セレナミン錠の効果と副作用
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
元住吉こころみクリニック
セレナミンは、セルシン/ホリゾンのジェネリック医薬品です。旭化成ファーマが製造しているジェネリックです。
セルシン/ホリゾンは、1964年に発売されたベンゾジアゼピン系抗不安薬です。50年以上前に作られたお薬ですが、そのバランスのよさと効果の幅の広さから、今でもよく使われています。
抗不安薬は安定剤とも呼ばれたりしますが、不安感や緊張感を和らげてくれるお薬です。リラックスするお薬なので、眠気やふらつきなどの副作用には注意をしなければいけません。
セレナミンは、抗不安作用・筋弛緩作用・催眠作用・抗けいれん作用がいずれもしっかりと期待できるお薬です。そのぶん副作用にも注意が必要です。
ここでは、セレナミンの効果について詳しくみていきたいと思います。他の抗不安薬とも比較しながら、どのような方にセレナミンが向いているのかを考えていきましょう。
1.セレナミンの効果と特徴
セレナミンは、脳の活動を抑えることで落ち着かせてくれるお薬です。
抗不安薬には4つの作用がありますが、セレナミンの4つの作用の強さは、
- 抗不安作用「中」
- 催眠作用「強」
- 筋弛緩作用「強」
- 抗けいれん作用「強」
となっています。これをふまえて、セレナミンの特徴をメリットとデメリットに分けてみていきましょう。
1-1.セレナミンのメリット
- 即効性がある
- 作用時間が長い
- 幅広い効果が期待できる(筋弛緩作用・催眠作用・抗けいれん作用)
- 依存性が低い(90日処方できる)
- 剤形が多い
セレナミンは、薬を服用するとすぐに効果が期待できます。抗不安作用もしっかりとしているので、即効性が期待できます。不安に対してはSSRIなどの抗うつ剤も効果がありますが、効果が出てくるのが遅いので時間がかかってしまいます。
セレナミンの作用時間はとても長いです。セレナミンの血中濃度は2段階に変化して、いったん血中濃度のピークから急激に低下します。その後、ゆっくりと身体からぬけていくのです。このような変化なので、セレナミンを服用しても薬効の実感としてはそこまで長くありません。しかしながら、一定量が残って身体にたまっていくので、不安になりにくい土台ができていきます。
セレナミンには抗不安作用だけでなく、催眠作用や筋弛緩作用、抗てんかん作用があります。この作用がいずれも強いです。筋弛緩作用が強いので、身体の緊張が強い時に有効です。催眠作用もありますので、不安が強くて眠れない方には睡眠のサポートになります。
その中でもセレナミンで特徴的なのは、抗けいれん作用の強さです。「てんかん」にも適応が通っているお薬です。セレナミンには即効性があるので、今まさに痙攣がおきているような時には、まずはセレナミンの注射などから使われます。
抗不安薬にはいずれも依存性があります。セレナミンは、作用時間の長さから依存性が少ないお薬です。他の抗不安薬で依存になってしまった方は、セレナミンに置き換えてやめていくこともあります。抗不安薬のほとんどは、処方数が30日までに制限されています。セレナミンは依存性が少なく、てんかん治療としてもつかわれることから、90日まで処方ができます。
セレナミンは、発売から年月もたっているので、たくさんの剤形が発売されています。抗不安薬の注射剤は、セレナミンしかありません。坐薬やシロップ、粉薬なども発売されています。自分にあったお薬のタイプを選ぶことができます。
1-2.セレナミンのデメリット
- ふらつきが多い
- 日中の眠気が多い
- 睡眠の質が落ちる
セレナミンは、バランスよくいろいろな作用があるお薬です。これが場合によっては余計な作用となってしまい、副作用となってしまいます。さらに、セレナミンは作用時間が長く薬の効果が残りやすいので、注意してください。
セレナミンは筋弛緩作用が強いです。筋弛緩作用が強く働きすぎてしまうと、身体に力がうまく入らなくなってふらついてしまいます。また、催眠作用も強いです。不安感や緊張が強い時は眠気を感じることは少ないかと思います。薬をのんで気持ちが落ち着くと、急に眠気が強く出てくることがあります。
セレナミンでは眠くなる方向に作用しますが、睡眠の質を落としてしまう傾向にあります。レム睡眠やノンレムの深い睡眠を減らしてしまい、ノンレムの浅い睡眠を増やしてしまいます。このため、睡眠の質が落ちてしまって熟眠感が薄れてしまうことがあります。
2.セレナミンの持続時間と効き方
セレナミンは最高血中濃度到達時間が1時間、半減期が57時間の長時間型抗不安薬です。効果の持続時間は4~12時間ほどです。抗不安効果は中程度で、筋弛緩作用・催眠作用・抗けいれん作用が強いです。
セレナミンの血中濃度の変化は2段階になっています。まずはどのような血中濃度の変化をするのか、グラフでみてみましょう。
このような変化をするのには、セレナミンの脂への溶けやすさが関係しています。セレナミンを服用すると、かなりのお薬が身体の脂肪に取り込まれてしまいます。脂肪に取り込まれなかった薬の成分が血中濃度のピークを作った後、血中濃度が急速に減少していきます。
セレナミンの血中濃度が低下してくると、脂肪から血液中に少しずつ薬が戻っていきます。それが長く続くので、血中濃度はゆっくりと減っていくのです。
セレナミンを服用すると、およそ1時間で血中濃度がピークになります。その後3時間ほどで急激に減っていきます。4時間ほどすると下げ止まり、そこからはゆっくりと減っていきます。トータルで考えると、血中濃度が半分になるまでに57時間かかります。
この血中濃度がピークになるまでの時間を「最高血中濃度到達時間」、血中濃度が半分になるまでを「半減期」といいます。
セレナミンでは、「最高血中濃度到達時間1時間・半減期57時間」となっています。
服用してから1時間して効果のピークがくるので、即効性が期待できる抗不安薬です。半減期は長いですが、効果の実感は前半の山にあります。ですから4時間程度に感じる方が多いでしょう。長く効果を感じる方でも12時時間ほどかとおもいます。このため、効果の持続時間は4~12時間です。
後半の台地の部分は、毎日服用していると身体にたまっていきます。セレナミンを毎日服用したときの血中濃度の変化を考えてみましょう。
飲み続けていると、あるところで均衡状態ができます。この状態を定常状態といいます。セレナミンでは2週間ほど服用を続けると、定常状態に達します。このように定期的に飲み続けていくと、不安になりにくい土台ができあがります。
このようなお薬なので、頓服としても効果が期待できますし、定期的に服用して1日を通してカバーしていくこともできます。このような作用時間の抗不安薬は「長時間型」に分類されます。
実際の効果としては、服用して15分~30分くらいで出てきます。効果のピークは1時間くらいしてやってきて、効果はしばらく続きます。
効果の持続時間は個人差があり、薬が効きやすい方と効きにくい方がいらっしゃいます。セレナミンの分解に必要な肝臓の酵素(CYP2C19)を持っていない方が日本人には2割ほどいます。このような方には効果が出過ぎてしまいます。セレナミンの効果の持続時間は、およそ4~12時間といったところになります。
セレナミンの効果の強さとしては、
- 抗不安効果「中」
- 催眠効果「強」
- 筋弛緩効果「強」
- 抗けいれん効果「強」
となっています。
用量は4~15mgとなっていて、最大20mgまで使える抗不安薬です。
3.セレナミンの副作用とは?
セレナミンは作用時間が長いので、眠気やふらつきに注意が必要です。依存性は、他の抗不安薬より少ないです。
セレナミンの効果の特徴を考えると、副作用もわかります。
セレナミンは最高血中濃度到達時間が1時間、半減期が57時間の抗不安薬で、長時間型に分類されます。
セレナミンの効果の強さとしては、
- 抗不安効果「中」
- 催眠効果「強」
- 筋弛緩効果「強」
- 抗けいれん効果「強」
このような効果の特徴をふまえて、セレナミンの副作用を考えてみましょう。
まずは作用時間をみてみましょう。1時間で血中濃度がピークになるので、即効性がある薬です。セレナミンを飲んですぐに副作用が強く出てくる可能性があります。そして、半減期(血中濃度が半分になるまでにかかる時間)が57時間と長いので、副作用が抜けるまでに長引く可能性もあります。
効果の強さをみてみましょう。抗不安作用は中程度で作用時間が長いお薬です。このため、他の抗不安薬よりも効き方が穏やかで、依存性が低いお薬です。
また、筋弛緩効果が強いので、ふらつきなどの副作用に注意が必要です。催眠効果も認められ、眠気は事故などにもつながるので注意が必要です。
それでは、症状ごとに副作用をみていきましょう。
4.セレナミンとその他の抗不安薬(効果と副作用の比較)
セレナミンの作用時間は長いです。他の抗不安薬と比較しても、全体的に作用が強い点が特徴です。
抗不安薬には、さまざまな種類が発売されています。比較してみてみましょう。
抗不安薬を比較するにあたっては、2つのポイントがあります。
- 作用時間(最高血中濃度到達時間・半減期)
- 4つの作用への強さ(抗不安・催眠・筋弛緩・抗けいれん)
よく使われるベンゾジアゼピン系抗不安薬で、この2つのポイントを比較してみましょう。
まずは作用時間によってタイプがわかれています。作用時間は、ピーク(最高血中濃度到達時間)と半減期をみて推測していきます。
作用時間は短時間作用型~超長時間作用型までの4つに分類できます。
短時間~中間型に関しては、即効性を期待して使うことが多いです。一方で超長時間型は、飲み続けていくことで全体的に落ち着かせる土台をつくるようなお薬です。長時間型はその中間に位置していて、即効性も期待できますし、飲み続けていくことで不安を落ち着かせていくこともできます。
作用時間による副作用の違いは、
- 短いほど依存しやすい
- 長いほど身体に薬がたまって眠気やふらつきが出やすい
といえます。
患者さんの不安の状態から、どの作用時間の抗不安薬が適切か考えていきます。その上で、作用の強さを比較して選んでいきます。
短時間型では、デパス>>リーゼ>グランダキシンです。デパスは催眠作用が強く、睡眠薬にも分類されることがあります。また、筋弛緩作用も強いので、肩こりなどにも使われます。
中間型では、レキソタン>ワイパックス≧ソラナックス/コンスタンです。いずれも抗不安効果が強く、不安の発作にも使われます。レキソタンは筋弛緩作用が強いです。
長時間型では、リボトリール/ランドセン>セパゾン>セレナミン(セルシン/ホリゾン)です。セルシン/ホリゾンには注射があります。服薬ができない時は、筋肉注射が有効です。
超長時間型では、レスタス>メイラックスです。このタイプは非常に作用時間が長いです。このため、副作用が一度出てしまうと抜けるのに時間がかかってしまいます。ですから、副作用の穏やかなメイラックスの方がよく使われています。
この他にも、抗不安薬はたくさん発売されています。頻度はかなり減りますが、服用されている方もいらっしゃるかと思います。それぞれのお薬の特徴を表にまとめましたので参考にしてください。
5.セレナミンが向いている人とは?
- 不安だけでなく緊張感も強い方
- 睡眠が不安定な方
- 頓服をそこまで頻回に使わない方
- 他の抗不安薬で離脱症状が出てしまう方
セレナミンは、4つの作用にバランスよく効果が期待できるお薬です。不安感だけでなく身体の緊張が強い方、睡眠状態が不安定になっている方には効果が期待できます。セレナミン1剤でいろいろな症状が改善されていく可能性があります。
即効性も期待できるので、頓服としても使うことができます。ただ、セレナミンは薬が身体に残りやすいお薬です。頓服を続けて使うと、眠気やふらつきなどの副作用が出てしまうことがあります。頓服として使う場合は、そこまで頻繁に頓服を服用しない方の方がよいです。
また、セレナミンは依存性が低いお薬です。作用時間が長く、抗不安作用がそこまで強くないためです。このため、他の抗不安薬で離脱症状が出てしまってなかなか減薬できない時に、セレナミンに置き換えてみることがあります。セレナミンに置き換えた後に少しずつ減量していくと、スムーズにやめられることが多いです。
6.一般名と商品名とは?
一般名:ジアゼパム 商品名:セルシン・ホリゾン・セレナミン
まったく成分が同じものでも、発売する会社が異なればいろいろな商品があるかと思います。医薬品でも同じことがいえます。このためお薬には、一般名と商品名というものがあります。
一般名というのは、薬の成分の名前を意味しています。発売する会社によらずに、世界共通で伝わる薬物の名称です。「ジアゼパム(diazepam)」に統一されています。主に論文や学会など、学術的な領域でこれまで使われてきました。
商品名とは、医薬品を発売している会社が販売目的でつけた名称になります。「セルシン(cercine)」は、先発品の製造元である武田薬品がつけた名前です。CERtain(確実な)+精「神」(cine)=cercineとなっていて、英語と日本語を組み合わせて名づけられました。「ホリゾン(horizon)」は、同じく先発品の製造元である丸石製薬がつけた名前です。その英語の意味は水平線ですので、水平線のような心の安定を期待して名づけられました。
先発品のセルシン/ホリゾンは、日本では1964年から発売されています。特許はとっくにきれていますので、ジェネリック医薬品がたくさんつくられました。セレナミンは、1969年に旭化成ファーマより発売されました。残念ながら、2016年4月に販売中止となることが決まっています。同じジェネリックのジアゼパムもたくさん種類がでているので、自分にあったものに切り替えていきましょう。
セレナミンの効果や副作用について詳しく知りたい方は、
ジアゼパム錠の効果と作用機序
ジアゼパムの副作用で注意すべきこととは?
をお読みください。
まとめ
セレナミンの作用の特徴は、
- 抗不安作用「中」
- 催眠作用「強」
- 筋弛緩作用「強」
- 抗けいれん作用「強」
セレナミンのメリットとしては、
- 即効性がある
- 作用時間が長い
- 幅広い効果が期待できる(筋弛緩作用・催眠作用・抗けいれん作用)
- 依存性が低い(90日処方できる)
- 剤形が多い
セレナミンのデメリットとしては、
- ふらつきが多い
- 日中の眠気が多い
- 睡眠の質が落ちる
セレナミンが向いている方は、
- 不安だけでなく緊張感も強い方
- 睡眠が不安定な方
- 頓服をそこまで頻回に使わない方
- 他の抗不安薬で離脱症状が出てしまう方
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2017年4月より、川崎市の元住吉にてクリニックを開院しました。内科医と精神科医が協力して診療を行っています。
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