ユーパン錠(ロラゼパム錠「サワイ」)の効果と副作用
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
ユーパンは、ベンゾジアゼピン系抗不安薬のユーパンのジェネリックです。1984年から長く発売されてきましたが、2013年よりロラゼパム錠「サワイ」に名称変更されました。
ユーパンは、効果がしっかりしているわりに副作用も少なく、使い勝手の良い抗不安薬です。抗不安薬としてよく使われているお薬です。
ここでは、ユーパンの効果と副作用について他の抗不安薬とも比較しながら、詳しく見ていきたいと思います。
1.ユーパンの効果と特徴
まずは、ユーパンの特徴をまとめてみたいと思います。
ユーパンは、脳の活動を抑えることで落ち着かせてくれるお薬です。これにより、以下の4つの作用があります。
- 抗不安作用「強」
- 催眠作用「中」
- 筋弛緩作用「弱」
- 抗けいれん作用「中」
となっています。これをふまえて、ユーパンの特徴をメリットとデメリットに分けてみていきましょう。
1-1.ユーパンのメリット
- 即効性がある
- 抗不安作用が強い
- 肝臓への負担が少ない
- 筋弛緩作用が弱い
不安感や緊張が強いと、失敗が増えてしまうことが多いです。そうすると苦手意識ができてしまって、ますます不安が強くなるという悪循環が続いてしまいます。
ユーパンは抗不安作用がしっかりとしているので、この悪循環をとめるのに確実な効果が期待できます。抗不安作用としては、デパスやユーパンには劣りますが、これらに次ぐ効果が期待できます。即効性もあるので、薬を飲んだ直後から効果が期待できます。不安に対してはSSRIなどの抗うつ剤も効果がありますが、効果が出てくるのが遅いので時間がかかってしまいます。
ユーパンが特徴的な点としては、肝臓への負担が少ないことです。薬は通常、肝臓で分解されていきます。ユーパンは、肝臓のCYPと呼ばれる酵素の影響をうけずに、水溶性にされて腎臓から出ていきます。抗不安薬は肝臓への負担が少ないお薬ですが、肝臓への負担をより抑えたい方にはよいお薬です。
ユーパンには抗不安作用だけでなく、催眠作用や筋弛緩作用、抗てんかん作用があります。筋弛緩作用が弱いので、ふらつきの副作用は少ないです。催眠作用や抗けいれん作用もありますが「中」くらいですので、積極的に睡眠薬やてんかん薬として使うことはありません。不安が強くて寝付けない方は、ユーパンを睡眠薬として使うこともあります。
1-2.ユーパンのデメリット
- 日中の眠気が多い
- 依存性がある
- 睡眠の質が落ちる
ユーパンには催眠作用があります。不安感や緊張が強い時は眠気を感じることは少ないかと思います。薬をのんで気持ちが落ち着くと、急に眠気が強く出てくることがあります。ユーパンは効果がしばらく持続するので注意してください。
ユーパンでは依存性も考慮する必要があります。最初はしっかりと効いてくれるのですが、だんだんと薬が身体に慣れてしまいます。徐々に同じ量では効果が出なくなってしまい、薬がドンドンと増えてしまうこともあります。また、「もう大丈夫だろう」と薬を減らしていく時に、身体がビックリしてしまって離脱症状がでてくることがあります。漫然と使うことは避けましょう。
ユーパンでは、睡眠の質を落としてしまう傾向にあります。レム睡眠やノンレムの深い睡眠を減らしてしまい、ノンレムの浅い睡眠を増やしてしまいます。このため、睡眠の質が落ちてしまって熟眠感が薄れてしまうことがあります。
2.ユーパンの持続時間と効き目
ユーパンは最高血中濃度到達時間が2時間、半減期が12時間の中間型抗不安薬です。持続時間は6~12時間ほどになります。抗不安作用が強いです。催眠作用と抗けいれん作用が中程度で、筋弛緩作用が弱いです。
ユーパンを服用すると、およそ2時間で血中濃度がピークになります。ユーパンはそこから少しずつ血中濃度が減っていきます。12時間かけてゆっくりと身体から薬が抜けて、血中濃度が半分になります。
この血中濃度がピークになるまでの時間を「最高血中濃度到達時間」、血中濃度が半分になるまでを「半減期」といいます。
ユーパンでは、「最高血中濃度到達時間2時間・半減期12時間」となっています。
服用してから2時間して効果のピークがくるような睡眠薬ですから、即効性が期待できる抗不安薬です。さらに半減期が12時間なので、1日たっても1/4は残っています。このため、毎日服用していると身体にたまっていきます。ユーパンを毎日服用したときの血中濃度の変化を考えてみましょう。
飲み続けていると、あるところで均衡状態ができます。この状態を定常状態といいます。ユーパンでは3日ほど服用を続けると、定常状態に達します。このようなお薬なので、頓服としても効果が期待できますし、定期的に飲み続けていくと不安になりにくい土台もできていきます。
このようにどちらにも効果が期待できるため、ユーパンのような作用時間の抗不安薬は「中間型」に分類されます。
実際の効果としては、服用して15分~30分くらいで出てきます。効果のピークは2時間くらいしてやってきて、効果はしばらく続きます。効果の持続時間は個人差があり、薬が効きやすい方と効きにくい方がいらっしゃいます。ユーパンの効果の持続時間は、およそ6~12時間といったところになります。
ユーパンの効果の強さとしては、
- 抗不安効果「強」
- 催眠効果「中」
- 筋弛緩効果「弱」
- 抗けいれん効果「中」
となっています。
用量は1~3mgとなっていて、最大3mgまで使える抗不安薬です。
3.ユーパンの副作用とは?
ユーパンは、効果のわりには副作用が少ない抗不安薬です。筋弛緩作用が弱いので、ふらつきが少ないです。効果が強いので、依存性はやや強いです。
ユーパンの効果の特徴を考えると、副作用もわかります。
ユーパンは最高血中濃度到達時間が2時間、半減期が12時間の抗不安薬で、中間型に分類されます。
ユーパンの効果の強さとしては、
- 抗不安効果「強」
- 催眠効果「中」
- 筋弛緩効果「弱」
- 抗けいれん効果「中」
このような効果の特徴をふまえて、ユーパンの副作用を考えてみましょう。
まずは作用時間をみてみましょう。2時間で血中濃度がピークになるので、即効性がある薬です。ユーパンを飲んですぐに副作用が強く出てくる可能性があります。そして、半減期(血中濃度が半分になるまでにかかる時間)が12時間あるので、副作用が抜けるには半日ほどかかる可能性もあります。
効果の強さをみてみましょう。抗不安作用が強いお薬なので、効果の実感が大きいです。このため、「ユーパンが効く」という実感があるので依存性があります。効果の割には筋弛緩作用が弱く、催眠効果も中程度です。このためバランスはよいといえますが、眠気やふらつきは事故などにもつながるので注意が必要です。
4.ユーパンとその他の抗不安薬(効果と副作用の比較)
ユーパンは、作用時間は同じタイプで比較すると短いです。ユーパンやデパスに次いで抗不安作用が強く、筋弛緩作用が弱いのが特徴です。
抗不安薬には、さまざまな種類が発売されています。比較してみてみましょう。
抗不安薬を比較するにあたっては、2つのポイントがあります。
- 作用時間(最高血中濃度到達時間・半減期)
- 4つの作用への強さ(抗不安・催眠・筋弛緩・抗けいれん)
よく使われるベンゾジアゼピン系抗不安薬で、この2つのポイントを比較してみましょう。
まずは作用時間によってタイプがわかれています。作用時間は、ピーク(最高血中濃度到達時間)と半減期をみて推測していきます。
作用時間は短時間作用型~超長時間作用型までの4つに分類できます。
短時間~中間型に関しては、即効性を期待して使うことが多いです。一方で超長時間型は、飲み続けていくことで全体的に落ち着かせる土台をつくるようなお薬です。長時間型はその中間に位置していて、即効性も期待できますし、飲み続けていくことで不安を落ち着かせていくこともできます。
作用時間による副作用の違いは、
- 短いほど依存しやすい
- 長いほど身体に薬がたまって眠気やふらつきが出やすい
といえます。
患者さんの不安の状態から、どの作用時間の抗不安薬が適切か考えていきます。その上で、作用の強さを比較して選んでいきます。
短時間型では、デパス>>リーゼ>グランダキシンです。デパスは催眠作用が強く、睡眠薬にも分類されることがあります。また、筋弛緩作用も強いので、肩こりなどにも使われます。
中間型では、レキソタン>ユーパン(ワイパックス)≧ソラナックス/コンスタンです。いずれも抗不安作用が強く、不安の発作にも使われます。ユーパンは筋弛緩作用が強いのに対して、ユーパンは弱いです。
長時間型では、リボトリール/ランドセン>セパゾン>セルシン/ホリゾンです。セルシン/ホリゾンには注射があります。服薬ができない時は、筋肉注射が効果的です。
超長時間型では、レスタス>メイラックスです。このタイプは非常に作用時間が長いです。このため、副作用が一度出てしまうと抜けるのに時間がかかってしまいます。ですから、副作用の穏やかなメイラックスの方がよく使われています。
この他にも、抗不安薬はたくさん発売されています。頻度はかなり減りますが、服用されている方もいらっしゃるかと思います。それぞれのお薬の特徴を表にまとめましたので参考にしてください。
5.ユーパンが向いている人とは?
- 不安が強い方
- 身体の緊張がそこまでない方
- 肝機能が低下している方(高齢者・肥満)
ユーパンは、抗不安薬の中でも効果は強い方です。できることならマイルドな薬から使っていた方がよいでしょう。例えば、リーゼなどのお薬を使ってみても効果が不十分な時に、ユーパンに変更していくべきです。ですが、明らかに不安や焦りが強くて、はじめからしっかりと抑えてしまった方がよい場合もあります。このような時は、ユーパンから使っていくこともあります。
また、ユーパンは筋弛緩作用が弱いお薬です。身体の緊張が強いときにはユーパンは向いていません。例えば、肩こりや身体のこわばりがある方、緊張のあまりに声や身体がふるえてしまう方などには、デパスやユーパンなどの筋弛緩作用が強い抗不安薬が向いています。ユーパンでは、身体の緊張よりも不安が目立つ方に向いています。
ユーパンは高齢者や肥満で肝機能が落ちている方に向いています。これは、ユーパンが肝臓に負担をかけないお薬だからです。高齢者や肥満の方は、他にも多くのお薬を服用していることが多いです。肝臓への負担やお薬同士の相互作用を少しでも減らしたいところです。このような方には、ユーパンが向いています。
6.一般名と商品名とは?
一般名:ロラゼパム 商品名:ユーパン
まったく成分が同じものでも、発売する会社が異なればいろいろな商品があるかと思います。医薬品でも同じことがいえます。このためお薬には、一般名と商品名というものがあります。
一般名というのは、薬の成分の名前を意味しています。発売する会社によらずに、世界共通で伝わる薬物の名称です。「ロラゼパム(lorazepam)」に統一されています。主に論文や学会など、学術的な領域でこれまで使われてきました。
商品名とは、医薬品を発売している会社が販売目的でつけた名称になります。「ユーパン(upan)」は、沢井製薬がつけた名前になります。
ワイパックスは、日本では1978年から発売されています。すでに特許もきれて、ジェネリック医薬品も作られています。ジェネリックとしては、「ユーパン」という独自の商品がよく使われていました。ジェネリック医薬品の紛らわしさをなくすために、一般名(成分名)に変更するような流れとなりました。これを受けてユーパンも、ロラゼパム「サワイ」と名称をかえました。薬価は0.5mgではほとんど変わらず、1mgではロラゼパム「サワイ」にすると5割となります。
ロラゼパムの効果や副作用について詳しく知りたい方は、
ロラゼパム錠の効果と強さ
ロラゼパムの副作用(対策と比較)
をお読みください。
まとめ
ユーパンの作用の特徴は、
- 抗不安作用「強」
- 催眠作用「中」
- 筋弛緩作用「弱」
- 抗けいれん作用「中」
ユーパンのメリットとしては、
- 即効性がある
- 抗不安作用が強い
- 肝臓への負担が少ない
- 筋弛緩作用が弱い
ユーパンのデメリットとしては、
- 日中の眠気が多い
- 依存性がある
- 睡眠の質が落ちる
ユーパンが向いている方は、
- 不安が強い方
- 身体の緊張がそこまでない方
- 肝機能が低下している方(高齢者・肥満)
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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