診療報酬と医療費自己負担はどう決まるの?日本の公的医療保険(国保と社保)の仕組み

アイコン 2016.10.15 保険について
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病院や診療所に行く時、何を持って行きますか?診察券、健康保険証、お薬手帳など必要な物を忘れていないか確認するのではないでしょうか。

日本では昭和36年(1961年)4月より国民皆保険制度が実施され、生活保護法の適用者を除いて、全ての国民がいずれかの公的医療保険の適用を受けるようになりました。

国民皆保険というのは、国民の全てが強制的にいずれかの医療保険に加入しなければならないということです。これによって、月の初めの受診時に健康保険証を提示することで保険診療が可能になり、治療代が保険適用を受けることができるのです。

 医療機関がサービスを提供することで受け取れる報酬は決まっていて、これを診療報酬といいます。日本での外来診療報酬は個別出来高払方式で、診療料や投薬料、注射料など、各個別診療ごとに点数で評価した合計が診療報酬として支払われる方式となっています。

なんだかこんなふうに話していると医療保険と診療報酬って小難しく感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかしこの記事をお読みの方のほぼ全員が、病院や診療所に行き保険診療を受けられていることでしょう。

ここでは、公的医療保険と診療報酬について少し掘り下げていきたいと思います。

 

1.公的医療保険とは?

被用者保険である「社保」と事業主などそれ以外の方が入る地域保険である「国保」があります。このどちらかに加入が義務付けられており、誰もが医療サービスを同じように受けられるようになっています。

医療保険には、大きく2つの種類があります。テレビのCMでよくやっているような医療保険は、任意加入の私的な医療保険です。公的な医療保険での自己負担分をカバーしてくれたり、高額医療を受ける際の費用を負担してくれる保険になります。

それに対して公的医療保険は、誰もが加入しなければならない強制的な保険です。

こういうと聞こえが悪いですが、けがをしたり病気になったりした人が安心して医療を受けられるようにするため、国民を平等に保護する目的としてつくられた社会保障制度の中の一つになります。公的医療保険にはいくつか種類がありますが、国民はいずれかに必ず加入しなければなりません。

それ以外にも、高齢者医療と公費負担医療(国や自治体等などの費用(公費)で保障)などもありますが、ここでは割愛させていただきます。主に健康保険法と国民健康保険法について、焦点をあててお話ししたいと思います。(船員や日雇い労働者、教職員などの共済組合や自衛官などは個別の被用者保険があります)

基本的に保険とは、保険料を納めてもらうかわりに、その納めた人が何かあった時に保障する制度です。医療保険では、医療サービスの現物給付という形になります。保険料の多い少ないに関係なく、年齢によって変わる給付割合を保険者が負担してくれます。

詳しくは後述しますが、

となります。健康保険法に基づく医療保険のことを、よく社会保険(社保)といわれます。厳密には、社会保険というと雇用保険や厚生年金なども含んでいます。一方で国民健康保険法に基づく医療保険のことを、国保といいます。

日本で初めて健康保険法が制定されたのは大正11年(1922年)のことでした。まずは被雇用者のための保険が様々な職場で作られていきました。そして1938年に国民健康保険法が設定されたのを受けて、被雇用者以外にも広がっていきました。

昭和36年(1961年)4月に国民皆保険制度が実施され、生活保護法の適用者を除いて、全ての国民がいずれかの医療保険制度の適用を受けるようになりました。

 

2.公的医療保険の種類と保険者

公的医療保険には大きく社会保険(社保)と国民健康保険(国保)に分けられます。注意していただきたいのは、社保は会社がすべて手続きをしてくれますが、国保は加入も脱退も自分で手続きする必要があります。

皆さんはご自分の加入されている健康保険は、社会保険(社保)か国民健康保険(国保)かわかりますでしょうか。ざっくり大きくみると、この2つに分けることができます。この2つは名前も似ていますが、その保障の内容は大きく異なります。

社保では、労使折半といって会社と本人がそれぞれ保険料を負担しています。その割合は会社の所属する保険組合によってもまちまちです。ですから給料明細から引かれている保険料以上に、社会保険料は支払われています。

ですから社保のほうが手厚いです。傷病手当金や出産一時金などが支給されるのは社会保険だけになります。

 

さて保険に加入すると、保険者と被保険者の関係が生じます。保険者は保険料を徴収し、それを財源として保障する業務を行う運用機関になります。被保険者とは保障される権利をもっている者のことをいいます。ざっくり、「皆さんのことです」と言いたいのですが、社会保険のご家族は当てはまりません。理由は後述いたします。

皆さんは健康保険証を持っていらっしゃると思いますが、それは保険者から交付されたものです。これをみれば保険者がおわかりになるかと思います。

社会保険には、全国健康保険協会が保険者になっている全国健康保険協会管掌健康保険(いわゆる「協会けんぽ」)と、企業や業界などで作られた健康保険組合が保険者になっている組合管掌健康保険(組合健保)があります。

社保の皆さんは、協会けんぽか組合健保かがおわかりになりますか。健康保険に保険者名称とあるところをご覧いただくと、協会けんぽの方は全国健康保険協会、組合健保の方は○○健康保険組合と書かれているのでそこでご判断して頂けます。

次に国民健康保険の保険者は誰なのかといいますと、主に市区町村および特別区が保険者になっています。このため、市区町村国保と呼ばれています。その他、職業ごとの国民健康保険組合が保険者となっている組合国保(職域国保)と呼ばれているものもありますが、現在では新たな設立は認められていません。

 

会社勤めの社会保険の方は、「私の会社は協会けんぽだから」「私の会社の健康保険組合は」など何気に今まで口にしていたことがあるのではないでしょうか。それは保険者のことをさしていました。

ついつい健康保険は会社が全部やってくれているという意識になってしまいがちですが、保険者によっても健康保険のサービスの内容が異なります。医療機関を受診するときは同じですが、例えばインフルエンザの予防接種の補助金があったりすることもあります。

健康保険にまつわることで知りたいことがあれば、ご自分の保険者のホームページをご覧になると、規律や保険料の説明など載っているのでご参考になるかと思います。

国民健康保険に加入したい方は、ご自分のご住所の市区町村の役所に行って申し込みをします。例えば会社を退職して次に就職する予定がない場合は、ご自分で国民健康保険の加入の手続きをします。

そして就職が決まって社会保険が適用されれば、ご自分で国民健康保険の解約の申請をします。社会保険は会社が全部やってくれるのでご自分ですることは何もなく、退職する際に会社に健康保険証を返すことだけくらいになります。ですが国民保険の場合、加入も脱退手続きもご自分でしなければならないので注意しましょう。

そして上述しましたが、保険者に収める保険料の考え方も社保と国保では異なります。

社保の保険料は事業主と被保険者が決められた割合ずつ負担することになっており、本人の報酬(お給料)によって定められています。扶養家族も含めてになるので、家族一人ひとりについての保険料は納めません。よって被保険者は本人のみで、家族は被保険者に扶養される者として被扶養者となります。

それに対して国民健康保険の保険料は世帯主がまとめて支払うのですが、家族が増えるごとに一人ずつ保険料が加算されていきます。家族一人ひとりが保険料を納めることになるので、世帯主と同様、全員が被保険者となります。

皆さんが納めている保険料はご自分の保険者に支払われていて、治療代の保険適応分が保険者から給付されているのです。次に、治療を受けた場合の保険者からの給付率と皆さんの負担率を見ていきましょう。

 

3.診療報酬はどのように決まっているのか

診療報酬は診療行為ごとに決まっており、2年に1度見直しがされています。中医協が審議し、厚生労働大臣が決定します。

医療費(診療報酬)は、患者さんが支払う負担率と国民健康保険又は健康保険組合や協会けんぽが支払う給付率に分かれます。

健康保険証を提示することによる保険診療での治療代を、診療報酬といいます。病院や診療所は最終的に医療費の全額を診療報酬として受け取りますが、この中から医師・看護師など医療スタッフの人件費、医薬品や医療材料の購入費、施設を維持・管理していく費用が賄われています。

日本での診療報酬は個別支払方式や個別出来高払方式とい方式になっており、診療料や投薬料、注射料などの各個別診療ごとに点数で評価した額がきめられています。その合計を診療報酬として支払う方式となっています。

1点単価は10円です。従って、点数に10円を乗じたものが診療報酬になります。具体的な例を後述したいと思います。

それでは診療報酬は、どうやって決まるのでしょう。

診療報酬は医療の進歩や世の中の経済状況とかけ離れないように、通常2年に一度改定(見直し)されます。厚生労働大臣は政府が決めた改定率を基に、中医協(中央社会保険医療協議会)に意見を求めます。そして中医協が個々の医療のサービスの内容を審議し、その結果に基づいて厚生労働大臣が決めていくのです。

直近の改定は2016年4月にされました。ニュースでもご覧になると思いますが、高齢化になるに従って医療費が増えると予測されるため、診療報酬はどんどんと抑制されています。

 

4.診療報酬の給付率と患者負担率

年齢によって患者負担比率が決まっています。健康保険証を月初に忘れてしまうと、一時的に医療費を全額自己負担しなければいけないこともあります。

それでは、保険者から支払われる給付率と、患者さんが支払う負担率を見てみましょう。

※義務教育就業前・・・小学校入学の年の3月31日まで
※75歳以上・・・誕生日当日から

このように社会保険でも国民健康保険であっても、給付率と患者負担率は年齢により決まってきます。

もし月初めの受診の際に健康保険証を忘れてしまった場合はどうなるのでしょうか。

その日の受診は保険適用できなくなり、全額自費での支払いとなります。通常は3割負担の方であれば3割の支払いでよいのに、全額となればかなりの高額になってしまいます。しかし後日に健康保険証を提示すれば、差額分の7割を返金してもらえます。ですが返金手続きはそれぞれの医療機関によって異なりますので、その医療機関で確認して下さい。

返金手続きが容易でないところもあるようです。例えば加入している健康保険に書類を提出して返金手続きをとるところもあり、社会保険でしたら会社に領収書等を提出するということにもなりかねません。

高額を支払う上に後日返金の手間が生じることを思えば、健康保険証を月初めに忘れた場合は、家に取りに戻るか受診を断念して別の日にした方が良いことになってしまうので、月初めの受診の際は特に健康保険証は忘れない方が良いでしょう。

ここまで公的医療保険と診療報酬について見てきましたが、実際に診療報酬はどのようになっているのか、精神科外来の場合についてとりあげてみましょう。

 

5.外来診療報酬について(精神科の場合)

患者さんの自己負担は1~3割になりますので、初診時は2,000~3,000円、再診時は1,000~2,000円となることが多いです。

診療報酬点数は診療行為ごとに算定の仕方が異なります。しかし、診療報酬点数表の構成は同じようにできています。

まず診療報酬点数表は、基本診療料と特掲診療料の2つにに分けられ、基本診療料は2つ(又は3つ)、特掲診療料は13に分けられます。

基本診療料は、①初診料②再診料③入院料に分けられます。

特掲診療料は、①医学管理等②在宅医療③検査④画像診断⑤投薬⑥注射⑦リハビリテーション⑧精神科専門療法⑨処置⑩手術⑪麻酔⑫放射線治療⑬病理診断に分けられます。

では具体的に、どのように診療報酬が算定されるか精神科外来のケースをいくつか見ていきましょう。

 

①33歳の3割負担のAさんが平日、初めて診療時間内に精神科外来にかかりました。診療はお薬の処方(この方は86点)があり、30分以上でした。

<診療報酬点数算定>

合計点数・・・768点

<診療報酬額算定(内税)>

1点=10円なので、768点x10円x0.3=2,295円

よってAさんのお会計は2,295円となります。

 

②33歳の3割負担のAさんが平日、再び診療時間内に精神科外来にかかりました。診療はお薬の処方(この方は86点)もあり、30分未満でした。どのように診療報酬が算定されるでしょうか。この診療所は明細書発行加算をする診療所です。(再診の時のみ1点加算されます。)

<診療報酬点数算定>

合計点数・・・489点

<診療報酬額算定(内税)>

1点=10円なので、489点x10円x0.3=1,467円

よってAさんのお会計は1,467円となります。

 

③33歳の3割負担のAさんが平日、再び診療時間内ですが午後6時に精神科外来にかかりました。診療はお薬の処方(この方は86点)もあり30分未満でした。どのように診療報酬が算定されるでしょうか。この診療所は明細書発行加算をする診療所です。(再診の時のみ1点加算されます。)

<診療報酬点数算定>

合計点数・・・539点

<診療報酬額算定(内税)>

1点=10円なので、539点x10円x0.3=1,617円

よってAさんのお会計は1,617円となります。

これらは、200床未満の診療所を前提に基本料を算定しましたが、このように、初診や再診、診療時間、診療内容などによって点数が決められているのです。

投薬も処方箋をだすことで医療機関に入る処方箋料に加え、処方するお薬によって点数が異り、薬局で支払う額が変わってきます。その他にも細かく規定が分かれており、人によってその日によってお会計が異なるのはこうした理由からです。

ただし、点数構成はだいたい同じになります。この3つのケースでは、初・再診、精神科専門療法、投薬のみでした。

では、もし健康保険証を忘れてしまったら、この3つのケースの場合でどうなるか検証してみましょう。

その日は全額自己負担になりますので、①では7,680円、②では4,890円、③では5,390円を支払います。そして後日7割分の返金手続きをすることにより、①では5,376円、②では3,423円、③では3,773円を返金してもらうことになります。

この7割分の①では5,376円、②では4,890円、③では3,773円は、保険者から給付されているのです。

病院や診療所では、月ごとに保険者(厳密には支払い基金)に、この7割を請求します。そのため、患者さんは月初めに保険証を提示するのです。

保険証を忘れてしまうと、いくら前の月に受診していたとしても、どこの保険者で何割負担の患者さんなのかもわからなくなってしまいます。

社会保険から国民健康保険へ加入先が変更しているかもしれませんし、脱退してしまって加入していない可能性も否定できません。そのため10割の全額を請求することになるのです。

 

まとめ