ベルソムラ錠の効果と強さ

アイコン 2015.8.27 ベルソムラ

ベルソムラは、2014年に発売された新しい睡眠薬です。従来の睡眠薬とは異なる作用機序で、オレキシン受容体拮抗薬と呼ばれています。

オレキシンは覚醒状態を維持するのに重要な物質であることがわかっています。これをブロックすることで、睡眠方向に促していく薬です。

入眠障害にもある程度効果がありますが、中途覚醒に特に有効です。生理的なメカニズムを利用するので、自然に近い眠りを導く睡眠薬です。副作用や依存性も少ないと考えられています。

ここでは、ベルソムラの効果の特徴について、詳しくお伝えしていきたいと思います。

 

1.ベルソムラの作用する仕組み(作用機序)

覚醒を維持するために必要なオレキシンを阻害することで、睡眠状態へスイッチさせる睡眠薬です。

ベルソムラは、これまでにない新しい作用機序の睡眠薬として注目されています。ベルソムラの作用には「オレキシン」という神経伝達物質が関係しています。まずはこのオレキシンからご説明しましょう。

オレキシンは視床下部の神経細胞で作られています。オレキシンは興奮性の神経伝達を行って、様々な神経細胞を活発にする働きがあります。このためオレキシンは、覚醒に働く物質なのです。生理的には、日中に増加して夜間に減少しています。また、オレキシンは情動の乱れや空腹を感じると活発になります。感情が揺さぶられたりお腹がすくと目が覚めるのは、オレキシンのせいなのですね。

覚醒状態と睡眠状態は、「日中は起きて、夜は寝る」といったようにメリハリをつけていく必要があります。中途半端に覚醒状態になってしまったら、危なっかしくて仕方がありませんね。2つの状態は一気に切り替わらなければいけません。この切り替えに重要な働きをしているのがオレキシンです。オレキシンはスイッチのような働きをしているのです。

睡眠と覚醒に関係する物質には、GABA・セロトニン・ノルアドレナリン・ヒスタミン・アセチルコリン・メラトニン・オレキシンなどがあります。

ベルソムラは、このオレキシンが作用する受容体をブロックしてしまいます。オレキシンが作用できなるとスイッチがオフに切り替わり、睡眠状態が導かれていきます。ベルソムラは、身体が生理的に行っているメカニズムを利用して睡眠効果をもたらすお薬といえます。

オレキシン受容体には2種類あると言われています。オレキシン1受容体(OX1R)とオレキシン2受容体(OX2R)です。どちらも覚醒に関係していますが、OX2Rの方が影響が大きいことがわかっています。

ベルソムラは、このOX1RとOX2Rの両方を1:1で遮断する働きがあるので、DORA(Dual Orexin Receptor Antagonist:両方のオレキシン受容体拮抗薬)とも呼ばれています。

 

2.ベルソムラの効果と特徴

まずはベルソムラの特徴を、メリットとデメリットに分けてみていきましょう。

 

2-1.ベルソムラのメリット

睡眠薬として最もよく使われているベンゾジアゼピン系睡眠薬では、脳の機能を落とすことで眠気をもたらしていました。このような睡眠薬では、スッと落とされるような眠りの入り方でした。ベルソムラは睡眠状態にスイッチを切り替える睡眠薬です。身体が生理的に行っているメカニズムを利用しているので、自然に近い眠りを導く睡眠薬です。

入眠作用はそこそこといったところで、服薬した直後から効果は期待できます。ベルソムラは、中途覚醒に真価を発揮する睡眠薬です。途中で目が覚めても、再入眠しやすくなります。また、レム睡眠と深い睡眠が増加して、浅い睡眠が減少します。睡眠が深くなり、質がよくなります。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬で多かった健忘・ふらつきといった副作用は少ないです。ベルソムラには筋弛緩作用がほとんどありませんが、眠気からふらついてしまうことはあるので注意が必要です。依存性もほとんどないと考えられていて、離脱症状や反跳性不眠(離脱症状でよけいに不眠がつよくなること)はなかったと報告されています。

ベルソムラはこのように依存性が低いお薬なので、ベルソムラは向精神薬となっていません。このため、一般的な睡眠薬のように30日の処方制限がありません。ベルソムラは60日や90日など長期で処方することもできるので、睡眠が安定したら通院回数を減らすこともできます。

 

2-2.ベルソムラのデメリット

ベルソムラは世界に先駆けて、日本で最初に発売された睡眠薬です。このような薬は珍しく、ほとんどの薬は世界で効果や安全性が確かめられてから日本にやってくることが多いです。発売からしばらくたちましたが、まだ薬の実感が完全にはわからないという点はデメリットかもしれません。

ベルソムラは、レム睡眠を増やす作用があります。このため夢を見やすくなってしまいます。不眠になってしまう方はストレスを感じている方が多く、悪夢が増えてしまうことが多いです。

また、翌日の眠気が思ったよりも多い印象があります。明け方になると生理的なオレキシンが上昇してきて覚醒します。脳が活動し始めると、オレキシンはすぐに活発になるはずです。ですが、意外と眠気を日中に感じる方が多い印象です。

 

ベルソムラは、CYP3Aという肝臓の酵素で代謝されていきます。グレープフルーツジュースやクラリスなどの抗生物質は、このCYP3Aを強く阻害してしまいます。その結果、ベルソムラが代謝できなくなってしまい濃度が一気に上がってしまいます。ですから、グレープフルーツジュースなどは避けなければいけません。

新薬なので仕方がないのですが、ベルソムラは非常に高価です。15mg錠で89.1円、20mg錠で107.9円です。ジェネリックも当分発売されません。

 

2-3.ベルソムラで懸念されていること

ベルソムラでは2つのことが懸念されています。

1つ目は、ナルコレプシー様症状が起こるかもしれないということです。ナルコレプシーとは過眠症と呼ばれている病気です。オレキシンが変性すると、ナルコレプシーになることがわかっています。覚醒に必要なオレキシンが足りないために、急に睡眠状態に入ってしまう病気です。

この4つの症状がみられるような病気です。ベルソムラは、オレキシンをブロックする薬です。理論的にはナルコレプシー様の副作用が起こることが懸念されていました。現在のところ、市販後調査では報告されていませんので、問題ないかと思います。

 

2つ目は、食事への影響です。空腹を感じると、オレキシンが活発になることで覚醒して食事をとります。そして活動的になってエネルギーを消費します。このようにオレ キシンは食欲や代謝と大きく関係し、摂食行動に影響を与えることが懸念されていました。現在のところ、市販後調査では目立った報告がされていません。

 

ベルソムラの副作用について詳しく知りたい方は、
ベルソムラの副作用(対策と比較)
をお読みください。

 

3.ベルソムラの作用時間と強さ

ベルソムラは半減期が10時間で、作用時間は6時間程度です。中途覚醒を中心に効果のある睡眠薬です。

ベルソムラは、血中濃度がピークに達するまでには1.5時間ほどかかります。そこから少しずつ抜けていき、10時間で半分の量まで減少します。

ベルソムラの効果は、服用した日から期待できます。30分ほどして自然な眠気で眠りに導きます。薬が半分になるまでには10時間ほどかかりますが、明け方になってくると生理的なオレキシンが急上昇します。オレキシン受容体をベルソムラとオレキシンが奪い合いをします。その効果、ベルソムラの結合率が65%を下回ってくると覚醒が優位となります。このようにして目が覚めるので、作用時間としては6~7時間ほどです。

ベルソムラの半減期は10時間ですので、20時間たっても1/4は身体に残っています。服薬の開始から3日ほどは、少しずつ薬が身体にたまります。ですから、ベルソムラの効果をみていくには、少なくとも3日かかります。さらにベルソムラの服用を続けていくと、徐々に効果が強まっていく方が多いです。

 

ベルソムラの効果は、入眠障害には「やや弱い~普通」ですが、中途覚醒には「普通~やや強い」という印象です。成人は20mg、高齢者は15mgと用量が決まっています。ベルソムラを使える上限量は、有効用量の中で低めに設定されました。これは、眠気による運転への影響を心配されたためです。アメリカでは、もっと慎重に用法が決められています。ベルソムラ10mgから開始して、上限20mgまでとなっています。

なお、食後に服用すると血中濃度のピークが3時間ほどとなります。効きが悪くなるので、少なくとも食後2時間あけて服用するようにしましょう。

 

4.ベルソムラが向いている人とは?

ベルソムラは、原則的に他の睡眠薬との併用をしないこととなっています。ですが、併用して切り替えていくこともあります。いろいろな睡眠薬を試しても効果がなかった方には、新しい作用機序の薬が効くかもしれないので試してみることもあります。すでに服用している睡眠薬を減量するときは、その睡眠薬の反跳性不眠に気をつけていく必要があります。

ベルソムラは、入眠障害にも効果は期待できますが、真価を発揮するのは中途覚醒です。ですから、中途覚醒で困っている方に向いている睡眠薬です。入眠障害で悩んでいる方には、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬のマイスリー・アモバン・ルネスタなどの方が向いているでしょう。

一度目が覚めてしまうとなかなか寝付けないという方に、ベルソムラは向いています。このような患者さんにベルソムラを使うと、一度目は覚めてしまうけれども再入眠できるようになることがあります。

また、筋弛緩作用がほとんどないので高齢者にも向いています。ベンゾジアゼピン系睡眠薬では筋弛緩作用から、ふらついて転倒してしまうこともありました。ベルソムラではかなり軽減されています。眠気でふらつくことがあるので注意は必要ですが、高齢者に向いている睡眠薬と言えるかと思います。

依存性を気にされる方にもよい睡眠薬です。ベルソムラは依存性が非常に低い睡眠薬です。残念ながら完全に依存性がないわけではありませんが、離脱症状や反跳性不眠などの報告はありませんでした。睡眠薬をやめられなくなってしまうという怖さがある方には、ベルソムラは向いています。

 

ベルソムラはまだまだ発売されたばかりの睡眠薬です。実際にベルソムラを使っていく中でどのような方に向いているのか、試行錯誤されている段階です。例えば、

などといわれています。ベルソムラの評価が変わるにつれて、記事を更新していきたいと考えています。

 

まとめ

覚醒を維持するために必要なオレキシンを阻害することで、睡眠状態へスイッチさせる睡眠薬です。

ベルソムラのメリットとしては、

ベルソムラのデメリットとしては、

ベルソムラが向いている方は、