リンデロン錠(ベタメタゾン)の効果と特徴

アイコン 2016.9.30 リンデロン
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リンデロン(一般名:ベタメタゾン)は、1963年に塩野義製薬株式会社が発売した内服薬のステロイド薬になります。リンデロンは長期作用型の高力価のステロイドのお薬です。

リンデロンと聞くと、リンデロンVGなどの軟膏の方を思い浮かべる人が多いかもしれません。その塗り薬の主成分であるベタメタゾンの飲み薬がリンデロンです。

リンデロンは特殊な病態を除くと、ほとんどが脳浸透圧亢進や抗癌剤の嘔気に対して処方されます。

リンデロンは吐き気を止めるだけでなく、食欲増進作用など体を元気にする作用も強いことから、抗癌剤にはセットで処方されることが多いです。

一方でリンデロンは、様々な副作用があります。抗癌剤のふくさようは医師も説明するかと思いますが、制吐剤として使用するリンデロンのことまでは触れられないことも多いです。

ここでは、リンデロン(ベタメタゾン)の効果と特徴についてみていきましょう。

 

1.リンデロンのメリット・デメリットは?

<メリット>

<デメリット>

ステロイドは、

を期待され多くの疾患で使用されているお薬です。しかしこれら多くの疾患は、大部分がプレドニンで加療されています。プレドニンの方が効果発現時間が短い上に力価も弱いため小回りが利きやすく、病態に合わせて量を調整しやすいからです。

一方のリンデロンは、長期作用型の高力価の内服薬になります。強い効果が長時間続くため、病態が変化しやすい状態には使用しづらいお薬です。そのためリンデロンは、わが国では主に抗癌剤による嘔気に対して使用されています。

がん診療ガイドラインでは、同じステロイドのデカドロンが推奨されています。しかしデカドロンもリンデロンも、ステロイド成分は違いますが同じ長期作用型で高力価のステロイド薬です。

がん診療のガイドラインは臨床研究に基づいて行われるため、データが多いデカドロンが記載されていますが、リンデロンがデカドロンに劣っているわけではないです。むしろデカドロンは錠剤だけなのに対して、リンデロンは細粒やシロップなどの飲み薬も発売されています。

そのため嚥下機能が低下していて錠剤だとのみづらい人でも、リンデロンは投与しやすいお薬です。

リンデロンは制吐効果以外にも、食欲増進する効果が強いです。もともとステロイドは体内で作られているホルモンで、身体にストレスがかかった時に元気にするためのホルモンです。このため抗癌剤を投与した後、元気になったとおっしゃる患者さんも多いですが、実はこのリンデロンの効果によるものです。

一方でリンデロンは、副作用も多いお薬です。ただし、リンデロンを数日内服しただけで副作用が出てくることは少ないです。また、リンデロンを外来でいきなり高用量処方することはほとんどありません。入院中でリンデロンを処方されている場合は、副作用が出現した場合も対処しやすいと思います。

 

2.リンデロンの剤形・薬価は?

リンデロンは、内服薬は錠剤の他に細粒やシロップがあります。昔からある薬のため、ジェネリック医薬品も発売されています。

リンデロンは、

の3種類が発売されています。そのため錠剤がのめない方は、粉薬やシロップに変更が可能となっています。内服薬以外でも注射剤、点眼、塗り薬、座薬など、様々な剤型が発売されています。この中でリンデロンVGは、塗り薬の中でも最も多く処方されている薬の一つかと思います。

それでは薬価をみていきましょう。先発品であるリンデロンは、以下のようになります。

  剤形 薬価 3割薬価
リンデロン錠 0.5mg 14.7円 4.4円
リンデロン細粒 0.1% 31.4円/g 9.4円
リンデロンシロップ 0.01% 6.9円/ml 2.1円

※2016年9月17日の薬価です。

またリンデロンは、ジェネリック医薬品として後発品も発売されています。

  剤形 薬価 3割薬価
ベタメタゾン錠 0.5mg 6.3円 1.9円

※2016年9月17日の薬価です。

後発品は、先発品に比べると半分以下の薬価で処方できます。ただし、細粒やシロップは後発品がないので注意が必要です。

 

3.リンデロンの適応疾患は?

リンデロンは、制吐剤として使用されることが多いです。

ステロイドの以下の2つの作用を期待できるものです。

ステロイドが効力を示す病態は無数にあります。リンデロンの添付文章でも多くの病気が記載されていますが、これらはプレドニンで加療されることがほとんどです。そのため、プレドニンのページで確認してください。

実際の現場では制吐剤としてリンデロンを、1日4~20mgを1~2回に分割して使うことが多いです。特に抗癌剤や脳転移による浮腫での吐き気に対して、リンデロンは効果期待できます。

抗癌剤で最も多く出現する嘔気は、一度出現するとなかなか改善されません。そのため、嘔気がそもそも出ないように対応することが求められています。ですから今では、ほとんどすべての抗癌剤にリンデロンなどのステロイドが併用されています。リンデロンを抗癌剤の嘔気に対して使用する場合は、

一方で注射で抗癌剤を投与する場合は、リンデロンも注射剤で投与することが多くなりました。さらに2日目以降も、5日目まで投与することもあります。また、途中から嘔気が出現した場合に、リンデロンを追加することもあります。

ガイドラインに投与量は記載されていますが、

など様々な状態を加味して、医師が患者さんごとに調整することが多いです。またこの制吐剤の作用は、脳からくる嘔気にも有効です。特に脳転移で脳浮腫がある場合は、この脳浮腫を抗炎症作用で抑えることで嘔気を抑えることができます。

このようにリンデロンは、大部分は癌での制吐剤で使われることが多いお薬です。

 

4.リンデロンと他のステロイドの比較は?

リンデロンは、中間作用型のリンデロンです。力価もステロイド内服の中ではちょうど中間に位置します

ステロイド内服薬は多くのお薬が登場しています。それらのお薬の中でリンデロンはどういった位置のお薬になるか見てみましょう。

ステロイドの内用薬の比較について

まずステロイドは、

の3種類に分けられます。生物学的半減期の期間が、お薬の効き目が無くなってくる時間だと思ってください。時間に幅があるのは、

などによって非常に個人差が大きいお薬だからです。

この中でリンデロンは、長期作用型のお薬にあたります。つまり1日から2日程度効果が持続するお薬になります。そのため一般的には、リンデロンの内服は1日1回のことが多いです。ただし、大量に投与する場合は薬の量が増えてしまうため、2回に分けることもあります。

次にステロイド自体の強さですが、ステロイドはさらに2種類のホルモンに分けられます。

ステロイドの治療を期待するのは、大部分が糖質コルチコイドの抗炎症、免疫抑制作用です。一方の硬質コルチコイドは、水・電解質代謝作用によってNa(塩分)が体内貯留する作用を引き起こします。Naが体内に貯留することで、高血圧やむくみなどの副作用を起こします。

このステロイドの強さを表すのに、力価という言葉を使用します。一般的には、ヒドロコルチゾンの糖質コルチコイドと硬質コルチコイドの力価を1として、それを基準とすることが多いです。

この場合、リンデロンの糖質コルチコイドは25で、硬質コルチコイドは0となります。そのため強力な糖質コルチコイドの力価が得られる上に、硬質コルチコイド作用がほぼ出ない特徴があります。

ただし、糖質コルチコイドが高いから優れているというわけではありません。一般的にステロイド薬は、この力価をもとに投与量を計算します。つまりプレドニンが効かないなら、プレドニン自体の量を増やすことはしますが、力価が強いリンデロンに変えようとは普通はしないので注意しましょう。

またリンデロンと同じデカドロンの違いは、

主成分の違いのみで効果や持続時間はほとんど変わりません。そのため病院によっては、どちらのみしか採用されてないことも多いです。

 

5.リンデロンが向いてる人は?

<向いてる人>

リンデロンは、長期作用型の高力価の作用があるステロイド内服薬です。そのため、病気の状態に対して細かく投与する場合はプレドニンを使用することがほとんどです。

抗炎症作用や免疫抑制作用を期待してリンデロンを投与する場合は、かなり特殊な状況です。(プレドニンでアレルギーが出現したなど)

そのためリンデロンを投与する場合の大部分は、抗癌剤や脳転移で吐き気がある人、もしくは吐き気が起こることが予想される病気の人かと思います。

特に抗癌剤を投与する場合は、医師は抗癌剤の話に重きを置いて、制吐剤のリンデロンについてはあえて話をしないことも多いです。制吐剤まで話を広げてしまうと、ごちゃごちゃになって肝心な情報が抜けて落ちてしまう可能性があるためです。

そのため抗癌剤加療を受けている人は、知らずにリンデロンが投与されていることもあります。

またリンデロンは、錠剤の他にシロップや粉薬もあります。そのため錠剤自体が飲めない人は、リンデロンの他の剤型に変更するのが良いと思います。ただし錠剤が多くて内服できない場合は、リンデロンは0.5mgしかないのに対して、デカドロンは4mgが発売されているので注意が必要です。

 

6.ステロイドとはどんな物質で、どのような作用があるか?

ステロイドは、体の副腎皮質ホルモンとして作られている物質です。

ステロイドホルモンは、実は体の中で作られているホルモンです。副腎でコルチゾール(ヒドロコルチゾン)に換算して、1日当たり5~30mgのステロイドが分泌されています。一日の中でも分泌量は変化していて、朝に多く分泌されて夜に低下していくホルモンです。

ステロイドホルモンは一言でいうと「ストレスなどの負荷に対して、体が負けずに元気になれ!」と命令するホルモンです。ですから抗ストレスホルモンともいわれます。そのため一部の臓器に作用せず様々な臓器に作用します。

どのように元気にするかというと、攻撃のスイッチを入れる代わりに防御のスイッチを切る作用のあるホルモンなのです。朝にステロイドホルモン量が多いのは、活動性が上がるために攻撃のスイッチを入れる必要があるからです。つまりステロイドは良い面ばかりではなく悪い面もたくさんあります。

ステロイドは副腎から作られたホルモンの総称です。実はステロイドは、

など実に多彩なホルモンが含まれています。ステロイド薬は、糖質コルチコイドと硬質コルチコイドの2種類の作用が主に含まれています。

糖質コルチコイド(コルチゾール・コルチゾン)の作用としては、

  作用機序 副作用
抗炎症
作用
炎症性の物質抑制(サイトカイン抑制)
炎症の経路抑制(アラキドン酸カスケード抑制)
 
免疫抑制作用 好中球、マクロファージなど体を守る免疫細胞の抑制
抗体産生の抑制(免疫反応の抑制)
感染しやすくなる
骨代謝
作用
腸管のカルシウム吸収抑制骨の細胞の分化抑制、破壊促進 骨粗しょう症
タンパク質異化作用 筋肉のたんぱく質を分解 筋力低下
糖代謝
作用
血糖値を上げる 糖尿病
脂肪代謝作用 体脂肪増加
コレステロール上昇
脂質異常症
満月様顔貌

など多岐にわたります。この中で、抗炎症作用・免疫抑制作用が主にステロイドに期待される作用です。

一方でもう一つの硬質コルチコイド(アルドステロン・デオキシコルチコステロン)は、

  作用機序 副作用
水・電解質
作用
Na(塩分)の再吸収、貯留水の再吸収、貯留 高血圧
むくみ

硬質コルチコイド自体が少なくなる病気(アジソン病など)以外は、ほとんどこの硬質コルチコイドの作用を期待して投与させることはありません。水や塩分が足りない病態ならば、基本的には点滴などで直接補ってしまいます。

むしろアンジオテンシン阻害薬などの高血圧の治療薬は、この硬質コルチコイドの作用が働かないようにすることで降圧作用をもたらします。

このようにステロイドは、抗炎症作用・免疫抑制作用以外にも様々な作用があるお薬です。なおリンデロンの制吐剤の作用機序は、糖代謝作用で食欲増進する影響ではと考えられていますが、細かいことに関しては実はよくわかってないません。

 

まとめ