お薬を牛乳やコーヒーで服用するとどうなる?お薬と清涼飲料水との飲み合わせ
お薬を飲むときには、皆さんは何で服用されていますでしょうか?
通常はお水で服用されるかと思います。お薬を製造する過程では、水で服用したときのデータをもとに用法用量が決められています。ですから、水で服用するのが理想です。
ですが飲みかけの牛乳やコーヒーがあった時に、それで飲んでしまったことがある方もいらっしゃるでしょう。このようなときに、お薬の効果や副作用にはどのような影響があるのでしょうか。
アルコール分の含まない飲み物のことを、清涼飲料水といいます。清涼飲料水とお薬には、どのような相互作用があるのでしょうか。
ここでは、お薬を牛乳やコーヒーで飲むとどのようになるのかをはじめ、清涼飲料水との飲み合わせについて考えていきたいと思います。
1.お薬と牛乳の飲み合わせ
牛乳は脂肪が豊富なので、その影響が最も大きいです。食後のお薬は、食事をとれないときは牛乳を飲むと吸収効率の低下を減ずることができるかもしれません。
多くのご家庭で、冷蔵庫には牛乳があるかと思います。お薬を牛乳で飲むとどのようになるのか、みていきましょう。
牛乳には、以下のような4つの特徴があります。
- カルシウム・鉄が豊富
- 脂肪が豊富
- 胃のPH(6.4~6.8)をあげる
- 胃腸の内面に膜を作る
カルシウムや鉄といったミネラルと呼ばれる金属微量元素には、キレート作用があります。キレート作用とは、お薬の成分とくっつくことで化合物を作ることで、これによって吸収効率が変わってしまします。一部の抗菌薬や骨粗鬆症治療薬では注意が必要です。
また牛乳には脂肪が豊富なため、脂溶性のお薬は吸収がよくなります。精神科の薬は脳に作用するために脂溶性のお薬が多く、吸収はよくなることが多いです。とくにロナセンやルーランは、食後と空腹時では大きな違いがあります。このため、「食事をとれないときは牛乳を飲んでから服用する」というのも、お薬の効果を保つ一つの工夫になります。
牛乳を飲むと、胃の中の酸‐アルカリのバランスが変わります。アルカリ性(塩基性)に傾くことで、本来はアルカリ性の腸で溶けるようにできているお薬が胃の中で溶ける可能性があります。いわゆるプロドラッグと呼ばれているお薬で、胃薬のタケプロンなどがあげられます。
物理的な影響として、牛乳が胃腸の内面に膜を作ってしまうこともあります。これによって、吸収が妨げられる恐れがあります。精神科の薬としては、コントミンやレボトミンといったフェノチアジン系抗精神病薬、フェニトインなどがあります。
これら4つの特徴の中では、②の脂肪のお薬への影響が最も大きいです。
2.お薬とコーヒーの飲み合わせ
コーヒーは、CYP1A2阻害作用や利尿作用によって、一部のお薬とは相互作用があります。
コーヒーをお好きな方も多いかと思います。コーヒを手放せないという方もいらっしゃるでしょう。お薬を飲まなければいけないときに飲みかけのコーヒーがあったら、思わずコーヒーに手を伸ばしてしまうかもしれません。
それではコーヒーは、お薬にどのような影響を及ぼすのかについてみていきましょう。
コーヒーに含まれるカフェインには、胃酸分泌亢進作用や利尿作用などがあります。これはコーヒーを飲まれる方は、実感されているかと思います。胃がむかむかしたり、トイレが近くなったりするかと思います。
それ以外にも、コーヒーは肝臓の代謝酵素に影響します。CYP1A2阻害作用があり、喘息などで使われるテオドール、パーキンソン病治療薬のレキップなどがあります。
精神科のお薬としてカフェインとの相互作用に気を付ける必要があるものとしては、フルボキサミン(CYP1A2阻害作用で血中濃度上昇)、リチウム(利尿作用により排泄が促進)があげられます。
コーヒーに関してはお薬との飲み合わせだけでなく、その中枢刺激作用に注意する必要があります。カフェインは興奮物質で、交感神経が刺激されて緊張状態になります。このため不安を生じ、不眠にもつながります。精神症状を引き起こすため、精神疾患のうちでも不安の病気の方は、摂取しないほうが良いです。
カフェインは摂取してから30分程度で覚醒効果が始まり、2~4時間後に効果はピークを迎え、個人差は大きいですがおよそ7時間後まで効果が持続します。
カフェインは、およそコーヒー1杯で100mgほど含まれています。一日に250mg以上摂取していると、慢性カフェイン中毒になるといわれています。カフェインが切れるとイライラしたり、不安になったりします。ですからお薬への影響だけでなく、ほどほどで控えるようにしましょう。
3.お薬とグレープフルーツジュースの飲み合わせ
グレープフルーツジュースは、小腸の吸収に関係するCYP3A4という代謝酵素を阻害します。これによって一部のお薬で、効きすぎてしまいます。
「血圧の薬とグレープフルーツジュースはダメ」、ということをお聞きになったことがある方もいるでしょう。「どうしてグレープフルーツなの?」と思われた方もいらっしゃるかと思います。
グレープフルーツに含まれる成分は、CYP3A4という代謝酵素を阻害します。一時的に邪魔するだけでなく、CYP3A4という酵素そのものの量を減らしてしまいます。
ですからグレープフルーツジュースで一緒に飲んではダメということだけでなく、お薬を服用しているときにはグレープフルーツジュース自体を控えなくてはなりません。
CYP3A4は、小腸で70%、肝臓に30%ほどあります。グレープフルーツジュースは、小腸にあるCYP3A4の働きを邪魔します。小腸ではお薬の吸収が行われますが、この段階でCYP3A4によってお薬は分解されています。グレープフルーツジュースを飲むことでCYP3A4がブロックされ、分解されずにお薬が吸収されます。その結果、お薬が効きすぎてしまうのです。
注意すべきお薬としては、
- アダラートなどのカルシウム拮抗薬の降圧剤
- リピドールなどの脂質異常症治療薬
- ハルシオン・セルシン/ホリゾンなどのベンゾジアゼピン系の睡眠薬・抗不安薬
- ネオラールなどの免疫抑制薬
などがあげられます。
詳しく知りたい方は、「グレープフルーツジュースの薬への影響とは?」をお読みください。
4.お薬と清涼飲料水や食物繊維との飲み合わせ
炭酸飲料では、多少お薬の吸収効率が変わるものもあります。かつて鉄剤と一緒に飲めなかった緑茶は、現在は大きな問題がないと考えられています。食物繊維をたくさん摂取すると、吸収が低下する可能性があります。
これまで、牛乳・コーヒー・グレープフルーツジュースについてみてきました。それ以外の清涼飲料水や日常の食べ物でどのような影響があるのか、最後にまとめたいと思います。
まずは炭酸飲料に関してみていきましょう。最近は自宅で炭酸飲料が作られるものもあり、愛飲されている方もいると思います。炭酸飲料は「酸」ですから、胃を酸性にする作用があります。このため、酸性薬では吸収効率が高まり、塩基性薬では吸収効率が低下してしまいます。
緑茶は健康に良いといわれていて、よく飲まれているかと思います。かつては、「緑茶と鉄剤を一緒に服用すると吸収が低下する」と言われてきました。緑茶に含まれるタンニンという成分が鉄材に結合し、キレート作用で吸収が低下してしまうのです。ですが無視できるほどの影響とのことで、大きな問題はないと考えられています。
つぎに、様々な食事に含まれる食物繊維ですが、生活予防の観点から積極的にとることが推奨されています。ですが大量に食物繊維を摂取したあとですと、腸の中でからめとられてしまってお薬の吸収が非特異的に低下してしまう可能性があります。
まとめ
牛乳は脂肪が豊富なので、その影響が最も大きいです。食後のお薬は、食事をとれないときは牛乳を飲むと吸収効率の低下を減ずることができるかもしれません。
コーヒーは、CYP1A2阻害作用や利尿作用によって、一部のお薬とは相互作用があります。
グレープフルーツジュースは、小腸の吸収に関係するCYP3A4という代謝酵素を阻害します。これによって一部のお薬で、効きすぎてしまいます。
炭酸飲料では、多少お薬の吸収効率が変わるものもあります。かつて鉄剤と一緒に飲めなかった緑茶は、現在は大きな問題がないと考えられています。食物繊維をたくさん摂取すると、吸収が低下する可能性があります。
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