ダイエットと拒食・食べ過ぎと過食の違いとは?

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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「摂食障害」と聞いて、あなたはどんなイメージを持ちますか?

「あれってやせたがる若い女の子がなるんでしょ。」
「私は食べるのが大好きだしダイエットもしないし、関係がない。」
「食べる量をコントロールできないなんて、意志が弱いだけじゃないの?」

そんな風に、自分とは関係のない遠い世界の話だと思っていませんか?けれど本当は、どんな人でもなる可能性があるかなり身近な病気です。

現在症状を抱えて苦しむ多くの患者さんの中には、あなたと同じように「自分は大丈夫、私には関係がない」と思っていた人がたくさんいます。

病院で治療を受ける人は一部にすぎず、表面上はごく普通に学校へ行き、仕事をし、家庭を持って子育てをしながら、陰で症状を抱える隠れ患者さんがとても多いと言われています。年齢層も広く、高齢の患者さんや男性の患者さんも最近は増えています。もしかしたら、あなたの大切な誰かがそうなっているかもしれません。

摂食障害は、正しい知識を持っているかどうかで、病気が深刻化してしまうかが左右されます。拒食とダイエット、過食と食べ過ぎはどのような違いがあるのでしょうか?

ここでは、摂食障害発症に先がけておこるちょっとした食行動や感情の問題について、簡単に紹介してみたいと思います。

 

1.摂食障害(過食・拒食)は日常の中からはじまる

摂食障害とは、身体的病気や障害が無いのに正常な食生活ができなくなった状態のことです。日常生活の中から、少しずつ始まっていきます。

摂食障害で見られる食行動の異常は、

  • 絶食に近い食事制限
  • 過食嘔吐
  • 下剤乱用
  • 激しいむちゃ食い

など、衝撃的なものばかりが取りあげられることが多いですね。そんな話を聞けば、「摂食障害は特別な病気で、自分とは関係がない」と思ってしまうのは当然かもしれません。

しかし、その始まりは、誰にでもよくあるちょっとした変化だったりするのです。日常生活の中から少しずつ過食や拒食といった摂食障害がはじまっていきます。

 

摂食障害とは、「身体的病気や障害が無いのに、正常な食生活ができなくなった状態」のことを指します。そもそも、正常な食生活とはどのようなものを言うのでしょうか。

それは必ずしも、一日3食を毎日バランス良く食べなければいけないわけではありません。2食の方が調子のいい人、反対に小分けに食べる方がいい人、仕事の都合で一般的な時間帯には食べられない人など、何をどう食べるのがいいかは体質や生活によって違います。

また、エネルギーの消耗が激しかったときに大食になる、とてもショックなことがあったときや体調が悪いときに食べられなくなるなどは正常な反応です。

正常な食生活とは、自分の身体状態や生活に見合った、臨機応変な食事の摂り方ができるということです。

 

2.過食の危険信号

空腹とは関係なしに食べたいという気持ちが湧いてくるなどの変化は、過食に発展する心からの危険信号です。

では、どのようになったら「正常」とはいえなくなってくるのでしょうか。正常な食生活の基本は、自分の空腹や満腹や胃腸の不調を自然に感じられることにあります。

「自分は毎日きちんと食事をとっているから大丈夫」という人、

  • ちゃんと自分の空腹と満腹がわかって食べていますか?
  • お腹がすいていないのに、つい目の前のものをダラダラ食べることが増えていませんか?

食べることには、身体的満足を得る以外に、精神的満足を得る効果があります。心の苦しさを一瞬忘れさせてくれる手段として、食べることは一番手っ取り早いとされています。

特に、甘いものや濃い味のもの、ご飯やパンにばかり手が伸びてしまう、空腹とは関係なしに食べたいという気持ちが湧いてくるなどの変化は、心からの危険信号とも言えるのです。

 

3.「食べ過ぎ・やけ食い」と「過食」の違いとは?

食べることをコントロールできなくなっている状態が過食です。そんな時は、食べ過ぎてしまう自分の心の声に耳を傾けてみましょう。

食べ過ぎややけ食いは、よくあることです。

そのすべてが、心の病の始まりというわけではありません。それでは、その違いはどうやって見分ければよいのでしょうか?食べている最中と終わった後の気持ちに着目してみましょう。

好きなものを目の前に出されてつい手が止まらなくなった。

  • ストレス発散に、友人とケーキバイキング
  • 頑張ったごほうびに、高級チョコレートを一箱1人で食べる
  • お腹は苦しいけど、美味しかったし楽しかったしまぁいいや

そう思えて日常生活や健康に差しさわりがないなら、特に問題はありません。けれど、

  • 好きでも美味しくもないものなのに食べ過ぎて嫌な気分になっていませんか?
  • 食べた後にいつも後悔して、自己嫌悪におちいっていませんか?
  • 明らかな健康上の問題が出ているのに、食べ過ぎを止められなくなっていませんか?
  • 食べ物に使うお金が多すぎて、欲しいものが買えないころはありませんか?
  • 無駄にスーパーやコンビニの食品コーナーをうろつくことが習慣になっていませんか?

そのようなことが続くなら、心が苦しんでいるサインです。そのまま放置していると、過食症を発症することもあり得ます。食べ過ぎたときに思わず吐いて楽になったことをきっかけに、過食嘔吐が習慣になり、あっという間に重症化していく人もいます。

食べ過ぎてしまう自分の心の声に耳を傾けてみましょう。あなたの意志の弱さではありません。人それぞれ、どういう時に食べ過ぎてしまうかという傾向があります。

恋愛関係・友人関係・家族関係など、ある特定の関係に限ったストレスが食べ過ぎの原因になっていたり、自分のコンプレックスや過去の傷に関わっていたり、寂しいと食べてしまう、腹が立つと食べてしまうなど、苦手な感情からの逃げ場が食べ物である場合もあります。

そのような自分の傾向を知り、食べ過ぎが続くときに自分の心の負担が増えていないかと思いやれるだけでも、深刻な過食症への進行を食い止めることができます。心の問題と食べ過ぎがつながっている場合、意志の力は上手く働かなくなってしまいます。

自分が弱いと責めるのではなく、「心が苦しいのかもしれない」と、優しい気持ちで見てあげてください。

4.拒食の危険信号

3日以上たっても食事がのどを通らないときは、精神科や心療内科を受診することをおすすめします。

大きなショックやストレスがあったときに食べられなくなるのは、自然の反応です。

その場合、拒食症の始まりとは言いませんが、長い期間食べずにやせた状態が続くと、身体が危機を感じて過食の衝動がおこったり、反対にいざ太ろうとしても食事を受け付けなくなってしまったり、なぜか太るのが恐くなって拒食症になってしまったりするケースがあります。

明らかな精神的ダメージにより食事が摂れなくなった時は、2~3日でしたらストレスの反応として仕方のないことです。ですが3日以上たっても食事がのどを通らないときは、精神科や心療内科を受診することをおすすめします。

精神的ダメージがあまりに強い場合は、心療内科や精神科を頼る手もあります。
自分自身で食べられない原因がわかっている場合は、深刻な拒食症に発展することは少ないと言われており、身体・精神面への早めの対処で防ぐことができます。

 

5.「ダイエット」と「拒食」の違い

拒食症は、自分に対しての関心が非常に強く、それを満たすための自己愛の表れとしての「やせていることへの依存」です。何のために痩せたいのか、そこに自分が周囲から優りたいという気持ちが強い時は注意してください。

精神的なストレスから食事がとれなくなるのは、本人にも自覚があるので大きな問題には発展しにくいです。拒食で問題となるのは、自らが望んで食べない選択をしている場合です。

自分の理想の体型や美しさや健康を目指して節制をすること自体は、別に悪いことではありません。ですが、それはあくまで、自分の人生をより良く、楽しくするための適度な努力の範囲であるべきです。

やせていないと自分には価値がない気がする、ダイエットや目的の食事内容が上手くいかなくなると気分が落ち込んでしまうなど、苦しい食事制限は摂食障害発症の引き金になることがあります。

  • 無理なダイエットや体質改善を目指して、本能的な空腹を我慢し過ぎていませんか?
  • 食べたいと思っているのにカロリーや添加物や栄養ばかりが気になって、恐くて食べられないということになっていませんか?
  • 知らないうちに自分の限界を超えた節制をしていませんか?
  • 食事制限を守れないときの自分を許せていますか?
  • いつの間にか周囲との競い合いになって、友人より1kgでも細くなければと自分を追いつめていませんか?
  • やせなければ恋人にフラれてしまうなど、苦しい思考に支配されていませんか?
  • 食事制限のために、会食や付き合いを避けるようになっていませんか?

そういう行動や思考のパターンは、心にどこか苦しいものを抱えている表れとも言われます。その場合、単純なダイエットのレベルにおさまらず、拒食や過食嘔吐に進行していくことも考えられます。

なぜやせたいか…自分の心に寄りそってみてください。

苦しい食事制限をしている人、あなたはなぜそこまでやせたいのでしょうか?
美味しいものを我慢して、友人たちとの付き合いを避けてまでやせたいのはなぜですか?

拒食症は、「やせることへの依存」とも言われています。自分に対しての関心が非常に強く、それを満たすための自己愛の表れとしての依存なのです。自分が周りよりも優れていたいという気持ちが強い場合は、拒食につながってしまう注意が必要です。

どうしてもやせなければと追いつめられるような苦しい何かを、あなたは抱えているのかもしれません。あなたの心は、やせることで何を得ようとしているのでしょうか?
少しだけでもいいので、自分の心を見つめてください。

 

まとめ

摂食障害を早期に防ぐポイントは、自分の異変に気付き、心の状態や生活環境を振り返ってみることです。

ここまで書かれてきたようなことが自分に当てはまっていないか、少し考えてみましょう。もしそのような傾向があったら、心に何かを抱えていないか、自分を追い込むような生活や人間関係を知らずに作っていないか、自分を労わる視線で見つめてみましょう。

「心の病は自分と関係が無い」と決めこまずに、日ごろから関心を持ってみましょう。気になることがあれば、1人で抱え込まず、学校の保健室、職場の産業医、精神科や心療内科へ相談してください。

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