ジプレキサザイディス錠の効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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第二世代抗精神病薬のジプレキサには、ジプレキサザイディス錠(口腔内崩壊錠)が発売されています。

ジプレキサは、統合失調症や双極性障害のお薬としてよく使われています。幻覚や妄想を抑える効果だけでなく、気持ちを落ち着かせる鎮静作用も強いお薬です。

統合失調症の患者さんでは、お薬をちゃんと継続して服用することが大切です。ときに自分ではお薬が飲めなくなってしまうこともあります。ジプレキサザイディス錠では、口にいれるとすぐに溶けてしまうので、非常に服薬しやすくなります。

ここでは、ジプレキサザイディス錠について、薬価もふくめて詳しくお伝えしていきたいと思います。

 

1.ジプレキサザイディス錠とは?

口腔内崩壊錠とよばれる、唾液によって口の中で溶けるジプレキサ錠剤です。効果や副作用ジプレキサ錠と変わりません。

お薬は錠剤でできていて、水で飲みこむものが多いかと思います。

普通にこのように服用できる方では良いのですが、なかには薬を飲むのが苦手だったり、飲み込みが悪い方もいらっしゃいます。統合失調症では自分の病気が正しく認識できなくなることもあるので、お薬を飲むこと自体を拒否することもあります。

ジプレキサザイディス錠は、そんな時に効果的な錠剤として作られました。

ジプレキサザイディス錠とは、「口腔内崩壊錠」と呼ばれるジプレキサ錠剤です。口の中に入れるとすぐに唾液で溶けるのです。口腔内崩壊錠は英語では、「Orally Disintegrating Tablet」といいます。一般的には略して、「D錠」や「OD錠」と呼ばれることが多いです。

ジプレキサはフリーズドライを応用したザイディス技術を利用しており、そのままの名称を使ってジプレキサザイディス錠と名付けられました。液体成分を凍らせてから乾燥すると、無数の穴のあいたスポンジ状の固体になります。水に触れると素早く溶けるのです。通常の口腔内崩壊錠と比べても、素早く溶けます。

 

このように唾液で溶けて、水なしでも場所を選ばずに服用できるのがジプレキサザイディス錠です。口の中ですぐに溶けてしまうので、ジプレキサザイディス錠の方が即効性があるように思うかもしれません。残念ながら、そのようなことはありません。

ジプレキサ錠とジプレキサザイディス錠の血中濃度変化は類似していて、効果の速さや作用時間、強さは変わりません。どちらも、服薬を続けていくことによって、少しずつ身体にたまっていって効果が安定していきます。

このように理論的には変わらないのですが、効果を早く感じる方も実際にいらっしゃいます。口の中で溶けてしまえば、早く効いた気がするのでしょう。ですから私も外来では、「口で溶けるので効果が早く感じられる方もいます」とお伝えしています。

ジプレキサ錠について詳しく知りたい方は、
ジプレキサ錠の効果と特徴
ジプレキサの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

2.ジプレキサザイディス錠のメリットとデメリット

「溶けるから飲みやすそうだ」というだけでは、ジプレキサザイディス錠をちゃんと使うことができません。ジプレキサザイディス錠にはどのようなメリットとデメリットがあるでしょうか?

 

2-1.ジプレキサザイディス錠のメリット

  • 水なしでも服用できる
  • 内服が苦手な方でも服用しやすい
  • 飲み込みが悪い方でも服用しやすい
  • 口腔内崩壊錠の中でも溶けるのが早い
  • 拒薬している人にも使える場合がある
  • 服薬しやすい味付けになっている
  • 7錠1シートになっている

ジプレキサザイディス錠の一番のメリットは、やはり水なしで服用できることでしょう。わざわざ水を用意しなくても大丈夫なのです。なかにはジプレキサを飲んでいることを周りに知られたくない方もいるかと思います。水がいらなければこっそりと飲むこともできますね。

嚥下機能が落ちてしまったり、食道狭窄などがあって飲み込みが悪い方もいらっしゃいます。昔から薬を飲むのが苦手という方もいらっしゃいます。このような方では、唾液で勝手に溶けてくれる薬は助かりますね。介護する家族やスタッフが薬を飲ませていることもありますが、ジプレキサザイディス錠では飲ませやすくなるというメリットもあります。

ザイディス錠は唾液に溶けるお薬ですが、同じような口腔内崩壊錠の中でも溶けるスピードが早いです。口の中にいれるとすぐに溶けてなくなってしまいます。このようなお薬なので、場合によっては拒薬している患者さんにお薬を飲ませられます。

口の中で溶ける薬ですので、飲みやすいように味もつけられています。ジプレキサザイディス錠は甘みがあります。溶ける感覚も含めて、「綿菓子みたい」とおっしゃる患者さんが多いです。

7錠で1シートになっている点もユニークです。通常は10錠で1シートとなっていますが、ジプレキサザイディス錠は飲み忘れに気づけるように、1週間を意識して7錠で1シートとなっています。

 

2-2.ジプレキサザイディス錠のデメリット

  • 一包化ができない
  • パッケージから出すと崩れやすい
  • 濡れた手で触れない
  • 他の薬を服用していると意味がない

ジプレキサザイディス錠は唾液で溶ける性質があります。このため、湿度が高いと崩れやすくなってしまう抗精神病薬です。

このため普通の錠剤よりも管理がしにくいですし、一包化(同じ飲み方の薬をまとめること)もできません。ジプレキサザイディス錠は、通常の口腔内崩壊錠よりも湿気に弱いです。濡れた手で触ってしまうと溶け出してしまいます。

同じ時間に服用している他の薬も確認しなくてはいけません。他の錠剤を水で服用するのでしたら、ジプレキサだけ口腔内崩壊錠でも何の意味もなくなってしまいます。

 

3.ジプレキサ錠とジプレキサザイディス錠の薬価

ジプレキサ錠とジプレキサザイディス錠では、薬価はかわりません。ジプレキサ錠では2016年6月にジェネリックが発売され、薬価が非常に安くなりました。オランザピンOD錠はジプレキサザイディス錠よりも安くなりますが、剤形は大きく異なるので注意してください。

ジプレキサ錠は、2016年6月についにジェネリック医薬品が発売となりました。もともとジプレキサは薬価が高いお薬でしたが、ジェネリック医薬品によって一気にやすくなり、使いやすくなっています。

<先発品>

商品名 剤形 薬価
ジプレキサ錠 2.5mg 138.1円
ジプレキサ錠 5mg 258.3円
ジプレキサ錠 10mg 489.8円
ジプレキサ細粒 1% 472.2円/g
ジプレキサザイディス錠 2.5mg 138.3円
ジプレキサザイディス錠 5mg 258.3円
ジプレキサザイディス錠 10mg 489.8円

<後発品>

商品名 剤形 薬価
オランザピン錠 1.25mg 23.2円
オランザピン錠 2.5mg 44.1円
オランザピン錠 5mg 83.5円
オランザピン錠 10mg 158.4円
オランザピン細粒 1% 193.3円/g
オランザピンOD錠 2.5mg 44.1円
オランザピンOD錠 5mg 83.5円
オランザピンOD錠 10mg 158.4円

※2016年7月21日現在の薬価です。

自己負担3割の方が、最高用量の20mgを1か月使った場合、8816円となります。ジプレキサの薬価は、抗精神病薬の中でも非常に高いです。

このジプレキサの薬価は、アメリカでの薬価の影響をうけて高く設定されています。このお薬を基準にして、その後の抗精神病薬の薬価がつけられていきました。抗精神病薬が高い元凶を作ったお薬です。

発売元のイーライリリーの特許がきれ、2016年6月よりジェネリックが発売となりました。ジェネリックのオランザピン錠の薬価は非常に安くなっており、3~4割となっています。

ご注意いただきたいのですが、ジプレキサザイディス錠の特許はまだ続くのでジェネリックにはなりません。同じ口腔内崩壊錠として、オランザピンOD錠が発売されています。しかしながら錠剤の溶け方は全く異なるので、ジプレキサザイディス錠に慣れている方は、注意してください。

 

4.ジプレキサ錠とジプレキサザイディス錠の使い分け

  • 拒薬をしている方
  • お薬の飲み忘れが多い方
  • ジプレキサだけ服用している方
  • 口で溶ける方がよく効く実感がある方

ジプレキサ錠とジプレキサザイディス錠では、効果も副作用もかわりません。現時点では薬価もかわりませんが、ジプレキサ錠のジェネリックが発売されると薬価が安くなります。ジェネリックの発売を見越して、ジプレキサ錠よりもジプレキサザイディス錠が向いている方を考えていきましょう。

 

ジプレキサザイディス錠の一番のメリットは、口にいれるとすぐに溶けてしまうことです。このため、お薬を飲むことを拒否しているような患者さんや飲める状況にない患者さんに対して、口に入れてしまって飲ませることができます。無理やり飲ませられるとお薬を吐き出してしまうこともありますが、ジプレキサザイディス錠はあっという間に溶けてしまうので飲ませやすいです。

また、ジプレキサザイディス錠は飲み忘れを減らすこともできます。服用の手軽さ、飲み心地のよさ、1シートが7錠になっている工夫などで、お薬の飲み忘れを減らすことができます。「綿菓子のようなお薬」といわれるので、無理なく続けていくことができます。

ジプレキサザイディス錠のメリットを生かすには、同じタイミングに他の薬を使っていないことが条件です。ジプレキサザイディス錠だけ水なしで飲めても、他に服用しなければいけない薬があったら意味がありません。他の薬を服用しているけれどもジプレキサザイディス錠を使ってみたい方は、飲み方を変更できないか主治医に確認してみてください。

理論的には効果も副作用もジプレキサとかわりません。ですが、ジプレキサザイディス錠はすぐに溶けてしまうお薬ですので、早く効いた感じがする方もいらっしゃいます。私も外来では、「口で溶けるので効果が早く感じられる方もいます」とお伝えしています。

 

まとめ

口腔内崩壊錠とよばれる、唾液によって口の中で溶けるジプレキサ錠剤です。効果や副作用はかわりません。

ジプレキサザイディス錠のメリットとしては、

  • 水なしでも服用できる
  • 内服が苦手な方でも服用しやすい
  • 飲み込みが悪い方でも服用しやすい
  • 口腔内崩壊錠の中でも溶けるのが早い
  • 拒薬している人にも使える場合がある
  • 服薬しやすい味付けになっている
  • 7錠1シートになっている

ジプレキサザイディス錠のデメリットとしては、

  • 一包化ができない
  • パッケージから出すと崩れやすい
  • 濡れた手で触れない
  • 他の薬を服用していると意味がない

ジプレキサは、抗精神病薬の中でも薬価が高いです。ジプレキサ錠とジプレキサザイディス錠では、薬価はかわりませんが、ジプレキサ錠では2016年頃にジェネリックが発売される予定です。

ジプレキサザイディス錠が向いている方は、

  • 拒薬をしている方
  • お薬の飲み忘れが多い方
  • ジプレキサだけ服用している方
  • 口で溶ける方がよく効く実感がある方

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