デカドロン(デキサメタゾン)の副作用と安全性

アイコン 2016.9.20 デカドロン
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デカドロン(一般名:デキサメタゾン)は、主に抗癌剤の吐き気止めとして使用される長期作用型の高力価のステロイド薬です。

ステロイドと効くと気になるのが、副作用や安全性だと思います。特にデカドロンは高力価って書かれているので、ステロイドが強いのではと気になる人もいるのではないでしょうか?ステロイドは非常に有用なお薬である一方で、様々な副作用があるのは事実です。

そのことは、デカドロンを処方している医師は承知のうえで処方しています。デカドロンなどのステロイドを処方する場合は多くの場合、「背に腹は代えられない」ほどの治りづらい、もしくは急いで治さないと危ない病気になります。そのため副作用や安全性に関しては、ある程度リスクを背負わざるをえません。

ここではデカドロンの副作用や安全性に関して詳しくお伝えしていきます。

 

1.ステロイドであるデカドロンが副作用の多い理由

ステロイドは、体内で作られているホルモンです。全身に作用することで、様々な部位に影響を与えます。良い面もあれば悪い面もたくさんあります。

ステロイドホルモンは、実は体の中で作られているホルモンです。副腎でヒドロコルチゾン(ステロイドの一種)に換算して、1日当たり5~30mgのステロイドが分泌されています。一日の中でも分泌量は変化していて、朝に多く分泌されて夜に低下していくホルモンです。

ステロイドホルモンは一言でいうと、「ストレスなどの負荷に対して、体が負けずに元気になれ!」と命令するホルモンです。ですから抗ストレスホルモンともいわれます。そのため一部の臓器に作用せず様々な臓器に作用します。

どのように元気にするかというと、攻撃のスイッチを入れる代わりに防御のスイッチを切る作用のあるホルモンなのです。朝にステロイドホルモン量が多いのは、活動性が上がるために攻撃のスイッチを入れる必要があるからです。つまりステロイドは良い面ばかりではなく悪い面もたくさんあります。

具体的なステロイドの作用ですが、

  作用機序 副作用
抗炎症
作用
炎症性の物質抑制(サイトカイン抑制)
炎症の経路抑制(アラキドン酸カスケード抑制)
 
免疫抑制作用 好中球、マクロファージなど体を守る免疫細胞の抑制
抗体産生の抑制(免疫反応の抑制)
感染しやすくなる
骨代謝
作用
腸管のカルシウム吸収抑制骨の細胞の分化抑制、破壊促進 骨粗しょう症
タンパク質異化作用 筋肉のたんぱく質を分解 筋力低下
糖代謝
作用
血糖値を上げる 糖尿病
脂肪代謝作用 体脂肪増加
コレステロール上昇
脂質異常症
満月様顔貌
水・電解質
作用
Na貯留
水分貯留
高血圧
むくみ

この中で、抗炎症作用と免疫抑制作用の効果を利用して治療することがステロイドは多いです。その他の様々な作用は、副作用となってしまうのです。

代表的な作用をここではあげましたが、他にも眼の眼圧を上げたり、血を固まりやすくするなどの様々な作用があります。なお様々な作用があるステロイドですが、デカドロンで最もよく使用される制吐剤の細かい作用機序についてはよくわかっていません。

デカドロンの糖代謝作用で食欲が増進する影響では?とも考えられています。

 

2.デカドロンの副作用の特徴

デカドロンの投与量及び投与期間によって、出現する副作用および頻度が大幅に変わります。しかし硬質コルチコイドの作用が弱いため、浮腫や満月用顔貌、高血圧の頻度は他のステロイドに比べて低いです。

デカドロンの添付文章では、詳細な副作用の試験は実施されていないとされています。そのためデカドロンを内服したら、どのくらいの副作用が起きるか正確なデータがないのが実情です。そもそもデカドロンでは、

で全く副作用の出現頻度が違います。さらにいえば、

によっても副作用は大幅に変わります。そのため、一概にどの副作用がどれくらい起きるかとは個々人によって大きく異なります。代表的な副作用としては、

  1. 満月様顔貌・肥満(ステロイドによる脂肪細胞の増殖および水分を体内に取り込む作用で起きます。)
  2. 細菌やカビなどの感染症に弱くなる(免疫を抑えるため防御が下がります。普段なら感染しないような特殊な菌にも感染しやすくなります。)
  3. 糖尿病(ステロイドが筋肉や脂肪を燃やし血糖値を上昇させます。)
  4. 胃潰瘍・十二指腸潰瘍(ステロイドが胃腸に働くことでストレスがかかります)
  5. 高血圧・浮腫(ステロイドで血管が収縮します。さらに水分やNaを貯留するため血管内の水分が増えます。)
  6. 肝機能障害(ステロイドが肝臓を通して炎症を抑えるため負担がかかります)
  7. 緑内障・白内障(ステロイドで眼圧が上がったり、目のレンズが濁ったります)
  8. 精神障害(ステロイドでイライラしたり眠れなくなります)
  9. 骨粗鬆症(ステロイドは骨にも作用し、骨密度が低下します)
  10. 筋力低下(ステロイドによる筋肉を分解する作用で筋力が低下します)
  11. 月経異常(ステロイドホルモンは性ホルモンと似ている部分があるため、生理不順が起きます)
  12. ニキビ・皮下出血(皮膚の代謝異常でおきます。ステロイドで皮膚や筋力が衰え出血しているように見えます)

ここにあげたのは代表的なものです。この中でデカドロンの特徴として、水・電解質作用を引き起こす硬質コルチコイドの力価がステロイドの内服薬の中で低いことが挙げられます。

硬質コルチコイドの作用で、

は他のステロイドよりも少ないです。一般的にデカドロンの硬質コルチコイドの力価は0と記載されています。しかし0とはいえ、上記の副作用は全く起きないわけではないので注意しましょう。

それぞれの副作用の対策はプレドニンと同じため、「プレドニンの副作用と対処法は?」を一読してみてください。

 

3.デカドロンはどんな病気でも使えるの?

デカドロンを使用するにあたり気を付けるべき点は多いですが、絶対に使用してはいけない病気はありません。

デカドロンの原則禁忌ですが、

  1. 感染症・全身の真菌症の患者[免疫が抑制されるため]
  2. 結核性疾患の患者[免疫が抑制されるため]
  3. 消化性潰瘍の患者[胃潰瘍が悪化するため]
  4. 精神病の患者[中枢神経に作用して精神症状が悪化するリスクがあるため]
  5. 単純疱疹性角膜炎の患者[免疫が抑制されるため]
  6. 白内障や緑内障の患者[水晶体線維や眼圧に影響するため]
  7. 高血圧症の患者[電解質代謝作用により、 高血圧症が悪化するため]
  8. 電解質異常のある患者[電解質代謝作用により、 電解質異常が悪化するため]
  9. 血栓症の患者[血液凝固促進作用により、血栓症が悪化するため]
  10. 直近に手術を行った患者[創傷治癒が障害されることがあるため]
  11. 急性心筋梗塞を起こした患者[心破裂を起こしたという報告があるため]
  12. コントロール不良の糖尿病の患者〔糖尿病が増悪するおそれがあるため〕

これら12項目が示されています。ただし「原則」禁忌と、原則の二文字が記載されています。これは、上記の疾患の患者さんには投与しないことを原則としますが、特に必要とする場合には慎重に投与するということです。

デカドロンは、ほとんどが抗癌剤に対しての制吐剤として使用されると思います。抗癌剤の種類にもよりますが、嘔気はどの抗癌剤もよく認める副作用です。そのため大部分は、上記の疾患でもデカドロンを投与することがほとんどだと思います。

その他、禁忌までは行かなくても気を付けた方が良いとされている疾患は、

  1. 骨粗鬆症の患者(骨がもろくなる可能性がある)
  2. 腎不全の患者(腎機能を悪化させる可能性がある)
  3. 肝機能低下・脂肪肝の患者(脂質代謝に働き、肝機能が悪くなる)
  4. 脂肪塞栓症の患者(脂質代謝に関与し、塞栓がさらにできる可能性がある)
  5. 重症筋無力症の患者(初期に症状が一時的に悪化することがある)
  6. 甲状腺機能低下の患者(甲状腺機能が悪化することがある)

の6項目が挙げられます。いずれもある程度、他のお薬でコントロールができる病気です。大切なのはこれらの病気がある人は医師にしっかりと報告しておくが大切です。

特に緑内障や白内障など目の病気は関係ないと思い込んでしまう方が多いので注意しましょう。デカドロンは、全身に影響を与えるお薬です。

 

4.デカドロンはどんなお薬とでも併用できるの?

デカドロンは、どんなお薬とも併用できます。

デカドロンの添付文章でも、併用禁忌と記載されたお薬はありません。

内服中のお薬で気を付けた方が良いのは、添付文章では以下のものが記載されています。

  1. フェノバルビタール・フェニトイン・リファンピシン(デカドロン自体の作用が弱まります)
  2. アスピリン・アスピリンダイアルミネート・サザピリン(サリチル酸中毒を引き起こす可能性があります)
  3. ワルファリンカリウム(抗凝固作用を弱めます。)
  4. 経口糖尿病薬、インスリン製剤(経口糖尿病用剤の効果を減弱させます。)
  5. 利尿剤(低カリウム血症を引き起こします)
  6. エストロゲン(デカドロンの効果が増強する可能性があります)
  7. 降圧薬(降圧薬の効果を減弱します)
  8. シクロスポリン (ステロイドの大量投与にてシクロスポリンの血中濃度が上昇します)
  9. エリスロマイシン・イトリコナゾール(デカドロンの作用が増強されます)
  10. エイズ治療薬(サキナビル・リトナビル・インジナビル)(これらの薬の効果が増強、減弱します)
  11. エフェドリン(エフェドリン自体のお薬の効果が落ちます)
  12. サリドマイド(中毒性表皮壊死症が出現します)

以上のお薬をよく使う場合は、デカドロンの効果が増強・減弱するため、それを予測して投与量を調整します。また電解質異常や血糖上昇などの副作用が出現するため、結果としてお薬の効果を弱めたり、他の薬の副作用と合わさって効果が大きくなったりします。

そのため上記の内服を他の医療機関で処方されている方はデカドロンを内服している旨を必ず伝えるようにしましょう。

 

5.デカドロンをやめたくなった方へアドバイス

デカドロンを飲みたくない場合は、自己中断せずに医師にまず相談しましょう。自己中断すると副腎不全が起き、非常に危険です。

ステロイドは、使用しなくて良いのなら使わないに越したことがないお薬です。一方でデカドロンを使用する場合は、抗癌剤の吐き気止めなど代わりとなる薬がない場合が多いです。

デカドロンは、抗がん剤投与している患者さんの大部分に使用されているお薬です。そのためデカドロンを制吐剤として使用する場合は、使い慣れている医師がしっかりと量を調整してくれることが多いです。それでも副作用や安全性を読んで、服薬が嫌になってしまった方もいるでしょう。

吐き気が少なくて2回目の抗癌剤以降内服したくない人は、一度医師に相談してみてください。デカドロンをいきなり中止とはいかないまでも、減量は考慮してくれると思います。さらに脳転移の脳浮腫などでデカドロンを長期間飲んでる人は、絶対に自己中断しないようにしましょう。

我々の体でもステロイドは作られているのですが、デカドロンを長期間内服している場合は体でステロイドが作られてなくなってます。そのためいきなりデカドロンの内服をやめてしまうと、ステロイドが足りなくなってしまいます。軽度な場合はステロイドの元気にする作用が足りなくなってしまうため、

などが初期に認められます。ただしデカドロンは高力価のステロイドであるため、軽症ではすみません。デカドロンを自己中断すると重篤な症状が出現します。具体的には、

など症状が一気に出てきます。このようにデカドロンを急激にやめて副腎がステロイドの生産が追い付かなくなった状態を、副腎不全といいます。副腎不全は、実は診断が非常に難しいです。

どれも重篤な症状ですが、特徴的な症状はありません。また診断をするのも非常に難しく、特に癌でデカドロンを内服している人がこれらの症状が出現した場合は、癌の進行に伴う症状を疑うことが一般的です。その場合適切な治療が遅れてしまい、命にかかわることもあります。

そのためデカドロンは絶対に自己中断しないようにしましょう。

 

まとめ