ムコダインの市販薬、ストナ・クールワンの効果と特徴
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
ムコダイン錠(一般名:L-カルボシステイン)は、去痰薬と発売されている医薬品です。ムコダイン錠は痰の成分を整えたり、気道の粘膜をきれいにすることで痰を出しやすくするお薬です。
ムコダイン錠は医薬品のため、基本的には医療機関で診察して処方してもらえなければ手に入りません。一方で同じL-カルボシステインの成分で、市販薬で処方されているお薬があります。
- ストナ去痰カプセル
- クールワン去痰カプセル
主成分であるカルボシステインは、副作用も少なく安全に使用されるお薬のため、痰が絡んだ症状に市販薬としてストナやクールワンを購入することができます。注意しなければならないのは、ストナやクールワンはあくまでも痰を出しやすくするお薬であり、痰がでる原因の疾患を治すわけではありません。
そのためストナやクールワンを飲み続けないと痰が出続ける人は、医療機関を受診して原因を調べる必要があります。ここでは、痰切りの市販薬である効果と副作用の特徴についてみていきましょう。
1.ストナやクールワンのメリット・デメリットは?
<メリット>
- 痰の成分を整えて出しやすくする
- 気管支をきれいにする作用もある
- 副作用が少なく安全性が高い
- 市販薬として医療機関を受診しなくても購入できる
<デメリット>
- 痰や鼻水の原因疾患を治すわけではない
- 8歳以下の小児に適応がない
- 副鼻腔炎や中耳炎に適応がない
ストナやクールワンは、痰切りとして市販で購入できるお薬です。主成分はどちらも同じで、成人の1日量は、
- L-カルボシステイン・750mg
- ブロムヘキシン塩酸塩・12mg
となっています。L-カルボシステインを主成分としたお薬がムコダインです。ムコダイン自体の効果について知りたい人は、「ムコダイン錠・シロップ(L-カルボシステイン)の効果と特徴」についてを一読してみてください。
L-カルボシステインの痰切りの効果としては、
- 気道に分泌される粘液を正常化する。
- 気道の繊毛運動を促し、痰を外に出しやすくする。
という2つの効果を示します。さらにブロムヘキシン塩酸塩は医薬品名はビソルボンです。ビソルボンは
- 痰を薄めて粘りをとる。
- 気道の繊毛運動を促し、痰を外に出しやすくする。
といった効果を示します。この2つの効果を持っているのが、市販薬のストナやクールワンです。
一方でストナやクールワンは、市販薬のムコダインと違う点もいくつかあります。
- 副鼻腔炎や中耳炎に対して適応がない。
- 8歳以上から適応がある。
これはストナやクールワン自体が、
- 副鼻腔炎や中耳炎に対して市販薬が効かない
- 小さなお子さんに市販薬が効かない
わけではありません。これらの方は一度医師の診察を受けてから、薬を処方してもらった方が良いからです。その最大の理由が、ストナやクールワンは痰を調整して外に出しやすくする効果しかないということです。つまりストナやクールワンは、痰がでる原因自体を治療するお薬ではありません。
ストナやクールワンはあくまでも対処療法にすぎません。そのため原因疾患が特定されないまま使用し続けると、思わぬ病気が隠れていることもあります。特に市販薬は診察抜きで手に入るため使用し続けると思わぬ落とし穴が待ってる可能性があるため、適応がないのです。
またストナやクールワンは、繊毛を動かして掃除をするお薬です。そのため、さらさらした痰ですと外に出しやすいですが、泥のようになった膿はドロドロしてしまって繊毛は全く外に出せません。ストナやクールワン含めて膿に対しては、内服薬でコントロールするのは非常に難しいです。
2.ストナやクールワンの適応と用量は?
ストナやクールワンは、1日3回内服することで効果を発揮します。
ストナやクールワンの剤型はどちらもカプセルです。適応疾患としては、
- 痰
- 痰の絡む咳
です。ここで注意が必要なのは、これらの疾患の治療ではないことです。ストナやクールワンは痰を除去するのみの薬です。風邪なら自然に治るのでストナやクールワンで様子をみていてよいのですが、他の病気ですと痰切りだけで様子をみると悪化する可能性があるため注意しましょう。
投与量ですが、
- 成人:1回2カプセル を1日3回経口投与 計6カプセル
- 小児(8歳から14歳):1回1カプセルを1日3回経口投与 計3カプセル
となっています。成人の1日量は、
- L-カルボシステイン:750mg
- ブロムヘキシン塩酸塩:12mg
投与されます。なおムコダインの量はL-カルボシステイン1500mgなので、市販薬は医薬品の半分の量が投与されることになります。
3.ストナやクールワンの薬価は?
ストナやクールワンはムコダインのジェネリック医薬品です。ムコダインの半額程度の薬価で購入できます。
次にストナやクールワンの薬価です。
カプセル数 | 価格 | 1カプセル | |
ストナ カプセル | 18 | 1080円 | 60円 |
ストナ カプセル | 36 | 1900円 | 52.7円 |
クールワン カプセル | 24 | 1400円 | 58.3円 |
クールワン カプセル | 48 | 2500円 | 52.1円 |
※2016年11月25日の製薬会社の希望価格です。
成人の場合は通常1日6カプセル使用するため、
- ストナカプセルは3日分と6日分
- クールワンカプセルは4日分と8日分
が処方されていることになります。参考に、先発品のムコダインの薬価をみてみましょう。
剤型 | 薬価 | 3割負担 | |
ムコダイン錠 | 250mg | 8.3円 | 2.5円 |
ムコダイン錠 | 500mg | 14.7円 | 4.4円 |
ムコダインDS | 50% | 30.6円 | 9.2円 |
ムコダインシロップ | 5% | 6円 | 1.8円 |
※2016年11月25日の薬価です。
となっています。ムコダインは後発品としてカルボシステインも登場しているため、非常に安い薬価で手に入ります。ただし医薬品は、診察費がここに加わります。人によってはレントゲン代や採血代も加わるため、一概にどちらが安いかはいえないところです。
4.ストナやクールワンの副作用は?
ストナやクールワンは、ほとんど副作用がないお薬です。
ストナやクールワンは副作用が少ないお薬です。そのため第二医薬品に分類されており、薬剤師の方がいないドラッグストアでも購入することができます。ストナやクールワンの主成分であるムコダインを参考にみてみましょう。ムコダインの添付文章では、総症例11,042例中100例(0.91%)に副作用が認められました。主な副作用は、
- 食欲不振27例(0.24%)
- 下痢19例(0.17%)
- 腹痛15例(0.14%)
- 発疹11例(0.10%)
となっています。このようにムコダインでも全体の1%以下の出現率ですし、最も多い副作用が食思不振や下痢、腹痛などの消化器症状です。
これらの副作用調査は患者さんの症状をみながら医師が報告して調査されるのですが、本当にムコダインの副作用かどうか調べることはしていません。していないというより、できないといったところが正直なところです。これらの消化器症状も、
- ムコダインの副作用か
- 風邪などの症状か
どちらかはっきりと区別することは医学的に難しいところです。実際に風邪の人は多少なりとも食欲が低下することがほとんどです。
実際に市販薬の添付文章でも、
- ストナの副作用としてかゆみや皮疹、嘔吐・食思不振・下痢、頭痛、血痰があります。
- クールワンの副作用として、3.4%認めています。下痢、食思不振、肝機能障害の順に高い頻度となっています。
と記載されています。
5.ストナやクールワンが内服できない人は?
ストナやクールワンが内服できない人は、ストナやクールワンにアレルギーがある人と他の風邪薬を内服している人です。
ストナやクールワンの添付文章では、禁忌にあたる人は
- ストナやクールワンにアレルギーがある方
- 他の風邪薬を内服している方
1はストナやクールワンに限らず、全ての薬に対していえることです。また、他の風邪薬を内服している方ですと、しらないうちにカルボシステインの成分が過剰投与される可能性があるため禁忌とされています。決してストナとクールワンが飲み合わせが悪い薬があるわけではありません。
その他注意が必要な人は
- 医師の治療を受けている人
- 高齢者
- 妊婦
- 高熱
- 肝障害・心障害のある患者[類薬で心不全のある患者に悪影響を及ぼしたとの報告がある。]
と記載されています。医師の治療を受けている人は先ほどと同じようにカルボシステインの成分が含まれたお薬を内服している可能性があるためです。
ストナやクールワンは高齢者に関しては添付文章では、一般に高齢者では生理機能が低下しているので減量するなど注意することと記載されています。
しかしストナやクールワンは安全性が高いお薬です。逆にストナやクールワンを処方するような痰がでている方は、痰を出す力が高齢者の方の場合弱ってることが多いため、若い方より不快感が強くなると思います。そのため高齢者でもストナやクールワンは内服しやすいお薬となっています。ただし少しでも状態が悪化した場合高齢者は重篤化しやすいためすぐに医療機関を受診しましょう。
妊婦の方はムコダインの添付文章では、
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]
と記載されています。実際に妊婦の安全が確立されているお薬はかなり少ないです。他のどの風邪薬も、この一文は記載されています。そのため医療現場では、ムコダインを妊婦の方にも処方していることが多いお薬です。
同じ成分であるストナやクールワンもそのため妊婦だから絶対にダメというわけではないです。ただし痰切りのお薬は痰がでる原因を治す治療薬ではありません。そのため軽症な方は、あえてストナやクールワンを内服する必要はないと思います。またストナやクールワンを内服していて症状が軽くなった方も飲み切る必要性が低いお薬です。
高熱がある方はムコダイン単体ではなく解熱薬を希望する人も多いでしょう。しかしストナやクールワンを内服しながら他の薬もとなると、最初の禁忌である他の薬を内服している方に当てはまってしまいます。高熱に限らず複数の症状があって辛い方は医療機関で薬を処方してもらった方が良いでしょう。
喉が痛い、熱がある、鼻水が出るなどの症状はPL配合顆粒など総合感冒薬で症状を和らげることができます。一方でPL配合顆粒は痰は改善しないため、ムコダインを上乗せすることが多いです。このように症状によって医師が薬を選択してくれるので、市販薬より医師に受診した方が良いことが多いです。
肝障害、心臓の障害がある方はムコダインでも慎重投与になります。しかし実際に肝臓や心臓の状態が悪すぎて、ストナやクールワンが内服できない方は、そもそも市販薬を買う買わない以前に肝臓や心臓の治療のため入院していることがほとんどです。
そのため肝臓や心臓に病気があるからといって過剰に心配する必要は少ないです。
6.ストナやクールワンが向いてる人は?
<向いてる人>
- 風邪で一過性に痰がでている人
- 辛い症状が痰のみの方
ストナやクールワンは、主に痰切りに使用するお薬です。
そもそも痰とは、正常な人にも作られています。気管支などにある杯細胞などから粘液物がでてきて、肺の中を綺麗にしています。杯細胞が出した粘液物をゴミとしてまとめたのが痰になります。
実は痰として肺や咽頭で作られたゴミは、少ない場合は食道の方に落ちていきます。食道は胃につながっているため全く問題になりません。ただしこの痰の量が増えて咽頭から口に溜まる場合が、喀痰として症状となって表れます。
喀痰の原因は、
- 異物が体に入ってきたのを粘液物で絡めとって外に出す防御反応
- 気管支や咽頭のどこかから粘液物が漏れ出ている
このように2つあります。風邪などでばい菌を外に出そうとするのが①になります。ただし①でも、
などが喀痰の原因の場合は、ストナやクールワンを飲み続けても一時的に症状は改善しますが一向に良くなりません。むしろ場合によっては、どんどん悪化してしまいます。また、②の粘液物が漏れ出ている場合は、どこから漏れ出ているのかすぐに確認する必要があります。場合によっては、
- 肺癌
- 気管支拡張症
- グッドパスチャー症候群
などの病気が隠れていることがあります。喀痰について詳しく知りたい方は、「痰はどうして出るのか?喀痰の原因と病気の見分け方」を参照してみてください。
このような背景を踏まえたうえで、ストナやクールワンはどのような人に向いてるのか考えてみましょう。一番良いのは、風邪などで一時的に痰がでている人です。
風邪などは安静に加療していれば、基本的に風邪は良くなります。そのためストナやクールワンを内服して、痰による不快な症状を取りながら風邪を治すことができます。
一方で市販薬を内服しても、
- 症状がなかなか良くならない
- 違い症状が出現してきた
- 痰の症状が辛い
などがあったらすぐに病院を受診してください。市販薬が何週間分も売られていないのは、だらだらと飲み続けると怖い病気が隠れているかもしれないからです。
また症状が痰のみの方も市販薬が良い適応になります。痰以外にも熱、鼻水、のどの痛みなどが辛い人はストナやクールワンのみでは対応できません。そのような方も市販薬を組み合わせることは基本的には推奨されていません。
まずは病院で薬を処方してもらいましょう。風邪が良くなったけど、痰の症状だけが残ってるという人はストナやクールワンを追加で購入してもよいかも入れません。
まとめ
- ストナやクールワンは痰の正常を整え、繊毛運動を活発化することで痰を出しやすくする市販薬です。
<メリット>
- 痰の成分を整えて出しやすくする
- 気管支をきれいにする作用もある
- 副作用が少なく安全性が高い
- 市販薬として医療機関を受診しなくても購入できる
<デメリット>
- 痰や鼻水の原因疾患を治すわけではない
- 8歳以下の小児に適応がない
- 副鼻腔炎や中耳炎に適応がない
<向いてる人>
- 風邪で一過性に痰がでている人
- 痰のみの症状が辛い人
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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