運動で喘息?運動誘発喘息・アスリート喘息について

アイコン 2016.11.19 喘息
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喘息は、発作が起きる誘因には様々なものがあります。多くの場合は、

などになりますが、中には運動することで喘息発作が起きる人もいます。一度運動中に発作が起きると、「また起きるのではないか?」という不安やストレスを加わり、再度発作が起きる悪循環に陥ります。

さらに最近ではアスリート喘息といって、過度の運動に生じた特有の喘息もあります。有名な話では、レスリング女子の吉田沙保里選手が喘息になりました。これも、「アスリート喘息では?」と言われています。

ここでは、運動と喘息の関係についてみていきましょう。

 

1.運動誘発喘息とは?

運動中に気管支の収縮によって発作が起きる喘息です。

喘息とは、「気道の慢性炎症によって生じる気管支閉塞によって、咳や痰など生じる病気」と定義されています。喘息についてまず知りたい人は、「喘息ってどんな病?喘息の症状とは?」についてを一読してみてください。

運動誘発喘息の方も、実は症状が出ていないだけで気管支内の炎症はあることが前提になります。運動によってこの炎症が強まることで、気管支が収縮することが要因となります。

喘息発作が出現しやすい運動は、ランニングやダッシュなど走る動きの際起こることが多いです。また運動中より、運動終了後の方が多いことも言われています。

一方で水泳は、運動誘発喘息が起こりづらいスポーツとされています。また、大会などのストレスがかかりやすい状態でより生じやすいと言われています。

ただし運動のストレスで気管支が収縮して咳が出ることは、健常人でも20%はいると言われています。そのため運動時だけ咳が出る人は、必ずしも運動誘発喘息と安易に診断はできません。

喘息自体が実は診断が非常に難しい病気です。詳しく知りたい方は、「私って本当に喘息?成人喘息の診断基準とは?」を一読してみてください。特に高齢者になってから運動時の息切れや咳が気になる人は、

の方が可能性としては高いです。詳しく鑑別疾患について知りたい方は、「喘鳴が聞こえたときに喘息以外に考える疾患は?」を一読してみてください。

 

2.運動誘発喘息の予防は?

運動前にインタールやβ2刺激薬の吸入が有効といわれています。

まず運動誘発喘息と診断された方ですが、基本的に喘息は発作の有無に関わらず長期的に治療が必要になります。喘息発作が起きる度に、病態が悪くなるからです。

喘息の長期管理の必要性について知りたい方は、「症状がなくても喘息の治療はやめられない?喘息の治療期間とは?」を一読してみてください。

運動前に予防投与だけすればいいやと思っていると、そのうち運動以外の状態でも喘息が出現するようになっていきます。喘息の治療の柱は、成人の場合は吸入ステロイドです。成人喘息の方の長期管理の治療ついては、「成人喘息の長期管理の薬物治療とは?吸入ステロイドが効かない場合の対処法」を一読してみてください。

ただし運動誘発喘息の方の多くは、小児の方かと思います。小児の場合は、ほとんど運動時に発作が生じます。成人の場合は半数程度と言われていますが、成人すると運動する機会が限られているためとみられ、実際はもう少しいるのではと言われています。

小児の方の喘息は基本的に安定していれば、

などの抗ロイコトリエンの内服薬でコントロールしていることが多いと思います。この抗ロイコトリエンは、運動誘発喘息に対して効果があることが分かっています。

また、薬以外でも喘息発作は予防できます。薬以外で気を付けたことが良いことを知りたい方は、「喘息発作を予防するためには?喘息予防の5つの対策」を一読してみてください。運動誘発喘息は、普段から気を付けて治療することが一番の予防になります。

ただし、しっかりと喘息をコントロールできていても、運動時に咳が出てしまう人は大勢います。運動前に行うべき発作予防としては、

  1. 準備運動
  2. 疲れる前の休息
  3. 運動時のマスクの着用、加湿
  4. 寒い所を避ける
  5. 減塩食、ビタミンCなどの食事療法

などが挙げられます。特に準備運動は効果的です。ガイドラインでは、「ある程度の強度の準備運動で咳などを誘発した後は、一般的に4時間程度は喘息発作が出現しない不応期になる」と記載されています。ただし、準備運動で喘息発作が出現した時点で不安に駆られますよね。

準備運動で喘息が誘発される方は、

を運動15分前に吸うのが推奨されています。小児では、インタールは抗ロイコトリエンと並んで長期管理薬でベースの治療の一つしてあげられています。β2刺激薬は手の震えや動悸の副作用があるため、小児の方はインタール吸入の方が良いでしょう。

一方で成人では、インタール吸入では効果が弱い可能性があります。そのため、β2刺激薬の方が勧められています。特に普段は吸入ステロイドが低用量でコントロールできる喘息の方は、シムビコートによるSMART療法がお勧めです。

SMART療法は朝と夕に定期的に吸入するのに加えて、追加で吸入することが可能なお薬です。つまり同じ吸入薬で、長期管理と運動前の予防ができるのです。注意が必要なのは、必ず朝と夕方の定期吸入は行っていただくことです。油断している人は、よく運動する前しか吸入しなくなりますがそれは間違いです。

また、上記の治療は運動誘発喘息でなくても、運動だけで咳が出る健常人の方(運動誘発気管支収縮といいます)でも有効といわれています。

ただしβ2刺激薬の吸入は、連発すると不整脈や、まれではありますが心停止などの重篤な副作用の危険性もあるお薬です。メプチンやサルタノールの主成分は、β2刺激薬になります。しかしながら、β1にもわずかながら刺激してしまいます。このβ1の作用は、心臓にムチをうつような作用があります。

軽度であれば動悸の副作用があります。量がどんどん増えてしまうと心臓のリズムを狂わせてしまい、不整脈が起きてしまいます。さらに使い続けると、心臓が止まりかねないお薬なのです。

ただでさえ運動で心臓に負荷がかかるのに、大量にβ2刺激薬を吸うと逆に危険です。「今日は大切な大会だから、いつもより多めにβ2刺激薬を吸っておこう」なんてならないようにしましょう。

 

3.アスリート喘息ってどんな咳?

運動を仕事にしている人は、高度のトレーニングで喘息になる方がいます。疑っている人は専門的な病院を受診しましょう。

スポーツ選手の方は一般の方よりも、過度のトレーニングを負荷することが多いです。はっきりとした機序は分かっていませんが、過度な運動のストレスが気管支に炎症を与え続けて喘息になるのではといわれています。特に過量な呼吸状態が続くことで、気管支の極度の細胞の進展や収縮の繰り返しが良くないと言われています。

このアスリート喘息はアレルギーの要因とされる好酸球やマスト細胞ではなく、非アレルギー性の好中球やリンパ球が主体のことが多いです。つまりアスリート喘息は、発症すると治療が非常に難渋してしまいます。

アスリート喘息にかかりやすい病気としては、

に多いといわれています。耐久スポーツにおいて、より過度なトレーニングをすることで起こりやすいといわれています。また、先ほど運動誘発喘息を生じにくいとお伝えした水泳も、アスリート喘息にはなりやすい競技となっています。

これも運動誘発喘息=アレルギー性、アスリート喘息=非アレルギー性の違いからうまれています。過度の運動の他にも、

が関与していると言われています。このことからも、冬季のスポーツに多いと言われています。また、咳が競技中や練習中に起きても、「風邪かな?」で多くの人が終わってしまうと思います。ひどい状態ですと、

などが起こり、競技のパフォーマンス自体に影響が出ます。しかしここまで悪化しても、今まで喘息と言われていなかった人が「いきなり喘息かも?」と疑うことは少ないと思います。

実際に吉田沙保里選手も、レスリングの13連覇を達成した世界選手権前から「息が上がりやすい」、「咳が止まらない」などの症状が出現しましたが、病院を受診したのは症状が悪化した数か月後といわれています。喘息と診断された際は、非常に驚いたとのことです。

このように小さい頃喘息と言われてなくても、ある日突然喘息と言われるのが非アレルギー性の特徴です。気を付けなければならないのが、一般的な病院ではなくアスリート用の専門の病院に行くことです。

世界ドーピング防止プログラムの中には、β2刺激薬などの一部の吸入薬は使用不可となっています。しかしこれらの知識は、普通の病院ではまず医師は知りません。医師は「病気を診断して治すこと」には詳しいですが、「どの薬がドーピングに当てはまるか」を知ってる人は、呼吸器内科でもほとんどいないからです。

もしこれらのドーピングなどが問題になるようなアスリートの方は、専門の病院にいきましょう。アスリート喘息は、非アレルギー性の喘息で診断自体が非常に問題になります。一方でドーピング禁止薬であるβ2刺激薬を吸入する場合は、事前に申請が必要になります。

と相互の行き違いになることが多々あります。β2刺激薬を使用した後でダメだと分かった場合は、競技にも出れなくなる可能性があるため注意しましょう。

 

まとめ