プレドニン(プレドニゾロン)の安全性は?

アイコン 2016.9.12 プレドニン

プレドニン(一般名プレドニゾロン)は、抗炎症・抗免疫作用のあるお薬です。効果が強い分、副作用も非常に多彩です。そのため、決して安全だとは言い切れないお薬です。その一方で、プレドニンを使用する時は病気が非常に重篤な時です。

そのため基本的には、「背に腹は代えられぬ」時に使用します。ですから、背に腹は代えられぬ時かを正しく見極める必要があります。ステロイドで使用しなくても良い病態で無理にプレドニンを内服して、副作用がひどくなってしまっては目も当てられません。

当然医師が気を付け、患者さんにも情報として伝える必要があります。ですが実際には、患者さんにうまく伝わっていないことも多々あります。ご自身でも、プレドニンの安全性について確認しておきましょう。

 

1.ステロイドであるプレドニンが安全ではない理由

ステロイドは、体内で作られているホルモンです。全身に作用することで、様々な部位に影響を与えます。良い面もあれば悪い面もたくさんあります。

ステロイドホルモンは、実は体の中で作られているホルモンです。副腎でヒドロコルチゾン(ステロイドの一種)に換算して、1日当たり5~30mgのステロイドが分泌されています。一日の中でも分泌量は変化していて、朝に多く分泌されて夜に低下していくホルモンです。

ステロイドホルモンは一言でいうと、「ストレスなどの負荷に対して、体が負けずに元気になれ!」と命令するホルモンです。ですから抗ストレスホルモンともいわれます。そのため一部の臓器に作用せず様々な臓器に作用します。

どのように元気にするかというと、攻撃のスイッチを入れる代わりに防御のスイッチを切る作用のあるホルモンなのです。朝にステロイドホルモン量が多いのは、活動性が上がるために攻撃のスイッチを入れる必要があるからです。つまりステロイドは良い面ばかりではなく悪い面もたくさんあります。

具体的なステロイドの作用ですが、

  作用機序 副作用
抗炎症
作用
炎症性の物質抑制(サイトカイン抑制)
炎症の経路抑制(アラキドン酸カスケード抑制)
 
免疫抑制作用 好中球、マクロファージなど体を守る免疫細胞の抑制
抗体産生の抑制(免疫反応の抑制)
感染しやすくなる
骨代謝
作用
腸管のカルシウム吸収抑制骨の細胞の分化抑制、破壊促進 骨粗しょう症
タンパク質異化作用 筋肉のたんぱく質を分解 筋力低下
糖代謝
作用
血糖値を上げる 糖尿病
脂肪代謝作用 体脂肪増加
コレステロール上昇
脂質異常症
満月様顔貌
水・電解質
作用
Na貯留
水分貯留
高血圧
むくみ

この中で、抗炎症作用と免疫抑制作用の効果を利用して治療することがステロイドは多いです。その他の様々な作用は、副作用となってしまうのです。

具体的に起きる副作用は、

  1. 満月様顔貌・肥満(ステロイドによる脂肪細胞の増殖および水分を体内に取り込む作用で起きます。)
  2. 細菌やカビなどの感染症に弱くなる(免疫を抑えるため防御が下がります。普段なら感染しないような特殊な菌にも感染しやすくなります。)
  3. 糖尿病(ステロイドが筋肉や脂肪を燃やし血糖値を上昇させます。)
  4. 胃潰瘍・十二指腸潰瘍(ステロイドが胃腸に働くことでストレスがかかります)
  5. 高血圧・浮腫(ステロイドで血管が収縮します。さらに水分やNaを貯留するため血管内の水分が増えます。)
  6. 肝機能障害(ステロイドが肝臓を通して炎症を抑えるため負担がかかります)
  7. 緑内障・白内障(ステロイドで眼圧が上がったり、目のレンズが濁ったります)
  8. 精神障害(ステロイドでイライラしたり眠れなくなります)
  9. 骨粗鬆症(ステロイドは骨にも作用し、骨密度が低下します)
  10. 筋力低下(ステロイドによる筋肉を分解する作用で筋力が低下します)
  11. 月経異常(ステロイドホルモンは性ホルモンと似ている部分があるため、生理不順が起きます)
  12. ニキビ・皮下出血(皮膚の代謝異常でおきます。ステロイドで皮膚や筋力が衰え出血しているように見えます)

などが挙げられます。詳しく副作用と対策について知りたい人は、「プレドニン(プレドニゾロン)の副作用と対処法」をご参照ください。

 

2.プレドニンを使用できない人は?

プレドニンを使用する場合はリスクとデメリットを常に天秤にかけて使用する必要があります。

まずプレドニンの原則禁忌ですが、

  1. 感染症・全身の真菌症の患者[免疫が抑制されるため]
  2. 結核性疾患の患者[免疫が抑制されるため]
  3. 消化性潰瘍の患者[胃潰瘍が悪化するため]
  4. 精神病の患者[中枢神経に作用して精神症状が悪化するリスクがあるため]
  5. 単純疱疹性角膜炎の患者[免疫が抑制されるため]
  6. 白内障や緑内障の患者[水晶体線維や眼圧に影響するため]
  7. 高血圧症の患者[電解質代謝作用により、 高血圧症が悪化するため]
  8. 電解質異常のある患者[電解質代謝作用により、 電解質異常が悪化するため]
  9. 血栓症の患者[血液凝固促進作用により、血栓症が悪化するため]
  10. 直近に手術を行った患者[創傷治癒が障害されることがあるため]
  11. 急性心筋梗塞を起こした患者[心破裂を起こしたという報告があるため]

これら11項目が示されています。ただし「原則」禁忌と、原則の二文字が記載されています。これは、上記の疾患の患者さんには投与しないことを原則としますが、特に必要とする場合には慎重に投与するということです。

プレドニンなどのステロイドは、必要とする場合にのみ投与するお薬です。多少の副作用があっても、「背に腹は代えられない」状態で使われるのです。

しかし上にあげた11項目の中で、より気を付けた方が良い疾患があります。それは、

  1. 単純疱疹性角膜炎の患者
  2. 白内障や緑内障の患者

の2つです。

感染症や結核は、実は一時的であればステロイドの抗炎症効果で症状が改善することがあります。消化性潰瘍は重症度にもよりますが、軽症であれば胃薬併用で使用することがほとんどです。

精神病や高血圧も、内服薬追加で対応できます。電解質異常は、採血でその都度確認して補正していきます。血栓症の患者さんも、抗凝固薬という血をサラサラにするお薬を併用することで対応できます。

直近で手術を行った場合、手術内容にもよりますが傷口が上手くくっつかなくてステロイドの使用を控えた方が良いとなります。これは術者であれば、どれくらいの傷ならプレドニンの量はこれくらいまでだなと、経験で把握できることがほとんどです。

心筋梗塞後に心臓が破裂した報告があるためステロイドの禁忌欄に記載されていますが、確率は非常に低いです。また、いきなり心臓が破裂するといったことはまずありません。心臓に負荷がかかって、心不全の兆候が必ず出ます。そのため、利尿剤等によって対応します。

以上11項目の中で、2つ以外の項目は対応ができやすいです。ただし、単純性角膜炎、白内障や緑内障の患者さんは、眼科が主に診ます。眼科は非常に特殊な科で、他の科ですと精査ができない領域です。そのため眼科以外の科で使用する場合は、非常に注意が必要です。

その他、禁忌までは行かなくても気を付けた方が良いとされている疾患は、

  1. 糖尿病の患者(血糖値が上昇するリスクがある)
  2. 骨粗鬆症の患者(骨がもろくなる可能性がある)
  3. 腎不全の患者(腎機能を悪化させる可能性がある)
  4. 肝機能低下・脂肪肝の患者(脂質代謝に働き、肝機能が悪くなる)
  5. 脂肪塞栓症の患者(脂質代謝に関与し、塞栓がさらにできる可能性がある)
  6. 重症筋無力症の患者(初期に症状が一時的に悪化することがある)
  7. 甲状腺機能低下の患者(甲状腺機能が悪化することがある)

の7項目が挙げられます。しかし先ほど同様に、①~⑦の項目は、ある程度他のお薬でコントロールができる病気です。

このように悪化するリスクのある病気をみてきましたが、大切なことは、「他に持病があるか?」「今までに大きな病気は何かあるか?」と聞かれて、自分で勝手に省略しないことです。

特に目の疾患は関係ないだろうと、あえて医師に言わない患者さんもいます。しかし白内障や緑内障があるのに知らずにプレドニンを投与してしまい失明してしまったら、プレドニンを中止しても時すでに遅しになってしまいます。

プレドニンを使う人は、眼科の疾患も含めて全てお話しするようにしてください。

 

3.プレドニンと併用できないお薬は?

プレドニンと一緒に飲んではいけないお薬はありません。ただしお互いの効果を弱めたり強めたりするお薬があるため、注意が必要です。

プレドニンと一緒に併用してはいけないお薬はありません。そのため、先ほどの疾患も合わせて全ての人に一応はプレドニンは投与可能となっています。しかし、内服薬も気を付けなければいけない薬があります。

  1. フェノバルビタール・フェニトイン・リファンピシン(プレドニン自体の作用が弱まります)
  2. アスピリン・アスピリンダイアルミネート・サザピリン(サリチル酸中毒を引き起こす可能性があります)
  3. ワルファリンカリウム(抗凝固作用を弱めます。)
  4. 経口糖尿病薬、インスリン製剤(経口糖尿病用剤・インスリン製剤の効果を減弱させます)
  5. 利尿剤(低カリウム血症を引き起こします)
  6. 活性型ビタミンD3製剤(高カルシウム血症を引き起こします)
  7. シクロスポリン(ステロイド大量投与にてシクロスポリンの血中濃度の低下があります)
  8. エリスロマイシン(プレドニンの作用が増強します)
  9. パンクロニウム臭化物,ベクロニウム臭化物(筋弛緩作用が減弱又は増強すると報告があります)

以上のお薬をよく使う場合は、プレドニンの効果が増強・減弱するため、それを予測して投与量を調整します。また電解質異常や血糖上昇などの副作用が出現するため、結果としてお薬の効果を弱めたり、他の薬の副作用と合わさって効果が大きくなったりします。

いずれにしろ投与する医師は、これらのお薬との相乗効果を考えながらプレドニンの量を決めていきます。そのため一番問題なのは、何を内服しているか医師が知らない場合です。特に複数の医療機関を受診している人は、

と医師が知らなくて対応できなくなる場合があります。プレドニンは副作用や安全性の面で、非常にナーバスなお薬です。プレドニンが処方された方は、他の医療機関にも必ずその旨を伝えましょう。

 

4.プレドニンは妊婦さんにも安全か?

プレドニンは20~30mgであれば安全性が高いと言われています。

プレドニンの副作用や安全性が強く言われているお薬ですと、妊娠中に内服する方は心配になりますよね?実際にプレドニンの主成分であるステロイドは、お薬で内服しなくても我々の体で5~30mg作られているホルモン剤になります。

そのため、体内に全く存在しない異物を内服しているわけではありません。さらにお母さんと赤ちゃんをつなぐ胎盤には、「11β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素(2型)」が多く存在しています。この酵素の作用によってプレドニゾロンの成分は不活化されるため、赤ちゃんのところまではほぼ効力のない状態で取り込まれます。

このため、妊婦に投与して良いお薬かどうか判断するオーストリア基準でもAランクになっています。オーストリア基準は以下の通りです。

胎児への安全性のカテゴリー

プレドニンは最も評価が高いAのため、妊婦さんにとっても安全性が高いお薬といえます。一方でこれは、プレドニンを20~30mg程度内服している時の話です。高用量であれば話は変わります。

実際にプレドニンの添付文章でも、

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[動物試験(ラット,マウス,ウサギ,ハムスター)で催奇形作用が報告されており,また,新生児に副腎不全を起こすことがある。]

と記載されています。

実際に人での報告でも、

といった論文も発表されています。ここで大切なことは、プレドニンを内服するくらい重度な病気があるかどうかです。病気をコントロールしないでいると、重症化したときはさらに大量のステロイドが必要になる場合がほとんどです。

そのため妊娠を考えている方は、医師にまず相談してみましょう。

特にプレドニンが高用量内服している時は、病気が重度な状態であることが多いでしょう。その時は、あえて妊娠しない方が無難かと思います。

一番大切なのは、プレドニンが怖いからといって自己中断してしまうことです。こうして病状が悪化してしまうと、のちに大量のステロイドが必要になることが多いです。

ぜひ医師に相談して、妊娠と病気の治療を両立してください。

 

まとめ