フルメトロン(フルオロメトロン)点眼液の効果と副作用
花粉症の時期は目のかゆみが非常につらいです。ですが目をかいたりしてしまうと、角膜を傷つけてしまいます。飲み薬でも多少は効きますが、やはり目の症状に一番効果が期待できるのは点眼薬です。
目のアレルギー症状のことを難しくいうと、アレルギー性結膜炎になります。通常はパタノールやアレジオンなどの抗ヒスタミン薬が第一選択肢として挙げられます。
しかしそれでも目のかゆみがとまらない人には、次の一手としてステロイド点眼液が使われます。ステロイド点眼液で代表的なものとしてフルメトロン点眼液があります。1975年に発売されて、今でも使用されている非常に歴史のある点眼薬です。
ここでは、このフルメトロン点眼液についてまとめていきます。
1.フルメトロンの使い方
フルメトロンはかゆい時に適宜1滴ずつ投与するのが一般的です。1日4回までが限度です。
症状が中等度の方は、パタノールやアレジオンなどの抗ヒスタミンの点眼薬を定期的に投与します。それでも目がかゆい時に、適宜フルメトロンを使っていきます。重症の方はフルメトロンも定期的に2回から4回程度投与します。
この際、パタノールやアレジオンを点眼してから5~10分程度時間を空けてからフルメトロン点眼薬を投与しましょう。どちらが先の方が良いといったデータははっきりとはないですが、抗ヒスタミン薬から投与して痒くなければ、あえてフルメトロンを点眼しなくて大丈夫です。
フルメトロンを1滴点眼したあとゆっくりと目を閉じ、まばたきをしないでしばらく目を閉じていてください。この1滴で十分です。同時に2滴、3滴入れたから効果が倍増するわけではありません。
注意点としては点眼のとき、容器の先端が直接目に触れないように注意しましょう。
フルメトロンを点眼するときはコンタクトレンズを外して点眼でしましょう。防腐剤として使われているベンザルコニウムによってコンタクトレンズが傷つき、同時にコンタクトレンズに吸着して直接角膜を傷つけてしまいます。
2.フルメトロンの副作用と注意点
角膜を傷つけた状態と、目にバイ菌が入っている状態では禁忌とされています。また、緑内障と白内障がある人も注意します。
ステロイドは色々な病気に使われているので良い薬と勘違いされている方もいらっしゃるかもしれません。フルメトロンはステロイドなので、ほぼ全ての免疫を抑制する作用があります。それに加えて、免疫以外にも色々な副作用を示すので注意が必要です。
フルメトロンの禁忌とされている状態は以下の2つです。
- 目にバイ菌が入って感染している
- 角膜に傷がある患者
一般的にステロイドの副作用としては免疫を抑制する作用があるため、細菌やウイルスなどのバイ菌に感染するリスクが上がります。そんな中で感染によって化膿している目にステロイドを投与してしまうと、免疫を抑えてさらにバイ菌が繁殖されます。
また、ステロイドは傷を治りづらくする作用もあります。そのため角膜に傷がある状態でステロイドが入ると傷の治りが遅くなるばかりか、悪化する可能性があります。
さらにプレドニンを内服すると、全身に様々な副作用が生じます。目に関する副作用としては、緑内障や白内障が発症することがあります。
緑内障:眼圧が上昇することで視神経の変形と視野異常が生じる疾患です。目は2つあるため、片目が視野異常が生じてももう片方の目が補います。このため気が付かないことも多いです。眼圧が上昇することで頭痛が生じることもあります。40歳以上ですと、20人に1人が緑内障ともいわれております。
白内障:目の水晶体というレンズが濁ってしまうことで、視力低下が起きる疾患です。レンズが濁ることで光をまぶしく感じたり、物がかすんで見えます。50歳で半分程度、80代ではほぼ全員が軽症も含めて発症するといわれています。
緑内障も白内障も視力低下につながり、重症化した場合は失明もありえる病気です。
ですからフルメトロンを処方してもらうには、まず眼科でしっかり目の状態を見てもらった方が安全です。目にバイ菌が入ってたり角膜が傷つくというのは、花粉症で目を無意識にかいていると十分に起こりえます。
また緑内障や白内障は、40・50代の方は知らないうちに発症している方も多い病気です。フルメトロンを点眼する前に、こういった目の状態をしっかり知っておくのは大切です。
3.フルメトロンの安全性
フルメトロンはステロイド量が少ないため、副作用の発症自体は多くりません。比較的安全に使用されています。
このように、ステロイドの点眼液は専門家の判断にしたがって使っていく必要があります。しかしならフルメトロンではステロイドの投与量がわずかですので、副作用の頻度は少ないです。
フルメトロンの承認時までの調査及び市販後副作用調査を合わせて7,276例中、副作用が認められたのは3例(0.04%)でした。そのうち、眼圧上昇2件(0.03%)、アレルギー性結膜炎の悪化1件(0.01%)となっています。
目の状態が問題ないことを確認さえすれば、フルメトロンは安全に使用される点眼といえます。
妊婦や授乳している方は、長期投与による安全性が確立されていないため長期・頻回投与を避けることとあります。しかしながら、ほぼすべてのお薬の添付文章で同じように注意されています。
ステロイド内服も妊婦の方は禁忌とされていません。重度な免疫不全の妊婦の方は、ステロイドを内服してコントロールしている方もいます。そのためフルメトロン点眼で目に少量のステロイドを投与するだけでは、胎児への影響はまずないと考えられています。
一方で小児も禁止はされていませんが、そもそもステロイドの点眼を使うくらい重度の花粉症に子供が悩むことは稀です。この場合は、眼科の先生に花粉症でのかゆみであるかどうか確認した方が良いと思います。
4.フルメトロン点眼でも目のかゆみが改善されない場合
もっと強いステロイド点眼薬もあります。しかし、必ず眼科の受診をまず受けましょう。
フルメトロン点眼液は、5分くらいで効果が発揮されます。続けて点眼しても効果は変わらないので、10分程度は様子を見ましょう。それでもかゆみがとれないといってフルメトロンを何度も追加したり、目をかいてしまわないようにしましょう。角膜を傷つけてしまう可能性があります。
まぶたの上から眼を圧迫して抑える人もいますが、これは危ないです。目の奥の網膜剥離が起こってしまうことがあり、こちらも失明につながります。効果がないからといって、目に物理的刺激を加えないように注意しましょう。
さらにフルメトロン点眼液は、0.02%、0.05%、0.1%と3種類の濃度があります。当然濃度が高いほど効果も高くなります。またフルメトロン点眼自体がステロイドの力価(強さ)が弱い点眼薬です。もっとステロイドの力価が強い点眼薬として、リンデロン点眼薬があります。
しかしながら、目のかゆみが本当に花粉症であるのか?ステロイドの力価をどんどん上げてよい目の状態なのか?を考えて使っていく必要があります。
例えば、バイ菌のせいで目のかゆみが起きてることもあります。このような方には、ステロイド点眼薬は逆効果になってしまいます。毎年春になるから目がかゆくなるから、今年もきっと花粉症だろうと自己判断でステロイドを点眼しないようにしましょう。
ステロイド点眼薬を使う人は、眼科に一度受診してみてもらいましょう。
5.花粉症が生じるメカニズムとフルメトロンの作用機序
フルメトロンは花粉症(アレルギー性結膜炎)の治療に使われることが多いです。花粉症がそもそもなぜ起きるのか、その治療薬としてまず第一選択肢として使用されるパタノールやアレジオンの作用機序、さらにその後に使用されるフルメトロンの作用機序をみていきましょう。
5-1.花粉で目がかゆくなる原因とは?
目からスギ花粉を外に出そうとする防御反応です。かゆくなることで目が潤されて、結果として花粉を目の外から追い出そうとします。
花粉症というのは体が花粉を敵と認識して外に出そうとする防御反応です。その防御反応は以下のようになります。
- 花粉(スギ)が体内に侵入。
- マクロファージ(体の中の警察官)が異物と認識して花粉を食べる。
- マクロファージがT細胞、そしてB細胞とバケツリレーのように花粉の情報を次々に渡す。
- 花粉が次に入ってきたときに撃退するために、B細胞がIgEという特殊な爆弾を作り、肥満細胞(体の中の爆弾保管庫)に保管しておく。
- 花粉が再び侵入した際に、肥満細胞は保管しておいたIgE爆弾が発射されて花粉にくっつく。
- IgEが爆発することをきっかけに、ヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質(ケミカルメディエータ―)が放出される。
このヒスタミンが放った化学物質が結果として目を刺激して、かゆみや充血を生み出します。目のかゆみや充血が起こると、涙が出てきます。涙によって花粉を目の外に追い出そうとするのです。
こうして目に異常があることを知らせて、スギ花粉から体を守ろうとしているのです。
5-2.アレジオンやパタノールはどうやって効果を示すの?
主に抗ヒスタミン薬として目に働きます。さらにケミカルメディエーター遊離抑制作用の効果もあり、予防の効果もあります。
まず花粉症の時に第一選択肢として挙げられる、パタノールとアレジオンの点眼液の作用機序について示します。
この2剤は抗ヒスタミンとして効果を示します。ヒスタミンを阻害するということは、先ほどの説明でいうところの⑥の作用を邪魔します。④や⑤で出てくるIgEや肥満細胞を邪魔しても、すでにヒスタミンがたくさん作られた後では効果が期待しづらいです。速効性を求めるのであれば、直接目のかゆみを引き起こすヒスタミンをブロックする必要があります。
そのためパタノールやアレジオンの点眼液は、アレルギー反応により放出されたヒスタミンの働きを邪魔し、ヒスタミンが引き起こすさまざまなアレルギー症状をおさえます。正確には、ヒスタミンが結合するヒスタミンH1受容体を遮断することによります。
さらにパタノールやアレジオンの点眼液には、もう一つの効果があります。それは、「ケミカルメディエーター遊離抑制作用」です。肥満細胞を安定化させて、結果として肥満細胞からのヒスタミンなどのケミカルメディエーターの遊離・放出をおさえる作用です。
こちらはアレルギー作用機序の④・⑤で登場する肥満細胞が、IgEを発射するのを防ぐ効果があります。
5-3.ステロイドってどういう効果を示すの?
ステロイドは、大部分の免疫機序を抑制する作用があります。
ステロイドには抗炎症作用が認められます。炎症ときくと悪いイメージかもしれませんが、身体にとっては必要な反応です。身体にとっての異物や傷などの異常部分をみつけて、それを治そうとする反応です。
ステロイドは私たちの体内でも必要なので、副腎皮質ホルモンとして一日に5~10mgほど作られています。ステロイドが薬として最も使われているのは、自己免疫疾患の治療に対してです。
自己免疫疾患とは、本来ならば体を守るべき白血球などが何らかのエラーで自身の体を攻撃してしまう病気です。自分の身体に対するアレルギー反応になりますが、アレルギー反応としては主に4種類に分けることができます。
- Ⅰ型アレルギー:IgEを主体にしたアレルギーです。IgEがアレルギー源にくっついて、セロトニンやヒスタミンを放出して発症します。
代表的な疾患:花粉症・蕁麻疹・気管支喘息・食物アレルギー - Ⅱ型アレルギー:IgGを主体にしたアレルギーです。IgGがアレルギー源にくっついて、白血球が直接その細胞を破壊する生体反応です。
代表的な疾患:悪性貧血・橋本病・特発性血小板減少性紫斑病・重症筋無力症 - Ⅲ型アレルギー:アレルギー源を排除しようとした結果、うまく排除されずに免疫複合体という物質が形成され、血液を介して各々の臓器にダメージを与えるアレルギーです。
代表的な疾患:関節リウマチ・シューグレン症候群・全身性エリテマトーデス・アレルギー性血管炎など膠原病と呼ばれる疾患が主です。 - Ⅳ型アレルギー:アレルギー源を排除しようとした白血球自体がおかしくなってしまうアレルギーです。おかしくなった細胞を感作T細胞とよび、周辺組織を損傷します。
代表的な疾患:金属アレルギー・薬剤性肺炎・腫瘍免疫・移植免疫
ステロイド薬は、これらのアレルギー反応を抑えてくれます。この大部分に治療薬として使われるお薬です。
5-4.フルメトロンはどうやって効果を示すの?
目の中で起こってるアレルギー反応の大部分を抑制します。
このようにステロイド薬は、アレルギー反応の大部分を抑えます。つまり細かい部分に効果を示すわけではなく、白血球をはじめとした大部分の免疫系を抑制するのです。
ですからステロイド薬は、花粉が体内に入ってからの全てのアレルギー反応(①~⑥)を抑制します。つまり抗ヒスタミン薬のように、⑥の部分だけを抑えるといったアレルギー反応の一部分だけに作用するわけではないのです。
実はもっとアレルギーは複雑で、花粉が入ってくると細かく様々な働きがあります。それらを細かくみていくと、IL-2・IL-4・IL-5・IL-10といったインターロイキン(IL)や、サイトカインなどの免疫物質が働きます。そういった細かい作用機序を含めて、大部分をまとめて止めてしまうのがこのフルメトロンの点眼薬です。
まとめ
- フルメトロン点眼薬は、ステロイド薬として目に起きている炎症をほぼ抑制するお薬です。
- フルメトロン点眼薬は、角膜が傷ついている人、目にバイ菌がある人は使用禁忌です。
- フルメトロン点眼薬は、白内障や緑内障がある人は状態を悪化させる可能性があります。
- フルメトロン点眼薬を使う場合は、眼科の先生に一度見てもらいましょう。
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