痛み止めで逆に頭痛?薬物乱用頭痛について

アイコン 2017.4.9 頭痛

頭痛で悩まされている日本人の数は、実に2000万ともいわれています。誰もが一度は、頭が痛いという経験があるのではないでしょうか?

現在日本では、

など、NSAIDsと呼ばれる痛み止めが街のドラッグストアで簡単に手に入ります。またこれらのCMも、積極的に「頭痛によく効く」というキャッチフレーズで売り出しています。

実際に医療現場でも、頭が痛い時にはまず初期対応としてNsidsと呼ばれる一般的な痛み止めが使われます。一方でこの痛み止めに頼り続けると、薬物乱用頭痛(Medication overuse headaches)が起こることが知られています。

そのため初期対応としては良いのですが、同じ薬を乱発して使用し続けることはよくありません。ここでは、薬物乱発頭痛の診断と治療を中心にみていきましょう。

 

1.薬物乱用頭痛とは?

痛み止めを慢性的に使用し続けることでおこる頭痛です。痛み止めはNSAIDsに限らず、エルゴタミンやトリプタン製剤でも起こります。

もともと片頭痛や緊張型頭痛などの2次性の頭痛の方が、頭痛薬の飲み過ぎにより、逆に頭痛が起こるようになった状態を「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」といいます。英語ではMedication overuse headaches(MOH)として、広くこの病名は知れ渡っています。

実際に欧米のある研究では約半分が頭痛持ちとされていましたが、そのうち数%はこの薬物乱用頭痛と診断されています。そのため決して珍しい病気ではありません。むしろ片頭痛や緊張性頭痛といったありふれた頭痛で、痛み止めを使用し続けてる人の中に潜んでる可能性がある頭痛です。

一般的に原因として多いのは市販薬です。市販薬はドラッグストアなどで医師の診察なしで購入できるため、手に入りやすいことから乱発しがちになります。実際に痛みがなくても、

と市販薬を予防的に乱発している人をみかけます。こういった定期的に市販薬を飲んでる人は要注意です。頭痛薬を慢性的に飲んでる人の中で、

などが当てはまらないかチェックしてみてください。もしかしたら薬物乱用頭痛がすでに起きているかもしれません。

一方で市販薬の痛み止めは大部分はNSAIDsですが、この薬物乱発頭痛は他の薬でも起きることが知られています。具体的には、

  1. エルゴタミン
  2. トリプタン製剤(ゾーミック、イミグラン、アマージ、マクサルト)
  3. アセトアミノフェン
  4. オピオイド(麻薬)
  5. 複合製剤

など、ほぼすべての痛み止めでおこると考えられています。特に①エルゴタミンや②トリプタン製剤は偏頭痛用の痛み止めです。こういった医師が診察したうえで処方する痛み止めでも、薬物乱用頭痛は起こるのです。ちなみにこの薬物乱用頭痛がなぜ起こるか、細かい機序は実は解明されていません。

など諸説あります。しかしどの種類の痛み止めでも起こることから、細かい研究が進んでいないのが現状です。

 

2.薬物乱用頭痛の診断基準は?

月に15日以上ある頭痛に対して、3か月以上の痛み止めを使用し続けたことで頭痛が起きた際に薬物乱用頭痛と診断します。ただし、他の頭痛を除外することは大切になります。

国際頭痛分類 (ICHD-IIIß) での薬物乱用頭痛の診断基準として、以下の3つが示されています。

  1. 月に15日以上頭痛がある
  2. 慢性・急性の頭痛治療薬を、3か月以上乱用している
  3. その頭痛は、治療薬の過剰摂取によって形成・悪化したものである。

日本のガイドラインもこの国際頭痛分類を元に作成されています。まず大切なことは慢性的な頭痛があるということです。慢性的な頭痛としては、

  1. 片頭痛
  2. 緊張性頭痛
  3. 群発頭痛

が挙げられます。逆にいえば「リウマチの関節痛で痛み止めを飲み続けていたら頭痛がしてきた」というように、頭痛以外の理由で痛み止めを飲み続けていた人が頭痛が起きた場合は薬物乱用頭痛とはいえません。

むしろ突発的に激しい頭痛が出てきた人は、脳出血などを考える必要があります。このように、頭痛がベースにあることが必須条件です。頭痛の頻度は月に15回以上となっています。そのため、月に数回の頭痛の人も対象外です。

月に数回の人は薬物を乱用することは少ないからです。このことから、「重度な」頭痛持ちの人に絞られます。そしてこういった重度な人たちが3か月以上にわたって痛み止めを使用し続けた結果起こるのが、薬物乱用頭痛です。

具体的な頻度ですが、

というようになっています。このように痛み止めが1種類のみではなく、複数の痛み止めを使い分けていても起こるのが薬物乱用頭痛の特徴です。

そして最も大切なのが、薬物乱用することで痛みが徐々に悪化しているという点です。薬を使えば使うほどきかなくなる、むしろ薬を使うと悪化するというのがこの薬物乱用頭痛を診断する大切なことになります。

ただしこの3つを満たしていても、他の頭痛を鑑別するのは大切です。慢性的な頭痛が悪化した場合は自己診断で薬物乱用頭痛と診断するのではなく、必ず一度医療機関を受診しましょう。

 

3.薬物乱用頭痛の治療は?

薬物を中止するのが一番ですが、リバウンドで頭痛が悪化することが多いです。1週間程度痛みに苦しむことが多いです。そのため予防薬を併用することが効果的です。ただし一番の治療は日常生活の見直しです。

薬物乱用頭痛の一番の治療は、薬物の乱用を辞めることです。当たり前かもしれませんが、これがなかなかできません。

という気持ちから、薬物を中止にできない人も多いです。さらに薬物乱用頭痛は、薬をスパッとやめたからといってすぐによくなるわけではありません。リバウンドといって薬をやめた直後は、逆に頭痛が強くなることが言われています。一般的に中止後2日程度で発現して、1週間程度リバウンドの頭痛に悩むといわれています。

ただし片頭痛によく使われるエリプタン製剤は、他の痛み止めと比較してこのリバウンドの期間が短いと言われています。

リバウンドの痛み止めとしては、

があげられますが、これらは確立された治療薬ではありません。むしろ重症な場合は、入院して制吐剤や補液で離脱を軽減することもしばしばあります。

そのため重要になるのが、予防薬の投与追加投与です。実は頭痛は痛み止めとは別に、痛みを起こさないように予防することが重要と考えられています。ガイドラインでも薬を中止、もしくは中止前からこの頭痛予防のお薬を投与するように記載されています。

特に激しい頭痛で薬物乱用頭痛になりやすい片頭痛の方は予防薬として、

などがあります。このうちで、有効性があると実証されているものとしては、

  1. 抗うつ薬:アミトリプチリン(トリプタノール)
  2. 抗てんかん薬:バルプロ酸(デパケン)
  3. βブロッカー:プロプラノロール(インデラル)
  4. Ca拮抗薬:塩酸ロメリジン(テラナス)
  5. 抗てんかん薬のトピラマート

となっています。このうち、現在片頭痛の予防で保険が通るのは、バルプロ酸と塩酸ロメリジンになります。頭痛のガイドラインではトピラマートを推奨していますが、日本では現在保険適応外になっているため使用しづらい経緯があります。

そのため、バルプロ酸やテラナスといったお薬を薬物乱用頭痛の方は内服しながら、薬を中止していきます。一方で薬物乱用頭痛は、再発も非常に高い病気です。

薬をやめても3割くらいの方は、痛み止めに頼って薬物乱用頭痛が再発するといわれています。頭痛は日常生活が原因となることが多いです。

などなど、身近なところが頭痛の引き金になっているかもしれません。薬物乱用頭痛になった方、または薬物乱用頭痛が心配な方は、予防薬に頼る前にまずは日常生活を心がけてみましょう。

日常生活での原因予防について詳しく知りたい方は、「片頭痛の原因と予防について」を一読してみてください。

 

まとめ