ザガーロカプセル(デュタステリド)の効果と特徴
-
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
ザガーロ(デュタステリド)カプセルは、グラクソ・スミスクライン社から2015年9月28日に発売されたお薬です。5α還元酵素阻害薬に分類され、「男性における男性型脱毛症」(AGA)治療薬です。
AGAという言葉は、最近ではTVコマーシャルでも見かけるようになっています。AGAとは簡単に言うと、男性の「はげ」のことです。思春期以降に始まって徐々に額が後退していったり、頭頂部が薄くなっていったりするのは、成人男性の生理的現象です。
男性型脱毛症は生命に影響を及ぼす疾患ではないものの、外見上の印象への影響が大きいことから、薄毛に悩む男性の心理的ストレスは他人が考えるより大きいです。そういった男性の悩みを解決するお薬がザガーロです。
ここでは、ザガーロの効果と特徴についてまとめていきます。
1.ザガーロのメリット・デメリットは?
ザガーロは、男性ホルモンであるテストステロンがジヒドロテストステロンに変換することで、毛髪の元になる毛母細胞の働きを低下させます。
ザガーロは男性型脱毛症(ハゲ)に対して治療効果を示すお薬です。「男性における男性型脱毛症」をAGAともいいます。ここでは脱毛症で統一して記載していきます。
ザガーロは、テストステロン(いわゆる男性ホルモン)をより活性の高いジヒドロテストステロンに変換する1型および2型の5α還元酵素を阻害します。
「脱毛症」を引き起こすジヒドロテストステロン血清中および頭皮中の濃度を低下させることにより、発毛および育毛効果を示します。つまり、男性ホルモンの毛髪への影響を抑えることで効果を発揮するのです。
ザガーロがジヒドロテストステロンを減らすことで、正常なヘアサイクルが続くようになります。その結果として、毛髪の本数を増やすわけです。ザガーロの効果を踏まえたうえで、メリット・デメリットをみていきましょう。
1-1.ザガーロのメリットは?
- 既存薬との比較で、1.6倍の発毛効果が期待出来る
- 1日1回の内服で済ませられる
- 服用タイミングは生活スタイルに合わせて決めて良いので続けやすい
- 前立腺治療薬のアボルブと同じデュタステリドが主成分である
ザガーロの特徴は、1型および2型の5α還元酵素の両方を阻害するところです。これまで脱毛症の治療には、プロペシアというお薬が以前は使用されていました。プロペシアは2型のみを阻害して、脱毛症の改善を促していました。新しいザガーロは2型のみならず、1型も阻害します。これによって、「脱毛症」の原因になる物質のジヒドロテストステロンを9割程度阻害するというデータがあります。
実際に効果についても、プロペシアより高いという報告がザガーロは多いです。大体1.6倍程度効果があるとされています。
ザガーロは、1日1回好きな時間に内服して良いお薬です。そのため、職場などで内服する必要はありません。朝仕事に行く前でも、寝る前でも内服可能なお薬です。そのため生活スタイルに合わせて内服できるため継続しやすいことが良いです。
ザガーロの効果が高いといわれると、心配なのが副作用かもしれません。特にザガーロは、2015年と非常に新しいお薬です。新しいお薬は長期間服用した際に○○の副作用があったと後から分かることもあるため、心配になる人もいるかもいれません。
その点ザガーロは、アボルブというグラクソスミスクライン社が発売しているお薬とほぼ主成分が同じです。ザガーロもアボルブも、デュタステリド(5α還元酵素阻害)が主成分となっています。
アボルブは2009年に発売されていて、前立腺肥大症に対して使用されているお薬です。同じグラクソスミスクライン社が前立腺肥大症に対してではなく、脱毛症に対して使用したのがザガーロになるのです。
アボルブも前立腺肥大症に対して長期内服するお薬ですが、2017年では重大な副作用の報告もほぼなく使用され続けているお薬です。そのためザガーロも、安心して使用しやすいお薬となっています。
1-2.ザガーロのデメリットは?
- 成人男性のみの適応であり、女性や小児には適応が無い
- 効果発現まで通常6カ月必要
- 副作用として勃起不全・性欲減退等がみられる
- 自費診療であるので、薬剤費が自己負担になる
ザガーロは男性ホルモンの働きを抑えて、髪の毛の本数を増やすお薬です。ですから男性が年をとるにつれて、テストステロンが増加する脱毛症に対して効果があります。言い換えれば、
- 女性
- 小児
の方の脱毛症は同じ薄毛でも、男性ホルモンが関与しないため作用機序が違います。そのためザガーロは、女性や小児には適応がありません。また、脱毛症の原因であるテストステロンがジヒドロテストステロンになって髪が薄くなるのを防ぐ作用がありますが、ザガーロの効果は緩徐です。
- ジヒドロステロンが徐々に低下する
- ジヒドロステロンが減少したことで、髪の元になる毛母細胞の働きが徐々にもとに戻る
- 毛母細胞の働きが元に戻ることで、脱毛症の進行が止まる
- 毛母細胞が活発化されて、徐々に髪が生えてくる
という経過をたどります。①から②、②から③まで移行するまで時間を要します。ザガーロの添付文章でも、最低6か月は続けるように記載があります。さらに、髪の毛の成長期のサイクルは2年から6年と長いため、ザガーロの効果を実感するには非常に長く続ける必要があります。
またザガーロの副作用としては、
- 勃起不全
- 性欲減退
などが挙げられます。ザガーロは男性ホルモンを減らす作用があるため、これらの副作用が起こりえます。特に妊娠を考えている方は注意してください。
そしてザガーロの一番の問題が、自費診療ということです。我々は通常保険診療なので「3割負担」、「1割負担」など薬価の一部分を支払って購入することができます。しかしザガーロは、10割全て自分で支払う必要があります。
「髪の毛が薄い」というのは医療ではなく、美容とみなされています。このためザガーロは、自費になります。病院にもよりますが、1か月9000円~1万円程度の医療機関が多いです。
そのため、長期間お金を払い続ける必要があるため注意しましょう。
2.ザガーロの適応と使用は?
ザガーロは、男性の脱毛症に対して効果があります。ザガーロを毎日1回内服します。最低6か月内服する必要があります。
ザガーロは、
- ザガーロカプセル0.1mg
- ザガーロカプセル0.5mg
2種類が発売されています。剤型はカプセルのみです。ザガーロの主成分であるデュタステリドは口腔内を荒らす可能性があるため、カプセルに入っています。
ザガーロの適応は、男性における男性型脱毛症です。女性および20歳未満の小児は適応外になるので、注意が必要です。
用法・用量ですが、ザガーロは男性成人に0.1mgを1日1回内服します。なお、必要に応じて0.5mgまで増量できます。添付文章ではこのように記載されていますが、ザガーロ0.1mgと0.5mgは、副作用の差はほとんどありません。一方で効果は0.5mgの方が高いことから、ほとんどの医療機関が0.5mgから使用しています。(その分、薬価は高くなりますが…)
ただしザガーロの副作用として、勃起不全や性欲減少があります。そのためザガーロの副作用が心配な人は、0.1mgから使用することももちろん可能です。
ザガーロで注意が必要なのは使用期間です。ザガーロを 投与開始後12週間(3か月)で改善が認められる場合もありますが、治療効果を評価するためには、通常 6 ヵ月間の 治療が必要です。逆にいえば、ザガーロを6か月内服し続けても脱毛症が進行するようであれば、効果不十分と考える必要があります。
ザガーロは、最高血中濃度時間は1.5時間です。一方で問題なのが体内消失期間です。ザガーロを1か月以上内服し続けた場合は、体内から完全に消失するのには12~20週かかるといわれています。副作用としての性機能障害は、ザガーロを中止してもしばらく残ってしまうので注意してください。
3.ザガーロの実際の効果は?
ザガーロは、発毛(本数が増える)・育毛(髪の毛が太くなる)の両方の効果があります。また頭頂部や生え際などにも効果があります。プロペシアで効果不十分な人も、約8割でザガーロは効果を認めました。
実際にどれくらいザガーロの効果があるかみた臨床試験(国際共同第Ⅱ/Ⅲ相試験及び海外第Ⅱ相試験)をご紹介したいと思います。この試験では、3か月内服したプロペシア・ザガーロそれぞれの効果を比較しています。プロペシアは、ザガーロが発売される前に最もよく使用されていた脱毛症のお薬です。
結果としてザガーロは、毛髪数・髪の毛の太さで両方とも、プロペシアより効果があるとされています。
まず頭頂部の直径2.54cmに何本髪が増えたかという結果ですが、
薬の種類 | 効果(何本増えたか) |
プロペシア1mg | 56.5本 |
ザガーロ0.1mg | 63本 |
ザガーロ0.5mg | 89本 |
偽薬 | -4.9本 |
何もしないとどんどん減っていくため、偽薬を内服した群では逆に減っています。一方でプロペシア・ザガーロを内服した群では、両方とも増えています。ただし効果は、プロペシアよりザガーロの方が高いという結果になりました。直径2.54㎝(約500円玉の範囲)で、プロペシア1mgが56.5本に対し、ザガーロ0.5mgは89本と約1.6倍効果があったことが示されました。
また髪の毛がどれくらい増えたかだけでなく、その太さも確認しています。
薬の種類 | 効果(どの程度太くなったか) |
プロペシア1mg | 4.0 |
ザガーロ0.1mg | 3.9 |
ザガーロ0.5mg | 5.8 |
偽薬 | -0.9 |
先ほど同様、偽薬は何もしなければ髪の毛が細くなっていくことを示しています。一方で、プロペシア1.0mgでは4.0に対してザガーロ0.5mgでは5.8と、こちらも1.4倍の効果を認めます。
つまり髪の毛の本数、髪の毛の太さともに、ザガーロの方が優位であるという結果になったのです。作用機序的にも、プロペシアは5α還元酵素の2型のみを阻害するのに対して、新しいザガーロは2型のみならず1型も阻害するため効果が高いと言われていましたが、臨床効果も同様にザガーロの方が高いことが証明されています。
実際にプロペシア1mgで十分効果が認められなかった方がザガーロに切り替えて、どれくらいの方が効果があるのか確認した試験があります。海外の臨床試験では、ザガーロを6か月内服した場合、31例中24例(77%)に効果があったとされています。具体的には、
不変 | 7例 |
軽度増加 | 17例 |
中等度増加 | 6例 |
著明増加 | 1例 |
となっています。この実験では、少なくとも脱毛が進行した症例は認めませんでした。また6か月効果がなかった人でも、数年続けることで効果を認めた例もあります。そのため、6か月ザガーロを内服して効果がない人でも諦める必要はありません。
このように、プロペシアが効果が無かった人にも強い効果をザガーロは認めています。一方で、ザガーロとプロペシアを併用することで効果が増強することは報告されていません。ザガーロだけで脱毛の原因であるジヒドロテストステロンが9割阻害されるため、同じ作用機序であるプロペシアを加える効果は少ないと考えられています。
またプロペシアは頭頂部のみならず、前頭部(生え際)にも効果があることが示されています。
4.ザガーロが向いてる人
<向いてる人>
- 男性で脱毛症に悩んでる人
- 長期間の治療期間を認容できる人
- お金に余裕がある人
まずザガーロは、男性の脱毛症に適応があるお薬です。女性や小児の方で脱毛症に悩んでる方はザガーロは適応外ですので注意しましょう。
さらにザガーロは、少なくとも6か月は効果発現に時間がかかります。この6か月はあくまでも髪の毛がフサフサになるのではなく、効果が出始めるのが6か月です。髪の毛の目標は人それぞれですが、少なくとも2年~6年程度は時間がかかると考えた方が良いでしょう。
そのためすぐに何とかしたい人は、
- カツラを準備する
- 育毛ではなく、美容外科で植毛する
など、髪の毛がザガーロで生えてくるのを待つ治療は向いていません。隠したり、髪の毛を植え付ける治療の方が向いています。そして一番の問題は、お金です。
ザガーロは効果がしっかりと出るまで数年かかりますし、ザガーロをやめたら脱毛症が再発することを考えると飲み続ける必要が出てきます。一方でザガーロは自費のため、1か月約9000円から1万円かかります。そのため年間で考えると、10万円以上かかります。
そのため、
- 長期間じっくりと治療と向き合える
- その期間の自費が払える
この2項目がクリアできた人が向いてる人といえます。
5.ザガーロの作用機序は?
ザガーロは、テストステロンをより活性の高いジヒドロテストステロンに変換する1型および2型の5α還元酵素を阻害します。これによって髪の毛の細胞を活性化することで、脱毛を改善します。
まず男性型脱毛症のヘアサイクルをみていきましょう。脱毛症の髪の毛のサイクルを示した図が以下になります。(グラクソスミスクライン社の参考資料です。)
このように正常なヘアサイクルでは、新しい毛が生え、太く長い毛に成長します。
髪の毛のサイクルは、
- 毛球の退縮が始まる(退行期2週間)
- 毛球が完全に退化し休止期を経て(休止期3~4ヵ月)
- 脱毛し新しい毛が生えてくる
を繰り返していて、この成長期の期間は2年~6年が一般的です。一方で男性型脱毛症に関与する主なアンドロゲン(男性ホルモン)のジヒドロテストステロン(DHT)は、毛髪の元になる毛母細胞の働きを低下させる作用があります。
このジヒドロテトステロンが毛母細胞ヘ作用した結果、サイクルの成長期が短縮し(数ヶ月~1年)、硬毛が軟毛化することで薄毛が徐々に進行します。
ザガーロは図で示されたように、テストステロンからDHTに変換する作用がある1型および2型の5α還元酵素を阻害する効果があるお薬です。この還元酵素を阻害することで、テストステロンがDHTに変換するのをふせぎます。DHTを防ぐことで、再び髪の毛の正常なサイクルに戻します。
しかし一度脱毛症になった場合は、時間がかかります。森林などの自然も一度荒野になったら、元の森林に戻るまで時間がかかります。
ザガーロはあくまでも、自分自身で髪のサイクルが元に戻って作り出すのを助けるお薬です。そのため、効果発現に時間がかかります。
また同じ脱毛症治療薬であるプロペシアも、5α還元酵素を阻害する作用があります。しかし、
- ザガーロは、1型・2型両方の5α還元酵素を阻害する
- プロペシアは、2型のみ5α還元酵素を阻害する
となっています。そのためザガーロにプロペシアを足しても、あまり意味がないとなっています。
まとめ
- ザガーロは5α還元酵素阻害薬で「男性における男性型脱毛症」(AGA)治療薬です。
<メリット>
- 既存薬との比較で1.6倍の発毛効果が期待出来る
- 1日1回の内服で済ませられる
- 服用タイミングは生活スタイルに合わせて決めて良いので続けやすい
- 前立腺治療薬のアボルブと同じデュタステリドが主成分である
<デメリット>
- 成人男性のみの適応であり、女性や小児には適応が無い
- 効果発現まで通常6カ月必要
- 副作用として勃起不全、性欲減退等がみられる
- 自費診療であるので薬剤費が自己負担になる
<向いてる人>
- 男性で脱毛症に悩んでる人
- 長期間の治療期間を認容できる人
- お金に余裕がある人
投稿者プロフィール
-
2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
最新の投稿
- フリバス2020年7月30日フリバス錠・OD錠の副作用と安全性について
- フリバス2020年7月30日フリバス錠・OD錠の効果と特徴について
- 頭痛2017年4月9日痛み止めで逆に頭痛?薬物乱用頭痛について
- エビリファイ2017年4月8日アリピプラゾール錠の効果と副作用