セパゾンの半減期と作用時間

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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セパゾンは、古くからある抗不安薬です。効果のわりに副作用が少ないのですが、中途半端となってしまうことが多く、使われることは減ってきています。

セパゾンの作用時間や効き目は、半減期から考えることができます。

セパゾンは最高血中濃度到達時間が3時間、半減期が16時間です。セパゾンは即効性が期待でき、作用時間も比較的長いです。このため、不安が強い時に頓服としても有効ですし、毎日服用して不安を和らげていくこともあります。

ここでは、セパゾンの作用時間と半減期について詳しく見ていきたいと思います。

 

1.薬の半減期とは?

薬を飲んでから血中濃度が半分になるまでの時間のことです。

薬を服用した時の、血中濃度の変化を図に表わして、Tmaxと半減期を説明します。

薬を飲み始めると、直後は血中濃度がどんどんと上がっていきます。薬の吸収がおわると、薬は代謝されて身体から出ていきますので、少しずつ血中濃度が減少していきます。身体が薬を代謝できるスピードは決まっていますので、どれくらいの量であっても一定のスピードで身体から抜けていきます。このため、薬の量が半分になるまでにかかる時間は、内服量にかかわらず一定になります。

この血中濃度が半分になるまでにかかる時間を半減期(T1/2)といいます。T1/2が短いほど、薬の切れ味がよく身体からすぐになくなるといえます。反対にT1/2が長いほど、薬が身体に蓄積しやすいといえます。

薬の効き方を考えるにあたって、もう1つのポイントがあります。最高血中濃度到達時間(Tmax)です。これは文字通りで、血中濃度がピークに達するまでの時間です。効果がでるまでのスピードに関係しています。Tmaxが短いほど、抗不安薬の効果がすぐに表れることを意味しています。

 

2.セパゾンの作用時間と効き方

セパゾンは、最高血中濃度到達時間が3時間、半減期が16時間の長時間型抗不安薬です。即効性も期待できますし、服用を続けて不安になりにくい土台をつくることもできます。

セパゾンの血中濃度のデータは、お薬の添付文章にもしっかりと記載されていません。お薬の効き方を考えるに当たっては、最高血中濃度到達時間と半減期という2つの情報が大切になります。より詳しく書いてあるインタビューフォームから調べてみました。

セパゾンの最高血中濃度到達時間は、動物実験では 2~4時間となっています。セパゾンの半減期は、人の尿中からの排泄量を元にしたデータで11~21時間となっています。この中央値をとって、最高血中濃 度到達時間3時間、半減期16時間として考えていきたいと思います。具体的にみていきましょう。

セパゾンを服用すると、およそ3時間で血中濃度がピークになります。そこから16時間かけて、ゆっくりと血中濃度が半分になります。

これだけだと、セパゾンの効き方を説明できません。セパゾンの効果には、「活性代謝産物」が重要な役割をしています。セパゾンは体内で分解されると、さまざまな物質に変化していきます。これらのうち薬理作用があるものを活性代謝産物といいます。

セパゾンは活性代謝産物がたくさんあります。そのうち効果が強いCND(クロロ-N-ジメチルジアゼパム)は、1時間ほどでピークに達して、4.4時間で半分になります。活性代謝産物の中には、とても身体に残りやすいものもあります。

このため、セパゾンは即効性もあって、作用時間が長い抗不安薬として「長時間型」に分類されています。

 

このような特徴があるので、セパゾンには2つの効き方があります。

  • 即効性のある不安を抑える効果
  • 飲み続けていくことで、不安になりにくい土台をつくる効果

不安が強い時に頓服として使っても効果が期待できます。服用して15分~30分くらいで効果がでてきます。効果のピークは3時間くらいしてやってきて、効果はしばらく続きます。

毎日常用していると、薬が身体の中に少しずつたまっていきます。およそ半減期の5倍たつと安定した状態(定常状態)になるといわれています。このため、16時間×5=80時間すると安定していきます。3~4日間になりますね。常に薬が効いている状態となるので、不安になりにくい土台ができます。

薬を飲み続けると、定常状態となります。その様子を図であらわしました。

効果の持続時間は 個人差があり、薬が効きやすい方と効きにくい方がいらっしゃいます。セパゾンの効果時間は、およそ6~12時間といったところになります。

 

セパゾンの効果について知りたい方は、
セパゾン錠の効果と強さ
をお読みください。

 

3.抗不安薬の半減期・作用時間の比較

作用時間が短い薬は不安発作への即効性を期待し、長い薬は1日を通しての安定に期待します。セパゾンは長時間型に分類されます。

抗不安薬には、さまざまな種類が発売されています。抗不安薬を比較するにあたっては、2つのポイントがあります。

  • 作用時間(最高血中濃度到達時間・半減期)
  • 4つの作用への強さ(抗不安・催眠・筋弛緩・抗けいれん)

よく使われるベンゾジアゼピン系抗不安薬で、この2つのポイントを比較してみましょう。

代表的な抗不安薬の効果や作用時間について比較した一覧表です。

作用時間によってタイプがわかれています。作用時間は、ピーク(最高血中濃度到達時間)と半減期をみるとわかります。

作用時間は短時間作用型~超長時間作用型までの4つに分類できます。

短時間~中間型に関しては、即効性を期待して使うことが多いです。一方で超長時間型は、飲み続けていくことで全体的に落ち着かせる土台をつくるようなお薬です。長時間型はその中間に位置していて、即効性も期待できますし、飲み続けていくことで不安を落ち着かせていくこともできます。

 

この他にも、抗不安薬はたくさん発売されています。頻度はかなり減りますが、服用されている方もいらっしゃるかと思います。それぞれのお薬の特徴を表にまとめましたので参考にしてください。

マイナーな抗不安薬の比較

4.セパゾンの使い方

セパゾン頓服→作用時間が長い薬+セパゾン頓服orセパゾン常用

セパゾンはこのように2つの効き方があります。

  • 即効性のある不安を抑える効果
  • 飲み続けていくことで、不安になりにくい土台をつくる効果

抗不安薬はできるだけ少なくしたいところです。セパゾンは以下のように使っていきます。

①不安が強い時だけセパゾンを頓服
②作用時間の長い抗不安薬+セパゾン頓服
②´セパゾンを常用

 

セパゾンは依存性も認められるお薬です。このため、できるだけ常用しないようにしていきます。頓服で使っている場合は、依存になることはありません。アルコールで考えるならば、飲み会の時だけたくさんお酒を飲んでもアル中にはならないですよね。セパゾンは効果がしっかりとしている抗不安薬なので、不安発作みられたときに服用していただきます。

不安が1日を通して強い場合は、抗不安薬で日中をカバーする必要があります。この場合は、2つの方法から考えます。

1つ目は、作用時間の長い抗不安薬を使っていく方法です。私はメイラックスを使っていくことが多いです。作用時間が長いということは、身体から抜けていくのもゆっくりということを意味します。このため、離脱症状が起こりにくいのです。このような効きの長い抗不安薬でカバーして、発作的な不安に対してセパゾンを使っていきます。

2つ目は、セパゾンを常用していく方法です。セパゾンはそこまで依存性が高いお薬ではないため、漫然と使わないように注意しながら常用していきます。薬が身体にたまっていって、より安定した効果が期待できます。このようにセパゾンが常用となる場合は、SSRIなどの抗うつ剤と併用していくことが多いです。抗うつ剤の効果はジワジワと出てくるので、効果が出てきたら切り替えていきます。

 

まとめ

半減期とは、薬を飲んでから血中濃度が半分になるまでの時間のことです。

セパゾンは、最高血中濃度到達時間が3時間、半減期が16時間の長時間型抗不安薬です。即効性も期待できますし、服用を続けて不安になりにくい土台をつくることもできます。

セパゾン頓服→作用時間が長い薬+セパゾン頓服orセパゾン常用という使い方をしていきます。

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