喘息なのにタバコを吸い続けるとどうなるの?

アイコン 2016.8.9 喘息

喘息と診断された方の中には、喫煙者の方も度々見かけます。

タバコを吸ってる本人たちも、肺に悪いというのは分かっていながら吸っていると思います。しかしながら、喘息なのにタバコを吸い続けるとどうなるか、あまりイメージがないかと思います。

タバコを吸い続けて一番問題になる病気は、肺気腫(COPD)です。タバコを吸い続けて肺が穴ぼこだらけになってしまい、結果として気管支が狭くなってしまう病気です。

喘息は、気道の慢性炎症で気道が狭まってしまう病気です。つまりもともと気道が狭くなってしまう喘息に、さらに気道を狭めてしまう病気を合併させることになります。

さらに恐ろしいことに、COPDは一度進行してしまうと二度ともとには戻らないという側面も持ち合わせてます。

この喘息とCOPDが合併してしまうと、ACOS(エイコス)と呼ばれます。ACOSになるとどうなってしまうのか、お伝えしていきたいと思います。

 

1.喘息ってどんな病気?

喘息は気道の慢性炎症によって、繰り返し咳や呼吸困難、喘鳴などが生じる症候群です。

喘息といわれると、皆さんはどういう病気をイメージしますか?咳が止まらなくなりヒューヒューと息苦しくなる病気というイメージの方が多いかと思います。確かに典型的な喘息はこのようなものですが、原因や症状が人によっても大きく異なります。

喘息かどうかをチェックしていくために、診断基準がつくられています。診断基準を見ていく前に、喘息とはどういう病気なのかを理解しましょう。2015年の喘息のガイドラインによれば、喘息とは以下のように定義されています。

気道の慢性炎症が原因で気道が狭くなったり、気道の過敏性が上がることで繰り返し咳や喘鳴、息苦しさが特徴となる疾患

ここで大切なのは、喘息は何が原因で気道の炎症が起こったり、気道が狭くなっているのかが決まっていないことです。

多くはアレルゲンと呼ばれるある物質に対して、過剰に反応することによって炎症が起こるアレルギー性疾患のことが多いです。これは採血でIgEを調べることで、アレルゲンがあるかないか調べることができます。

しかし喘息の定義では、アレルゲンの有無は関係ないです。タバコやばい菌が感染したことが理由で炎症が起きて、喘息になる人もいます。喘息の原因が何かはっきりしない人も多いのです。

もう一つ大切なのは、喘息の症状がハッキリと決まっていないことです。症状があったら喘息、なかったら喘息ではないというわけではないのです。つまり胸の音を聞いてみたらヒューヒュー聞こえる喘鳴は、喘息で特徴的な症状の一つですが、喘鳴があるから喘息だということではないのです。

詳しく知りたい方は、「喘息ってどんな病気?喘息の症状とは?」をお読みください。

 

2.肺気腫(COPD)ってどんな病気?

タバコで肺が傷つけられた結果、気管支が狭くなる病気です。一度発症すると、タバコをやめても二度ともとには戻らないのが特徴的です。

肺気腫(COPD)とは、主にタバコで肺が傷ついてしまう結果起きる病気とされています。日本では、85~90%がタバコが原因です。大切なことは、タバコを実際に吸っていなくとも、周りの人が吸ってる煙(副流煙)を吸ってしまっても肺が傷ついてしまう病気ということです。

肺が傷ついた結果、肺が穴ぼこだらけになり、気管支が炎症で狭くなります。肺がボロボロになることで、咳や痰、動いた際の息切れが出ます。ここで重要なのは、タバコをやめても一度傷ついた肺は二度ともとには戻らないことです。

肺は非常に繊細な臓器で、再生する能力がほぼありません。さらに年齢をとると、体力は徐々に落ちると思いますが、肺の機能も筋肉と同様に徐々に落ちていきます。肺気腫の方は、正常の方よりも肺の機能が落ちる速度が早いとされています。

COPDは、息が思いっきり吐けなく吸えなくなる病気です。十分に息が吸えないということは、息苦しさを感じるだけはなく、同時に命の危険性まで出てくる病気なのです。

このように肺気腫はタバコで肺がボロボロになることで、咳や痰が出続ける病気です。さらにそれを、治すことはできない非常に怖い病気ということを認識しておく必要があります。

詳しく知りたい人は、「肺気腫とはどんな病気?寿命を縮めるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の怖さ」を一読ください。

 

3.ACOSってどんな病気?

喘息とCOPDの両方の病態を併せ持った新しい病気の概念といわれています。

ACOS(エイコス)の正式名称はAsthma(喘息)-COPD(肺気腫) Overlap(合併) Syndrome(症候群)の略です。

ACOSは2014年に、

が合同で発表した病気です。実は喘息もCOPDも、同じ閉塞性障害に属する病気でした。

閉塞性障害とは、呼吸機能検査で測定する病気です。閉塞性障害をみる指標として、一秒間にどれくらい息が吐けるかをみます(1秒量)。ロウソクの火を思いっきり消すように、息を全力でフーー!!と吐くのです。

1秒間で吐けた量/全部の吐けた量で計算します。この検査で70%以下であると、閉塞性障害となります。つまり息が思いっきり吐けなくなる病気をいっているのです。

この閉塞性障害の有名な病気が、喘息とCOPDです。実は、喘息とCOPDは非常に似ている病気だったのです。さらに似ているうえに、きっちりと線引きできない病気です。

典型的な症例では迷わず診断できるのですが、Overlapしているとどっちというのが非常に難しくなります。医者が病気の話をする学会発表でも、

「そのデータは喘息患者さんだけじゃなくて、COPDの患者さんも混じっているのではないか?」

「アレルギー性のCOPD(好酸球発現性COPD)って、喘息がただ合併しただけじゃないの?」

といった議論がされています。この話は日本を飛び越えて、世界中の名医という先生方の中でもいつも議論の的でした。この患者さんはCOPDなのか?喘息なのか?という議論がなされていました。

そんな中、COPDと喘息の両方が合併している病気としてACOSが提唱されました。しかし2014年生まれたばかりのACOSは、まだまだ議論がされています。

何が一番の問題かというと、ACOSの診断基準は医師任せになっていることです。ACOSの診断基準はただ一つ、

となっています。つまり検査結果をみて、ピタッとACOSと診断することができない病気なのです。

 

4.喘息・COPDの合わさったACOSの症状

ACOSは、喘息とCOPDの症状が合わさった状態です。

ACOSは以下の2つが考えられます。

全てをクリアカットにできないのですが、それぞれの病気の特徴を整理してみましょう。

喘息とCOPDの特徴を比較しました。ACOSについてまとめています。

まだまだ世界で議論されているため、上のようにきっちりと分けられないことが多いです。この図について細かく解説します。

まず症状ですが、喘息はコントロール良好な場合は、喘息発作のときだけ症状が出現することが多いです。特に喘息発作は夜間に多いので、それが一つ特徴的な症状となります。

一方でCOPDは、タバコで肺がボロボロになって症状がでます。つまり喘息と違って、日常生活常々咳や痰がでていることが多いです。

ACOSはこの二つを合体した状態になります。まずタバコで肺がボロボロになっているので、COPDの側面の常に咳や痰がでてきます。一方で喘息の側面である発作も出現します。つまり常に苦しい症状が出ているうえに、発作的にさらに苦しくなるといった特徴があります。

原因ですが、喘息は元々はアレルギー疾患といわれてきました。しかし最近になって、非アレルギー性の難治性の喘息があることもわかってきました。一方でCOPDはタバコが原因といわれているため、アレルギーはあまり関係がありません。

ACOSの場合は、タバコ+アレルギーと両方の側面があった時に疑われることが多いです。タバコ+非アレルギー性の喘息が合併してたとしても、現在の医学ではそれを証明することは困難です。

これらの喘息とCOPDを見分けるためには、呼吸機能検査が最も大切な検査になります。喘息もCOPDも、閉塞性障害になります。つまり、息が思いっきり吐けなくなることは共通しています。

喘息かCOPDを見分けるために、これまではβ2刺激薬という気道を拡げる吸入薬を吸って、30分~1時間後に再度検査する方法がとられました。これによって、「可逆性の気流制限があるかないか」を検査でみていくことができます。

喘息では一般的に、この可逆性があるといわれています。炎症で気道が狭くなってる喘息は、薬に反応して気道が拡がります。

一方で肺気腫(COPD)は、タバコで肺自体が壊れてしまって気道閉塞障害が起きている病気です。そのため薬を吸ったからといって、肺が治って呼吸状態がよくなるわけではないのです。

具体的にいうと、呼吸機能検査を再度行い、1秒率が吸入前の検査よりも200ml以上かつ12%改善すれば薬に反応した(可逆性あり)と考えます。

しかし、ここまできれいに線引きできないのが実際の臨床です。喘息は重症化すると、可逆性もなくなってしまいます。また肺気腫でも、可逆性を認めるタイプもあります。

こういった線引きが難しい中、症状も含めて両方あり得そうな病気がACOSです。ACOSは、一般的には可逆性があることが多いとされています。可逆性がないと喘息側の特徴が言いづらいため、診断することができないというのが正直なところでした。

ただし喘息も重症化してしまうと可逆性がないことから、COPDと喘息の特徴を有していれば可逆性がなくてもACOSということも多いです。

これらの発症年齢ですが、喘息は若年者に指摘されることが多いです。高齢者で初めて喘息といわれた場合は、本当に喘息かどうか疑う必要があります。詳しくは「喘鳴が聞こえたときに喘息以外に考える疾患は?」を参照してみてください。

一方でCOPDは、タバコを長年吸い続けた結果、肺がボロボロになって発症する病気です。そのため一般的には、40歳以上さらには大部分が高齢になってから発見されることが多いです。

ACOSは、これら両方の特徴を有しています。喘息の要素がある中タバコを吸い続けるため、普通の人よりCOPDの症状が出現するのが早いといわれています。高齢者の中にも発作的に症状が悪化する人もいるため、ACOSと診断される場合もあるので注意が必要です。

最後に治療ですが、喘息は気道の慢性炎症によって気道が狭くなる病気ですので、炎症をとる吸入ステロイドが中心になります。一方でCOPDはタバコで肺がボロボロになって物理的に気道が狭くなった病気のため、抗コリン薬やβ2刺激薬などの気管支を拡げる薬が中心になります。

しかし気管支が閉塞するという点で、これらの薬は両方とも使います。特に喘息側は、吸入ステロイドとβ2刺激薬の合剤であるアドエアシムビコートでのコントロールがほとんどです。さらには2014年から、抗コリン薬であるスピリーバも適応が通りました。

一方のCOPDも、抗コリン薬であるスピリーバとβ2刺激薬であるオンブレスが中心となって気管支を広げる治療になっております。COPDも急性増悪を繰り返すケースに限り、吸入ステロイドが加えられます。

ACOSは2つの病気が合併している状態ですので、吸入ステロイドと気管支拡張剤を出し惜しみなく使用することが多いです。具体的には、アドエアやシムビコートなどの吸入ステロイドとβ2刺激薬の合剤に抗コリン薬であるスピリーバも加えます。

これでもコントロール不良な場合は、非常に困ってしまう病気でもあります。そんな時に使えるお薬としては、

などがありますが、上にあげた薬が効かないのにこれらが著効することは少ないです。最終的にはステロイドの内服になりますが、ステロイドは効果も強いですが副作用も強いため、ギリギリまで使いたくないお薬になります。

ACOSは最近出てきた概念のためはっきりとしたデータはないですが、少なくとも治療は非常に難しいことが言えます。

 

5.喘息なのにタバコを吸っている方へ医師からアドバイス

喘息でタバコを吸ってると状態がどんどん悪くなるだけでなく、医療者側からしても「自業自得でしょ」と思われてしまいます。自分の体は自分が守るようにしましょう。

ここまで喘息でタバコを吸い続けると、COPDが合併してACOSが発症すると説明しました。

COPDやACOSと横文字で難しい病名がついてますが、ACOSという病気は、「喘息って診断されているのにタバコを吸い続けたダメな患者さん」というレッテルが貼られてしまっている病気です。ちょっと分かりやすい例に置き換えてみましょう。

もしあなたが上司、監督、先生だったらこんな状態だったらどうなりますか?呆れ返る?怒り出す?それとも放置しますか?

医師からすると、このような患者さんは上の様な方々と同じように感じてしまいます。タバコをやめるように叱ってくれる先生や諭してくれる先生は、患者さんからするとめんどくさいように感じるかもしれません。ですが上の例に当てはめると、

となります。つまりあなたのことを考えてくれる人たちは、見捨てずに何とかしようとして行動してくれるということです。

あなたにとって良い先生は、タバコをやめるように訴え続ける先生です。しかし本人がやる気がないのに、何とかしようとしてくれる例は非常に稀です。

どちらかというと、こちら側の方が大多数ではないでしょうか?医師も医師である前に人間です。ほとんどの医師は最初は禁煙するように訴えると思いますが、それでも禁煙しない喘息患者さんはそのうち、

「喘息なのにタバコを吸ってるなら良くならないのは当たり前。自業自得でしょ」

と割り切って、積極的にタバコをやめさせることを諦めてしまう医師も多いです。患者さんからするとタバコを吸い続けても文句も言わないし、薬も処方してくれるから、一見すると良い医師にみえるかもしれません。

しかしACOSまで病状が進行して、「症状が苦しい」「助けてほしい」となっても、こういった医師はほとんど助けてはくれません。そもそもここまで病態が進行すると、どんな名医でも治すことはできないと言った方が良いでしょう。

この時にタバコを後悔しても、時すでに遅しです。医師から見捨てられる前に、ぜひ禁煙を目指しましょう。一方でタバコをやめようと思ってもやめれない人も多いと思います。「やめろと言われてすぐやめれたら、苦労はしないよ」といったところが、大部分の患者さんの本音ではないでしょうか?

長年タバコを吸っている人は、ニコチン依存症になっている人が多いです。タバコをやめようとするとイライラしたり、頭痛がしたりします。このようなニコチン依存症の人は禁煙できずに、タバコの本数を減らすことで満足してしまうかと思います。

完全禁煙できずにだらだらと理由を付けて吸ってしまうと、いつまでもやめれないことが多いです。喘息やCOPD、ACOSといわれた時点で、スパッとタバコとは縁を切るようにしましょう。タバコの禁煙の仕方について詳しく知りたい方は「COPD(肺気腫)と診断されても遅くない!禁煙の方法とは?」を参考にしてみてください。

 

まとめ

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