ザガーロの副作用と安全性について
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
ザガーロ(デュタステリド)カプセルは、5α還元酵素阻害薬に分類される「男性における男性型脱毛症」(AGA)治療薬です。AGAとは簡単に言うと、男性の「はげ」のことです。AGAは男性のホルモン増加に伴い毛根が減退して起こります。
ザガーロは、このAGAのホルモンに関与する5α還元酵素を阻害することで、徐々に髪の毛が生えてくるお薬です。ザガーロは数日飲んで効果が発揮するお薬ではなく、毎日飲み続けることで効果を発揮するお薬です。そのため数ヶ月、数年、あるいは数十年と飲み続けるお薬です。
ザガーロの効果ばかりに目が行ってしまって、どんな副作用があるのか?安全性はどうなのか?というところをおろそかにしてしまってる人もいるかもしれません。
ここでは、ザガーロの副作用や安全性について確認してみましょう。
1.ザガーロの副作用について
ザガーロは男性ホルモンに作用するため、勃起不全や性欲減少など性機能減少があります。
ザガーロの添付文章では557例中、95例(17.1%)に副作用が報告されています。その主なものは、
- 勃起不全24例(4.3%)
- 性欲減退22例(3.9%)
- 精液量減少7 例(1.3%)
となっています。ザガーロは、テストステロン(いわゆる男性ホルモン)をより活性の高いジヒドロテストステロンに変換する1型および2型の5α還元酵素を阻害します。
「脱毛症」を引き起こすジヒドロテストステロン血清中および頭皮中の濃度を低下させることにより、発毛および育毛効果を示します。つまり、男性ホルモンを抑えることで効果を発揮するのです。
そのため男性ホルモンに影響することで、勃起不全や性欲減少などの性機能減少が最も大きな副作用です。知らずに内服してしまうと、人によっては非常に困ることもあるかもしれません。
特にザガーロを数ヶ月内服していてこれらの副作用が出現した場合、ザガーロをやめたからといってすぐに回復するとは限りません。ザガーロは徐々にホルモンに影響を与えることで効果を発揮します。そのため、中止しても徐々にもとに戻るため、すぐには改善しないことも多いです。
そのため、ザガーロを内服する前に性機能減少があるということは念頭においてください。もしこれらの副作用が起こると困るという人は、他のお薬を選択した方が良いかもしれません。
また、ザガーロを内服始めてから2週間~1か月ごろに「初期脱毛」と言って、一時的に脱毛することがあります。この初期脱毛は逆に効果が出ている証拠ですので、副作用として捉えられていません。ザガーロを内服してから、通常1~2カ月程度で収まり、その後髪の毛が生えてきます。
ザガーロを内服している方は髪に神経質になりがちなため、少しでも髪が抜けやすくなるとガッカリするかもしれませんが、2か月たってから生え始めることも多いため、辛抱強く使っていきましょう。
2.ザガーロが内服できない人は?
女性と小児は内服できません。また、重度の肝機能障害がある人も内服できません。
ザガーロは、男性ホルモンに影響を与えて育毛を促すお薬です。そのため、女性および小児(20歳未満)の方で脱毛症に悩んでる方は、原因が異なるためにザガーロの効果が期待できません。さらに安全性も確立されていないため、女性と小児は禁忌になっています。
そのためザガーロは、20歳以上の男性にのみ内服するようにするお薬になります。それでは20歳以上の男性なら全て適応になるのでしょうか?
一つ気を付ける疾患があります。それが肝機能障害がある方です。添付文章でも、
重度の肝機能障害のある患者[本剤は主に肝臓で代謝されるため、血中濃度が上昇するおそれがある ]
と禁忌項目に記載されています。ザガーロは肝臓で代謝されるお薬です。さらに半減期が3~5週間と非常に長く体内に蓄積されるお薬です。そのためザガーロによって肝機能障害が認められても、中止したらすぐ元に戻るわけではありません。以上にて、重篤な肝機能障害がある方は投与できないお薬となっています。
一方で、どの程度が重篤かは難しいところです。肝臓の病気で治療を受けている方は、事前に主治医に相談してみましょう。また肝機能障害が軽度であってザガーロが使用できる方も、肝機能障害が悪化するリスクは常に念頭に置いておき、定期的に採血を行うようにしましょう。
3.ザガーロは胎児に影響しないの?
男性がザガーロを内服しながら妊娠した場合、奇形があったという報告はありません。一方で女性が内服すると、男性胎児の生殖器官異常が報告あるため注意してください。
ザガーロは男性ホルモンに影響を与えるお薬です。そのため、ザガーロを内服しながら妊娠して良いか心配される方も多いかもしれません。実際に、またザガーロの臨床試験のまとめでは、ザガーロ投与中に男性被験者のパートナー12例が妊娠・出産を迎えていますが異常報告はありませんでした。
ただし、ザガーロの成分自体が直接胎児に影響することは証明されています。ザガーロの添付文章では、女ラット及びウサギにデュ タステリド(ザガーロ)を経口投与した結果、オスの性器がメス化されたとの報告があります。これは妊娠女性にザガーロの成分の曝露により、胎児の男性ホルモンが低下し、男子胎児の外生殖器の発達を阻害する可能性が示唆されたことになります。
ザガーロはカプセルに入ってるため、カプセル自体触っても危険はないです。しかしカプセルをつぶして中身に触れると経皮吸収されて危険なため、妊娠女性はザガーロの取り扱いには注意しましょう。
このようにザガーロの成分自体が胎児に良くないとなると、躊躇される方も多いと思います。副作用も性機能減少など妊娠の障害になることが多いため、妊娠を考えている方はザガーロの休薬を考慮してもよいかもしれません。
ただしザガーロは、1~2日内服を中止しても体内にとどまり続けます。休薬期間は5週間程度必要なため、最低ザガーロを1か月は中止してみてください。
4.ザガーロで注意するもので飲み合わせに注意するものは?
ザガーロは絶対に一緒に内服してはいけないお薬はありません。CYP3A4阻害作用を有するお薬は注意が必要です。
ザガーロは内服併用禁忌となるお薬はありません。ただし、CYP3A4という酵素でザガーロは代謝されます。そのためCYP3A4が阻害されるお薬と一緒に使用すると、ザガーロの血中濃度が上昇する可能性があります。
具体的にザガーロの添付文章では、リトナビルが挙げられています。しかしリトナビルは、HIV(エイズ)の治療に用いられるお薬のため、普段生活していればほとんど内服することはないでしょう。
CYP3A4を阻害するお薬としては、
- 抗菌薬(エリスロマイシン、クラリス)
- 降圧薬(Ca拮抗薬(ワソラン))
- 抗真菌薬(イトリコナゾール)
- 不整脈薬
- ホルモン製剤
- H2ブロッカー
など様々なお薬があります。人によってはザガーロを他の医師に話したくないと思うこともあるかもしれませんが、影響を受ける薬がたくさんあるため、必ず処方する医師が別の場合はザガーロを内服している旨を伝えてください。
5.ザガーロはアルコールと一緒に内服して良いの?
ザガーロは、アルコール自体で効果は減弱しません。しかしアルコール自体がAGAに良くないので、注意してください。
ザガーロの添付文章では、アルコールと一緒にザガーロを内服して効果が減弱するという記載はありません。そのため、ザガーロを内服中にアルコールを飲んでいけないわけではありません。
一方で、アルコールも飲みすぎには注意してください。アルコールを飲みすぎると、肝臓に負担をかけてしまいます。ザガーロは肝臓で代謝されるお薬のため、アルコールを飲みすぎて
- アルコール性肝硬変
- 脂肪肝
など肝機能障害が出現すると、ザガーロ継続が難しくなります。またアルコール自体がAGAに良くないです。アルコールを肝臓で代謝する時に、
- システイン
- メチオニン
などのアミノ酸を一緒に消費します。これらは、実は髪の毛の成分にもなります。そのためアルコールを肝臓で代謝しようとすると、髪の毛の元になる成分が使われてしまうことになるのです。
またアルコールは、肝臓でアセトアルデヒドに分解されます。このアセトアルデヒドは、AGAの原因であるジヒドロテストステロンを上昇させます。ザガーロは、このジヒドロテストステロンの生成を抑制する作用でAGAを予防するお薬です。
そのためザガーロでジヒドロテストステロンを抑えようとしても、アルコールを飲みすぎてしまうと効果が減弱する可能性があるので注意しましょう。
6.ザガーロを内服中に他に注意することはあるの?
腫瘍マーカーのPSAを採血した際は注意してください。実際のPSA値から50%低下して測定値が出てきます。
ザガーロを内服した方で癌検診などされた方は注意してください。腫瘍マーカーの一つであるPSAが50%ほど低下して測定されます。PSAは、前立腺癌の腫瘍マーカーです。
PSAは、最も感度が高い腫瘍マーカーとして知られています。他の腫瘍マーカーは少しくらい高くても、画像上異常が無ければ経過観察になりますが、PSAは4.0ng以上であれば画像の異常の有無に関わらず、前立生検が推奨されています。
そのため、PSAのわずかな値な違いで積極的に精査した方が良いか決まります。ザガーロは、このPSAの値を50%ほど低下させる作用があります。これは決して前立腺癌を抑えてPSAが低いわけではありません。検査値が間違って出てきてしまうのです。
そのため、PSAの値を2倍して計算する必要があります。ザガーロを内服している方は、40~50代の男性が多いと思います。この年代の男性は、定期的にPSAを測定して前立腺癌のチェックをする機会も多いと思います。
ザガーロを内服しているのを伝えるのをためらう人もいるかもしれないですが、前立腺癌は初期であれば手術で完全に治すことができる病気です。ぜひ医師に事前にお話ししてください。
まとめ
- ザガーロは、勃起不全、性欲減退などの副作用があります。
- ザガーロは、肝機能障害がある人は注意が必要です。
- ザガーロは、男性が内服中にパートナーが妊娠しても問題は指摘されていません。ただし妊婦さんが直接ザガーロを摂取すると、男性胎児の性器異常が指摘されているため注意してください。
- ザガーロは、一緒に内服してはいけないお薬はありません。
- ザガーロは、アルコールと一緒に接種しても問題はありません。ただしアルコールの大量摂取は、AGA自体の悪化につながるため注意してください。
- ザガーロを内服してる人は、PSAの測定値には注意してください。
投稿者プロフィール
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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