを上げるのが最重要、従業員は給料をもらうのだから当たり前、会社の成長が最優先となります。

過重労働にあまり踏み込みたくないという考えの経営者にとってみれば、会社の文化や体制はかえるのは大変で、現場ともぶつかることになりかねず、むしろコストが増えてしまう可能性があるので前向きにはなれません。

過重労働を何とかしたいという経営者にとってみれば、具体的な方法を提示できず、また理念を浸透させるのは難しく、下手をすると従業員の心が離れます。

 

3.従業員にとって難しい理由

いろいろな考え方・立場の従業員がいます。

残業をやりたくない従業員もいれば、自分から進んで行う従業員もいます。

やりたくない従業員からしてみると、業務量やノルマがあるから仕方がないという方もいます。また、評価を意識されている方もいらっしゃると思います。また、会社の文化として残業が当たり前なので、人間関係の上で仕方がないという方もいるかと思います。

自分から進んで行う従業員にしてみると、仕事にやりがいを感じている方もいます。また生活残業という方もいるかと思います。残業はやって当たり前と考えている体育会系の方もいるかと思います。

このように、いろいろな考え方・立場の従業員がいらっしゃいます。

 

4.残業削減を進めていくにはなにが大切か?

経営者の考え方を変え、トップダウンで行っていくことが大切です。

それぞれの視点での過重労働管理の難しさを考えていくと、結局のところ、経営者の考え方次第になることが見えてくると思います。経営者が「残業制限をやるぞ」と決意していくことから始まります。トップダウンで行っていかなければいけません。その上で、具体的な方法を提示し、会社全体で一体となって行っていく必要があります。

ですから人事担当者としては、過重労働管理に関して、労使一体となって取り組む下ごしらえをできるだけ行いましょう。そして、経営者に対してはメリットを整理してお伝えしましょう。「残業は当然だ」というタイプの経営者を変えるのは容易ではありません。ですが、「残業にあまり踏み込みたくない」タイプの経営者は変えられます。

会社によっては、「ノー残業デイ」を設定したりすることもあるかと思います。経営者を巻き込んで、しっかりと理念や目的の共有がなされていないと、形だけのものになります。むしろ従業員満足度の低下にもつながりかねません。たとえば、外回りの営業の方にとってみれば不公平感が増します。

このように、過重労働管理を抜本的に行おうとすると、トップダウンで行っていくことが必須になります。いかに経営者の考え方を変えられるかがキーとなります。

 

まとめ

人事担当者としては、経営者に対して問題提起がしづらく、理解もえられにくいです。また、現実的な解決策を提案できません。

上司に対しては、現場が把握しきれず、事情があることは理解ができます。また、上司に対してメリットを出しにくいです。

従業員に対しては、問題意識をもっていなかったり、金銭的にメリットを感じている方もいます。残業をしなければいけない人にパフォーマンスとも捉えかねません。

過重労働管理に関して、労使一体となって取り組む下ごしらえをできるだけ行いましょう。そして、経営者の考え方を変え、トップダウンで行っていくことが大切です。

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