ホクナリンテープの貼る場所や貼り方の注意点とは?ホクナリンテープの使い方

元住吉 こころみクリニック
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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ホクナリンテープは長期のβ2刺激薬として世界初の貼り薬として活躍しています。主に喘息やCOPDの吸入薬が吸えない高齢者の方や小児の方、また乳幼児の咳にも使われることがあります。

ホクナリンテープは、胸や背中、上腕部に1日1回貼ることで効力を発揮します。ただし副作用として、テープかぶれがよく認められます。貼った部位が赤くなったり、痒くなることがあるのです。

また剥がれてしまったホクナリンテープは貼り直してよいのか、お風呂はどうすればいいか?など、様々な疑問もあると思います。

ここでは、ホクナリンテープの貼る場所や貼り方など、注意するべきことを確認してみましょう。

 

1.ホクナリンテープの貼り方について

ホクナリンテープは、胸や背中、上腕のいずれかに貼ります。この時によく拭いてから貼りましょう。

ただ貼るだけと思ってホクナリンテープを適当に貼っても、効果が半減してしまいます。しっかりと確認してみましょう。

  1. ホクナリンテープは胸、背中、上腕のいずれか1ヵ所に貼って使用します。貼る場所に対してタオル等でよく拭いて、渇いた状態にします。汗などで湿ってるとうまくくっつきません。
  2. ホクナリンテープの切り口表示に従って取り出します。このあと大切なのは、はがすと表示された面を上にすることが大切です。つまり紫色で「ホクナリン」と表示されている面が下になります。
  3. ホクナリンテープを山折りにし、半分ほど浮かせてから、片方のライナーをはがします。この時テープの接着面に指があまりふれないようにしましょう。指でべたべた触れば触るほど、接着が上手くできなくなります。
  4. ホクナリンテープの残りのライナーを持ってテープを貼ったあと、残りのライナーをずらしながら残りのテープを貼っていきます。
  5. ホクナリンテープを貼ったあと、手のひらでしっかりと押さえます。ここが甘いと途中でホクナリンテープがはがれてしまいます。

なかなか言葉だと難しいかもしれませんね。大切なのはしっかりと貼る場所を拭いて、貼った後に剥がれないようにしっかりと押すことです。ただし正しい貼り方をしてもテープかぶれが起こる人がいます。このテープかぶれに関してどうすればよいか確認してみましょう。

 

2.ホクナリンテープを貼る場所とは?

貼る場所として胸・背中・上腕部となっていますが、場所はどこでも大丈夫です。大切なのは、貼る場所を毎回変えることです。

ホクナリンテープでは、どこに貼ればよいのか悩まれる患者さんが多いです。ホクナリンテープを貼る場所は、胸・背中・上腕部と添付文章に記載されています。

ちなみにこの3つに、効果の差はありません。何となく胸に貼った方が肺に近いから効くような気がすると思います。しかしホクナリンテープは直接肺まで向かうわけではなく血管に溶け出て気管支に向かいます。

ホクナリンテープ→皮膚→静脈→動脈→心臓→気管支

このようにして、有効成分が気管支まで届いて初めて薬が作用します。静脈は心臓から手足の末梢に流れる血管です。ですから胸にホクナリンテープを貼っても、吸収されて静脈にとりこまれて手足の端に向かいます。そのあとUターンして、心臓に戻ってから気管支に行くことになります。

そのため、貼る場所を胸にあえてこだわる必要はありません。むしろ貼る場所を毎日変えることが重要です。同じ場所に貼り続けると痒みや赤くなることが多くなるため、テープかぶれを防ぐためにも注意しましょう。

 

3.ホクナリンテープで気になるテープかぶれの対策

ホクナリンテープによる「テープかぶれ」を防ぐために貼る場所を変える、保湿を保つことに気を付けましょう。

ホクナリンテープでは、特に小児では5~10%にテープかぶれが認められます。ホクナリンテープを貼った場所が痒くなった、赤くなったというのは珍しいことではありません。

これに対してどう対応すればよいのでしょうか?以下の5つに気を付けてみてください。

  1. 貼る場所を毎日変える。
  2. アトピーなど炎症がない部分に貼る。
  3. 保湿剤で保湿を促す。
  4. お風呂に入った後に貼る。
  5. ゆっくりと剥がす

先ほどお伝えしましたが、同じ場所に貼り続けているとテープかぶれになりやすいです。テープを貼る場所は、毎日変えるようにしましょう。

またアトピーなどで皮膚が荒れているところに貼ると、それが刺激になりアトピーが悪化するといわれています。アトピーがないところに貼るように心がけてください。

ホクナリンテープ含めて、貼り薬で赤くなったり痒くなるのは、皮膚が乾燥して弱い方に多いといわれています。そのため保湿剤で、あらかじめ貼る場所に潤いを与えておきましょう。なお注意点として、保湿剤を塗った直後にテープを貼ると剥がれやすくなってしまいます。

可能であれば、貼る前日に次はどこに貼るか決めておき、前もって保湿剤を塗っておきましょう。

また貼るタイミングも重要になります。お風呂入った直後などは保湿された直後です。よく拭いた後に、ホクナリンテープを貼りましょう。

ホクナリンテープは、貼ってすぐ効果があるテープではありません。11~13時間後に血中濃度がピークになるといわれています。そのため早朝に喘息が多い方などは、効果の面などでもお風呂直後くらいが良いといわれています。

一方で、外出して汗だくの時などに貼るとかぶれやすいといわれています。そのような時に貼る場合は、しっかりと汗を拭いてから貼りましょう。

最後にテープで赤くなる人は、ゆっくりと剥がすことを意識してみてください。勢いよく剥がすことで赤くなるといわれています。

 

ここまで対策しても皮膚が弱くてテープかぶれを起こしてしまう人は、一度医師に相談してみましょう。特にCOPDや喘息で使用されている方は、長期間ホクナリンテープを使用することになると思います。そんなときに、テープかぶれで悩みながら毎日過ごすのも大変だと思います。

ホクナリンテープ以外でもβ2刺激薬を投与する方法は他にもあります。内服が可能な方なら、ホクナリン錠も使えます。テープかぶれが嫌だからといって、自己中断することだけは避けるようにしましょう。

 

4.ホクナリンテープが剥がれてしまったら?

ホクナリンテープが剥がれてしまった場合は、12時間以降たっていれば貼り直す必要はありません。12時間以内なら貼り直しを検討して良いと思います。

ホクナリンテープが剥がれてしまった場合どうすればよいのでしょうか?それにお答えする前に、ホクナリンテープがどのように体内に吸収されて気管支を拡張するか知る必要があります。

ホクナリンテープは、貼付後すぐに吸収されるわけではありません。主成分のツロブテロールが結晶化されていて、徐々に溶け出して皮膚から血管に入るように調整されます。そのため最初の数時間はほとんど血中に入りません。

ホクナリンテープは徐々に吸収されて、12時間後に約75%(3/4程度)が皮膚へ移行していることが報告されています。ちょうどこの時に血中濃度もピークに達しています。そこから徐々に血中濃度は低下します。

最終的にホクナリンテープを24時間貼付した時の皮膚へ移行率は、86~87%となります。このとき、先ほど示した胸・背中・上腕部なら吸収率に差がないことが分かっています。

まとめると、ホクナリンテープは貼って12時間後には75%まで吸収され、そこからあまり吸収されずに残り12時間で10%が上乗せされ、86%が吸収されるようになります。

これを踏まえて、ホクナリンテープが剥がれてしまった場合の対応を考えていく必要があります。

 

①ホクナリンテープが剥がれてから12時間以内の場合

これに関しては、ホクナリンテープを貼り直してしまってよいかと思います。ただしテープの粘着力は低下している可能性が高いので、貼り直す場合は絆創膏で補強した方が良いです。

剥がれたホクナリンテープがくしゃくしゃになって貼り直せなさそうなら、新しいのにチェンジしましょう。もったいないような気もしますが、また剥がれたら意味がありません。

 

②ホクナリンテープが剥がれてから12時間以降の場合

あえてホクナリンテープを貼り直す必要はありません。なぜなら、12時間貼っていれば75%程度は吸収されており、あと12時間かけて10%吸入するだけだからです。ただし、ホクナリンテープを貼り直したからまずいというわけではありません。

端が取れた程度で綺麗に貼り直せそうなら、貼り直しても良いと思います。ですが新しいホクナリンテープを使うことはありません。

 

③ホクナリンテープがいつ剥がれたか分からない場合

大部分はこれに該当すると思います。特にホクナリンテープは寝る前に貼る方が多いと思います。朝起きたら剥がれていた場合、いつ剥がれたかよく分かりませんよね?

その場合は、貼り直してしまって構わないです。剥がれたホクナリンテープがくしゃくしゃになって貼り直せなさそうなら、新しいのにチェンジしましょう。

「ホクナリンテープが12時間以上貼ってたかもしれないのに大丈夫か?」と思う人もいるかもしれません。しかしこれに関しても、製薬会社は臨床試験で確認しています。

ホクナリンテープ2mgを貼った後、3・6・9・12時間後にそれぞれ剥がした後に、新しいホクナリンテープを貼り直した場合の血清中濃度のシミュレーションを行っています。ホクナリンテープを再び貼り直しても、血清中濃度は最高でも約1.3倍程度の上昇でおさまります。

1.3倍程度の濃度であれば、副作用はほぼ上昇しないことも確認されています。そのためいつ剥がれたか分からない場合でも、ホクナリンテープを貼り直してしまって問題ないです。

ただしこの結果は、ホクナリンテープを剥がして貼り直した結果です。ホクナリンテープを同時に複数枚貼ることは、過量投与になりかねないので注意が必要です。

また小さなお子さんは、自分で剥がしてしまう場合も多いです。このような場合は腕や胸ではなく、自分で剥がしづらい背中を中心に貼るようにしましょう。

 

5.ホクナリンテープの他の注意点は?

ホクナリンテープを24時間以降剥がし忘れても問題ないです。ホクナリンテープを何枚も貼るのは危険です。またホクナリンテープはお風呂に入っても問題はないです。

ホクナリンテープの他でよく聞かれる質問として、

  1. ホクナリンテープをとり忘れた場合大丈夫か?
  2. ホクナリンテープを何枚も貼ってよいのか?
  3. ホクナリンテープを貼ったままお風呂に入っても大丈夫か?

などがあります。

まず「ホクナリンテープを剥がし忘れた場合」ですが、ホクナリンテープは24時間たった場合はテープには10%しか残ってないです。そのため24時間以降貼り続けた場合は、ほぼ貼ってないと同義になります。

ただしホクナリンテープを24時間貼り続けた場合は、効果が完全に切れるのは48時間以降といわれています。そのため少し時間が遅れたからといって、完全に効果が0になるわけではありません。気づいた時点でホクナリンテープを貼り変えましょう。その時に先ほど記載したように、違う部位に張り替えることが重要になります。

次に「ホクナリンテープを何枚も貼ってよいか?」という質問ですが、これは絶対にやらないでください。ホクナリンテープの主成分であるβ2刺激薬は、気管支を広げる作用があるお薬です。この作用でCOPDや喘息を治療したり、乳幼児の方の咳をよくするために使用します。

しかし、ホクナリンテープを倍量すればするほど効果があるわけではありません。逆にホクナリンテープはβ2だけでなく、わずかながらβ1も刺激してしまいます。β1を刺激すると心臓に刺激を与えます。これを受けて添付文章でも、

用法・用量を超えて使用を続けた場合,不整脈,場合によっては心停止を起こすおそれがあるので,用法・用量を超えて使用しないように注意すること.

と記載があります。心停止と書かれるとかなりドキッとしますね。しかし用量を超え続けた場合可能性があるということになります。β2刺激薬にはこの一文はどれも記載されています。実際2枚間違って同時に貼ったから心臓が止まったということは、過去に一例もありません。

ですから、ホクナリンテープを誤って2枚貼ったからといって慌てる必要はありません。慌てずに一枚剥がせば大丈夫です。ただしホクナリンテープを大量に貼り続けると、胸がドキドキしたりする副作用は出てくると思います。そのためホクナリンテープは決められた量を守るようにしましょう。

最後に「ホクナリンテープを貼ったままお風呂に貼ってよいか?」という質問ですが、ホクナリンテープはポリエステルの被膜が貼ってあるため水を通さず、薬剤が溶け出すことはありません。そのため入浴したからといって、効果が落ちることはないと思います。

しかし、大体お風呂で体を洗えば取れてしまうことがほとんどです。そのためお風呂に入っても問題ないですが、なるべくホクナリンテープをお風呂上りに貼るようにした方が良いです。

 

まとめ

  • ホクナリンテープは胸、背中、上腕に1日1枚貼ることで効果を発揮します。この3か所なら効果に差はありません。よく拭いてからホクナリンテープを貼るようにしましょう。
  • ホクナリンテープのテープかぶれ予防は保湿と同じところに貼り続けないようにすることです。
  • ホクナリンテープが剥がれた場合は12時間以内もしくはいつ剥がれたか分からない場合なら再度貼り直しましょう。12時間以降はあえて貼り直さなくても大丈夫です。
  • ホクナリンテープは一度に大量に貼らないようにしましょう。

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