痛み止めで喘息に?アスピリン喘息の症状と特徴

アイコン 2016.9.25 喘息
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アスピリン喘息は、NSAIDsといわれる痛み止めを飲むと喘息が誘発される方です。成人喘息の5~10%にいるといわれていて、非常に重篤な喘息です。NSAIDsは、ロキソニンなど有名な痛み止めも含まれています。

そのためアスピリン喘息と診断された方は、一般的な痛み止めや解熱剤が処方しづらいです。一方で中途半端な知識しかない医師が喘息患者を診察すると、「痛み止めで喘息発作が出ることがあるから薬は飲まない方が良い」と言われて薬が処方されなかった人もいると思います。

アスピリン喘息は嗅覚低下など特徴的な鼻症状もあり、細かい問診や検査で診断する病気です。ですが慣れてない医師は喘息発作を恐れて、アスピリン喘息でない人もアスピリン喘息と考えて解熱鎮痛剤を処方しないことがよくあります。

自分は本当にアスピリン喘息なのか?
痛みや熱が出た時は一生我慢するしかないのか?

ここではそんな疑問がある人のために、アスピリン喘息について詳しくお伝えしたいと思います。

 

1.アスピリン喘息ってどんな病気?

アスピリン喘息は、NSAIDsに反応する非アレルギー性の難治性の喘息と言われています。

喘息は、気道の慢性炎症によって気管支が狭くなる病気です。一般的には、Ⅰ型アレルギーに属します。Ⅰ型アレルギーは好酸球やIgEが関与するアレルギー疾患で、他には花粉症や蕁麻疹などが挙げられます。

しかし最近、アレルギー以外が原因となる喘息があることが分かってきました。実はこの非アレルギー性の喘息の方が、対策もしづらく難治性といわれています。アレルギーではないということは分かっているのですが、細かい機序までは解明できていないためです。

アスピリン喘息も、この非アレルギー性喘息に属します。ただ、アスピリンに対するアレルギーじゃないということしか分かっていません。(もう少し分かってる部分もありますが、かなり難しい内容なので今回は割愛します。)

アスピリン喘息の厄介な点は、COX阻害薬と言われるNSAIDsのほぼ全てが使用できない点です。ロキソニンを含むNSAIDsは、アラキドン酸カスケードをブロックすることでその効果を発揮します。その作用点は、シクロオキシゲナーゼ(以下COX)です。

COXには、2つあることが分かっています。

このCOXを阻害することで痛みや熱を抑えるのですが、COXを抑えることが引き金となって喘息症状が出てしまうというジレンマがあります。

ですからロキソニンがダメだからナイキサンというように、別の痛み止めを使えば大丈夫というものではないのです。

 

2.アスピリン喘息では痛み止めや解熱薬は使えないの?

選択的阻害薬であるセレコックスは、アスピリン喘息の方でも使用しやすいとなっています。また、漢方薬も良いと言われています。

先ほど、COXという聞きなれない単語が出ましたが、実はこれは痛みや熱を出す源ともいわれています。つまり、このCOXが阻害できないというのは非常に痛手です。

NSAIDsといわれるお薬は全てCOXが関与するため、ロキソニンで喘息発作が出たから他のNSAIDsに変更しようというわけにはいきません。

今処方されているお薬の痛み止めや熱さましのほとんどはロキソニンなどのNSAIDsですから、熱冷ましや痛み止めにNSAIDsが使えないというのは、実はかなりの痛手です。

NSAIDsが使えない場合の第一選択肢は、アセトアミノフェンです。商品名はカロナール・コカールとなります。聞いたことも多いでしょう。

ロキソニンなどのNSAIDsは胃腸障害や腎障害を気を付ける必要がありますが、カロナールは重度の肝機能障害以外の人には、かなり安全に使用できるお薬です。

そのため従来は、アスピリン喘息にはこのカロナールが解熱薬や痛み止めとして多く使用されていました。PL顆粒などの風邪薬にも含まれている成分です。

しかし最近の研究では、このアセトアミノフェンを投与した患者さんの3~4割が呼吸状態が悪くなるというデータが報告されたため、使用は控えたほうがよいといわれています。投与しても、カロナールは1回300mg以下にすべきとされています。(カロナールの成人の通常用量は400mgからです。)

実際に私が受験した呼吸器専門医の試験でも、アスピリン喘息患者に投与してはいけないものにアセトアミノフェンを選ばせる問題が出ていました。少なくとも、「カロナール=安全」というわけではないことを念頭におきましょう。

アセトアミノフェンまでダメとなると、かなり処方が限られてきます。アスピリン喘息の人は、痛みや発熱は我慢するしかないのでしょうか?

実際はそんなことはないです。アスピリン喘息のガイドラインで安全性が高いとされているお薬を列挙します。

  1. 選択的COX-2阻害薬(セレコックス(一般名:セレコキシブ))
  2. 漢方薬(葛根湯・生薬の地竜)
  3. オピオイド(モルヒネ・ペンタジン)
  4. プレドニン

などが挙げられます。ただし、

は副作用も強く、気軽に処方しづらい薬です。そのため、まずは①の選択的COX-2阻害薬、②の漢方薬が考慮されます。

近年COXの中でも、アスピリン喘息はCOX-1を阻害すると発作が起きることが分かってきました。痛み止めとして効力を発揮するのはCOX-2です。そのため選択的にCOX-2を阻害するNSAIDsであれば、処方しやすいことが分かっています。

実際に選択的COX-2阻害薬としては、

などが挙げられます。この中でCOX-2の選択率が高いのがセレコックスとなっています。実際に私が受けた呼吸器専門医の試験でも、安全性が高いものを選ぶ際にセレコックスを選択する問題でした。

セレコックスはCOX-2を選択的に阻害するうえに、NSAIDsのため解熱作用や疼痛緩和の効果も非常に高いです。そのためアスピリン喘息の方には、セレコックスが広く使用されています。

また漢方薬はCOXとは全く別の機序のため、比較的に安全とされています。ガイドラインでは、

の2つが推奨されています。少なくとも、アスピリン喘息だから何も処方できないということは大間違いです。

 

3.本当にアスピリン喘息なの?アスピリン喘息の症状

過去に安定していた時に、NSAIDsの薬を使用して問題なかったかが重要になります。アスピリン喘息の症状としては、嗅覚障害など鼻症状が出現しやすいです。

「喘息=NSAIDsはダメ」と考えている医師も、実は少なくないです。ですが、喘息の人が全てアスピリン喘息なわけではありません。成人発症の5~10%の人がアスピリン喘息と言われています。そのため、喘息というだけで不利益を受けている人は非常に多いです。

ですから、自分は本当にアスピリン喘息か考えてみる必要があります。まずアスピリン喘息自体の特徴ですが、男女比は1:2と女性に多い特徴があります。遺伝することもあり、アスピリン喘息の方の1~2%で家族もアスピリン喘息と言うことがあり得るとされています。

多くは成人から発症する非アレルギー性喘息です。小児から発症する場合は多くはアレルギー性の典型的な喘息のため、アスピリン喘息に当てはまらないことが多いです。この非アレルギー性喘息の方が、重症症例が多いです。

アスピリン喘息の最大の特徴は、鼻茸という鼻の中のポリープができやすいことです。鼻茸がある喘息の人は、アスピリン喘息の可能性が高いとも言われているくらい特徴的な所見です。鼻茸があるかどうかは、耳鼻科で実際に鼻の中を診てもらわないと分からないことが多いです。

また、副鼻腔炎や鼻の手術歴があることもあります。アスピリン喘息=鼻症状があると考えて良いと思います。

診断方法は非常に難しく、問診でNSAIDsの使用歴を徹底的に確認します。風邪で熱が出た際に、ロキソニンを一回内服して発作が起きたからアスピリン喘息というわけではありません。そもそもロキソニンを内服するくらい体調が悪かったのであれば、体調の悪さやそのストレスが原因で喘息発作が起きた可能性があります。

そのため、過去にもNSAIDsを使用して、その都度発作が起きたか確認することが重要です。アスピリン喘息の方は、体調が悪くない時でもNSAIDsを内服すれば発作が出現します。過去にロキソニンなどを飲んで問題なかったかどうか、思い出してみましょう。

またアスピリン喘息の方は、NSAIDsが含まれた以下のようなお薬でも発作を起こすことがあります。

湿布薬にはたいていNSAIDsが含まれているので、湿布薬を貼っても普段は発作が起きない人は、アスピリン喘息は否定的です。

ただしこれらは、喘息と診断されてからの話であることが重要です。喘息と診断される前はロキソニンを飲んでも安全だったというのは、残念ながらアスピリン喘息を否定できません。

いつも痛み止めを飲んだり湿布を貼ったら喘息発作が起き、さらに鼻症状がある方は、アスピリン喘息が極めて疑わしいです。ただしここからの確定診断は、非常に難しいです。

アスピリン喘息は非アレルギー性の喘息のため、採血などのアレルギー検査でアレルギー性物質が高いかどうかは問題ではありません。最終的には実際にNSAIDsを内服してもらい、反応があるか確認する必要があります。

ただし非常に重篤な症状が出現することがあるため、NSAIDsの内服試験は専門施設で施行しなければなりません。喘息発作が重篤な場合は、命に関わるからです。

 

4.アスピリン喘息の発作症状の特徴とは?

NSAIDsを内服した際には、喘息症状とともに鼻症状が出現することが多いです。また、喘息発作時に使用できるお薬が限られるため、注意が必要です。

アスピリン喘息の方が喘息発作を起こすと、通常の喘息発作症状の他に、

など、全身に症状が出ると言われています。特に鼻詰まりや鼻水は、ほとんどの症例で起きると言われています。一方で消化器症状などは、3分の1程度といわれています。

元々アスピリン喘息の方は、普段からアドエアシムビコートなどの吸入ステロイドとβ2刺激薬の合剤だけでは、コントロール不良な重症な患者さんが多いです。鼻症状がある人が多いため、シングレアオノンなどの抗ロイコトリエン拮抗薬を吸入薬に加えることが多いです。

また喘息発作が起きると、メプチンサルタノールなどの短期作用型のβ2刺激薬だけでは改善しないことが多いため、基本的に早急に病院受診することを心がけましょう。

この際に、アスピリン喘息の患者さんで医療者側が気を付けることが3つあります。

  1. コハク酸を持つステロイド点滴薬を急速に静脈投与しない
  2. ビソルボン吸入液を使用しない
  3. ボスミン(アドレナリン注射)が効きやすい

最も大切なのは、コハク酸を持つステロイド点滴をしないことです。内服するステロイド薬は問題ないのですが、点滴で投与する場合は水にステロイドを溶かして使用するため、エステル構造にてステロイドを溶かしやすくします。

このエステル構造のうち、コハク酸エステルを含むステロイド薬は致死的な喘息発作を起こしえるとされており、禁忌となっています。具体的には、

などです。そのためアスピリン喘息の方には、リン酸エステル構造のステロイドを使用することになっています。リン酸構造のステロイドは、

などです。ここで大切なことは、普通の喘息であれば即効性を求めるため、コハク酸エステル型のステロイドを使用することが多いです。

そのため喘息発作が起きたときにアスピリン喘息であることを医師が知らないと、コハク酸エステル型のステロイドが投与されてしまいます。必ず喘息だけではなく、「アスピリン」喘息とアスピリンをつけて救急診察する医師に伝えましょう。

 

その他としては、吸入液にビソルボン(一般名:ブロムヘキシン)を加えてはいけないことが記載されています。ビソルボンの吸入で、逆にアスピリン喘息は発作が起きやすいためです。一般的には、吸入薬はβ2刺激薬であるメプチンべネトリンの液を吸入するのですが、それにビソルボンを加える先生もいます。

ビソルボンは、痰切りのお薬になります。痰を出しやすくすることで喘息発作を和らげようとするお薬ですが、逆にアスピリン喘息は悪化します。アスピリン喘息治療では、β2刺激薬の吸入薬だけを使って。しっかりと治療するようにしましょう。

最後にボスミンは、喘息発作が重篤な時に使用するアドレナリン注射薬になります。アスピリン喘息が消化器症状や蕁麻疹など全身症状が出現した際は、緊急で投与するように指示されます。

このように、普通の喘息とは違った特徴があるのがアスピリン喘息です。必ずアスピリン喘息と診断されたことがある方は、初めて会う医師には喘息だけでなく、「アスピリン」喘息とアスピリンを付けて伝えてください。

 

まとめ