バイアスピリンの副作用と安全性

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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バイアスピリンは、アスピリンのジェネリック医薬品です。しかしバイアスピリンは解熱鎮痛薬としてのNSAIDsの働きよりも、抗血小板作用を利用して血をサラサラにすることで脳梗塞や心筋梗塞の原因になる血栓予防として使用することが多いです。

そのためバイアスピリンは、出血のリスクが常にあることに留意しなければなりません。また、一般的にバイアスピリンなどのNSAIDsは、副作用として胃腸障害が問題になります。また妊娠後期の方を含めて、使用することができない人もいます。

ここでは、バイアスピリンにどのような副作用があり、どのような方が使えないのかお伝えしていきます。

 

1.バイアスピリンの副作用の特徴

バイアスピリンの副作用として気を付けるべきものとして、出血・胃腸障害があります。

バイアスピリンはジェネリック医薬品のため、細かい副作用の頻度は示されていません。ただしバイアスピリンは、血をサラサラにする効果を期待して投与することがほとんどです。そのため、出血のリスクは常に考慮しなければなりません。

バイアスピリン内服中に、

  • 頭をぶつけた→脳出血の可能性あり
  • 肺をぶつけた→肺出血の可能性あり
  • 便の色が黒くなった→消化管出血の可能性あり

などを念頭に置いておきましょう。特に便の色は要注意です。一般的に、

  • 潜血便(真っ赤な便)→大腸からの出血
  • 黒色便(真っ黒な便)→胃・十二指腸からの出血

となります。大腸で出血している場合はすぐに肛門から出てくるため、真っ赤なまま排便されます。一方で胃や十二指腸で出血していても、小腸、大腸をゆっくりと通過してから排便されるため、血の色が変性して黒くなります。

真っ赤な便は皆さん驚かれますが、真っ黒な便は気にしない人が多いです。ぜひバイアスピリンを内服中の方は、便の色も注意してみてみましょう。

また、バイアスピリンに限らずNSAIDsに多いのは、消化器症状などの胃腸障害です。これは、バイアスピリンがアラキドン酸カスケードのCOXという物質を阻害するためです。COXは、1と2に分けられます。

  • COX-1は胃粘膜、血小板などを含め多くの細胞に常に発現しており、痛みの症状とは無関係です。逆にCOX-1を邪魔することで胃が荒らされて胃潰瘍や十二指腸潰瘍になる副作用が出現します。
  • COX-2は、体が炎症など種々の刺激を受けると、関連細胞で発現が増します。これが阻害されると、痛みや炎症を引き起こすサイトカインの産生が抑えられます。つまりNSAIDsは、COX-2に結合することで鎮痛作用を発揮するのです。

バイアスピリンは痛みの原因となるCOX-2を抑えると同時に、胃の粘膜を保護するCOX-1も阻害してしまうため胃があれてしまうのです。このことが結果として、腹痛や嘔気につながります。この副作用はバイアスピリンに特徴的というよりは、バイアスピリン含めてNSAIDsに特徴的な副作用です。

 

2.バイアスピリンが使用できない疾患は?

バイアスピリンは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍がある人には使用できません。また、アスピリン喘息の方は使用できません。

バイアスピリンの添付文章では禁忌の方は、

  1. 消化性潰瘍のある患者[消化性潰瘍が悪化することがある。]
  2. 出血傾向のある患者[出血を悪化させることがある。]
  3. 本剤の成分に過敏症の既往歴のある患者
  4. アスピリン喘息[喘息発作を誘発することがある。]
  5. 後期の婦人

となっています。この中で注意が必要なのは、

  • 消化性潰瘍のある患者
  • アスピリン喘息

の2つです。

バイアスピリンは副作用でバイアアスピリンは出血と胃腸障害が主な副作用です。ここで大切なことは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍と知らずにバイアスピリンを連用してしまうことです。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍が元々ある方はバイアスピリンを内服し続けることでさらに胃や十二指腸を荒らしてしまう可能性があります。さらに胃や十二指腸の潰瘍から血がにじみ出てきても血をサラサラにすることで、出血が止まらなくなります。

バイアスピリンを内服している方は基本的に長期間内服することがほとんどです。そのためバイアスピリンを内服している方は定期的に胃カメラを受けるなど、胃腸の状態を確認することが大切になります。

またアスピリン喘息は、喘息の中でもかなり特殊な病態です。喘息は、もともとは気道の慢性炎症によって気管支が狭くなる病気です。一般的には、Ⅰ型アレルギーに属します。Ⅰ型アレルギーは、好酸球やIgEが関与するアレルギー疾患で、他には花粉症や蕁麻疹などが挙げられます。

しかし最近、アレルギー以外が原因となる喘息があることが分かってきました。実はこの非アレルギー性の喘息の方が、対策もしづらく難治性といわれています。アレルギーではないということは分かっているのですが、細かい機序までは解明できていないためです。アスピリン喘息は、この非アレルギー性の喘息のひとつになります。

注意が必要なのは、「アスピリンとついているからバイアスピリン以外のNSAIDsは良いのでは?」と考えてしまいますが、これは大間違いです。

バイアスピリンはNSAIDsで最も古い薬のため、バイアスピリン(アスピリン)を内服すると喘息が悪化することが初めに気づかれた薬剤です。このため、アスピリン喘息と名付けられています。他のNSAIDsである、

などよく使うお薬でも、喘息が悪化します。またNSAIDsの内服に限らず、

  • 貼り薬
  • 坐薬
  • 目薬

でも悪化するため、絶対に使用してはいけません。さらに近年アスピリン喘息に比較的安全と言われていたカロナールでも、アスピリン喘息が悪化することが証明されました。

アスピリン喘息について詳しく知りたい方は、「痛み止めで喘息に?アスピリン喘息の症状と特徴」を一読してみてください。

そのためアスピリン喘息の方は、バイアスピリンだけ避ければよいわけではないので注意ししましょう。

 

3.バイアスピリンで注意するべき状態は?

手術前や抜歯前などは必ずバイアスピリンを飲んでることを伝えてください。

上記の状態の方は、添付文章上では使用してはいけないとされている方です。ただし上記以外の方でも、添付文章には以下の疾患の方は気を付けるように記載されています。

  1. 消化性潰瘍の既往歴のある患者[潰瘍を再発させることがある。]
  2. 血液の異常又はその既往歴のある患者[溶血性貧血等の‌副作用が起こりやすくなる。]
  3. 肝障害又はその既往歴のある患者[肝障害を悪化又は再発させることがある。]
  4. 腎障害又はその既往歴のある患者[浮腫、蛋白尿、血清‌クレアチニン上昇、高カリウム血症等の副作用が起こることがある。]
  5. 心機能異常のある患者[心臓の仕事量が増加するため症状を悪化させるおそれがある。]
  6. 高血圧症のある患者[血圧をさらに上昇させるおそれがある。]
  7. 過敏症の既往歴のある患者
  8. 気管支喘息の患者[病態を悪化させることがある。]
  9. 潰瘍性大腸炎の患者[病態を悪化させることがある。]
  10. クローン病の患者[病態を悪化させることがある。]
  11. 出血傾向のある患者[血小板機能異常が起こることがある ため]
  12. 手術、心臓カテーテル検査又は抜歯前1週間以内の患者 [手術、心臓カテーテル検査又は抜歯時の失血量を増加さ せるおそれがある]

ここでも最も問題になるのは、手術や抜歯などの際です。処置によってはバイアスピリンを中止して1週間程度あけて、血が出やすい状態から元に戻して処置する必要があります。

抜歯などの一部の処置は、バイアスピリンを止める必要がないとガイドラインでは記載されています。しかし血が止まりづらいことを知らずに処置をすると、処置に思わぬトラブルがつきものになります。

手術予定日当日にバイアスピリンを飲んでいたことがわかって、手術が延期になったということもあります。必ずバイアスピリンを飲んでいる方は、手術や抜歯など出血するリスクのある処置を受ける前に伝えるようにしてください。

その他にも、心臓・腎臓・肝臓など様々な臓器にバイアスピリンはダメージを与えることがあります。バイアスピリンを内服している方は、出血以外にも何か変わったことがあれば、必ず処方している医師に相談するようにしましょう。

 

4.バイアスピリンと併用してはいけない薬はないの?

バイアスピリンは、併用するのに注意が必要なお薬もあります。特に血をサラサラにする薬の併用は気を付けましょう。

バイアスピリンの添付文章では、特に併用してはいけない薬はありません。ただし、他にも併用するのに注意が必要なお薬はあります。

  1. ワルファリン(抗凝血作用を増強するおそれがあるため)
  2. 炭酸リチウム(血中リチウム濃度を上昇させる恐れがあるため)
  3. チアジド系利尿薬 (利尿・降圧作用を減弱するため)
  4. 降圧薬(アンジオテンシン阻害薬など)(降圧作用が減弱するため)
  5. メトトレキサート(メトトレキサートの血中濃度が上昇するため)
  6. スルホニル尿素系血糖降下剤(血糖降下作用が増強するため)
  7. ジゴキシン(ジゴキシンの効果が半減するため)
  8. 他のNSAIDs(インドメタシン 、ジクロフェナク ナトリウム)(出血リスク高めるため)
  9. ドネペジル塩酸塩(消化性潰瘍を 起こすことが ある)

特にワルファリンとの抗凝固作用があるお薬との併用は注意が必要です。これらのお薬は併用することは多々ありますが、出血傾向に傾きすぎないように厳密にコントロールする必要があります。注意が必要なのは、別々の医師がバイアスピリンとワルファリンを処方した場合です。

お互い知らずに出してしまうと、出血するリスクが大幅に上がります。そのためバイアスピリンを内服している場合は、必ずその旨を医師に伝えましょう。

 

5.バイアスピリンは、高齢者・小児・妊婦には使用できるの?

バイアスピリンは、高齢者には慎重に投与するように記載されています。バイアスピリンは小さな乳幼児に対して使用実績のあるお薬です。妊娠後期の妊婦の方は使用できないので、注意が必要です。

まずご高齢の方ですが、バイアスピリンは高齢者に対しては慎重に投与するように記載されています。理由としては副作用が出やすいためとあります。特に上の文章をもう一度見て欲しいのですが、

  • 腎臓
  • 血液
  • 肝臓
  • 心臓

と記載されています。高齢者の方は今まで指摘されてなくても上記のどこかしら悪いことが多いです。またバイアスピリンは、熱を出してる原因を治療するものではありません。どうしても若年者よりも免疫機能も落ちているため、バイアスピリンで様子を見ていたらあっという間に状態が悪くなったということが多々あります。

また小児に関しては、アスピリンが最もよく使われる川崎病へ適応があります。アスピリンは非常に古いお薬のため小児に対して数多くの実績があります。ただし、乳幼児の川崎病に使用した場合絶対に安全とは言い切れません。

川崎病自体命に関わる病気のため、定期的に採血や心臓のエコーなどの検査を受ける必要があります。また川崎病でバイアスピリンを内服している小児の方は、出血しやすい状態ということをご両親は念頭に置いておきましょう。ただし小児の方は粉末の方が飲みやすいことから、ほとんどの場合は先発品のアスピリンを処方されているかと思います。

妊婦の方は、バイアスピリンはかなり注意が必要です。バイアスピリンはお腹の赤ちゃんへ血液を介して移行するため、「動脈管閉塞」が生じることが報告されています。

お腹の中にいる赤ちゃんは羊水の中にいるために、自分自身で息を吸ったり吐いたりすることができません。そのため赤ちゃんは、お母さんが吸った酸素をもらって体に酸素行き渡らせます。その酸素を運ぶ血液の経路ですが、心臓から出た血液の大半は動脈管を介して大動脈に流入して全身に行きます。

つまり心臓と体を結ぶ大切な血管が動脈管なのです。そこが閉塞すると、心臓から流出する血液が体に行き渡らなくなってしまい、非常に重篤な状態になります。バイアスピリンはこの動脈管を塞いでしまいます。動脈管の働きが重要になるのが妊娠後期です。

そのため妊娠後半には、絶対にバイアスピリンを飲まないでください。添付文章では具体的に妊娠予定日から12週以内は避けるように記載されていますが、それ以前の安全が保障されているわけではないため注意が必要です。

また添付文章には、産後にお母さんがバイアスピリンを飲んだ際は、授乳は避けるようにと書かれています。赤ちゃんにバイアスピリンの成分が移行するからです。しかしこれも医師の考え方によってまちまちで、一定の見解は得られていません。

 

6.バイアスピリンの容量を増やすのは逆効果?アスピリンジレンマについて

アスピリンは低用量だから抗血小板作用が働きます。高用量ですと逆に血が固まりやすくなります。このことを、「アスピリンジレンマ」といいます。

バイアスピリンを内服中の方の中で、「バイアスピリンはもともと解熱鎮痛薬だ。今少し熱があるから追加で内服しちゃおう」と思っている方は、待ってください。バイアスピリンは、量を増やすとアスピリンジレンマが起こるかもしれないお薬です。

アスピリンジレンマとは、バイアスピリンの用量を増やすことで、もともと抗血小板作用を期待して内服していたのに、逆に血が固まりやすくなる現象のことをいいます。

アスピリンは非常に面白いお薬で

  • 高用量(成人で1回500mg以上)だと、消炎鎮痛作用が得られます。
  • 低用量(成人で1日100mg前後)だと、抗血小板作用が得られます。

バイアスピリンを内服している多くの方は、この低用量で抗血小板作用を求めて使用されています。そのため高用量で消炎鎮痛作用を求めると、逆に抗血小板作用が阻害され血が固まりやすくなりアスピリンジレンマが起こります。

アスピリンジレンマがなぜ起こるか機序を説明します。アスピリンはシクロオキシゲナーゼ(以下COX)を阻害することで、COX-1が作るトロンボキサンA2(TXA2)の産生を阻害することで抗血小板作用を有すことになります。TXA2は血小板を活発にする作用があります。このTXA2を阻害すれば血小板が働かなくなるため、血がサラサラになります。

一方でCOXに話を戻すとCOXには、2つあることが分かっています。

  • COX-1は、抗血小板作用、胃腸障害に関与しています。
  • COX-2は、疼痛に関与しています。

このCOX-2が阻害されることで、痛みの源であるプロスグランジン(PG)を阻害します。しかしPGを阻害すると逆に血を固まりやすくする作用があります。つまり分かりやすく書くと、

  • バイアスピリン低用量ではCOX1阻害にてTX2A阻害され、PGが阻害されないため、血がサラサラになります。
  • バイアスピリン高用量ではCOX1と2両方が阻害されます。COX-2が阻害されるとPGが阻害されます。そのため相殺されて、血がサラサラになりません。

これがアスピリンジレンマの機序です。逆にいえばアスピリンを解熱鎮痛薬として使用しているのに、自分で副作用が怖いからといって用量を半分にすると、アスピリンジレンマが起こって抗血小板作用が発生することがあるため注意が必要です。

 

まとめ 

  • バイアスピリンは、出血と胃腸障害が副作用であります。
  • 胃潰瘍、十二指腸潰瘍がある人は注意が必要です。
  • アスピリン喘息の方は、バイアスピリン以外のNSAIDsの使用も注意してください。
  • バイアスピリンを内服中の方は、手術や抜歯前に必ずその旨を伝えましょう。
  • バイアスピリンは、一緒に飲んで絶対ダメな薬はありません。
  • バイアスピリンは、妊婦の方には注意が必要です。特に妊娠後期には使用しないようにしましょう。
  • バイアスピリンは、用量を変えると効果が変わるアスピリンジレンマが起こる可能性があります。

投稿者プロフィール

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医3名、精神科医4名で協力して診療をしています。所属医師で協力して、記事を書いています。
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