味の素グリナ(グリシン)は不眠症に本当に効果があるのか

アイコン 2015.10.30 不眠のサプリメント

睡眠のサプリメントとして、アミノ酸のグリシンが発売されています。さかんに宣伝もされていますので、患者さんからも「グリナって効くんですか?」と聞かれるようになりました。

グリシンの睡眠サプリメントとしては、味の素から「グリナ」が長らく発売されています。製品ホームページを見てみると、実験データとともに睡眠に対する効果がうたわれています。ですがこのデータ、わずか11名で調べた報告です。

グリシンは、果たして本当に効果があるのでしょうか?
睡眠にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?

グリシンの睡眠への効果に対する文献を調べてみました。ここでは、それらの文献を踏まえて、客観的にグリシンの効果を考えていきたいと思います。

 

1.グリナの主成分のグリシンとは?

グリシンは、非必須アミノ酸です。身体の中で自分で作ることができるアミノ酸です。

人の身体をつくっているタンパク質は、アミノ酸を原料にして作られています。アミノ酸には、自分の身体でつくれるものと、つくれないものの2種類があります。グリシンは前者のアミノ酸で、このようなアミノ酸を非必須アミノ酸といいます。

グリシンは、必要に応じて身体の中でつくることができます。人では1日に薬45gのグリシンが体内で合成されていて、食事からとっているのは3~5gといわれています。食事としては、エビやカニをはじめとした魚介類、お肉に多く含まれています。

 

2.グリシンは睡眠にどのような効果があるの?

末梢血流を増加させて、深部体温を低下させる作用が考えられます。

さて、このように身体の中で自分で作ることもできるグリシンですが、睡眠にはどのような効果があるのでしょうか?

グリシンはもともと、睡眠への効果はまったく考えられていませんでした。2002年に味の素で行われたアミノ酸の効果を確認する研究で偽薬としてグリシンが使われた時に、思いがけずに熟眠感が強まることが確認されました。これをうけて、グリシンの睡眠への効果が研究されるようになりました。

グリシンを服用すると、腸から血中に取り込まれます。グリシンの血中濃度は30分後をピークに増加し、その後4時間ほどかけて半分になります。脳の周りには血液脳関門というバリアーがあり、脂っぽい物質しか通さないようになっています。グリシンはアミノ酸ですから、ほとんど通過できません。

血中と脳のグリシン濃度の比は、45:1に保たれるという結果がでています。ですから、脳への作用はほとんどないと考えてよいでしょう。

 

それではグリシンにはどのような効果があるのでしょうか?ラットの実験で判明しているのは、体表の血流が増加して深部体温が低下する効果です。

動物は眠ると深部体温は1℃近く低くなります。冬眠を考えるとイメージしやすいかも知れません。無駄なエネルギーを使わないために、体温を低くして代謝活動を抑えるのです。グリシンには、この働きを強める作用が考えられています。

どうしてこのような作用があるのかは、はっきりわかっていません。

などが考えられています。

 

3.グリナの広告にある「睡眠改善効果」とは?

症例数が少なすぎて、この研究をもって効果があるとは評価できません。

味の素から、グリシンの睡眠サプリとしてグリナが発売されています。今年で発売10年になるとのことで、これまで100万人以上の方に使われてきたとのことでした。

グリナの広告にある研究成果をみてみましょう。被験者の数は11名で、同じ人でグリナ3gを2日続けた場合と偽薬を2日続けた場合の結果を比較しています。2日目にポリソムノグラフィーという睡眠中の脳波のわかる検査を行っています。

その結果として、翌朝の主観的疲労感と熟眠感の改善が報告されています。また、入眠潜時(ステージ2)と徐波睡眠潜時(ステージ3と4)が短縮したと報告されています。つまり、寝付きやすくなって、深い眠りに入りやすくなるということです。

 

これだけみれば、良いことだらけに感じます。しかしながら、この研究データから睡眠改善効果があるとはとても評価ができません。被験者の数がわずか11名の報告が1つしかないからです。本当に効果を証明するならば、もっと規模が大きな試験をしたり、回数を重ねなければいけません。

私は学生時代、魔法の粉である味の素には大変お世話になったので、素晴らしい会社だと思っています。ですが、出版バイアスの可能性を考えなければいけません。

出版バイアスとは、都合のよいものだけが世の中に出されることで生じるバイアスです。サプリメントの研究は、会社が売るために行われています。このような研究では、思わしくない結果がでたら論文とされずに、都合のよいものだけが論文になりやすい傾向があります。今回のように規模の小さな研究では、研究方法に問題がなくても結果のばらつきは大きく出てしまいます。

本当に効果があるのかをはっきりさせるためには、もっと規模の大きな研究を行わなければいけません。しかしながらグリナを売るための研究では、これ以上研究コストをかけられないのかもしれません。この研究結果だけでは、多くの専門家はグリナ(グリシン)に睡眠効果があるとは言えないと思います。

 

4.グリナの費用対効果

睡眠の生活習慣が整っていない方は、まずはそこから取り組んでみることをお勧めします。

グリナは3gを毎日服用するようです。過剰にとったとしても、身体に当たり前にある成分なので副作用の心配はないでしょう。ただ、非常に高価です。1日あたり200円程度、月にすると6000~7000円するとのことです。

グリナの効果は、末梢血流を増加させて深部体温を低くすることにありました。それなら生活習慣でもできます。深部体温を下げるためには、夕方に適度な運動をしたり、ぬるま湯にゆっくりつかればよいです。

シャワーしか浴びていない方は、まずは入浴習慣から変えていった方がよいです。入浴すると身体が暖められて、身体の血管が拡張します。まさにグリナと同じ作用があるのです。詳しく知りたい方は、「不眠を解消する9つの方法」をお読みください。

 

正直に言ってしまうと、グリナの費用対効果は良くないと思います。ここまでの金額をかけるならば、病院にいって睡眠薬のロゼレムなどをもらった方がよいです。保険を使えば安いですし、効果もしっかりと証明されています。

グリシンの睡眠効果の研究がはじまって15年近くが経っています。大きな効果が期待できるならば、他の製薬会社が黙ってはいません。安全性の高い新しいタイプの睡眠薬を求めて、各製薬会社はしのぎを削っているのです。

グリナ(グリシン)の効果を否定するわけではありませんし、効果を実感されている方は続けられた方がよいと思います。今後服用を検討されている方の判断材料になればと思います。

 

まとめ

グリシンは、非必須アミノ酸です。身体の中で自分で作ることができるアミノ酸です。

末梢血流を増加させて、深部体温を低下させる作用が考えられます。

症例数が少なすぎて、この研究をもって効果があるとは評価できません。

睡眠の生活習慣が整っていない方は、まずはそこから取り組んでみることをお勧めします。

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