自分の中の「女性性」に目を向けてみよう

アイコン 2016.3.22 セルフケア

私たちはみな、男性か女性という性別をもって生まれてきます。そして社会では、男や女としての役割の中で生きていきます。

男に期待される役割に近いことを「男らしい」といい、女に期待される役割に近いことを「女らしい」といったりします。心理学的な見方では、これを「男性性」や「女性性」といいます。

男性か女性かに限らず、どの人にも男性性と女性性が存在します。しかしながら環境や成長の中で、少しずつ偏ってしまってバランスが崩れてしまうことがあります。

そうなると、恋愛や友達などの人間関係、仕事やビジネスなどといった人に関わるところで問題になってしまうのです。ときにストレスが積み重なり、心身の状態が悪化してしまうこともあります。

精神科の患者さんを診察していると、自分の女性性をうまく受け入れられないことが悩みの根源であることも見受けられます。女性性は、コミュニケーションに大きく関わっているのです。

もしあなたが「何だか人間関係がうまくいかない」と悩んでいたら、その背景には「女性性を受け入れられないこと」が隠れているかもしれません。ここでは、「女性性」についてみていきたいと思います。

 

1.女性性とは何なのか

女性性とは、優しさ、肯定、寛容、共感力、感性の豊かさ、何かを産み育てる能力のことで、コミュニケーション能力と深く関わってきます。

女性性とは、女性だけがもっているものではありません。男性も女性も同じように、女性性をもっています。女性性とは、優しさ、肯定、寛容、共感力、感性の豊かさ、何かを産み育てる能力のことを指します。

今までの長い歴史では、「男性は男性らしく、女性は女性らしく」が当たり前とされてきました。そのため女性性は、まるで女性だけの特質のように思われています。しかし、そうではありません。

女性性は、人間のコミュニケーション能力に大きく関わってきます。極端な例にはなりますが、相手のいうことを一切肯定しなければ会話が成立しません。「私はこう思います」「僕はそう思いません」では、話が終わってしまいます。適度に肯定していれば「私はこう思います」「へえ、そうなんだ。ところで僕はこう思うのだけれど……」と、会話が続いていくのです。このようにできるのは、女性性の部分なのです。

このように日常の些細な場面でも、女性性が必要とされています。どんなに外見が男らしくたくましく、男性性のかたまりのような人であっても、女性性を一切使わずに生きていくということは不可能です。

コミュニケーションに共感力や寛容さが必要と言われれば、当たり前に感じるかもしれません。ですが女性性という概念でみていくと、自分自身をみつめていくきっかけになることもあります。

 

2.女性性を受け入れられないケースとは?

男性ではコミュニケーションで周囲と上手くいかなくなり、女性では結婚や妊娠の時にパートナーと問題となることが多いです。思春期での拒食の背景に、女性性の否定が隠れていることもあります。

自分の中の女性性を否定してしまうと、どのような事態が起こってくるのでしょうか。男性と女性、双方の立場から見ていきましょう。

まず男性は、周囲の人とコミュニケーションがうまく取れなくなります。自分の意見を主張するばかりで、相手に対して一切配慮ができない。そしてそれが正しいことだと思っているという状態になりかねません。

特に恋人とは、意見のすれ違いが多くなるでしょう。「私のことなんて何も考えてくれてないのね」「別に私のことなんて、好きじゃないんでしょ?」と告げられて、失恋するケースがあります。

社会の中では、競争、リーダーシップ、自信、客観性といった男性性が評価されることが多く、女性性が評価されることは少ないです。ですから男性は、自分の中にある女性性の問題に気づきにくくなっています。そのために長期間にわたって、コミュニケーションの齟齬に悩む可能性があるのです。

 

では女性の場合はどうなのでしょうか。女性は幼い頃から、「女の子は女らしく」と教育されています。男と女という社会での関係性の中で、相対的に女性性とはどういうものなのかを学んで育っていきます。ですから内面で女性性を否定していても、「女らしく」ふるまうことは可能です。

しかしその反面、恋愛や結婚など「女性であること」をダイレクトに求められるときに、大きな問題が出てきます。女性性を否定する人は、自分が女性として扱われることに、違和感やいらだちを感じるようになるのです。

特に、月経や妊娠、出産を強く否定するようになります。「自分は女性として生きたくない」と思うあまり、女性のシンボル=月経を止めるような行動に走りがちです。思春期の女性の拒食の背景に女性性の否定があって、これによって生理不順に陥ることがあります。

 

また、パートナーがいる、結婚しているからといって、「女性性の受け入れはバッチリ」ということにはなりません。恋愛の場合を見ていきましょう。「パートナーのことは人間的に好きだけど、女性として見られたくないあまりに性的関係に踏みこめない」ということもあります。

異性と結婚していたとしても、「妊娠や出産だけは受け入れがたい」という思いが強いと、セックスレスの状態が続くことになるのです。出産してしまったら、自分は「女性」以外の何者でもなくなる、という危機感があるのですね。

 

3.女性性が受け入れられないのはなぜか

現在の社会では、男性性が評価され求められる現実があります。女性の場合は、性に対する嫌悪感が背景に隠れていることもあります。

男性が自分の女性性に気づくことができなかったり、受け入れることができないのは、皆さんも想像がつくと思います。「男らしさ」が評価される中で育ち、例えば体育会系の部活などに入ってしまうと、男性性がより強まります。

自分の女性性である情緒的な共感性などが十分に育たなくなってしまい、コミュニケーションの取り方がわからなくなってしまうのです。

社会としても、男性性が好ましいと評価される傾向にあります。日常的な例えでいうと、「仕事だから」というのが言い訳になっても、「家族と過ごしたいから」というと「えっ、どうして?ヒマなんでしょ!」という感情的な反発を引き起こしてしまいますね。

 

昔は「男は仕事へ女は家庭に」という社会でしたが、今は女性は社会にどんどんとでて活躍しています。しかしながら社会で活躍したり成功していくには、男性性としての面が求められてしまいます。その現実から、女性性を受け入れられない方が増えています。

さらに女性の場合、性の問題が深く関わっていることもあります。例えば、幼少時に性的虐待を受けた女性がいたなら、「これからはなるべく、女性らしくしないでおこう」と思うのは自然なことです。

ここまでの外傷体験でなくても、成長していく中で異性からぶしつけな視線で見られて困惑した、という女性は少なくないでしょう。「女性らしさをふりまく=危険なのではないか」という方向に向かうこともあります。性に対する嫌悪感から、自分自身の女性性を受け止められなくなってしまう方もいるのです。

 

4.男性性と女性性は不可分なもの

男性的な事柄を成功させるには女性性が、女性的な事柄を達成するためには男性性が必要です。

女性性を受け入れていくにはどのようにすればよいのでしょうか?それにはまず、自分自身の男性性の裏側には必ず、女性性の面があることに気づくことです。

今まで見てきたように、女性性を抑圧していると、コミュニケーションの場で多くの支障が出てきます。そして女性性の受け入れには、特有の困難さが付きまとうことも多いです。

しかしながら、男性性と女性性というのは不可分のものです。一人の人間の中には、男性性も女性性も両方備わっています。実は男性的なものの背後には、常に女性性が隠れています。

例えば、成績トップの営業セールスマンを想像してみて下さい。彼は次々と契約をとってきます。原始時代でいえば、獲物をたくさん仕留めているようなものです。周囲の人は、とても男らしい行動だ、と思うでしょう。

しかし彼は、実は大変女性性が発達した人でもあるのです。商品をすすめて売るというプロセスには、相手の感情を察知することが必須です。人によってコミュニケーションの仕方を変え、臨機応変に対処していかなければなりません。もし彼に女性性が欠けていたとしたら、どうなるでしょうか?「自分の話ばかり」「気がきかない」「こちらのいうことを聞いてくれない」と、散々な評判のはずです。

男性的なように思える事柄は、実は女性性を活かしたものだった。そんな事例はいくらでもあります。男性性と女性性は、簡単に2つに分けられるものではないのです。男性的な事柄を成功させるには女性性が、女性的な事柄を達成するためには男性性が必要なのです。

 

5.自分の「女性性」を受け入れていくには?

女性性を「どうしても受け入れなければならないもの」と否定的に捉えるのではなく、「自分の人生を豊かにするために必要なもの」だと肯定的な面を見つけてください。

男性女性双方にとって、「女性性を受け入れる」ことは困難なものとなりがちです。社会的な意識のせいで、女性性には多くのマイナスイメージがつきまとっているのです。

しかし実のところ、男性的な成功を修めるには女性性が、女性的な達成を成し遂げるには男性性が必要なのです。二つの要素は不可分で、どちらか一方だけを切り離すことはできません。

自分の中の男性性と女性性のバランスについて悩む人は多いでしょう。しかし「男性性と女性性、両方とも受け入れられない」という方には、みたことがありません。必ずどちらか一方だけを取り上げて、「どうしても受け入れられない」と悩むのです。

あなたの女性性を開花させるためには、まずは自分の中の男性性を確立させることが大切です。「もし自分が理想的な男性だったとしたら」と想像して、一日行動してみましょう。リーダーシップをうまくとったり、車の運転をこなしたり…などです。

実はその裏では、あなたの女性性が働いています。人と人とのコミュニケーションを取るには女性性が不可欠です。周りの状況をうまく察知するというのも、女性性の面ですね。まずあなたは、男性性と女性性が不可分のものであることに気づいて下さい。

そして、女性性を「どうしても受け入れなければならないもの」と否定的に捉えるのではなく、「自分の人生を豊かにするために必要なもの」だと思うようにしてみて下さい。女性性に対するプラスの部分に目を向けましょう。そしてそれを積み重ねていくことで、少しずつ女性性が育っていきます。

心の成長とは、いったん自分の中にあるものをすべて認めるところから始まります。あなたは自分の中の男性性も女性性も、等しく認めてあげて下さい。それが心の豊かさにもつながっていきます。

 

まとめ

女性性とは、優しさ、肯定、寛容、共感力、感性の豊かさ、何かを産み育てる能力のことで、コミュニケーション能力と深く関わってきます。

男性ではコミュニケーションで周囲と上手くいかなくなり、女性では結婚や妊娠の時にパートナーと問題となることが多いです。思春期での拒食の背景に、女性性の否定が隠れていることもあります。

現在の社会では、男性性が評価され求められる現実があります。女性の場合は、性に対する嫌悪感が背景に隠れていることもあります。

男性的な事柄を成功させるには女性性が、女性的な事柄を達成するためには男性性が必要です。

女性性を「どうしても受け入れなければならないもの」と否定的に捉えるのではなく、「自分の人生を豊かにするために必要なもの」だと肯定的な面を見つけてください。