睡眠薬(眠剤)の副作用とは?

アイコン 2015.9.3 睡眠薬のまとめ

不眠で悩んでいる患者さんと治療のお話しをしていくと、「睡眠薬は怖いから使いたくない」とおっしゃる方が多いです。

「一度睡眠薬を使ったらやめられなくなってしまう」
「睡眠薬は脳に作用するから危険な薬だ」

といったように、誤解されている方が多いです。不眠をほっておくと心身が疲弊して、日中の活動がうまくいかずにますます疲弊するという悪循環に陥ります。

現在の睡眠薬は安全性が高いので、不眠が続くならば薬で改善していく方がよいです。睡眠薬が怖くてお酒に頼る方も多いですが、ますます睡眠が悪化してしまいます。ここでは、睡眠薬のデメリットである副作用を正しく理解して、納得して睡眠薬を使っていただく手助けができれば幸いです。

 

1.睡眠薬のタイプによる副作用の違い

バルビツ―ル酸系は副作用が多く、現在では使われません。ベンゾジアゼピン系では安全性はかなり改善されていますが、最近では非ベンゾジアゼピン系、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬などの安全性の高い睡眠薬が開発されています。

現在使われている睡眠薬は、大きく5つのタイプに分けることができます。

睡眠薬の副作用としてよく認められる症状は、大きく4つあります。

それぞれの睡眠薬のタイプごとに、代表的な4つの副作用を比較してみましょう。

睡眠薬の種類による副作用の違いを比較しました。

バルビツール酸系では、眠気やふらつきの副作用が大きい上に、依存性も高いです。このため、現在ではほとんど使いません。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬では、バルビツール酸系と比較すると格段に副作用が軽減されています。それでも副作用はある程度ありますので、注意が必要です。薬によっては作用時間が長いものがあるので、眠気が日中に持ち越してしまうこともあります。また、筋弛緩作用があるので、ふらつきが認められることもあります。

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬では、作用時間が短いものしかありません。このため、健忘の副作用が起こりやすいという特徴があります。一方で、朝まで睡眠薬が残ることはほとんどないので、眠気の副作用は少ないといえます。また、筋弛緩作用がほとんどないので、ふらつきも少ないです。

メラトニン受容体作動薬とオレキシン受容体拮抗薬はどちらも副作用の少ない睡眠薬です。本来の睡眠メカニズムを利用する睡眠薬なので、睡眠以外のよけいな作用が少ないです。依存性もほとんどないと考えられています。

オレキシン受容拮抗薬では夢が増加するので、悪夢をみることがあります。

 

睡眠薬の効果について詳しく知りたい方は、
睡眠薬(眠剤)の効果と強さの比較
をお読みください。

 

2.睡眠薬の作用時間による副作用の違い

作用時間の短い睡眠薬では健忘が多く、依存性が高いです。作用時間が長い睡眠薬では、眠気やふらつきが多いです。

睡眠薬の作用時間によっても、注意すべき副作用の特徴が異なります。

作用時間が短い睡眠薬では、すぐに薬が効いてきますが、薬が身体から抜けていくのも早いです。このことは2つのデメリットがあります。

1つ目は、健忘が多くなることです。睡眠薬が急激に作用するために、中途半端な覚醒状態にしてしまいやすくなります。その結果、海馬を中心とした記憶に関わる部分の機能だけが落ちてしまい、健忘がみられるのです。

2つ目は、依存性の問題です。睡眠薬の服用を続けていくと、少しずつ薬が身体に慣れていきます。作用時間の短い睡眠薬では急激に血中濃度が変化します。身体はできるだけ早く、大きな変化に慣れようとします。このためすぐに身体に慣れていきますが、その状態で睡眠薬をやめてしまうと、離脱症状や反跳性不眠といった症状が生じてしまいます。

 

作用時間が長い睡眠薬では、飲み続けていくうちに薬が身体にたまっていきます。薬が身体から抜けるのも遅いです。このことにも2つのデメリットがあります。

1つ目は、眠気の持ち越しが多くなることです。睡眠薬の作用時間が長くなりすぎると、朝方にも効果が残ってしまいます。すると、翌朝が眠くて起きれなくなってしまったり、午前中の集中力が落ちてしまったりします。薬が身体にたまっていくので、日中の気が抜けた時に眠気が強く出てしまう方もいらっしゃいます。

2つ目は、ふらつきの副作用が多くなることです。これも眠気と同様に、睡眠薬の効果が日中も持続してしまうと起こりやすくなります。ベンゾジアゼピン系睡眠薬は筋弛緩作用もあるので、筋肉の緊張が緩んでしまって、ふらついてしまいます。

 

3.代表的な睡眠薬の副作用について

睡眠薬の代表的な副作用について、症状ごとにみていきましょう。副作用がみられたときの対策も考えていきたいと思います。

 

3-1.眠気

睡眠時間を確保しても変わらない場合、減量したり、作用時間の短い睡眠薬に変えてみましょう。

睡眠薬は夜だけに効いてくれれば理想ですね。ですが睡眠薬が効きすぎてしまうと、翌朝まで眠気が続いてしまうことがあります。これを「持ち越し効果(hung over)」といったりします。眠気だけでなく、だるさや集中力の低下、ふらつきなどがみられます。

「眠気が強くて朝起きれない」
「午前中がぼーっとしてしまう」
となってしまうと生活に支障がきてしまいますね。事故などにつながることもあるので注意が必要です。

 

作用時間が長い睡眠薬ですと、朝まで効果が残ってしまいます。中間型や長時間型睡眠薬では、少しずつ薬が身体にたまっていって、寝付きやすい土台をつくっていきます。

このような睡眠薬ですと、日中にも睡眠薬が残って作用してしまいます。日中に眠気や倦怠感がでてきてしまいます。翌朝への影響がもっとも大きく、なかなか起きれなくなってしまったり、午前中に集中力がなくなってしまったりします。このような副作用を、「持ち越し効果」と呼びます。

作用時間の長い睡眠薬では、血中濃度が安定するまでに1週間ほどかかります。このため1~2週間は、副作用に気を付けながら効果を見ていく必要があります。

 

持ち越し効果が認められた場合、はじめに睡眠時間がちゃんと確保できるかを確認します。睡眠時間が短かったら、薬の効果が朝に残ってしまうのも当たり前ですものね。その場合は、睡眠時間をしっかりと確保しましょう。それでも改善しなければ、より短い作用時間の睡眠薬に変えるか、睡眠薬を減量していくかになります。

ある程度の量の睡眠薬を使っていて睡眠を改善できている方では、まずは減量を検討していきます。睡眠薬の量を減らすと作用時間が短くなります。睡眠薬の量を変えた時の血中濃度と作用時間の関係をグラフでみてみましょう。

睡眠薬の量と効果の関係を考えてみましょう。

薬の量を2倍にすると、グラフの山が高くなります。ですが薬の増えたり減ったりす るスピードは大きくはかわりませんので、上図のような血中濃度と なります。

ここで、睡眠薬が有効な濃度となる時間をみてみましょう。薬の量を半分にすると、効果の持続時間がオレンジからブルーの矢印へと短くなりますね。ですから、睡眠薬が2錠だったら1錠に、1錠だったら半錠にしたりすると、朝まで効果が持続しなくなります。

 

減量で上手くいかない時は睡眠薬を変更していきます。短時間型や超短時間型の睡眠薬を試してみてもよいでしょう。

 

3-2.健忘

作用時間の長い睡眠薬への変更を検討します。お酒と一緒に服用することは絶対に避けましょう。

睡眠薬を服用した後に、記憶することができなくなってしまうことがあります。朝起きると自分でも全く覚えていないのにお菓子の袋が散らかっていたり、友達に電話してしまっていたりします。アメリカの議員がマイスリーを服用した後に、記憶がないままに車の事故をおこしてしまったことを機に注目されるようになりました。

記憶することができないだけですので、不思議かもしれませんが周囲からみると普通に行動しています。当の本人は全く覚えていないので不気味ですし、生活にも支障をきたしますね。

 

睡眠薬を飲んでから物忘れが起こってしまうので、「前向性健忘」といいます。このような状態になるのは、睡眠薬が中途半端な覚醒状態にしてしまうためです。その結果、海馬を中心とした記憶に関わる部分の機能だけが落ちてしまうのです。

前向性健忘は、睡眠薬が急激に作用する時に起こりやすいです。

このような時には、前向性健忘がおこりやすくなってしまいます。ですから健忘の対策としては、

このようなことが考えられます。とくに睡眠薬とアルコールは、絶対に一緒に飲まないようにしましょう。

 

3-3.ふらつき

睡眠薬を減量するか、作用時間の短い睡眠薬や非ベンゾジアゼピン系睡眠薬に変更を検討します。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は睡眠作用を期待して作ったお薬ですが、その他にも筋弛緩作用も働いてしまいます。緊張が強くて肩がこってしまったり、身体に緊張やこわばりがある時はむしろ大歓迎の作用になります。ですが、高齢で足腰が弱っている方に筋弛緩作用が強く出てしまうと、ふらついてしまって危ないです。トイレで夜中に目が覚めた時に、眠気も相まって転倒して骨折してしまうようなこともあります。

ふらつきが出やすい睡眠薬は、

このような睡眠薬です。ですからふらつきの対策としては、

睡眠薬を少なくすれば作用も弱くなってしまいますが、ふらつきの副作用も軽減されます。また、作用時間の短い睡眠薬に切り替えれば、日中のふらつきは軽減されます。

筋弛緩作用が弱い睡眠薬としては、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬・メラトニン受容体作動薬・オレキシン受容体拮抗薬があげられます。できるならば、これらの睡眠薬に変更していきます。

 

3-4.睡眠薬依存

適切な睡眠薬を適切な量で使いましょう。依存しにくいタイプの睡眠薬に変更したり、作用時間の長い睡眠薬に変更を検討します。

睡眠薬では、依存してしまって止められなくなってしまうことがあります。ですから、ちゃんと出口を見据えて薬を使っていくことが大切です。

依存には大きく3つのポイントがあります。身体依存と精神依存と耐性の3つです。

身体依存とは、薬が急になくなってしまうことで身体がビックリしてしまう状態です。身体が薬のある状態に慣れてしまうことで、急になくなるとバランスが崩れてしまいます。身体の依存です。睡眠薬を急にやめてしまうと、むしろひどい不眠(反跳性不眠)や体調不良(離脱症状)におそわれることがあります。

精神依存とは、精神的に頼ってしまうということですが、これは効果の実感の強さが重要です。効果が早く実感され、効果がきれる実感が大きいものほど精神的に頼ってしまいます。心の依存です。不眠は非常につらいですから、睡眠薬には頼ってしまうようになります。

耐性とは、薬が体に慣れてしまい効果が薄れていくことです。はじめは1錠で効いていたのに少しずつ眠れなくなってしまう時は、耐性が形成されています。

 

睡眠薬の依存を心配されている方は多いですが、アルコールに比べたらマシです。過度に心配することはありません。医師の指示通りの量を守って服用していれば、ほとんど問題ありません。睡眠薬依存が本当に問題になるのは、睡眠薬の量がどんどん増えて大量になってしまう方です。耐性ができて薬が効かなくなっていき、その結果どんどん薬の量が増えているのです。このような方は注意が必要ですが、ちゃんとある程度の量でコントロールできているならば大丈夫です。

 

依存しやすい睡眠薬としては、

このような睡眠薬です。ですから対策としては、

依存性が低い睡眠薬としては、非ベンゾジアゼピン系やメラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬があげられます。できるなら、これらの睡眠薬に変更しましょう。また、ベンゾジアゼピン系の中では、作用時間が長い睡眠薬の方が依存性が低いです。

睡眠薬は必要以上に使ってしまうと依存が進んでしまいます。できるだけ少量、できるだけ短い期間で使うようにしましょう。睡眠薬とアルコールの併用は絶対にやめてください。依存が一気に形成されてしまいます。眠れないから寝酒をしている方も多いかも知れませんが、これ自体が睡眠に悪影響です。絶対にやめましょう。

詳しく知りたい方は、
睡眠薬(眠剤)の依存性と7つの対策
をお読みください。

 

まとめ

バルビツ―ル酸系は副作用が多く、現在では使われません。ベンゾジアゼピン系では安全性はかなり改善されていますが、最近では非ベンゾジアゼピン系、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬などの安全性の高い睡眠薬が開発されています。

作用時間の短い睡眠薬では健忘が多く、依存性が高いです。作用時間が長い睡眠薬では、眠気やふらつきが多いです。