うつ病治療に役立つマインドフルネスとは?

アイコン 2015.11.3 うつの心理療法

みなさんは「マインドフルネス」という言葉を聞いたことはありますでしょうか?

心理療法の世界での言葉ですが、日本でも古来から座禅や茶道などで行われてきたことに通じます。世界を見渡しても、ヨガや太極拳などがありますね。

マインドネスはリラックス法とは違います。「今ここにある自分」に目を向けさせるようにする方法です。今の積み重ねがやがて未来をつくり、過去をつくっていくのです。

ストレスマネージメントの方法として取り入られることが多いマインドフルネスですが、うつ病の患者さんの治療にも役に立ちます。ここでは、マインドフルネスがうつ病治療にどのように役に立つのか、お伝えしていきたいと思います。

 

1.マインドフルネスとは?

「今ここにある自分」に注意を向けて、現実をあるがままに受け入れ、思考や感情にとらわれないような心のあり方です。

私たちの日常生活では、いろいろな出来事がおこると、ほぼ自動的に評価したり解釈してしまいます。それと同時に、喜びや怒りなどの感情がやってきます。しかしながら、人それぞれによってとらえ方は異なるので、現実をありのままに捉えることは非常に難しいです。その結果として、必要のない苦しみや誤解を招いてしまっていることもたくさんあります。

そもそも私たちは、「今」に向き合うことが苦手です。

せっかくの日曜日でも、「また明日から仕事かぁ」と思うと楽しめなくなってしまいます。仕事がたまっている時は目の前のことをひとつひとつ処理しなければいけないのに、「終わらなかったらどうしょう」と考えて効率が落ちてしまうこともあります。このようなひとりでに出てくる雑念のような考えが、「今ここにある自分」に目を向けることを妨げてしまいます。

マインドフルネスでは、「今ここにある自分」に注意を向けることで、現実と自分をありのままに捉えられるようにしていく心のあり方です。

 

2.マインドフルネスのやり方

呼吸に注意を向けることで、少しずつ現実をありのままに捉えられるようにしていきます。

マインドフルネスでは、呼吸に目を向けることが多いです。規則正しい呼吸をしながら、息を吸っていることに注意を集中させることから始めます。これは「今ここ」での身体の動作や感覚に注意を持続する練習です。

するとすぐに、「お腹がすいたなぁ」とか「このあと何をしようかな」などと思考や感情などが出てきます。それが出てきたらすぐに呼吸に注意を戻します。雑念にとらわれずに、置いておくことを身につけるのです。これは、注意を転換する練習です。

この2つがうまくできるようになってきたら、注意の範囲を広げていきます。意識に上ってくる色々なことに、同時に気を配るようにします。ひとつひとつのことが、ありのままに見えるようになっていきます。

このようになると、いろいろな出来事が現実以上に感情や思考が発展せず、そのうちに消えていくことが確認できます。

 

3.言葉はマインドフルネスを妨げる

言葉のバーチャルな世界を作り上げる力によって、ありのままを捉えられなくなります。

本来動物は、目の前の出来事に従って行動します。人間の場合はそうはいきません。それぞれの人の評価や感情にとらわれてしまいます。動物と人間の違いは、「言葉」が生み出したものです。

言葉にはバーチャルな世界を作り上げる力があります。「いぬ」という言葉をきくと、「犬の画像」が浮かんでくると思います。犬の画像をみると「いぬ」という言葉が浮かびます。その犬のイメージは人によっても異なります。このようにして、言葉にはバーチャルな世界を作り上げる「象徴性」があります。

この象徴性こそが、マインドフルネスを妨げます。言葉によって作られたバーチャルな世界が悪い方に膨らんでしまうと、ありもしないネガティブなことを現実に感じてしまうのです。このように現実と思考を混同してしまった状態を、認知的フュージョンといいます。

その結果として、自分が傷つくことを避けるために、考えることをやめてしまったり、自分の感情自体から目をそむけてしまいます。体験の回避をしてしまうのです。

うつ病の方はこのようにして、認知的フュージョンと体験の回避にとらわれてしまって、絶望を創造しているのです。つまり、現実と自分の思考が区別できなくなってしまって、いろいろなことを回避してしまうのです。

 

4.うつ病治療でのマインドフルネスの活用とは?

うつ病の患者さんでは、現実と自分の思考が区別できなくなってしまって、いろいろなことを回避してしまっています。「マインドレス」な状態になっています。この状態から抜け出さないといけません。

この状態から抜け出せれば、認知再構成法や行動活性化療法といった認知行動療法をすすめていくことができるようになります。

もちろん、先ほどご紹介した呼吸を意識したマインドフルネスの実践も有効です。もう少し具体的に、外来の治療でどのようにマインドフルネスを活用できるのかを考えていきましょう。

 

4-1.「なくそうとする」のではなく「そのままにする」

不安や恐怖、焦りや悲観的な思考をなくそうとしてはいけません。そのままにしておくように意識します。考えていることは現実と違うことを理解していくことが大事なのです。まずは、避けたらよくならないことを理解しましょう。

自分が不安なことや恐れていることを「膝の上に置いておく」のです。心を閉じることをせず、そのままを受け入れるのです。このことをアクセプタンスといいます。

 

4-2.「~と考えた」とつけて、思考から距離をおく

うつ病の患者さんでは、思考と現実が混同してしまっています。事実ではないのに、自分の考えている世界の中でネガティブな現実を作り上げてしまっているのです。この認知的フュージョンの状態から抜け出さなければいけません。

そのために、悲観的な考えがうかんできたら、「~と考えた」という風に言葉に出してみましょう。このようにすると、少し思考から距離を置くことができます。書いてみて冷静に考えてみるのもよいでしょう。

 

4-3.目の前のことや呼吸に注意を向ける

いろいろなことを考え始めてしまったら、目の前のことに注意を向けるようにしましょう。

例えば、掃除をしている途中に反すうしてしまったら、自分がいまやっていることに注意を向けます。心の中で、「そうじ・そうじ・そうじ・・・」と唱えてください。早く唱えると、自然と考えが消えていきます。

何もしていない時に考え事がでてきたら、呼吸を意識しましょう。呼吸に注意を向けて、繰り返し考えてしまうのをやめます。

考えてしまうこと自体は仕方がないのです。繰り返し考えてしまうこと(反すう)が問題で、うつや不安を悪化させてしまいます。過去のことにとらわれていて、「今ここにある自分」から回避するために行っているのです。

このようにして反すうしないようにしていると、自然と考え自体が少しずつ減っていきます。

 

まとめ

マインドフルネスとは、「今ここにある自分」に注意を向けて、現実をあるがままに受け入れ、思考や感情にとらわれないような心のあり方です。

呼吸に注意を向けることで、少しずつ現実をありのままに捉えられるようにしていきます。

うつ病の患者さんでは、マインドフルネスによって認知行動療法をすすめやすくしていきます。