統合失調症はどういう経過をたどるの?統合失調症の症状経過と予後
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
統合失調症は幻覚や妄想などの陽性症状と、意欲低下や感情鈍麻などの陰性症状を中心とした病気です。
これらの統合失調症の症状は、時間の経過の中で移り変わっていきます。患者さんの時期によって、注意すべき症状が変わってきます。
統合失調症の症状経過は、「前兆期・急性期・休息期・回復期」の4つの時期に分類することができます。これらの時期に応じて、注意すべきことや治療のアプローチがかわってきます。
そして統合失調症は、うまく病気と付き合っていける人もいれば、どんどんと悪くなってしまう人もいます。再発を繰り返してしまうと少しずつ社会機能が低下していき、予後は悪くなっていってしまいます。この統合失調症の予後の違いはどこからくるのでしょうか?
ここでは、統合失調症の症状経過をみていくとともに、統合失調症の予後についても考えていきたいと思います。
1.統合失調症はどのような症状経過をたどるのか
「前兆期・急性期・休息期・回復期」の4つの時期に分けられます。
統合失調症の症状は、4つの時期に分けられます。
前兆期は、統合失調症の症状が始まる前触れの時期です。統合失調症の初期症状がみられます。いろいろなことに敏感となり、不眠や気分の波などがみられますが、あまり気づかれずに症状が進行してしまうことが多いです。
症状が一線を超えると、急性期となります。統合失調症の陽性症状がみられて、激しい症状が認められる時期です。時には症状に支配されてしまって、現実を判断する力が失われてしまいます。こうした時は、強制的な治療も必要になる時期です。このようになると、薬の治療でおさえるしかありません。
急性期が落ち着くと、エネルギーを使い果たしてしまい、休息期に入ります。そしてしばらくすると、少しずつエネルギーが戻ってきて回復期に入ります。ですが完全には戻りません。このような経過を繰り返していくうちに、エネルギーは少しずつ低下していきます。
赤線のように、水準が少しずつ落ちていってしまうのです。このことを、フランス語で水準などを意味するniveau(二ボー)という言葉を使って、「ニボーの低下」という表現をします。
2.統合失調症の症状経過①-前兆期(前駆期)
統合失調症の症状としてははっきりしませんが、不調がいろいろな形で現れてきます。
統合失調症のさまざまな症状が発症し始める時期を「前兆期」といいます。この時期では社会生活を送る上で徐々に困難が増え、本人にも理由が分からず小さな違和感がつのり、ストレスも蓄積されてゆきます。「何となくうまくいかない」ということが増えていきます。
社会生活とストレスは切っても切れない関係ですので、その原因が病気にあると気づかない方が多いです。生活全般において自分と周りとのズレを感じつつも我慢し続けてしまうために、不眠や食欲不振などに悩まされ、抑うつ状態に陥ってしまうことも少なくありません。
詳しくは、「統合失調症の初期症状にはどのようなものがあるか」をお読みください。
3.統合失調症の症状経過②-急性期
陽性症状が目立つ時期です。
幻覚や幻聴といった統合失調症の主要な陽性症状が現れるようになると、「急性期」と呼ばれる段階に入ったことを示します。
あらゆることに対して懐疑的になり、周りに悪口を言われているのではないかという被害妄想を常に抱き、不安感が高まります。その結果、社交・友人関係にヒビが入り、社会生活に支障をきたします。また生活リズムが狂い、日常生活までも困難になってしまいます。さまざまな異常行動をとるようになるのもこの時期です。
自分自身が病気であるという認識ができなくなることも多いです。幻覚や妄想に左右されてしまい、手が付けられなくなってしまうこともあります。このような状態になると、強制的にでも治療をすすめていく必要があります。急性期の症状は、薬で抑えるしかありません。
4.統合失調症の症状経過③-休息期(消耗期)
陰性症状が目立ってきます。
急性期を過ぎてエネルギーがしぼんでゆくと、次は「消耗期」に入ります。明らかな陽性症状が収まっていくのと同時に陰性症状が現れ始め、常にダルさや眠気を感じ無気力状態の時間が多くなります。
急性期に多く見られる幻覚や妄想といった症状はおさまり、現実を見ることができるようになるのですが、このことがかえってストレスになることもあります。
いくら寝ても寝足りない過眠傾向などが現れるため、周りからすれば怠惰にしか見えないこともあります。
しかしこの時期では、本人のペースに合わせてゆっくりと休息することが大切です。かなり長期間にわたることもあるこの時期には、周りの人が病気と症状を理解し暖かくサポートしてあげること、そして何より辛抱が不可欠です。
5.統合失調症の症状経過④-回復期
少しずつ病状が回復していくので、リハビリを進めていきます。
その後、徐々に病状が回復していく「回復期」が来ます。少しずつエネルギーが戻ってきて、活動が広がっていく時期です。
病気に罹る以前の社会生活に少しずつ近づき、意欲も取り戻してゆきます。しかしこの時期には、病状の回復に伴って現実を見る余裕が出てくるために、失ったものが見えてきます。これによって、心理的に大きなストレスとなります。
病気を受け入れることができずに、「死にたい」という希死念慮が出てくる方もいます。この時期は行動に移すエネルギーもあるので、とても注意が必要です。また、社会復帰に対する心理的不安も大きくなります。
このような部分が、最終的な目標である社会復帰の際の障壁になることが少なくなく、最後まで周りのサポートが欠かせません。また、よくなってきたからといって服薬を中断しないように注意が必要です。
6.統合失調症の予後を決める要因とは?
予後がよい条件は、「発症するのが遅い・もともと備わっている社会適応力が高い・早期に治療ができる・急激な発症・緊張型>妄想型>破瓜型」です。
以前より治りにくい難病といわれてきた統合失調症は、現在でも原因が解明されているわけではありません。しかし、治療薬についての研究が進み、医師の指示に従ってきちんと服用を続けていくことで元の生活を送れるようになるケースも増えてきています。
症状も回復の経過も患者さんによってさまざまですが、多様な統合失調症の患者さんを30年追跡調査した研究報告によると、およそ7割の患者さんが「充実した生活」を送れるようになったそうです。
統合失調症はいろいろな発症の仕方がありますが、予後の違いはどのような点で出てくるかを考えてみましょう。
統合失調症は、年をとってから発症した場合の方が比較的予後が良好です。すでに身につけてきた社会能力の基盤があるために、機能も失われずに回復も早いことが多いようです。また他の病気にも言えることですが、早期発見・早期治療であれば予後もそれほど悪くはなりません。
統合失調症は、症状が徐々に現れる場合と、前兆もほとんどなく急に症状が現れる場合があります。後者のほうが症状は派手で悪そうに見えますが、回復するのも早いです。軽い症状が長く続き、急激に悪化することもないような患者さんの方が、治療がなかなか上手くいかずに予後はよくありません。
タイプ別に見てみると、比較的早いうちに発症する解体型が最も予後が悪いです。症状が激しい緊張型は比較的予後がよく、薬がよく効きます。妄想型はその中間で、予後はさまざまです。
また、統合失調症は他の病気と異なって、加齢が有利に働く病気です。時間の経過とともに少しずつ症状が改善していくことがあります。このことを晩期寛解といいます。かつては激しい幻聴や妄想で悩まされた患者さんも、年を重ねる中で落ち着いてくることがあるのです。
まとめ
統合失調症の症状経過は、「前兆期・急性期・休息期・回復期」の4つの時期に分けられます。
前兆期(前駆期)は、統合失調症の症状としてははっきりしませんが、不調がいろいろな形で現れてきます。
急性期は、陽性症状が目立つ時期です。
休息期(消耗期)は、陰性症状が目立ってきます。
回復期は、少しずつ病状が回復していくので、リハビリを進めていきます。
統合失調症の予後がよい条件は、「発症するのが遅い・もともと備わっている社会適応力が高い・早期に治療ができる・急激な発症・緊張型>妄想型>破瓜型」です。
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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