喘息の最新の検査!呼気NO検査とは?

アイコン 2017.3.29 喘息

気管支喘息は、診断が難しい病気の一つです。典型的な所見があれば分かりやすいのですが、典型的な所見がない人は呼吸器内科医が診察しても一度で診断できないことも多いです。

さらに喘鳴が聞こえない、喘息の手前の咳喘息と言う病気もあります。こちらも非常に難しく、「気管支拡張薬」を使用して症状が改善したかどうかを調べるのですが、様子をみていたら治ってしまう咳も咳喘息と診断されてしまうので、非常に診断が難しいのです。

こうした気管支喘息の診断を補助する目的で登場したのが、呼気NO測定です。呼気中のNO(一酸化窒素)の値を測定することで、気管支喘息や咳喘息の診断により近づくことができます。

新しい検査のためまだまだ問題点は多いですが、息を吐き続けるだけで検査できるため、非常に使い勝手が良い検査です。ここでは、呼気NOを測定する方法・意義を中心についてみていきましょう。

 

1.気管支喘息や咳喘息ってどんな病気?

気道の長引く炎症で気道が狭くなり、咳や息苦しさを繰り返す病気です。

気管支喘息は慢性的に気道に炎症を起こしており、それが引き金となって気道が敏感になって気道が狭くなることで、咳や息苦しさを繰り返す病気です。本来は我々の体を守るべき好酸球やリンパ球、マスト細胞などといった免疫細胞が、気道をずっと攻撃している状態です。喘息では、主にIgEという免疫物質が気道を攻撃しています。

こういった自分の免疫が自分自身を攻撃する病気のことを、自己免疫疾患と言います。分かりやすくいうと、アレルギー疾患ですね。喘息の病気について詳しく知りたい方は「喘息ってどんな病気?喘息の症状とは?」を一読してみてください。

最近では喘息の手前の咳喘息と言う病気も言われています。咳喘息と喘息の一番の違いは、喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼーと聴診で高音の音が聞こえる状態)があるのか、ないかです。

と考えている医師も大勢います。しかしこれは呼吸器内科医からすると、あまりにも短絡的です。喘息は、常に喘鳴ではありません。実は、喘鳴が聞こえない咳優位型喘息なんてのもあります。

さらに長引く咳で喘鳴が聞こえたら、全てが喘息というわけではありません。喘鳴が聞こえる病気は、心不全やCOPD(肺気腫)など実に多彩です。すぐに咳喘息と診断する医師は、喘鳴が聞こえるとすぐに喘息と診断してしまうことが多いです。喘鳴について詳しく知りたいかは、「胸の音がヒューヒューしたら喘息?喘鳴のメカニズムについて」をお読みください。

一方で咳喘息の診断基準は非常に曖昧で、咳簡易診断基準は、

  1. 8週間以上続く咳でかつ、喘鳴を伴わない状態
  2. 気管支拡張剤(β2刺激薬かテオフィリン)が有効

の2点しかありません。つまり、長引く咳が気管支拡張薬を吸入して治った場合、咳喘息と診断して良いことになります。咳喘息の病気について詳しく知りたい方は、「咳喘息は喘息とは違うのか?咳喘息ってどんな病気?」を一読してみてください。

 

2.呼気NO(呼気一酸化窒素)とは?

気管支喘息や咳喘息に特異的に上昇する炎症性物質として、注目を集めています。

このように、喘息も咳喘息も非常に診断が難しい病気でした。どちらも「長引く繰り返す咳」というのがキーワードになります。

ですから一過性の咳なのかどうか、治療をせずに経過を見ていくのも方法です。ですがそれは、つらい症状をとってほしいと思って病院に受診されている患者さんに提案できる方法ではありません。

そこで診断の助けになるのが、呼気NO(呼気一酸化窒素)です。先ほど記載したように、喘息は気道内で好酸球やリンパ球、マスト細胞などといった免疫細胞が攻撃し続けているアレルギー疾患です。これらの免疫細胞が攻撃した結果、

様々な炎症物質が出てきます。ただしこれらの物質の中で、呼気NOだけが喘息などのアレルギー疾患で上がることが分かってきました。タバコで肺が穴ぼこだらけになるCOPD(肺気腫)は、一酸化炭素やエタンは上昇することが分かっていますが、呼気NOは上昇しません。

喘息の慢性炎症によって、特異的に気道上皮で誘導型一酸化窒素合成酵素(INOS)という一酸化窒素(NO)を作る酵素が増え、大量のNOが産生されるのです。

そのため、長引く咳の方に呼気NOを測定することが非常に有意義なのではと考えられるようになりました。ただし近年は、アレルギー以外の機序でも喘息や咳喘息を引き起こすことが分かってきました。つまり、呼気NOが上昇していなくても喘息は否定できないということです。

そのため、あくまでも呼気NOは一つの目安という補助診断というポジションです。今後研究が進み、呼気NOの立ち位置がさらに高まることが期待されています。

 

3.呼気NOの測定方法は?

呼気NOは、一定の力で息を吐き続けるだけで測定できます。ただし、息が強すぎても弱すぎてもいけないため注意が必要です。

呼気NOはクリニックでも測定できる検査です。実際に、チェストのホームページで製品を確認してみてください。他の会社も現在発売されていますが、どれも非常にコンパクトです。

この器械に一定の息を吐き続けるだけで測定できます。具体的に説明すると、

  1. マウスピースをくわえ、大きく息を吸い込みます。
  2. 最大限吸い込んだ後、一定の速度で吐きはじめます。
  3. 器械の画面を見ながら、10秒間息を吐き続けます。
  4. 約1分ほどで分析され結果が表示されます。

これだけで呼気のNOが測定されます。ただし言葉でいうよりも、実際は少しは難しい人もいます。というのも、③で息を吐き続ける時、一定の呼気流量(50ml/SEC±10)で検査する必要があります。つまり呼気の流量が少ないのはもちろんのこと、ただただ思いっきり吐き続ければいいというものではないのです。

そのため現在の呼気NOは、

などが呼気の強さによって上下するようにできています。このふうせんや雲、気球が上下の線に収まるように一定の流量で吐き続ける必要があります。ゲーム感覚で楽しめれば良いのですが、

などではなかなか検査するのが難しいことがあります。なお呼気NOの 保険点数は、検査(判断料込み)で 240 点です。1点=10円ですので、 つまり1 割負担の患者さんは 240 円、3 割負担の方は720円になります。

 

4.呼気NOの数値の見方は?

健常人の平均が15ppbです。一方で22ppb以上であれば喘息の可能性があり、37ppb以上で喘息の可能性が非常に高くなります。

それでは、呼気NOの検査結果をどのようにみていくのでしょうか。

まず18歳以上の日本人健常者を対象に行われた試験結果を示します。この検査では、日本人の成人健常者における呼気NO濃度の平均値は、約15ppbとなっています。正常値の上限値は約37ppbと結論付けられました。

次に、未治療で気管支喘息と診断した人を対象に行われた試験結果です。それによると、22ppbであれば喘息の可能性があり、37ppb以上で喘息の可能性が非常に高いという結果が示されました。

この結果から、37ppb以上であればNOが非常に高いと考えられ、気道炎症がある可能性が高いといえます。ただし呼気というのは非常に曖昧で、色々なことに影響されます。

<呼気NOが上昇する因子>

  1. 硝酸塩を含んだ食べ物(ほうれん草、春菊、レタス、牛肉)
  2. 鼻炎
  3. 風邪

<呼気NOが低下する因子>

  1. 喫煙
  2. カフェイン、アルコール
  3. 呼吸機能検査
  4. 喘息治療薬

となっています。実際に私も、食後に試しに呼気NOを測定したら40ppbという値が出ました。そのため、呼気NOを測定する前は最低でも2時間、飲食しない状態が必要です。水やお茶でも呼気NOが低下したという話もあるため、飲水も控える必要があります。

さらに呼吸機能検査は喘息にとって必須の検査ですが、呼気NOを測定する場合は先に呼気NOを測定する必要があります。呼吸機能検査は、思いっきり息を吐いてどれくらい吐けるかみる検査です。

息を思いっきり吐いてしまうと、溜まっていた呼気NOが全部吹き出されてしまうのです。喫煙と鼻炎がある人の場合は、それぞれの因子によって基準値が微妙に変わります。

患者状況 呼気NO基準値
現在の喫煙 鼻炎
なし なし 22ppb
あり なし 18ppb
なし あり 28ppb
あり あり 22ppb

このように呼気NOは、

でかなり左右される検査です。そのため、事前に心配なことがあれば医師に相談してみましょう。しかし非常に簡便に検査できるうえ、数値で見えるというのは心強いです。数値は誰が見ても高いものは高いので、わかりやすい指標になります。

さらに呼気NOを定期的に測定することで、診断だけではなく

  1. 吸入ステロイドを吸ったことでどれくらい低下したか?(どれ位反応したか?)
  2. 気管支喘息が増悪していないか?
  3. リモデリング(気管支喘息が元に戻らなくなる状態)に移行していないか?

などを見る指標になります。現在は呼気NOの判断は非常に難しいため、日本呼吸器学会のホームページでも呼吸器内科専門医やアレルギー専門医が判断するように記載されています。

しかし呼気NOを用いることで、あなたの気管支喘息や咳喘息の診断にググっと近づく可能性があります。ぜひ気管支喘息が疑われる人は、専門医の下で一度検査してみましょう。

 

まとめ