水溶性ハイドロコートンの効果と副作用

アイコン 2016.10.16 コートリル(コルチゾール)
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水溶性ハイドロコートン(一般名:ヒドロコルチゾンリン酸エステルナト リウム)は、2008年に日医工株式会社が発売した注射薬のステロイド薬になります。ステロイド内服薬のコートリルの点滴バージョンともいえます。

このステロイドの効果として、

を期待して、急性循環不全などの救急疾患か気管支喘息に適応があるお薬です。

特に水溶性ハイドロコートンの特徴としては、リン酸エステル化されているためアスピリン喘息でも使用できる点があげられます。即効性のあるステロイドでは唯一、水溶性ハイドロコートンがアスピリン喘息に適応があります。

ここでは、水溶性ハイドロコートン(ヒドロコルチゾン)の効果と特徴についてみていきましょう。

 

1.水溶性ハイドロコートンのメリット・デメリットは?

<メリット>

<デメリット>

ステロイドは、糖質コルチコイドと硬質コルチコイドの2つの作用があるお薬です。糖質コルチコイドには、抗炎症作用や免疫抑制作用があります。ステロイドが使われるのは、こちらの効果を期待してであることが大部分です。

水溶性ハイドロコートンは、短期作用型のステロイド薬です。個人差がありますが、一般的に8時間で効果が半減してしまうと言われています。内服薬であるコートリルは副作用も多く、効果も短いため、少し使いにくいお薬になります。

しかし水溶性ハイドロコートンは、緊急性の高い疾患に点滴で投与する時に使用します。硬質コルチコイドは投与直後に問題になることは少ないため、非常に使いやすいお薬となっています。特に水溶性ハイドロコートンなどの短期作用型のステロイドの点滴は即効性に優れており、緊急性の高い患者さんに使われます。

などの疾患に使われます。特に有用なのが、アスピリン喘息です。サクシゾンソル・コーテフといった短期作用型のステロイド薬は、コハク酸でエステル化されたステロイド点滴薬です。このコハク酸を投与すると、アスピリン喘息の方は悪化してしまうといわれており、使用が禁忌となっています。

水溶性ハイドロコートンは、リン酸エステル化されたステロイド薬です。このリン酸エステル化されたステロイドは、急速に投与しなければアスピリン喘息にも比較的安全といわれています。(添加物で発作が起きる可能性があるため、急速な投与は推奨されていません。)

アスピリン喘息について詳しく知りたい方は、「痛み止めで喘息に?アスピリン喘息の症状と特徴」を一読してみてください。

ただし、どのような疾患に水溶性ハイドロコートンを使用したとしても、ステロイド自体副作用が強いお薬です。そのため水溶性ハイドロコートンが使用される時は、病気がかなり悪くステロイドを使用しなければならない時です。

 

2.水溶性ハイドロコートンの剤形・適応・薬価は?

水溶性ハイドロコートンは注射薬のみになります。古いお薬でジェネリック医薬品も登場しています。

水溶性ハイドロコートンは、

の注射剤が先発品として発売されています。水溶性ハイドロコートンは、点滴として投与するお薬です。適応疾患は、

と記載されています。

ショック状態とは、血圧が低下して生命の危険が瀕している状態です。ステロイドは抗ショック作用 (カテコラミンの作用(効果神経の作用)を増強し、ライソゾームの安定化、血小板凝集阻止に加え、血管や肺を保護する。)を有していることから、ショック状態の患者に適応されています。

ただしステロイドは、ショックに限らず多くの疾患に使用されています。緊急疾患でステロイド点滴を使用する病気の一つに、喘息があります。

喘息のガイドラインでも、通常成人には水溶性ハイドロコートンの初回投与量100〜500mgを緩徐に静脈内注射し、症状が改善しない場合には、1回50〜200mgを4〜6時間毎に緩徐に追加投与することが一般的と記載されています。

さらに喘息の中でも特殊なアスピリン喘息に対しても、先ほど記載したように水溶性ハイドロコートンはリン酸エステル化されているため、使用することができます。

このように水溶性ハイドロコートンは、添付文章以外の疾患でも多岐にわたり使用することがあります。それでは薬価をみていきましょう。先発品である水溶性ハイドロコートンは、以下のようになります。

  剤形 薬価 3割薬価
水溶性ハイドロコートン 100mg 403円 120円
水溶性ハイドロコートン 500mg 1688円 506.4円

※2016年10月7日の薬価です。

一方の後発品のヒドロコルチゾンコハク酸エステルNaは、以下の価格です。

  剤形 薬価 3割薬価
ヒドロコルチゾンリン酸エステルNa 100mg 205円 61.5円
ヒドロコルチゾンリン酸エステルNa 500mg 763円 229円

※2016年10月7日の薬価です。

ジェネリック医薬品は先発品より、約半分程度の価格です。ただし緊急疾患に対して注射で投与するため、患者さんとしては薬価を気にする状態でないことが多いです。

 

3.水溶性ハイドロコートンの副作用の特徴

水溶性ハイドロコートンの投与量及び投与期間によって、出現する副作用および頻度が大幅に変わります。最も多いのは満月用顔貌です。

水溶性ハイドロコートンの添付文章では、詳細な副作用のデータはないと記載されています。しかし水溶性ハイドロコートンは、

で全く副作用の出現頻度が違います。さらにいえば、

によっても副作用は大幅に変わります。そのため、どの副作用がどれくらい起きるかは個々人によって大きく異なります。代表的な副作用としては、

  1. 満月様顔貌・肥満(ステロイドによる脂肪細胞の増殖および水分を体内に取り込む作用で起きます)
  2. 細菌やカビなどの感染症に弱くなる(免疫を抑えるため防御が下がります。普段なら感染しないような特殊な菌にも感染しやすくなります)
  3. 糖尿病(ステロイドが筋肉や脂肪を燃やし血糖値を上昇させます)
  4. 胃潰瘍・十二指腸潰瘍(ステロイドが胃腸に働くことでストレスがかかります)
  5. 高血圧・浮腫(ステロイドで血管が収縮します。さらに水分やNaを貯留するため血管内の水分が増えます)
  6. 肝機能障害(ステロイドが肝臓を通して炎症を抑えるため負担がかかります)
  7. 緑内障・白内障(ステロイドで眼圧が上がったり、目のレンズが濁ったります)
  8. 精神障害(ステロイドでイライラしたり眠れなくなります)
  9. 骨粗鬆症(ステロイドは骨にも作用し、骨密度が低下します)
  10. 筋力低下(ステロイドによる筋肉を分解する作用で筋力が低下します)
  11. 月経異常(ステロイドホルモンは性ホルモンと似ている部分があるため、生理不順が起きます)
  12. ニキビ・皮下出血(皮膚の代謝異常でおきます。ステロイドで皮膚や筋力が衰え出血しているように見えます)

ここにあげたのは、代表的なものです。糖尿病や高血圧、緑内障などが持病である人は、病状の悪化に特に注意が必要です。内服薬のプレドニンと副作用対策は同じため、気になる人は「プレドニンの副作用の対策」を一読してみてください。

ただし、水溶性ハイドロコートンを1~2回点滴で投与して、これらの副作用がすぐ起きるといったことは考えづらいです。ですが漫然と使用した場合に、徐々に様々な副作用が出現することがあります。そのため水溶性ハイドロコートンの点滴が必要と医師が判断した場合は、ためらわずに投与した方が良いでしょう。

 

4.水溶性ハイドロコートンの安全性は?

水溶性ハイドロコートンは、絶対に感染している部位に直接投与してはいけません。それ以外の病気には投与可能です。また併用できない内服薬はありませんが、様々なことに注意が必要です。

水溶性ハイドロコートンの原則禁忌ですが、

  1. 感染症・全身の真菌症の患者[免疫が抑制されるため]
  2. 急性心筋梗塞を起こした患者[心破裂を起こしたという報告があるため]

これら2項目が示されています。ただし「原則」禁忌と、原則の二文字が記載されています。これは、上記の疾患の患者さんには投与しないことを原則としますが、特に必要とする場合には慎重に投与するということです。

水溶性ハイドロコートンなどのステロイドは、必要とする場合にのみ投与するお薬です。多少の副作用があっても、「背に腹は代えられない」状態で使われるのです。

その他、禁忌までは行かなくても気を付けた方が良いとされている疾患は、

  1. 糖尿病の患者[血糖値が上昇するリスクがある]
  2. 骨粗鬆症の患者[骨がもろくなる可能性がある]
  3. 腎不全の患者[腎機能を悪化させる可能性がある]
  4. 肝機能低下・脂肪肝の患者[脂質代謝に働き、肝機能が悪くなる]
  5. 脂肪塞栓症の患者[脂質代謝に関与し、塞栓がさらにできる可能性がある]
  6. 重症筋無力症の患者[初期に症状が一時的に悪化することがある]
  7. 甲状腺機能低下の患者[甲状腺機能が悪化することがある]
  8. 消化性潰瘍の患者[胃潰瘍が悪化するため]
  9. 精神病の患者[中枢神経に作用して精神症状が悪化するリスクがあるため]
  10. 単純疱疹性角膜炎の患者[免疫が抑制されるため]
  11. 白内障や緑内障の患者[水晶体線維や眼圧に影響するため]
  12. 高血圧症の患者[電解質代謝作用により、 高血圧症が悪化するため]
  13. 電解質異常のある患者[電解質代謝作用により、 電解質異常が悪化するため]
  14. 血栓症の患者[血液凝固促進作用により、血栓症が悪化するため]
  15. 直近に手術を行った患者[創傷治癒が障害されることがあるため]
  16. 結核性疾患の患者[免疫抑制作用により、結核性疾患が増悪するおそれがあるため]

の16項目が挙げられます。しかし先ほど同様に、これらの項目はある程度、他のお薬でコントロールができる病気です。

特に水溶性ハイドロコートンを使用する場合は命に関わる場合が多いため、禁忌も含めて投与せざるを得ない場合がほとんどです。

また、内服薬も気を付けなければいけない薬があります。

  1. フェノバルビタール・フェニトイン・リファンピシン(プレドニン自体の作用が弱まります)
  2. アスピリン(サリチル酸中毒を引き起こす可能性があります)
  3. ワルファリンカリウム(抗凝固作用を弱めます)
  4. 経口糖尿病薬、インスリン製剤(経口糖尿病用剤・インスリン製剤の効果を減弱させます)
  5. 利尿剤(低カリウム血症を引き起こします)
  6. 活性型ビタミンD3製剤(高カルシウム血症を引き起こします)
  7. シクロスポリン(ステロイド大量投与にてシクロスポリンの血中濃度の低下があります)
  8. エリスロマイシン(プレドニンの作用が増強します)
  9. エフェドリン(腎皮質ホルモン剤の代謝が促進され、血中濃度が低下するとの報告があります)

以上のお薬をよく使う場合は、プレドニンの効果が増強・減弱するため、それを予測して投与量を調整します。また電解質異常や血糖上昇などの副作用が出現するため、結果としてお薬の効果を弱めたり、他の薬の副作用と合わさって効果が大きくなったりします。

 

5.水溶性ハイドロコートンと他のステロイドの比較は?

水溶性ハイドロコートンは、短期作用型のステロイドです。力価は硬質コルチコイドの作用が最も強いステロイドになります

ステロイド点滴薬は、多くのお薬が発売されています。それらのお薬の中で、水溶性ハイドロコートンはどういった位置のお薬になるか見てみましょう。

ステロイド点滴薬の比較をしました。

まずステロイドは、

の3種類に分けられます。生物学的半減期の期間が、お薬の効き目が無くなってくる時間だと思ってください。時間に幅があるのは、

などによって非常に個人差が大きいお薬だからです。

この中で水溶性ハイドロコートンは、短期作用型のヒドロコルチゾンのお薬にあたります。つまり8時間程度で効果が消失します。一方でこの水溶性ハイドロコートンなどの短期作用型は効果が消えるのが早い代わりに、効果が出現するのも早いといわれています。そのため水溶性ハイドロコートンは、即効性に優れた点滴薬といえます。

次にステロイド自体の強さですが、ステロイドはさらに2種類のホルモンに分けられます。

ステロイドの治療を期待するのは、大部分が糖質コルチコイドの抗炎症、免疫抑制作用です。一方の硬質コルチコイドは水・電解質代謝作用によって、Na(塩分)が体内貯留する作用を引き起こします。Naが体内に貯留することで、高血圧やむくみなどの副作用を起こします。

このステロイドの強さを表すのに、力価という言葉を使用します。一般的には、水溶性ハイドロコートンの主成分であるヒドロコルチゾンの糖質コルチコイド、硬質コルチコイドの力価を1として基準とすることが多いです。

このように基準となる水溶性ハイドロコートンは、ステロイドの中では最も硬質コルチコイドの力価が高いです。そのためその他のステロイドの力価は、だいたい1未満になります。

また注射薬独特の特徴として、どうやってエステル化したかという違いがあります。プレドニン含めてステロイドは、元々水に溶けづらい物質です。そのため、エステル化といって水に溶けやすくする処理をされているのですが、水溶性ハイドロコートンはリン酸エステル化合物によってエステル化されます。

このエステル化が問題になるのが、アスピリン喘息です。サクシゾンやソル・コーテフのコハク酸エステルを投与すると、アスピリン喘息では喘息症状が悪化してしまうために禁忌となっています。アスピリン喘息の場合は、

などのリン酸エステルステロイド製剤で加療します。この中でデカドロン、リンデロンは長期作用型のステロイドで、じっくりゆっくりと効くタイプです。

 

6.水溶性ハイドロコートンが向いてる人は?

<向いてる人>

水溶性ハイドロコートンは、即効性が期待できるステロイドの点滴薬です。そのため、緊急性を要する疾患で使用することがほとんどです。緊急性を有する疾患の中で

は添付文章にも記載されており、非常に使用しやすいステロイドの注射薬です。しかしショック状態ではあえて水溶性ハイドロコートンに固執する理由はなく、他のステロイド点滴でも代用はできます。

水溶性ハイドロコートンが最も使用される疾患は、アスピリン喘息です。喘息発作は、

など辛い症状が強く出ます。この時は急速に治療をして症状をとる必要があります。しかしアスピリン喘息の方には、コハク酸エステル化のお薬は使用できません。

即効性のあるステロイド点滴は、

などありますが全てコハク酸エステル化のステロイド点滴薬のため、アスピリン喘息の方には使用できません。リン酸エステル化のステロイド点滴は、

の3種類あります。しかしリンデロンとデカドロンは長期作用型のステロイド点滴薬です。つまりじっくりと長く効かせお薬で即効性がありません。

以上にてアスピリン喘息の方に最も適したステロイド点滴薬が、水溶性ハイドロコートンになります。

 

7.ステロイドとはどんな物質で、どのような作用があるか?

ステロイドは、体の副腎皮質ホルモンとして作られている物質です。

ステロイドホルモンは、実は体の中で作られているホルモンです。副腎でコルチゾール(ヒドロコルチゾン)に換算して、1日当たり5~30mgのステロイドが分泌されています。一日の中でも分泌量は変化していて、朝に多く分泌されて夜に低下していくホルモンです。

ステロイドホルモンは一言でいうと「ストレスなどの負荷に対して、体が負けずに元気になれ!」と命令するホルモンです。ですから抗ストレスホルモンともいわれます。そのため一部の臓器に作用せず様々な臓器に作用します。

どのように元気にするかというと、攻撃のスイッチを入れる代わりに防御のスイッチを切る作用のあるホルモンなのです。朝にステロイドホルモン量が多いのは、活動性が上がるために攻撃のスイッチを入れる必要があるからです。つまりステロイドは良い面ばかりではなく悪い面もたくさんあります。

ステロイドは副腎から作られたホルモンの総称です。実はステロイドは、

など実に多彩なホルモンが含まれています。ステロイド薬は、糖質コルチコイドと硬質コルチコイドの2種類の作用が主に含まれています。

糖質コルチコイド(コルチゾール・コルチゾン)の作用としては、

  作用機序 副作用
抗炎症
作用
炎症性の物質抑制(サイトカイン抑制)
炎症の経路抑制(アラキドン酸カスケード抑制)
 
免疫抑制作用 好中球、マクロファージなど体を守る免疫細胞の抑制
抗体産生の抑制(免疫反応の抑制)
感染しやすくなる
骨代謝
作用
腸管のカルシウム吸収抑制骨の細胞の分化抑制、破壊促進 骨粗しょう症
タンパク質異化作用 筋肉のたんぱく質を分解 筋力低下
糖代謝
作用
血糖値を上げる 糖尿病
脂肪代謝作用 体脂肪増加
コレステロール上昇
脂質異常症
満月様顔貌

など多岐にわたります。この中で、抗炎症作用・免疫抑制作用が主にステロイドに期待される作用です。

一方でもう一つの硬質コルチコイド(アルドステロン・デオキシコルチコステロン)は、

  作用機序 副作用
水・電解質
作用
Na(塩分)の再吸収、貯留水の再吸収、貯留 高血圧
むくみ

硬質コルチコイド自体が少なくなる病気(アジソン病など)以外は、ほとんどこの硬質コルチコイドの作用を期待して投与させることはありません。水や塩分が足りない病態ならば、基本的には点滴などで直接補ってしまいます。

むしろアンジオテンシン阻害薬などの高血圧の治療薬は、この硬質コルチコイドの作用が働かないようにすることで降圧作用をもたらします。

このようにステロイドは、抗炎症作用・免疫抑制作用以外にも様々な作用があるお薬です。

 

まとめ