アボルブカプセルの副作用と安全性

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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アボルブカプセル(デュタステリド)は、5α還元酵素阻害薬に分類される「前立腺肥大」の治療薬です。男性ホルモンを阻害することで、徐々に肥大した前立腺を元に戻す作用があります。

アボルブは数日飲んで効果が発揮するお薬ではなく、毎日飲み続けることで徐々に効果を発揮するお薬です。そのため、数ヶ月、数年と飲み続けるお薬です。

アボルブは、男性ホルモンを阻害することで勃起不全や性欲減退などの副作用があります。また、前立腺癌を調べるためのPSAという腫瘍マーカーの正確な値が測定できないことがあります。

ここでは、アボルブの副作用や安全性について確認してみましょう。

 

1.アボルブの副作用について

アボルブは男性ホルモンに作用するため、勃起不全や性欲減少など性機能減少があります。

アボルブの添付文章では、403例中44例(10.9%)に臨床検査値異常を含む副作用が報告されています。その主 なものは、

  • 勃起不全13例(3.2%)
  • リビドー減退 7 例 (1.7%)
  • 乳房障害(女性化乳房、乳頭痛、乳房痛、乳房不快感)6例(1.5%)

となっています。アボルブは、テストステロン(いわゆる男性ホルモン)をより活性の高いジヒドロテストステロンに変換する1型および2型の5α還元酵素を阻害します。

前立腺を肥大する原因となるジヒドロテストステロン血清濃度を低下させることにより、徐々に前立腺を小さくするお薬です。つまり、男性ホルモンを抑えることで効果を発揮するのです。

そのため男性ホルモンに影響することで、勃起不全や性欲減少などの性機能減少が最も大きな副作用です。知らずに内服してしまうと、人によっては非常に困ることもあるかもしれません。

特にアボルブを数ヶ月内服していてこれらの副作用が出現した場合、アボルブをやめたからといってすぐに回復するとは限りません。アボルブは徐々にホルモンに影響を与えることで効果を発揮します。そのため、中止しても徐々にもとに戻るため、すぐには改善しないことも多いです。

そのため、アボルブを内服する前に性機能減少があるということは念頭においてください。もしこれらの副作用が起こると困るという人は、他のお薬を選択した方が良いかもしれません。

 

2.アボルブが内服できない人は?

女性と小児は内服できません。また、重度の肝機能障害がある人も内服できません。

アボルブは、男性ホルモンに影響を与えて前立腺肥大症を改善するお薬です。そのため当たり前と言えば当たり前ですが、前立腺がない女性が内服しても全くメリットがありません。また、小児(20歳未満)の方も前立腺肥大を認めることはほとんどありません。

女性や小児の方が

  • 頻尿
  • 残尿感
  • 尿閉

などを認めた場合は、全く別の疾患を疑います。前立腺を小さくするお薬と効いたら、女性の方は飲もうとはまず思いません。しかし、上記の症状を改善するお薬という認識しかないと非常に危険です。

アボルブを内服してもメリットがない女性や小児の方に、あえてどんなデメリットがあるのか精査する必要が全くありません。ですからアボルブは女性と小児に対して安全性が確立されていないため、禁忌になっています。

アボルブは、20歳以上の男性にのみ内服するようにするお薬になります。それでは20歳以上の男性なら全て適応になるのでしょうか?

一つ気を付ける疾患があります。それが肝機能障害がある方です。添付文章でも、

重度の肝機能障害のある患者[本剤は主に肝臓で代謝されるため、血中濃度が上昇するおそれがある ]

と禁忌項目に記載されています。アボルブは、肝臓で代謝されるお薬です。さらに半減期が3~5週間と非常に長く、体内に蓄積されるお薬です。そのためアボルブによって肝機能障害が認められても、中止したらすぐ元に戻るわけではありません。このため、重篤な肝機能障害がある方は投与できないお薬となっています。

一方で、どの程度が重篤かは難しいところです。肝臓の病気で治療を受けている方は、事前に主治医に相談してみましょう。また肝機能障害が軽度であってアボルブが使用できる方も、肝機能障害が悪化するリスクは常に念頭に置いておき、定期的に採血を行うようにしましょう。

 

3.アボルブは胎児に影響しないの?

男性がアボルブを内服しながら妊娠した場合、奇形があったという報告はありません。一方で女性が内服すると、男性胎児の生殖器官異常が報告あるため注意してください。

アボルブは男性ホルモンに影響を与えるお薬です。そのため、アボルブを内服しながら妊娠して良いか心配される方も多いかもしれません。実際にアボルブの主成分であるデュ タステリドの臨床試験のまとめでは、デュ タステリド投与中に男性被験者のパートナー12例が妊娠・出産を迎えていますが、異常報告はありませんでした。

ただし、アボルブの成分自体が直接胎児に影響することは証明されています。アボルブの添付文章では、女ラット及びウサギにデュ タステリド(アボルブ)を経口投与した結果、オスの性器がメス化されたとの報告があります。これは妊娠女性にアボルブの成分の曝露により、胎児の男性ホルモンが低下し、男子胎児の外生殖器の発達を阻害する可能性が示唆されたことになります。

アボルブはカプセルに入ってるため、カプセル自体触っても危険はないです。しかしカプセルをつぶして中身に触れると経皮吸収されて危険なため、妊娠女性はアボルブの取り扱いには注意しましょう。

このようにアボルブの成分自体が胎児に良くないとなると、躊躇される方も多いと思います。副作用も性機能減少など妊娠の障害になることが多いため、妊娠を考えている方はアボルブの休薬を考慮してもよいかもしれません。

ただしアボルブは、1~2日内服を中止しても体内にとどまり続けます。休薬期間は5週間程度必要なため、最低アボルブを1か月は中止してみてください。またアボルブを中止するということは、前立腺肥大が悪化することが懸念されます。

そのため、アボルブに変わるお薬が必要になるため絶対に自己中断はしないようにしましょう。

 

4.アボルブで注意するもので飲み合わせに注意するものは?

アボルブは絶対に一緒に内服してはいけないお薬はありません。CYP3A4阻害作用を有するお薬は注意が必要です。

アボルブは内服併用禁忌となるお薬はありません。ただしアボルブは、CYP3A4という酵素でアボルブは代謝されます。そのためCYP3A4が阻害されるお薬と一緒に使用すると、アボルブの血中濃度が上昇する可能性があります。

具体的にアボルブの添付文章では、リトナビルが挙げられています。しかしリトナビルは、HIV(エイズ)の治療に用いられるお薬のため、普段生活していればほとんど内服することはないでしょう。

CYP3A4を阻害するお薬としては、

  • 抗菌薬(エリスロマイシン、クラリス)
  • 降圧薬(Ca拮抗薬(ワソラン))
  • 抗真菌薬(イトリコナゾール)
  • 不整脈薬
  • ホルモン製剤
  • H2ブロッカー

など様々なお薬があります。必ずアボルブ以外の薬を処方する医師が別の場合は、アボルブを内服している旨を伝えてください。

 

5.アボルブはアルコールと一緒に内服して良いの?

アボルブは、アルコール自体で効果は減弱しません。しかしアルコール自体がAGAに良くないので、注意してください。

アボルブの添付文章では、アルコールと一緒にアボルブを内服して効果が減弱するという記載はありません。そのため、アボルブを内服中にアルコールを飲んでいけないわけではありません。

一方で、アルコールも飲みすぎには注意してください。アルコールを飲みすぎると、肝臓に負担をかけてしまいます。アボルブは肝臓で代謝されるお薬のため、アルコールを飲みすぎて

  • アルコール性肝硬変
  • 脂肪肝

など肝機能障害が出現すると、アボルブ継続が難しくなります。またアルコール自体が利尿作用があるため、頻尿などの前立腺肥大の症状を悪化する恐れがあります。

またアルコール自体が血液の流れを活発にする作用があります。前立腺は血の巡りが良い臓器なのでアルコールを飲みすぎると前立腺が充血することで肥大する可能性があります。

アボルブと一緒にアルコールを飲んでいけないわけではないですが、アボルブが適応となる前立腺肥大に対してアルコールは悪化する作用があります。くれぐれも飲みすぎには注意してください。

 

6.アボルブを内服中に他に注意することはあるの?

腫瘍マーカーのPSAを採血した際は注意してください。実際のPSA値から、50%低下して測定値が出てきます。

アボルブを内服した方で癌検診などされた方は注意してください。腫瘍マーカーの一つであるPSAが50%ほど低下して測定されます。PSAは、前立腺癌の腫瘍マーカーです。

PSAは、最も感度が高い腫瘍マーカーとして知られています。他の腫瘍マーカーは少しくらい高くても、画像上異常が無ければ経過観察になりますが、PSAは4.0ng以上であれば画像の異常の有無に関わらず、前立生検が推奨されています。

そのため、PSAのわずかな値な違いで積極的に精査した方が良いか決まります。アボルブは、このPSAの値を50%ほど低下させる作用があります。これは決して前立腺癌を抑えてPSAが低いわけではありません。検査値が間違って出てきてしまうのです。

そのため、PSAの値を2倍して計算する必要があります。アボルブを内服している方は、40~50代の男性が多いと思います。この年代の男性は、定期的にPSAを測定して前立腺癌のチェックをする機会も多いと思います。

アボルブを内服しているのを伝えるのをためらう人もいるかもしれないですが、前立腺癌は初期であれば手術で完全に治すことができる病気です。ぜひ医師に事前にお話ししてください。

 

まとめ

  • アボルブは、勃起不全、性欲減退などの副作用があります。
  • アボルブは、肝機能障害がある人は注意が必要です。
  • アボルブは、男性が内服中にパートナーが妊娠しても問題は指摘されていません。ただし妊婦さんが直接アボルブを摂取すると、男性胎児の性器異常が指摘されているため注意してください。
  • アボルブは、一緒に内服してはいけないお薬はありません。
  • アボルブは、アルコールと一緒に接種しても問題はありません。ただしアルコールの大量摂取は、前立腺肥大症自体の悪化につながるため注意してください。
  • アボルブを内服してる人は、PSAの測定値には注意してください。

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