セレネース注射液(点滴・筋注・静注)の効果とは?

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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セレネースは、古くからある第一世代(定型)抗精神病薬です。

主役の座は第二世代(非定型)抗精神病薬に譲りましたが、今でも切り札として使われるお薬です。セレネースには注射液が発売されていますが、これは点滴ができる唯一の抗精神病薬の注射剤になります。お薬を自分で服用できない時には重宝されるお薬です。

セレネースの注射にはどのような特徴があるのでしょうか?ここでは、セレネースの注射の効果と実際の使い方について、お伝えしていきたいと思います。

 

1.セレネースの3つの注射方法

セレネースは、筋注や点滴静注されることが多いです。静注はあまり行いません。

セレネースの注射は、3つの方法で行われることがあります。

  • 筋肉注射(筋注)
  • 静脈注射(静注)
  • 点滴静注

いずれの投与方法も、普通に口からお薬を服用するよりも効果が早いです。

経口投与の場合、

口→胃→小腸→門脈→肝臓→血管→臓器(脳)

と、お薬が目的にたどり着くまでに長い経路が必要です。しかも肝臓を通ると、お薬が分解されてしまいます。このため、経口投与は100%の効果を期待できません。このことを初回通過効果といいます。この3つの方法は肝臓を通らずに作用するので、効果が早くて強いのです。

セレネースの内服は鎮静作用が弱いのですが、筋注や点滴静注では効果が期待できます。血中濃度が十分に高くなることで、ドパミン遮断作用と抗α1作用による鎮静効果が認められます。

筋肉注射は、薬を飲めない方に有効です。いろいろな状況でお薬が飲めないことがあります。そんな時に筋肉注射は効果的です。セレネースではドパミン遮断作用が強く、副作用止めのアキネトンと混ぜて筋注することが多いです。

静脈注射は、直接血管にお薬が入っていくので効果がもっとも強力です。セレネースで静注することも可能ではありますが、一般的には点滴静注を行います。点滴静注の方が少しずつお薬が入っていくので、副作用が軽減できます。

 

2.セレネースの注射はどういう時に使うの?

幻覚妄想状態、興奮や昏迷状態などで、薬を飲める状況じゃないときに使われます。

お薬は内服できるならば、それにこしたことはありません。消化管を通して吸収されるので、もっとも安全性が高いです。セレネースの注射をしなければいけない時は、いずれも「薬を飲める状態でない時」です。

幻覚や妄想に左右されている状態であったり、興奮があまりにも強いときには注射薬が使われます。このような時には、お薬を冷静に飲むことができません。場合によっては拘束をしてしまって、本人の意に沿わない形であっても筋注や点滴静注をすることがあります。

精神科の症状には、緊張病症状というものがあります。これは、あまりに意欲がなくなってしまって固まって何もできない状態です。こんな時にはお薬も飲めないので、セレネースの筋肉注射が使われていました。ですが、悪性症候群(高熱から死に至ることもある)のリスクが高くなります。このため最近は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬のセルシンやホリゾンの注射を行います。

 

セレネースの効果について詳しく知りたい方は、
セレネース錠の効果と特徴
をお読みください。

 

3.セレネース筋注とは?

セレネースの筋注は、「内服ができない状況で、抗精神病薬を使いたいとき」に行います。

筋肉注射は、その名前の通り筋肉に注射します。肩(三角筋)やおしり(中殿筋)に注射します。お尻といっても上の方なので、ズボンを全部おろす必要はありません。お尻の方が痛みが少ないことが多いです。

まずは一般的な筋肉注射の特徴を整理してみましょう。

<メリット>

  • 初回通過効果を受けない
  • 効果が早い
  • 患者さんの意志がなくても必要であれば使える

<デメリット>

  • 筋肉の拘縮や神経障害が起こることがある

筋注すると、筋肉にたくさんある毛細血管から血中に取り込まれていきます。筋肉→血管→臓器(脳)と、すぐに血管にたどりつけます。肝臓を通過しないので分解されないで済みます。また、内服よりも早い効果が期待できます。

注射ですから、患者さんがお薬を拒否したり、服用できない状態でも使えます。精神科の治療では、患者さんが正しく自分の状態を判断できないことがあります。そのような時は、意に沿わない形で筋注することもあります。

ですが、何回も筋肉注射をすると筋肉が線維化してしまいます。筋肉が固まってしまって、伸びなくなってしまいます。また、筋注したときに誤って神経を傷つけてしまうリスクもあります。

 

それでは、セレネースの筋注について考えていきましょう。セレネースの筋注では、効果が早まります。血中濃度も高くなるので、副作用が起こりやすくなります。錐体外路症状(薬剤性パーキンソニズムなど)が起こるので、副作用止めのアキネトンを混ぜて筋注することが多いです。

統合失調症の幻覚・妄想状態がひどい時、せん妄状態の時などに使われることが多いです。

 

4.セレネース点滴静注とは?

セレネースの点滴静注は、「内服も筋注もできない状況で、抗精神病薬を使いたいとき」に行います。

点滴静注は、生理食塩水や点滴用の製剤の中にお薬を注入し、水分と一緒に血管から少しずつお薬を注入していきます。

まずは一般的な点滴静注の特徴を整理してみましょう。

<メリット>

  • 初回通過効果を受けない
  • 効果がもっとも早い
  • 患者さんの意志がなくても必要があれば使える

<デメリット>

  • 薬の作用が急であり、副作用や中毒症状が起こる
  • 重大な副作用や事故につながりやすい

血管に直接お薬を入れていきます。このため、血管→臓器(脳)とダイレクトに作用します。このため、すべてのお薬の投与方法の中で、もっとも早くて強い効果が期待できます。もちろん肝臓を経由しないので、分解されることもありません。

患者さんがお薬を拒否したり、服用できない状態でも使えます。点滴静注するときは急速な効果を期待したいときなので、状態が悪くてどうしようもない時に、何とか注射することが多いです。

薬の作用が急激にきてしまうので、副作用や中毒症状も起こりやすいです。重大な副作用や事故にもつながることがあります。

 

それでは、セレネースの点滴静注について考えていきましょう。セレネースを点滴静注するときは、大きく2つのケースがあります。

  • 興奮が強くて拘束となった時
  • すでに点滴している時

統合失調症の幻覚や妄想が強いと、興奮してしまって暴れてしまうことがあります。このような時にはとてもお薬を飲むことができません。本人のも周囲にも危険が及ぶので、強制的に寝かしつけてしまって拘束をしてしまうことがあります。

まずは暴れている患者さんを大人数で押さえつけて、ロヒプノール/サイレースをゆっくりと静注します。薬が効いてくると、患者さんは眠ってしまいます。その間にベッドに拘束して、点滴を開始します。

セレネースを点滴するときは、1アンプル(5mg)を500mlの点滴に混注します。1日に1~2A入るように点滴していきます。場合によっては4Aまで使うこともあります。その際、副作用止めとしてアキネトンを混注することもあります。

 

まとめ

セレネースには3つの注射方法があります。

  • 筋肉注射(筋注)
  • 静脈注射(静注)
  • 点滴静注

セレネースは、筋注や点滴静注されることが多いです。

セレネースの注射をするのは、統合失調症の幻覚・妄想状態がひどい時、せん妄状態の時などに使われることが多いです。

セレネース点滴静注は、興奮が強くて拘束となった時、すでに点滴をしている時に使われます。

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