授乳中はお薬はどのように影響するのか

アイコン 2015.6.18 妊娠・授乳について

できることなら母乳で育てたい、そう思っているお母さんも多いかと思います。最近では、母乳育児の大きなメリットが分かってきています。

そうはいっても、授乳の時期にお薬を飲まなければいけない時もあるかと思います。

ですが、赤ちゃんに影響がないか、心配かと思います。
母乳保育はどこまでできるでしょうか?
どのようなお薬に注意が必要でしょうか?

ここでは、授乳に対するお薬の影響について考えていきたいと思います。精神科治療薬についても、授乳中はどのように考えていけばよいのかを見ていきましょう。

 

1.なぜ薬は授乳に影響が出てしまうの?

血中から母乳に薬が移行してしまうためです。

お母さんがお薬を服用すると、ほとんどは小腸から吸収されて血中に取り込まれます。多くのお薬は門脈という血管から肝臓に入ります。肝臓では、薬成分が一部分解されてしまいますが、残った成分が全身をめぐります。乳腺に薬が到達すると、薬の成分が母乳に移行してしまいます。ここから赤ちゃんに伝わってしまいます。

授乳への影響は、赤ちゃんが薬を飲んでいるのと同じなのです。ですから、必要以上に心配することはありません。母乳から赤ちゃんに移行するお薬が、体重あたりの量にして10%以下であれば問題ないと考えられています。

ほとんどの薬は、お母さんが服用した薬の1%以下しか母乳に移行しないので、問題ないと考えられています。ただし、薬が多量であったり、特別にリスクが高い薬は注意が必要です。

どのような薬が母乳を通して赤ちゃんに影響しやすいかは、

などで決まってきます。

 

2.母乳育児にはどのようなメリットがあるのか

赤ちゃんへの薬の影響を無くしたいのでしたら、人工乳保育にすることもできます。そうすれば、赤ちゃんへの影響はなくなりますから、どんなお薬でも心配なく飲むことができます。ですが、母乳で保育することにはいろいろメリットがあります。

ここでは、母乳についてみていきましょう。

 

2-1.初乳と成乳の違い

初乳には免疫物質が多く、成乳にはカロリーが高いです。初乳と成乳に分けて、授乳しながら薬を使うべきか、考えていく必要があります。

赤ちゃんを産んだ直後に出てくる初乳は、その後の母乳(成乳)とは見た目も成分が違っています。

初乳の目的は、赤ちゃんの免疫を助けることと便を出してあげることです。ですから初乳には、IgAと呼ばれる免疫物質をたくさん含んでいてタンパク質が多めです。成乳の目的は、赤ちゃんの栄養を補うことです。ですから、乳糖が多くてカロリーが高いのです。

このため人工乳保育をする方でも、初乳はできる限り赤ちゃんに与えます。成乳になると、薬の影響も考えて人工乳保育とするかを考えていきます。

 

2-2.母乳育児のメリット

母乳保育は、母子ともにメリットがあります。また、母乳保育は体質に影響して、成人しても効果が及ぶとわかってきています。

赤ちゃんは生後6か月間、母乳だけで栄養をうけて大きく成長していかなければいけません。ですから、母乳は効率よく消化吸収されるようにできていて、人工乳よりも少ない量でエネルギーを吸収できます。

また、消化酵素や免疫物質など、人工乳には含まれていないものも母乳にはあります。これらが影響して体質も変わっていくことがわかっています。

母乳には、免疫物質である免疫グロブリンや白血球、ラクトフェリンなどが含まれています。これらが影響して、母乳で育った子供はワクチンの効果がしっかりと出やすいといわれています。

このことは、ただ免疫物質のIgAが母乳から運ばれてきて赤ちゃんを守ってくれているだけでなくて、赤ちゃん自身の免疫力も上がることを意味しています。また母乳育児では、潰瘍性大腸炎やⅠ型糖尿病といった自己免疫疾患の発症頻度が低いという報告もあります。

その他にも、母乳で育てられた子供は、認知機能が高くなったり、肥満や高コレステロール血症・糖尿病・高血圧といったメタボリックシンドロームの予防につながるという報告もあります。

 

赤ちゃんだけでなくお母さんにもメリットがあります。母乳保育を続けていると、生理の再開が遅くなります。その間、女性ホルモンのエストロゲンが抑えられるので、乳がんや子宮体がん、卵巣がんといった女性の癌の罹患率が低くなることがわかっています。

また、骨粗鬆症や関節リウマチや糖尿病が減少したという報告もあります。そしてエネルギーを母乳に奪われるので、産後の肥満を予防することができます。母乳を出さないと、母乳がつまってしまって乳腺炎になってしまうこともあります。

 

3.授乳中にはお薬はどのように考えればよいのか

薬を自分で中止してしまわず、授乳を続けていくべきかを主治医と相談してみてください。

薬をつかわなくてもよいのであれば、それに越したことはありません。ですが、無理をしてはいけません。お母さんが健康で元気でなければ、お子さんの成長にも影響しますので、ご自身のことを大事にしてください。

ただでさえ、人生でも数えるほどの大イベントを乗り越え、生活も一変したかと思います。夜泣きで赤ちゃんに起こされることもしばしば…身体としても、ホルモンのバランスも崩れていますし、妊娠出産のダメージの回復も少しずつです。ですから、必要なお薬はしっかりと続けていく必要があります。

赤ちゃんの影響を心配して、ご自身で薬を飲まずに我慢される方もいらっしゃいます。授乳を続けたいという気持ちを医師に伝えて相談しましょう。ごくわずかな薬が母乳に含まれてしまっても、赤ちゃんにとってもメリットの方が大きいこともあります。

 

薬をのみながら母乳保育をしていく時は、できるだけ安全な薬を使ったり、授乳した直後に薬を飲むなどの服用の工夫をします。一般的に母乳中の薬の濃度が最高になるのは、服用したから2~3時間後です。ですから、そのピークを少しでもずらします。

また、赤ちゃんの肝臓や腎臓の機能も少しずつ成熟していくので、少しずつ薬の影響も少なくなっていきます。本当に注意をしなければいけないのは、生後の1~2か月です。この頃は、肝臓や腎臓の機能が未熟なので薬が分解されにくく、また脳のバリア(脳血液関門)も十分に出来上がっていません。少量の薬も、大きく影響してしまうことがあります。

薬の量が多すぎず、危険な薬をつかっているのでなければ、授乳を続けていただくこともできます。ですがリスクが高い場合は、薬を中止してしまうのではなくて人工乳保育にした方がよい場合もあります。自分で判断するのではなく、主治医の先生としっかりと相談して決めていきましょう。

 

4.授乳中には精神科のお薬は大丈夫なのか

リーマスは注意が必要です。その他の気分安定薬(抗てんかん薬)・抗不安薬・睡眠導入薬では、赤ちゃんの眠気に注意しましょう。

精神科のお薬は脳に作用しなければいけません。薬が吸収されると血中に運ばれますが、これがダイレクトに脳に作用するわけではありません。身体の血液の循環と脳の血液の循環の間には、血液脳関門(Blood Brain Barrier)という門番がいるのです。

この門番は脂っぽいものだけを好んで通してくれます。ですから、精神科のお薬は脂っぽい薬が多いです。母乳は脂肪も含んでいますから、精神科のお薬は母乳に移行してしまうものがほとんどです。

とはいっても、ほとんどの薬ではごくわずかな量しか母乳に移行しません。全く問題がないとまでは言い切れませんが、一部の薬を除けば授乳中でも大きな影響はありません。

もっとも注意が必要なのは、気分安定薬として使われるリーマスです。その他の気分安定薬(抗てんかん薬)・抗不安薬・睡眠導入剤などでは、赤ちゃんの眠気に注意をする必要があります。

お母さんがリーマスを服用すると、血中濃度が母体の1/2~1/3にまで達すると言われています。リーマスの影響で赤ちゃんの筋肉の緊張が緩んだり、傾眠や低体温、チアノーゼなどが認められることがあるので注意が必要です。リーマスを飲まれている方は、他の薬にかえられないことも多いです。ですから、できれば人工乳保育が望ましいです。

抗てんかん薬・抗不安薬・睡眠導入剤は、いずれも眠くなる薬です。赤ちゃんが眠くなってしまうと、栄養を十分に取れなくなってしまうことがあります。夜泣きが減って楽になったら、「何だかおかしい」と立ち止って考えてみてください。赤ちゃんの成長が止まってしまう可能性があるので、気を付けなければいけません。

抗うつ剤は、いずれも大きな影響はないと考えられています。抗精神病薬も、ほとんどのお薬で大きな問題はないと考えられています。

 

まとめ

なぜ薬は授乳に影響が出てしまうのかというと、血中から母乳に薬が移行してしまうためです。

母乳保育は、母子ともにメリットがあります。初乳には免疫物質が多く、成乳にはカロリーが高いという違いがあります。初乳と成乳にわけて、授乳しながら薬を使うべきかを考える必要があります。

母体の健康も赤ちゃんには大切です。薬は自分で中止してしまわず、授乳を続けていくべきかを主治医と相談してみてください。

リーマスは注意が必要です。その他の気分安定薬(抗てんかん薬)・抗不安薬・睡眠導入薬では、赤ちゃんの眠気に注意しましょう。