ロルメタゼパムの効果と副作用

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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ロルメタゼパムは、エバミール/ロラメットの成分名(一般名)です。現在はジェネリックが発売されていませんので、あまり患者さんが見かけることはすくないかもしれません。

ロルメタゼパムは1990年から発売されている短時間型ベンゾジアゼピン系睡眠薬ですが、安全性が高くて使いやすい睡眠薬です。

ここでは、ロルメタゼパムの効果や副作用について、詳しくお伝えしたいと思います。

 

1.ロルメタゼパムの特徴

ロルメタゼパムでは、どのようなメリットやデメリットがあるでしょうか?まずはじめにご紹介したいと思います。

 

1-1.ロルメタゼパムのメリット

  • 即効性がある
  • 入眠障害に有効
  • 中途覚醒に有効(早朝覚醒にも一定の効果)
  • 抗不安作用がある
  • 肝臓に優しい
  • 他の薬との相互作用が少ない

ロルメタゼパムには即効性があります。飲み続けているとジワジワ効いてくるようなお薬ではなく、薬を飲みはじめたその日から効果が期待できます。眠れないのはつらいので、早く抜け出したいですよね。

睡眠薬の半減期をみれば作用時間を予測することができます。ロルメタゼパムは作用時間が短すぎもせず長すぎもせず、バランスがとれています。入眠障害だけでなく、中途覚醒にも効果が期待できる睡眠薬です。早朝覚醒にもある程度の効果が認められます。

また、薬の構造が抗不安薬のワイパックスと似ていて、抗不安作用がしっかりとしています。

 

他の睡眠薬にはないロルメタゼパムの特徴としては、肝臓への影響の少なさです。ほとんどの薬は肝臓のCYPという酵素によって酸化・還元されます。それが終わると、水に溶けやすいグルクロン酸などの物質と結合させて、尿や胆汁から身体の外に出します。

ロルメタゼパムは、直接グルクロン酸抱合によって腎臓から薬を排泄するという特徴があります。このため、肝臓への影響が少ないのです。

他の薬との相互作用も、CYPの影響によるところが大きいです。ロルメタゼパムの代謝には肝臓の酵素は関係ないので、他の薬との相互作用も少ないのです。

 

1-2.ロルメタゼパムのデメリット

  • 効果がマイルド
  • 睡眠の質が落ちる
  • ふらつきがある(他の睡眠薬より弱い)
  • 翌朝への眠気の持越しがある
  • 依存性があり、離脱症状や反跳性不眠になることがある

ロルメタゼパムのデメリットとしては、効果のマイルドさでしょうか?副作用が少ない分、効果としてはやや弱い印象があります。

また、少しだけ睡眠の質が落ちてしまうというデメリットがあります。浅い睡眠が増えてしまい睡眠のメリハリが悪くなってしまいます。睡眠時間はしっかりと寝たのに疲れがとれない、寝不足に感じてしまう、といったことがあります。

 

また、副作用に注意する必要があります。他の睡眠薬よりは弱いですが、ロルメタゼパムでは筋弛緩作用もあります。このため、ふらつきには注意が必要です。高齢者では、夜にトイレで目覚めることも多くなります。薬が効いてふらついたままトイレに行くと、転倒してしまって骨折してしま うこともあるので注意が必要です。

ロルメタゼパムが長く作用してしまうと、翌朝にも眠気やふらつきが残ってしまうことがあります。朝起きづらくなってしまったり、午前中が集中できなくなる方もいるので注意してください。

ロルメタゼパムでは少ないですが、漫然と服用を続けていると依存になってしまう方もいます。薬をやめていく時に、イライラや不安などの離脱症状や不眠がよけいに悪化する反跳性不眠などがみられることもあります。

 

2.ロルメタゼパムの作用時間と強さ

ロルメタゼパムは半減期が10時間の短時間型睡眠薬です。効果の強さは「やや弱い~普通」、入眠障害から中途覚醒や早朝覚醒にも効果が期待できます。

ロルメタゼパムを服用すると1~2時間で血中濃度がピークになり、そこから10時間かけて半分の量まで身体からぬけていきます。ですから寝る前にロルメタゼパムを服用すると、30分くらいで効果がでてきて寝つきをスムーズにしてくれます。このため、睡眠中を通して効果が持続してくれる睡眠薬です。

この10時間というのを「半減期」といいます。薬の濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、作用時間を考える目安になります。ロルメタゼパムは半減期が短い「短時間型」に分類されます。

睡眠薬のタイプ(作用時間)と特徴をまとめました。

睡眠障害にもいろいろなタイプがあります。寝つきが悪い「入眠障害」、途中で目が覚めてしまう「中途覚醒」、明け方に目が覚めてしまう「早朝覚醒」。睡眠障害のタイプに合わせて、睡眠薬の作用時間を変えていく必要があります。ロルメタゼパムは、入眠障害から中途覚醒が目立つ方に使うお薬です。

 

ロルメタゼパムでは筋弛緩作用が弱く、他の睡眠薬に比べると睡眠に選択的に作用します。そのかわり作用がマイルドで、効果が「やや弱い~強い」睡眠薬です。まずは1mgから始めることが多いです。効果を見ながら、増減させていきます。強く効きすぎてしまったら0.5mg、効果が不十分でしたら2mgまで使うことができます。睡眠薬の効果の強さは、薬の作用の強さと量によって決まってきます。

 

3.睡眠薬での作用時間の比較

半減期をもとに、睡眠薬の作用時間を予想することができます。ロルメタゼパムは作用時間の短い睡眠薬です。

代表的ンな睡眠薬の作用時間(半減期)を比較しました。

睡眠薬の作用時間の違いを比較してみましょう。

薬の効果を見る時は、最高血中濃度到達時間(ピーク時間)と半減期をみていきます。

最高血中濃度到達時間が短いほど、効きが早いということですね。ほとんどの睡眠薬が1~3時間になっているかと思います。中間型や長時間作用型では長いものがありますね。これらのお薬では即効性はあまり期待できません。

半減期をみると作用時間が予想できます。超短時間型やロルメタゼパムをはじめとした短時間型では、即効性を期待して使われます。入眠障害だけで困っているならば超短時間型、中途覚醒で困っているならばロルメタゼパムなどの短時間型がよいでしょう。

中間型や長時間型は、身体に薬が少しずつたまっていくことで寝付きやすい土台を作るようなお薬です。中間型は4~5日かけて、長時間型は1週間以上かけて効果が安定します。

 

4.ロルメタゼパムの副作用

ロルメタゼパムの副作用にはどのようなことを気を付ければよいでしょうか?その対策と一緒にみていきましょう。

 

4-1.眠気の翌朝への持ち越し

ロルメタゼパムでは、しばしば持ち越し効果が認められます。睡眠時間を確保しても変わらない場合、減量したり、作用時間の短い非ベンゾジアゼピン系睡眠薬に変えてみましょう。

睡眠薬は夜だけに効いてくれれば理想ですね。ですが睡眠薬が効きすぎてしまうと、翌朝まで眠気が続いてしまうことがあります。これを「持ち越し効果(hung over)」といったりします。眠気だけでなく、だるさや集中力の低下、ふらつきなどがみられます。

「眠気が強くて朝起きれない」
「午前中がぼーっとしてしまう」
となってしまうと生活に支障がきてしまいますね。事故などにつながることもあるので注意が必要です。

 

ロルメタゼパムは短時間型の睡眠薬に分類されます。短時間といっても半減期(血中濃度が半分になるまでにかかる時間)は10時間ですので、睡眠中にしっかりと効果が持続する睡眠薬です。人によっては効きすぎてしまうことがあります。そうすると、翌朝にも睡眠薬の効果を持ち越してしまう「持ち越し効果」がみられるのです。承認時および市販後調査をまとめると、1.17%の報告があります。

 

このような時は、はじめに睡眠時間がちゃんと確保できるかを確認します。睡眠時間が短かったら、薬の効果が朝に残ってしまうのも当たり前ですものね。その場合は、睡眠時間を確保するようにしていただきます。それでも改善しなければ、より短い作用時間の睡眠薬に変えるか、ロルメタゼパムを減量していくかになります。

2mgを使っていて睡眠を改善できている方では、まずは減量を検討していきます。睡眠薬の量を減らすと作用時間が短くなります。

減量すると上手くいかない時は睡眠薬を変更していきます。ロルメタゼパムより作用時間が短い超短時間型の睡眠薬を試してみてもよいでしょう。できるだけ非ベンゾジアゼピン系睡眠薬のマイスリー・アモバン・ルネスタから試してみましょう。

 

4-2.健忘

健忘は、ロルメタゼパムではあまりみられません。お酒と一緒にロルメタゼパムを服用しないようにしましょう。

睡眠薬を服用した後に、記憶することができなくなってしまうことがあります。朝起きると自分でも全く覚えていないのにお菓子の袋が散らかっていたり、友達に電話してしまっていたりします。アメリカの議員がマイスリーを服用した後に、記憶がないままに車の事故をおこしてしまったことを機に注目されるようになりました。

記憶することができないだけですので、不思議かもしれませんが周囲からみると普通に行動しています。当の本人は全く覚えていないので不気味ですし、生活にも支障をきたしますね。

 

睡眠薬を飲んでから物忘れが起こってしまうので、「前向性健忘」といいます。このような状態になるのは、睡眠薬が中途半端な覚醒状態にしてしまうためです。その結果、海馬を中心とした記憶に関わる部分の機能だけが落ちてしまうのです。

前向性健忘は、睡眠薬が急激に作用する時に起こりやすいです。

  • 効果の短いタイプの睡眠薬
  • 睡眠薬の量が多い
  • アルコールと睡眠薬を併用した時

このような時には、前向性健忘がおこりやすくなってしまいます。ロルメタゼパムは短時間型の睡眠薬ですが、そこまで短いわけではないので健忘の副作用は少ないです。ほとんどの場合がお酒と一緒にロルメタゼパムを服用して起こります。

  • 効果の長いタイプの睡眠薬に変える
  • ロルメタゼパムを減量する
  • アルコールと一緒に睡眠薬を絶対に飲まない

お酒が原因のことがほとんどなので、お酒と一緒にロルメタゼパムを服用することは絶対にやめましょう。

 

4-3.ふらつき

ロルメタゼパムでは少ないです。ふらつきがみられたら、減量するか、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬に変更を検討しましょう。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は睡眠作用を期待して作ったお薬ですが、その他にも筋弛緩作用も働いてしまいます。緊張が強くて肩がこってしまったり、身体に緊張やこわばりがある時はむしろ大歓迎の作用になります。ですが、高齢で足腰が弱っている方に筋弛緩作用が強く出てしまうと、ふらついてしまって危ないです。トイレで夜中に目が覚めた時に、眠気も相まって転倒して骨折してしまうようなこともあります。

ロルメタゼパムは睡眠中に作用が持続するような睡眠薬です。しかしながら、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の中では、筋弛緩作用が少ないです。ですが、ふらつきには注意をしましょう。承認時および市販後調査では0.95%の報告があります。

 

ふらつきがみられた場合、ロルメタゼパムを減量するか、睡眠薬の変更を検討します。ロルメタゼパムを少なくすれば作用も弱くなってしまいますが、ふらつきの副作用も軽減されます。減量が難しい時は、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬のマイスリー・アモバン・ルネスタへの変更を検討しましょう。これらの睡眠薬は作用が睡眠に特化していて、筋弛緩作用が非常に少ないです。高齢の方では、積極的に切り替えを検討した方がよいかも知れません。

 

4-4.睡眠薬依存

ロルメタゼパムを漫然と使用していると依存が形成されます。離脱症状や反跳性不眠のために、なかなか薬をやめられなくなる方もいらっしゃいます。

睡眠薬では、依存してしまって止められなくなってしまうことがあります。ですから、ちゃんと出口を見据えて薬を使っていくことが大切です。

依存には大きく3つのポイントがあります。身体依存と精神依存と耐性の3つです。

身体依存とは、薬が急になくなってしまうことで身体がビックリしてしまう状態です。身体が薬のある状態に慣れてしまうことで、急になくなるとバランスが崩れてしまいます。身体の依存です。睡眠薬を急にやめてしまうと、むしろひどい不眠(反跳性不眠)や体調不良(離脱症状)におそわれることがあります。

精神依存とは、精神的に頼ってしまうということですが、これは効果の実感の強さが重要です。効果が早く実感され、効果がきれる実感が大きいものほど精神的に頼ってしまいます。心の依存です。不眠は非常につらいですから、睡眠薬には頼ってしまうようになります。

耐性とは、薬が体に慣れてしまい効果が薄れていくことです。はじめは1錠で効いていたのに少しずつ眠れなくなってしまう時は、耐性が形成されています。

 

睡眠薬の依存を心配されている方は多いですが、アルコールに比べたらマシです。過度に心配することはありません。医師の指示通りの量を守って服用していれば、ほとんど問題ありません。睡眠薬依存が本当に問題になるのは、睡眠薬の量がどんどん増えて大量になってしまう方です。耐性ができて薬が効かなくなっていき、その結果どんどん薬の量が増えているのです。このような方は注意が必要ですが、ちゃんとある程度の量でコントロールできているならば大丈夫です。

 

ロルメタゼパムは安全性の高い睡眠薬で、依存性はそこまでありません。ですが、漫然とした使用は必ず避けなければいけません。

ロルメタゼパムなどのベンゾジアゼピン系睡眠薬よりも、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の方が依存性は少ないです。できれば非ベンゾジアゼピン系のマイスリー・アモバン・ルネスタなどにしたほうがよいです。

そして、睡眠薬とアルコールの併用は絶対にやめましょう。眠れないから寝酒をしている方も多いかも知れませんが、これは睡眠には悪影響です。それに加えて睡眠薬と併用すると、依存が一気に形成されてしまいます。絶対にやめましょう。

 

5.ロルメタゼパムが向いている人とは?

  • 入眠障害だけでなく中途覚醒や早朝覚醒もある方
  • 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の効果が期待できない方
  • 肝機能が落ちている方
  • 高齢者
  • いろいろな薬を服用している方

ロルメタゼパムを寝る前に服用すると、30分くらいで効果がでてきて寝つきをスムーズにしてくれます。ロルメタゼパムは睡眠中にもしっかりと作用してくれていて、理論的には飲み始めてから1~2時間でピークに達して、さらに10時間して半分の血中濃度になる睡眠薬です。

このため入眠障害だけでなく、途中で目が覚めてしまうような中途覚醒の方にも効果が期待できる睡眠薬です。早朝覚醒の方にもある程度の効果が期待できます。ロルメタゼパムの作用時間は、ちょうど睡眠時間をカバーしているのです。

 

ロルメタゼパムは効果が良い睡眠薬なのですが、ふらつきや翌朝への眠気の持越しなどの副作用や依存性があります。できれば非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(マイスリー・アモバン・ルネスタ)の方が副作用や依存性は少ないです。ですがこれらの睡眠薬は作用時間が短いものばかりです。睡眠の状態から効果が期待できない方では、ロルメタゼパムなどの短時間型睡眠薬を検討します。

 

ロルメタゼパムの特徴としては、肝臓への影響が少ないことがあげられます。ロルメタゼパムは肝臓で代謝されることなく、腎臓でおしっことして排出されていきます。このため、肝機能が落ちてしまっている方や高齢者などには有効な睡眠薬です。このため薬の相互作用も少ないので、高血圧の薬や脂質異常症の薬など、いろいろな薬を服用している方には向いている睡眠薬です。

 

6.一般名と商品名とは?

一般名:ロルメタゼパム 商品名:エバミール・ロラメット

まったく成分が同じものでも、発売する会社が異なればいろいろな商品があるかと思います。医薬品でも同じことがいえます。このためお薬には、一般名と商品名というものがあります。

一般名というのは、薬の成分の名前を意味しています。発売する会社によらずに、世界共通で伝わる薬物の名称です。「ロルメタゼパム(lormetazepam)」に統一されています。主に論文や学会など、学術的な領域でこれまで使われてきました。

一方で商品名とは、医薬品を発売している会社が販売目的でつけた名称になります。「エバミール(evamyl )」「ロラメット(loramet)」はそれぞれ、製造元であるバイエル薬品株式会社・あすか製薬株式会社がつけた名前です。

 

ロルメタゼパムは安全性が高くて良い睡眠薬なのですが、あまり広まりませんでした。これは販売会社の営業力もあるかとおもいますが、同時期にレンドルミンなどの睡眠薬がいろいろと発売されたこともあります。このような睡眠薬なので、ジェネリック医薬品もほとんど作られませんでした。現在では、ジェネリック医薬品は発売されていません。

 

ロルメタゼパムの効果や副作用について詳しく知りたい方は、
エバミール錠の効果と強さ
エバミールで注意すべき副作用とは?
をお読みください。

 

まとめ

ロルメタゼパムは、GABAの働きを強めて脳の活動を抑えます。

ロルメタゼパムのメリットとしては、

  • 即効性がある
  • 入眠障害に有効
  • 中途覚醒に有効(早朝覚醒にも一定の効果)
  • 抗不安作用がある
  • 肝臓に優しい
  • 他の薬との相互作用が少ない

ロルメタゼパムのデメリットとしては、

  • 効果がマイルド
  • 睡眠の質が落ちる
  • ふらつきがある(他の睡眠薬より弱い)
  • 翌朝への眠気の持越しがある
  • 依存性があり、離脱症状や反跳性不眠になることがある

ロルメタゼパムが向いている方は、

  • 入眠障害だけでなく中途覚醒や早朝覚醒もある方
  • 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の効果が期待できない方
  • 肝機能が落ちている方
  • 高齢者
  • いろいろな薬を服用している方

投稿者プロフィール

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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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