貧血ってどんな病気があるの?貧血を引き起こす原因とは?

アイコン 2016.9.22 貧血
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貧血は症状に関わらず、ヘモグロビンの数値が低い状態をいいます。貧血は病名ではなく状態です。

つまり貧血と言われた方は、その裏に必ず何か原因があります。単なる栄養不足もあれば、癌など恐ろしい疾患が隠れている可能性があります。

本格的に貧血を調べるとしたら、血液内科に調べてもらう必要があります。しかし貧血=血液疾患とは限りません。隠れた出血があることもあれば、女性では生理などが影響していることもあります。

ここでは、貧血の原因になる病気を挙げていきます。

 

1.血液疾患以外で考えられる貧血①-出血

血液が体の外に出ていってしまえば、血が足りなくなって貧血を引き起こします。

見えるところから血が出ていれば誰でも分かります。貧血になるくらい血が出ていく場合は、大体が体の中の話です。具体的な部位は、

  1. 消化管
  2. 性器出血

の2つが考えられます。まず1の消化管ですが、

高齢者の方で貧血がある方は、消化器の癌を一度疑ってもよいかもしれません。また、便の色でも鑑別ができることがあります。

と一般的には考えられています。

便の色で上記に当てはまる方は消化管出血の有無を調べる必要があるため、上部内視鏡で胃潰瘍や胃がんを探したり、大腸がんを見つけるために便潜血を調べたりします。さらに便潜血陽性の場合は、大腸がんや大腸憩室からの出血を想定して下部内視鏡を行います。

女性の場合は生理で多少なりとも血を失うため、男性に比べて貧血になりやすいです。ここに鉄分やビタミンが不足していると、それが合わさって貧血に拍車がかかります。

また栄養状態が問題なくても、

など思い当たることがあれば、産婦人科から受診して良いと思います。特に生理に関しては非常にナイーブな問題のため、産婦人科以外は細かい検査や診断がなかなかできません。疑われる場合は、産婦人科で超音波検査をしていただきます。

 

2.血液疾患以外で考えられる貧血②-二次性貧血

感染症や膠原病、悪性腫瘍、慢性腎不全、内分泌疾患、肝疾患などの基礎疾患が隠れており、それによって貧血となった状態を悪性貧血といいます。高齢者に多い貧血です。

直接出血していなくても、実は赤血球が作られなくなる原因は沢山あります。具体的に挙げると、

  1. 感染症
  2. 膠原病(リウマチなど)
  3. 悪性腫瘍(癌)
  4. 慢性腎不全
  5. 内分泌疾患
  6. 肝疾患
  7. 薬剤性

などが挙げられます。さらにこれらが軽症な場合は、ほとんど貧血は起こりません。どの疾患も、全身に影響を与えるほど重篤になって貧血が出現します。このように、何らかの病気が原因となって起こる貧血のことを二次性貧血といいます。それでは、どうして貧血が起きるか、みていきましょう。

まず、長期の感染症、リウマチなどの膠原病、癌など体に持続的に炎症がある場合に貧血が起こります。感染症や膠原病、癌は体中に炎を巻き起こすと考えてください。

一過性のぼやだと、ぼやの部分だけがダメージを受けますが、炎が上がり続けると色々な物が燃やされて異常をきたしてしまいます。色々な物が燃やされると、本来火を消す消防隊もどれが消すものでどれが守るべきものか、炎に包まれてよくわからなくなってしまうのです。

具体的に火が燃え上がると、まず肝臓でヘプシジンというホルモンの合成が亢進します。

ヘプシジンの作用は、赤血球の材料である鉄の吸収や利用を抑制することです。つまりヘプシジンがたくさん作られることで、赤血球を作ることを邪魔するのです。この結果として、貧血になってしまうのです。

他の機序としては、

などなど、戦火で色々な体の細胞がおかしくなっていくのです。結果として、

などの色々な問題が起こります。体中で色々な問題が起こるため、治療は原因となっている感染症や癌、膠原病の治療をするしかありません。

また腎臓が悪くても貧血は起こりますが、その時に重要なのがエリスロポエチンです。エリスロポエチンは腎臓から分泌され、骨髄中で赤血球のもとになる細胞の増殖や成熟に関与しています。腎臓が障害されると、赤血球を作るエリスロポエチンの分泌能が低下してしまうわけです。

重症な腎不全の人ほど腎性貧血になり易いことは明白ですが、軽度の腎機能障害の人にも起こるので油断は禁物です。治療には、エリスロポエチン製剤の注射があります。

甲状腺の機能が低下している場合も貧血となりますが、その他にも副腎機能低下や下垂体機能低下症でも同様に、赤芽球系の増殖抑制やエリスロポエチン産生抑制が起こることが分かっています。

肝硬変や慢性肝疾患で貧血が起こる一番の理由は、脾臓の機能が亢進して赤血球が破壊されてしまうからです。アルコール性の肝障害の人は葉酸欠乏になることがあるでしょうし、食道静脈瘤からの出血がある人は、それ自体でも貧血になるでしょう。

薬によっては赤血球を作る作用を邪魔したり、赤血球を壊してしまう作用があります。貧血を起こしやすい薬剤は厚生労働省から100種類近く挙げられているため、ここではあえて薬剤名を挙げないでおきます。

赤血球は主に骨髄で作られるのですが、

など様々なホルモンが関与するため、一か所がおかしくなると容易に赤血球が作られなくなります。

 

3.貧血の原因となる血液の疾患①-鉄欠乏性貧血

赤血球を作る成分の鉄がないと、そもそも赤血球が作れません。結果として貧血を引き起こします。

我が国において最も頻度の高い貧血です。特に女性に多く、女性の約1割が鉄欠乏性貧血を発症するといわれています。

女性に関しては生理による出血が一番の原因となりますが、妊娠や授乳期における胎児や乳児への鉄移行も原因となります。また成長期の鉄需要の高まりも一因となるため、女性に限らず伸び盛りの若者にもみられます。

高齢者では、胃がんや大腸がんなど消化器癌で鉄の吸収が低下したり、胃切除をした人では吸収障害が鉄欠乏の原因となります。鉄は小腸上部で吸収されますが、胃も鉄吸収の一翼を担っているわけです。

赤血球はヘモグロビンという酸素と結合するための構造がありますが、その一部を成すヘムの構成要素に鉄が必要です。そのため鉄が不足すると、ヘモグロビン合成が十分に行われず貧血となります。

少ない鉄で数を作らなきゃいけないので、赤血球は一つ一つの大きさが小さくなります。これを小球性貧血と呼ばれます。赤血球の大きさを表す検査値はMCVになりますが、MCVの正常値は80~100となっています。80を切ると、鉄欠乏性貧血を疑います。

鉄が不足すると、まず貯蔵鉄が減少します。この貯蔵鉄を示す値をフェリチンといいます。さらに、鉄不足が持続すると貯蔵鉄が枯渇して鉄欠乏性貧血となるのです。

血液中の鉄はトランスフェリンという蛋白質で運搬されていますが、体内に鉄が少なくなると効率よく鉄を運ぶために、血清鉄と結合するトランスフェリンの肝臓での生産が増えます。血清鉄と結合する能力を数値化したものを総鉄結合能(TIBC)といいますが、鉄欠乏性貧血ではこれが高値となります。これらの発症機序から、診断にはTIBC≧360μg/dL、血清フェリチン<12ng/mLが必要です。

鉄欠乏性貧血に特徴的な症状は、貧血の一般的な症状に加えて、

があります。鉄欠乏性貧血は鉄が不足して起きる病気なので、治療は鉄分の補充です。基本的には鉄分を内服で行います。鉄剤を内服してから約2カ月以内に貧血は正常化しますが、貯金がないとすぐに貧血が再発してしまいます。

そのため体の中の鉄分の貯金が十分できるように、6カ月程度治療するのが一般的です。鉄剤の内服薬で嘔気の副作用が強い場合や、胃切除後などで鉄の吸収が悪い場合は、点滴で補充することもあります。

通常の食事において、吸収のいい鉄は、

に多く含まれます。食事による鉄分摂取は少量であるため、吸収促進のためにビタミンCの併用は有効でしょう。市販のサプリメントも意外と効果があるので、薬に頼りたくない人は試してみると良いかもしれません。

鉄欠乏性貧血と診断された方は、このように摂取不足が主な原因です。そのため油断すると再発しやすいので、元の食事を見直してみてください。

 

4.貧血の原因となる血液の疾患②-巨赤芽球貧血

ビタミンB12や葉酸といった栄養素が少ない場合も貧血が起こります。この貧血を巨赤芽球貧血といいます。

聞き慣れない貧血だと思いますが、悪性貧血という怖い名前の貧血がこれに含まれます。悪性という名前の割には、予後は良い病気です。

巨赤芽球性貧血は名前のごとく、赤血球が大きくなってしまう貧血です。先ほどMCVという赤血球の大きさを示す検査値を書きましたが、MCVが100を超えると疑う病気です。ビタミンB12や葉酸が欠乏することによります。

上記の食べ物の摂取不足の例としては、菜食主義の人にビタミンB12欠乏がみられたリ、アルコール依存症の人に葉酸欠乏がみられたりします。これらは食生活を改善すればいいわけで、病気という程のものではありません。ビタミンB12や葉酸の吸収が邪魔された場合が問題になります。

ビタミンB12の吸収が邪魔される場合として重要なのは、

の2点です。これらはビタミンB12の吸収が邪魔されて、結果としてビタミンB12が不足してしまいます。吸収が邪魔されるので、ただ摂取量を増やしても邪魔されるだけで有効な治療になりません。

抗内因子抗体や抗胃壁細胞抗体があると、胃が荒らされて萎縮性胃炎になります。胃が委縮してしまい、正常にビタミンB12が吸収できなくなります。この状態を放っておくと胃がんを合併しやすいため、胃カメラでの精査が推奨されます。

ビタミンB12は、胃壁細胞から分泌される物質と結合して腸から吸収されます。胃癌などで胃を手術でとってしまった人にはビタミンB12吸収に必要な物質がそもそも分泌されないため、ビタミンB12欠乏はほぼ必ず起きます。貧血の発症は、胃全摘後5年程度経ってからで、筋肉注射によるビタミンB12補充が必要になります。

また、葉酸に関しては、

で葉酸が不足してしまうことがあります。葉酸は空腸上部で吸収されますが、ビタミンB12のように胃切除や抗体が影響するような病態はありません。

これらビタミンB12や葉酸が欠乏したときの特徴的な症状は、

があります。重度になると、

で来院されるケースも多くあります。原因は何であれ、治療はビタミンB12や葉酸の補充をするのみです。吸収障害がある場合は筋肉注射で補充を行いますが、飲み薬での加療も可能です。貧血が改善する過程で鉄が不足してしまうことがあるので、治療中の鉄チェックも忘れてはいけません。

鉄欠乏性貧血と合わせて、赤血球の材料が足りなくなることで貧血が起きるのです。

 

5.貧血の原因となる血液の疾患③-溶血性貧血

溶血性貧血とは、赤血球が自爆して壊れていく病気です。

溶血とは、赤血球が破壊されたことを意味します。溶血が起こると、壊れた赤血球から血液中にヘモグロビンが遊離し、黄疸をきたしたり尿が褐色になったりします。溶血の原因には、

  1. 外からの力で赤血球が壊れる場合
  2. 赤血球を壊してしまう免疫が作られる場合
  3. 赤血球自体に問題がある場合

の3つがあります。

身近でみられる溶血としては、①の代表として行軍ヘモグロビン尿症が有名です。これは、長時間歩くことにより、足の裏の血管が圧迫され溶血が起こります。かつては軍人さんによくみられたことからこの名前で呼ばれますが、現代では激しい運動をする若者(アスリート)に多くみられます。

その他には、心臓に人工弁が入っている人にも溶血は起こります。人工弁の脇に血液が漏れ、狭い隙間に異常な血流が出来てしまったときに起こることが多いようで、機械的溶血といいます。腸管出血性大腸菌感染後に起こる溶血性尿毒症症候群に代表されるような、血栓性血小板減少性紫斑病という病態もありますが、極めて稀です。

溶血性貧血の中では②が一番多く、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)というものが後天性溶血性貧血の6割を占めます。その中でも代表的なのが温式抗体を作るもので、AIHAの9割を占めます。

自己抗体と補体が赤血球に結合し、脾臓のマクロファージによって壊されてしまうのです。血液検査では、

が診断の助けになります。原因不明で起きることもありますが、

  1. 膠原病
  2. 感染症(マイコプラズマやウイルス感染)

があってもAIHAが起こることがあります。7割程度の方が、プレドニンなどのステロイド治療で貧血は安定しますが、ステロイドの効果が不十分な場合やステロイドの副作用で使用が困難な場合は、

を考えます。この他にも、冷式抗体によって起きる発作性寒冷ヘモグロビン尿症や、寒冷凝集素によって起きる寒冷凝集素症がありますが、いずれも保温することで溶血を防ぐことが出来ます。

③は稀ですが、代表的なものが発作性夜間血色素尿症(PNH)です。PNHは、細胞の遺伝子突然変異によって溶血が起こってしまいます。診断はフローサイトメトリーという方法で、赤血球表面のCD55とCD59が発現していないことを確認することで診断できます。

唯一の治療法としては、補体(C5)に対するモノクローナル抗体(エクリズマブ)の点滴があります。また、先天性のものとして遺伝性球状赤血球症やサラセミアなどがあり、家族歴や赤血球の形態、遺伝子検査などを行って診断します。

 

まとめ

貧血は実に多彩な原因を持つ病気です。そのため事細かに精査する必要があります。ここでは、

  1. 消化管や性器出血
  2. 癌や膠原病、感染症などの全身疾患
  3. 腎臓や肝臓など血液を作るのに必要な臓器の病気
  4. 鉄、葉酸、ビタミンB12など赤血球を作るのに必要な材料が足りなくなる。
  5. 赤血球自体が溶血する

などの病気を挙げました。しかしここにあげたのは実は一部にすぎません。

血液の病気と聞くと白血病などの癌が一番心配になるかもしれません。実際にドラマなどでヒロインが若くして亡くなる病気となると、これらの病気でしょう。ですが実際に発病する頻度は非常に少ないです。

しかし頻度が少ないから0とは言えません。上記の病気のいずれもが否定された場合は、血液を作る工場である骨髄に異常がある白血病などを疑う場合があります。この場合は骨髄を穿刺して細胞を確認する検査が必要になります。

このようにたかが貧血、されど貧血です。栄養不足の場合もあれば、癌や膠原病など怖い病気が隠れていることもあります。一つ言えるのは、ほっとかずに必ず病院で精査したほうが良いということです。

どの病気も早期発見が予後に直結します。手遅れになる前に確認しましょう。