漢方の気血水とは?
-
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
病気を治療していく上では、きちんと「診断」することが大切です。診断名を間違えてしまうと、その病気はなかなか治りません。
西洋医学では診断をきっちりとつけるために、検査というツールを使います。東洋医学における診断は、問診や診察から行っていきます。これによって結論付けられた診断のことを「証」といいます。
東洋医学における診断、「証」とは、患者さんの自覚的・他覚的な症状のすべてを整理して総合的なものです。それと同時に、それを元に適切な生薬を選んで治療していくことになります。証を決めるためには陰陽・気血水・症候の3要素が大切です。ここでは、漢方における気血水について学びましょう。
1.気血水とは
漢方では身体の不調を「気・血・水」の異常ととらえていきます。
漢方医学では精神疾患の病態を含めた体の不調を、気血水の異常としてとらえます。漢方では、私たちの身体は気・血・水の3つの要素が体内をうまく巡ることによって、健康が維持されていると考えます。これらが不足したり、滞ったり、偏ったりしたときに、不調につながると考えます。
「気」とは、生きていく上で必要なエネルギーのことです。生命の根源ともいえます。息を吸ったり、食べ物を摂取することで、体内に取り入れられます。目に見えずに働きだけがある「気」が乱れるということは、西洋医学でいう「代謝」が悪くなっていきます。
代謝が落ちるということは、循環が悪くなって血や水の流れが悪くなってしまいます。このため免疫力の低下を引き起こし、風邪を引きやすくなったりします。また、命を構成するエネルギーであるため、不足すると心身にも影響をきたし、精神疾患や自律神経症状などにつながります。気は目に見えないため、見極めるのが非常に難しいです。問診だけでなく、全身症状を総合的に見て判断しなければいけません。
「血」は私達を構成する水分のうち、赤い液体を表します。つまり血液および血液が運んでいる栄養分のことです。
「水」は私達を構成する水分のうち、無色の液体を表します。汗、唾液、尿などの血液以外の全ての体液のことです。
東洋医学で重要な陰陽の考え方であてはめると、「気」は反応性の高い「陽」ととらえることができます。「血」「水」は「気」が体内で変化してつくられ、「気」の力によって体を巡ります。このため、反応性の低い「陰」と考えることも出来ます。陽である「気」は反応性が高いので、不調になると先に低下します。「血」や「水」は、続けて低下するのが一般的になります。
このように漢方では、「気」「血」「水」の3要素のバランスが崩れて病気が発症し、進行すると考えられています。
2.漢方での気血水の異常とは?
気うつ・気虚・気逆・瘀血・血虚・血熱・水毒・津虚の8つの異常を考えていきます。
それでは「気」「血」「水」それぞれの異常を確認していきましょう。気血水の過不足や滞りのバランスによって、主に以下の8つに分類されることが多いです。
気の異常 |
気うつ(気滞) | 気が上手く流れない状態 |
気虚 | 気の足りない状態 | |
上衝(気逆) | 怒りやストレスで気が上昇する状態 | |
血の異常 |
瘀血 | 冷えなどで血のめぐりが悪い状態 |
血虚 | 血が足りない状態 | |
血熱 | 血に熱が入り、血行が加速している状態 | |
水の異常 | 水毒(水滞) | 余分な水がたまり、滞っている状態 |
津虚 | 水が不足している状態 |
気血水の乱れによる症状は以下のようになります。
気の異常 (自律神経) |
気うつ | 抑うつ気分、呼吸困難、喉頭部違和感など |
気虚 | 意欲低下、疲労感、だるさ、食欲低下など | |
気の上衝 | 頭痛、めまい、発汗、のぼせ感、イライラなど | |
血の異常 (血液) |
瘀血 | 頭痛、月経異常、肩こり、遷延する抑うつなど |
血虚 | 貧血、めまい、動悸、不安、健忘など | |
血熱 | 不安、焦燥、のぼせ、イライラなど | |
水の異常 (代謝や免疫) |
水毒・水滞 | めまい、むくみ、頭痛、動悸、不安など |
津虚 | 乾燥、尿の減少、目のくぼみ、声のかれなど |
まとめ
漢方では身体の不調を「気・血・水」の異常ととらえていきます。
気うつ・気虚・気逆・瘀血・血虚・血熱・水毒・津虚の8つの異常を考えていきます。
投稿者プロフィール
-
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
最新の投稿
- フリバス2020年7月30日フリバス錠・OD錠の副作用と安全性について
- フリバス2020年7月30日フリバス錠・OD錠の効果と特徴について
- 頭痛2017年4月9日痛み止めで逆に頭痛?薬物乱用頭痛について
- エビリファイ2017年4月8日アリピプラゾール錠の効果と副作用